税理士が語る法人成りのメリット・デメリットを活かした節税方法まとめ

法人成り

個人事業と法人成りはどちらがお得?

個人事業者の方は、法人成りについて一度は考えたことがあると思います。また、これから起業をしようと考えている方は、個人事業者になるか、法人設立するかで悩んでいる方もいらっしゃることでしょう。
そこで今回は、個人事業者の方が法人成り(株式会社の設立)を検討する場合を例に挙げ、主に税の観点から、そのメリット・デメリットを簡潔にまとめたうえで、法人成りによる節税のポイントをご紹介したいと思います。

※ 個人・法人ともに青色申告の承認を受けていることを前提として話を進めていきます。
また、法人成りをした場合、事業主が法人の代表者であることを前提として、「代表者」ではなく「事業主」という表現を用いて話を進めていきます。

〈参考〉初心者でも株式会社を簡単に設立するための7つの手順完全ガイド

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1)法人成りの5大メリット

法人成りのメリットは、主に以下の5つです。

1. 所得を分散できる

個人の場合には、その所得が全て事業主個人のものとなります。
これに対して法人成りをすると、事業主以外の方(配偶者だけではなく、役員とした子どもや両親など)に対しても給与を支払ったり、法人内部に留保するなどして所得を分散することができます。
これによって所得税などを節税することができます。

2. 退職金が費用になる

個人の場合には、事業主自身に対する退職金は必要経費として認められません。
これに対して法人成りをすると、事業主に対する退職金も原則として法人の費用となります。
これによって節税することができます。

〈参考〉退職所得の源泉徴収税を確定申告で還付する方法

3. 生命保険料の一部又は全部が費用になる

個人で生命保険料を支払っても、年間最大12万円までの所得控除しか認められません。
これに対して法人成りをすると、事業主を被保険者とする生命保険に加入することにより、最大12万円という制限は無く、その保険料の一部又は全部が法人の費用となります。
なお、法人で生命保険に加入する場合には、その被保険者は事業主以外の方(親族である役員だけでなく、従業員も含めて)とすることも可能です。

〈参考〉年末調整|生命保険料控除の計算方法を徹底解説!計算例3選付き

4. 社宅が費用になる

個人の場合には、自宅の家賃を必要経費とすることは認められません。
これに対して法人成りをすると、法人名義で事業主の自宅を借りることにより、社宅としてその家賃を法人の費用とすることができます。
また、法人名義で購入することも可能です。
この場合、事業主は社宅家賃の一部を負担する必要がありますが、ご自身で借りたり購入するよりは安価な金額で済ませることができます。

5. 税率が一定(比例税率)である

個人の場合には、その所得が高くなるに従って税率も高くなる「累進税率」となります。
これに対して法人成りをすると、法人税は原則として一定(中小法人の場合には軽減税率あり)である「比例税率」となります。
  
【株式会社の所得に対する法人税率】
平成27年4月1日以後に開始する事業年度の場合
 ・原則 … 23.9%
 ・中小法人の軽減税率 … 所得のうち年800万円以下の部分に対しては15%
              800万円を超える部分に対しては、原則通り23.9%

【中小法人とは?】
資本金の額又は出資金の額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないものを言います。
但し、大企業の子会社など一定の法人は除きます。

2)法人成りの5大デメリット

法人成りのデメリットは、主に以下の5つです。

1. 社会保険の加入義務がある

個人事業の場合には、社会保険の適用業種を行っていても、常時使用する従業員が5人未満であれば強制適用事業所に該当しません。
これに対して法人成りをすると、従業員を雇っていなくても、報酬を受けている役員が1人でもいれば、その法人は強制適用事業所に該当します。
社会保険の適用事業所に該当すると、役員や従業員に対する社会保険料の半分は法人負担となりますので、費用負担が増加することになります。

2. お金を自由に使えない

個人事業の場合には、例え事業用に開設した口座のお金であっても、事業以外の私的なものに使うことができます。必要経費にはなりませんが、後で返済する義務はありません。

これに対して法人成りをすると、例え事業主であっても、法人のお金を私的なものに使うことはできません。もし使ってしまった場合には、事業主に対する給与又は貸付金として扱われ、所得税が課されたり、返済義務を負うことになります。

3. 接待交際費が全額費用にならない場合がある

個人事業の場合には、事業に関連して支払う接待交際費は全て必要経費となります。

これに対して法人成りをすると、一定の金額までしか費用として認められず、それを超える部分の金額は費用となりません。

なお、資本金が1億円以下の法人の場合、費用として認められる限度額は、
 ・年800万円
 ・接待飲食費の額の50%相当額
のいずれか多い金額となります。

4. 赤字でも納付する税金(均等割)の負担がある

住民税のことになりますが、赤字であっても課される税金(住民税の均等割)があります。個人にもありますが、法人はその金額が大きく(最低でも7万円)なります。

5. 手間が増える

個人・法人ともに確定申告は必要ですが、その申告の際に提出する書類に関しては、法人の方が圧倒的に多くなります。申告書の添付書類も多くなりますし、申告書以外でも勘定科目内訳書や法人事業概況書など、個人の申告には必要とされないものがあります。

申告以外でも、役員の任期満了に伴い登記が必要であったり、定款を変更する度に費用が発生したりと、手間と共に費用も増えることになります。

3)法人成りを節税に活かす5つのポイント

これまでメリットとデメリットを簡単に紹介してきましたが、これらを勘案したうえで、実際に節税に活かすためポイントを5つ紹介します。

1. 所得を分散させる

法人成りをすると、事業主も法人から給与(役員報酬)を受け取ることになります。
しかし、1人で多くの給与を受け取ってしまうと所得が高くなり、結果として個人事業のときと所得税の負担があまり変わらないことになってしまいます。そこで、役員にした親族(配偶者や子、両親など)に給与を支給し、所得を分散させます。所得税は累進税率(所得に応じて高くなる税率)であるということは、反対に言うと1人1人の所得を低くすることによって税負担も減ることになります。

また、法人の利益のほとんどを給与として支給するだけではなく、個人の所得によっては、敢えて法人に留保することも一つの手段です。個人の課税所得のうち900万円を超える部分は最低43%(所得税・住民税合計)であることを考えれば、法人税の実効税率(中小法人の年800万円以下の所得部分)を約25%と考えても、税率差を活かした節税が可能です。

2. 資本金で税制優遇を受ける

個人法人の資本金で税務上の取扱が異なるケースが多々あります。

【資本金が1億円未満の場合】
 ・法人税において軽減税率の適用があります。(一定の法人を除く)
 ・事業税において外形標準課税の対象外となります。
 ・その他、法人税において各種の優遇税制を受けることができます。

【資本金が3千万円未満の場合】
 ・法人税における中小法人の優遇税制のうち、更に有利なものがあります。

【資本金1千万円未満の場合】
 ・消費税において、原則として設立から2年間は納税義務がありません。1千万円だと設立初年度から課税事業者となりますので、注意して下さい。

以上を考えると、特段の事情が無い限りは、設立当初の資本金を1千万円より少なくする方が得策です。
初めは個人事業で始めて、消費税の課税事業者となるタイミングで法人成りを検討するのも良いでしょう。

3. 個人で自由に使えるお金を増やす

給与などの収入から社会保険料や税金を差し引いたものを「可処分所得」といいます。
そしてこの「可処分所得」から「消費支出」(生活費や教育費など)を差し引いたものが「貯蓄」となるわけですが、この「貯蓄」に回せるお金というのは「自由に使えるお金」とも言えます。

この「自由に使えるお金」を増やす方法として収入を増やす(給与を増やす)ことはすぐに思いつきますが、支出(消費支出)を減らすことも一つの方法です。
そしてこの支出を減らす方法の代表が、法人名義による社宅の活用と言えます。

4. 老後資金は法人で準備する

法人では事業主に対する退職金も費用となります。また、その退職金の準備として生命保険に加入すると、その保険料の一部又は全部を費用とすることができます。

個人の場合であれば、老後資金は基本的に税金を支払った後のお金で準備する必要がありますが、法人では費用計上しながら(つまり、税金を支払う前のお金で)老後の資金(将来の退職金)を積み立てることができるということになります。
このことを考えると、老後の資金は個人で準備するよりも法人でした方が税金の面で明らかに有利と言えます。

5. 長期的な視点で考える

法人成りを検討する場合には、直近のことで判断せず、長期的な視点でメリット・デメリットを考えるようにするのが重要です。

法人成りをするタイミングとしては、
 ・消費税の課税事業者になる
 ・自宅を購入したい(社宅にしたい)
 ・老後資金(退職金)を積み立てたい
 ・従業員が増えてきたので社会保険に加入する
 ・個人の所得が900万円を超えてきた(所得税・住民税合わせて税率は43%)
などが挙げられます。

しかし、
 ・今は教育費がかかり、通帳から自由にお金を引き出したい
 ・あと数年で廃業するつもり
 ・老後資金は十分に準備できている
ような場合であれば、個人事業を継続する方がメリットがあるかもしれません。

4)まとめ

いかがでしたでしょうか。同じ事業を行うにしても、個人事業(所得税)と法人(法人税)では異なる点が多々あります。実際に法人成りを検討される場合には、具体的な数字を基にシミュレーションを行ったうえで決断されることをオススメします。上手に節税して、より豊かな人生をお送り下さい。

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この記事は、武久税理士事務所 武久 国壽様に寄稿いただきました。
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目次

  1. 個人経営主と法人のメリットを比較
  2. 会社の種類は?4つの形態の違いを比較
  3. 新会社法は会社が守るべきルール
  4. 会社は6万円の費用で設立できる
  5. 最短時間で会社を設立するための流れとは?
  6. 会社設立の際に決めるべき5つのこと
  7. 定款の作り方とは?定款は会社のルール集
  8. 電子定款の作成手順を完全解説
  9. オンラインで電子定款を送信してみよう
  10. 紙で行う定款作成・認証方法まとめ
  11. これで完了、登記の手順
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