確定申告書作成が1/5に!?クラウド税理士・廣升健生氏インタビュー|前編

クラウド税理士・廣升健生氏にインタビュー|前編

クラウド会計ソフトの使用方法を、YouTubeなどでわかりやすく動画で解説する
「新しい士業の働き方」を提案するクラウド税理士・廣升健生税理士事務所の廣升氏にインタビューします。

廣升 こんにちは!

インタビュアー いつもお世話になっております。

廣升 実は事務所のポロシャツ作ったんです。今は自分以外に着る人がいないので(笑)

インタビュアー うわーいいですね! freeeでもロゴ付きのポロシャツがあったらいいなって思っていたんですよ。本日はよろしくお願いします!
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●クラウド会計に特化されたきっかけは?

廣升 以前の職場は「連結納税」や「組織再編」など上場企業向けの業務を5年間やっていました。その強みを活かして独立したんです。独立したてのころは、専門分野に絞った方がいいだろうと思っていました。法人全般も個人もできていましたから、当時一番得意分野だった「連結納税」に絞ったんです。

インタビュアー 独立したてって非常に難しいですよね。「仕事が来たらとりあえず受けるよ」というスタンスの方もいますし、廣升さんのように、特化するからにはブランディングをしっかりして、業務が広範にならないようにするという考え方もいますし。

廣升 そうですね、独立した同期の場合、子供がいたりして抱える物が大きいと、やっぱり日銭が大事になってくるんです。だから仕事も何でも受けなきゃいけない。そう言う意味では、幸運にも妻がまだ働いていたので、ある程度は日銭を急いで稼がずとも良かったんです。

インタビュアー なるほど。

廣升 結果的に「連結納税」を専門にやっていた当時は、規模が大きい企業ばかりだったので、顧問契約の様な仕事ではなく、スポット業務ばかりだったんです。特殊な業務だけに、日銭を稼ぐようなスタイルではなかったので、手間はかかるけど顧問料が安いみたいなクライアントをそもそも持っていなかったんです。だからクラウドを柱にした業務を行った時に切り替えがし易かったんです。

インタビュアー クラウド会計に特化しやすい状況だったんですね。

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廣升 開業当時は、前述したように「連結納税」のみに特化したことで、導入したシステムも「達人シリーズ」と「弥生会計」しか入れなかったんです。他の会計システムはゼロでした。

インタビュアー 初期投資を抑えられたんですね。

廣升 独立した当時、100人とか1000人に一気にアプローチできるのってネットですよね。自分はそこに魅力があるなって思ったんです。ネットで集客したいなって。自分が本当に得意な事に対して求めてくれるようになるマッチングが絶対いいなって思っていたんです。

 

●「自動同期だけでじゅうぶんじゃねえか」漫画「スラムダンク」の名言?

インタビュアー クラウド会計を最初に見つけたのはいつですか?

廣升 最初はホームページとか作っていた仲間が、「そういうのやりたいんだけど知ってる?」って言って来たんです。クラウドサービスがあるって事は知っていたんですけど、私もぜんぜん触った事がないから、そこから勉強をし始めたんです。それが2013年の11月末あたり。

インタビュアー 本格的には2014年の1月くらいからですか?

廣升 あれは忘れもしないんですが、2013年の12月20日くらいから宮城県栗原市の妻の実家に行っていたんですよ。そこでノマドみたいな感じで仕事もしつつ、ちょっと休みつつ、漠然と「来年どうしよう…」って考えていたんですね。

インタビュアー ちょうど年の瀬に考えていたんですね。

廣升 そう!妻の実家の徒歩10分のところに、あまちゃんの脚本家宮藤官九郎さんの実家の 「文具センタークドー」って文房具店があるんですよ。

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購入した紙とペンを片手にすごい考えた。クドカンの様に、独創的な発想できないもんかって(笑)。満足できた1年ではなかったから、消化不良感を抱えながら「クラウドに舵を切るのも一つの選択肢かな」って練っていたんです。そんな時に「世界一ラクにできる確定申告」(原尚美+山田案稜)を拝読し、当時の私にとっては未知の領域でしたから、自分自身でやってみないと実感値としてはわからんぞと興味がどんどん深まったんですよ。ちょうど確定申告までの3ヶ月間だったので業界的にはホットな時期ということもあり、そこまでになにをするかって考え出したんです。それが転機でしたね。

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インタビュアー なるほど。

廣升 クラウド会計特化に切り替えるために、時間の初期投資をしたんです。知り合いのフリーランサーとか「freee」に興味のある人には、ほとんどただで、顧問になって導入のサポートや、確定申告のお手伝いをしてサンプル集めをしたんです。

インタビュアー 当時の主要業務だった「連結納税」はすべて断って切り替えたんですか?

廣升 そうですね。連結納税のスポット案件はもちろん、一般的な顧問業務で年間60万で丸投げされて記帳代行やるような依頼も来ましたけど、それは断ってましたね。

インタビュアー クラウド会計ソフトを触った時、プロダクトとしてまだまだな点もお感じになったかとは思いますが、廣升さん的に「ここがこうなったら面白いんじゃないか?」って思ったポイントってどういう点でした?

廣升 まあ1点だけですよ。ユーザーが求めている機能っていうのが全てなんじゃないですかね?
【預金通帳が会計ソフトと自動で同期して、日々の記帳の手間が自動化される】とか、過去の履歴から、【仕訳を自動で判断して登録してくれる】ユーザーにとっては、欣喜雀躍の機能ですよね。

例えば、決算書や内訳書がキレイに出るとか、そこら辺の話なんかは枝葉末節な話でね。
従来のインストール型の会計ソフトと比べたら、天と地ほどの差がありますよね。

インタビュアー はい。

廣升 よく例え話で言っているんですが、「スラムダンク」の一節で、田岡監督が魚住選手に言うんですよ。田岡が体育会裏で泣いてる魚住の所に行ったら魚住が「自分はただでかいだけって陰口たたかれてるの知っている」って。その時、田岡が「でかいだけ?結構じゃないか」「お前をでかくすることはできない」「たとえオレがどんな名コーチでもな」って言うくだりがあるんですが、私はそのくだりが好きで、何がバスケット選手として大事なのかっていう話は、クラウド会計も一緒だなって。
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インタビュアー と言いますと?

廣升 結局、ユーザーが求めるものは、日々の記帳をいかにやり易くするかって事だけなんです。税理士・会計士が求めているのは、出口の所の使い勝手で、クライアントを管理するためのツールとか申告ソフトとの同期機能とかに目がいってしまう。会計士や税理士が求めるものと、ユーザーの求めているものとは必ずしも一致しないんですよ。だから自分はクラウド会計ソフトに心の中でこう言ってやったんですよ。「自動同期だけ?結構じゃないか」「従来の会計ソフトには仕訳の全自動化はできない」「たとえ自分が名税理士であってもな」って (笑)

インタビュアー なるほど(笑)。「スラムダンク」の名言とそこが同期するんですね。

廣升 もう田岡監督が魚住選手に言っている気持ちですよ(笑)。ユーザーにとっては仕訳の手間を自動化できる『通帳との自動同期機能』それだけで十分だって。他の事なら税理士の私がいくらでもやってやるって思いました。

インタビュアー なるほど!

 

●投資の意味も込めてクラウド会計ソフトを使ってみて

廣升 ネットの世界って先行者利益があるじゃないですか。まず先頭に立つって事をすごく重要視していたんです。「ランサーズ(※クラウドを活用した仕事の受発注サービス)」経由で知り合った人がいて、それから「ランサーズ」を使い始めて、当時の「ランサーズ」活用者は、そのサービスのスタートアップの時期から活用しているから、上位表示されて、上に来る人はもっと上に来るという相乗効果が生まれている。

インタビュアー 実績が実績を呼ぶみたいなイメージですね。

 

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廣升 結局、「ランサーズ」とか「クラウドワークス(※クラウドを活用した仕事の受発注サービス)」とか見ていると、登録しているユーザー数は当時15万人とかだったけど、ちゃんと活用して実績評価が1つ付いている人は、おそらく10万人うち1万もいないと思いますね。。4千、5千とか。

インタビュアー アクティブになっている人達ですね。

廣升 おそらく評価実績が5つ以上の人なんかは1000人もいない位ではないでしょうか。話題になったから登録しようと思った人は、よっぽど頑張らないと駄目なんです。タダでもいいからまず実績を積むんだくらいの勢いで、3ヶ月とか無償で評価実績50作る位の気持ちでやらないと駄目かなって思うんですよ。

インタビュアー なるほど。

廣升 やるんだったらこの1年でしっかりといろんなサンプルを取って、打つべきことは打とうって考え、2013年の年末に「乾坤一擲の勝負だな」って思っていましたね。

インタビュアー それでトライアルと言いますか、投資の意味も込めてクラウド会計ソフトを使って、知り合いの面倒を見ていたと思うんですが、その中で、まだ足りないと感じるところはありますか? 従来の会計ソフトと違うので、それがハードルになって使えないと感じている税理士や会計士は多いと思うんですよ。

廣升 自動同期をするとか、仕訳の学習とかでお客さんが困ったっていう経験は得になかったですね。例えば「freee」の場合とかは、ユーザーが直感で操作できるようなユーザーインターフェイスになっているので、ユーザーは、意外とサクサクと入力できますし。

逆に、頭が複式簿記にどっぷり浸っている私のような専門家には、最初「freee」のインターフェイスに戸惑うかもしれません。私も戸惑いましたし。
例えば、なんですけど…ってかなり細かい話になってしまうのですがいいですか?

 

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インタビュアー ぜひぜひ

廣升 「freee」という会計ソフトの開発思想を自分なりに勝手に解釈すると、徹底して、会計の知識がない人が、日々の取引を快適にかつ直感的に登録する為にどうすればよいのか? という発想だと思うんですね。

具体的にいうと、複式簿記の世界では、売上などの収入があれば貸方といって右に数字が来る、費用なら借方で左に。でも「freee」で通帳を自動同期すると未登録の収益と費用が一見同じように、上から下に並んでいる。でも、収益の場合には矢印が上になっていて、枠が青くなっている。費用は逆に矢印が下を向いてて、枠はピンクに。

正直自分もこの画面に最初は戸惑ったんですけど、自分が簿記を初めて勉強し始めた時に、なぜ売上(収益)というプラスっぽい気持ちになる勘定と、借入金などの負債のマイナスなイメージの勘定が同じ貸方に来るのだろう?って疑問だった事を思い出して、『あーなるほど、売上が上がれば、キモチも上向くから晴れやかにブルー。当然、矢印は上だよなぁ。費用はお金が出て行って焦るのでピンクで矢印は下だよなぁぁ』って納得してましたね。

自身がユーザーの目線ということで例えるなら、「WordPress(ホームページを作るツール)」なんかはまさにそうで、記事を更新したりする時に、文字を大きくしたり、色を変えたりするのは、オフィスソフトを扱っている様にボタンひとつで、システムエンジニアの知識などは全くなくても、直感的に編集ができるけれど、裏で設計されているコーディングを見ると、全く理解できないコードが羅列されている。

「freee」のサポートをきっかけに知り合って、今も仕事を一緒にしているシステムエンジニアの友人から以前、「WordPress」が10年程前に登場しなかったら、『これほどホームページが沢山作られる現在はなかったかもしれないっ』って話を聞いたことがあって、そういう意味では仕訳の構造を理解せずに、会計を扱える現在のクラウドツールなんかは「WordPress」と同じ事なのかもしれないですね。っと話がかなりマニアックに脱線してしまいました(笑)。

インタビュアー 確定申告書を出すところまでは、個人事業主の皆さんは問題なく使えていましたか?

廣升 私が手伝ったメンバーの方々は、そんなにすごい売上げを上げている方々ではなかったし、そこまでの仕訳ができていれば、事業所得の他には一般的な税額控除が有るくらいで、そこまでの計算がそれなりに形になれば、作るのはもう金太郎飴みたいなもんでした。

インタビュアー 問題なくいけましたか?

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廣升 そうですね。数字さえ作ってあげれば、後は自分で、申告もやるって方も、とても多かったですね。

 

●クラウド会計ソフトを利活用している方とのコミュニケーション手段は?

インタビュアー クラウド会計ソフトを活用されている方には、具体的に日々どういうコミュニケーションをとっていらっしゃいますか?

廣升 うちは契約時に、所謂これまでの顧問の方と同額の料金表を見せて、クラウド会計ソフト、チャットワーク、「Dropbox」それぞれを使う事で、それぞれに割引させるというやり方をしています。

インタビュアー なるほど。

廣升 他のお客様はこれくらいだけど、あなたは頑張ってクラウド化したからこれだけ安いんですっていう見せ方にしているんです。

インタビュアー それは良い説明の仕方ですね。往訪がないクラウド会計ソフトと、従来型の会計ソフトとでは、実務の手間として体感値はどれくらい違いますか?

廣升 手間としては1/5くらいじゃないですかね。

 

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インタビュアー なるほど。

廣升 自分が聞きたいところだけ正確に教えてくれって言う人がほとんどなので、チャットワークとか使えば、すぐ返事できるのでいいですよ。

インタビュアー どれくらいの頻度で問い合わせが?

廣升 しょっちゅう来ますよ。当初は2〜3日に1回は質問が来ましたけど、すぐに返せば済みますし、書類を「Dropbox」にスキャンしてくれれば、クラウド上で見てすぐに返答できるので10分とか15分で済むんですよ。お客様にはそのスピード感に満足頂いてます。
クライアントへのサービスには正確性はもちろんですけど、スピードには特に意識していますね。
回答出来るような質問ならすぐしますし、外出先などで、対応出来ない場合には、いつまでに対応するのかを返信だけでもすぐに行います。

インタビュアー 確かに対応は早い方が嬉しいですよね。3ヶ月に1回の往訪じゃなくて、その場で回答してもらえるんですもんね。

廣升 はい!

 

 

【後編に続く】

取材協力=廣升健生税理士事務所

 

 
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