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2015年09月18日(金)

出口戦略としてのIPO実現ガイド

経営ハッカー編集部
出口戦略としてのIPO実現ガイド

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IPO(Initial Public Offer)って何?

IPOという言葉を聞いたことがある方も多いかと思います。IPOとは「新規株式公開」、要は株式市場で自社の株式を売買できるようにすることです。一般に、投資家と呼ばれる方々が売買する株式は、全てこのIPOが実施された株式となります。

多くのHP等で株式を売買するサイド(投資家サイド)からみたIPOは説明されていますが、IPOを実施する側、つまり企業側からの情報はあまり多くありません。それは、このIPOというプロセスが、会社幹部及び本社機能、そして、証券会社・市場の自主規制法人・監査法人と限られた人々によって実行されるため、一般に広く認知されていないからだといえます。

そこで、今回はわかっているようで知らなかったIPO実施のメリット・デメリットや上場までの流れについて説明していきたいと思います。

【目次】 1)IPOのメリット・デメリット 2)上場(IPO)までのスケジュールとタスク 3)まとめ

 

1)IPOのメリット・デメリット

以下に主なカテゴリ別のメリット・デメリットを列挙します。 article-1 一番のメリットは株式発行による資金調達であり、一番のデメリットは上場維持に要するコストです。一般に上場を維持するには億単位での追加費用を加味しても、利益の出る体質・ビジネス構築が必要と言われています。

上記メリット・デメリットを比較考慮し、事業成長のためにIPOが必要、と判断した場合、実施に向けた準備に入ることが必要です。

2)上場(IPO)までのスケジュールとタスク

さて、スケジュールを説明する前に、大前提として上場するためにはどうしたらいいのでしょうか?証券市場に上場してもいいと言ってもらう必要があり、そのためには証券市場の要求する基準を満たす会社にならなければなりません。証券市場から求められるものを理解した上で、どのようなスケジュール/タスクが生じるのか考えていきます。

<そもそも上場するためには?>

そもそも証券市場から上場承認を受けるためには、①形式基準・②実質基準と呼ばれる2種類の基準を満たす必要があります。以下が、市場別形式基準になります。形式基準は数値化されており、非常に明確です。 article-2

(参照:東京証券取引所HP

<②実質基準を満たすためには?>

実質基準とは、その名の通り、IPO会社が証券市場に上場する企業として適当であるか否かを判断する基準となっており、明確な数値基準はありません。代わりに証券会社の引受審査部(市場への推薦状提出用)や上場市場の自主規制法人(上場の是非を決める審査)等による審査が実施され、基準を満たす会社と判断された場合、晴れて上場が認められます。

では、具体的に要求される事項(概念)は、どのようなものか東証マザーズ市場を例にとって見ていきます。 article-3article-4article-5 非常に多くのことが規定されていますが、趣旨は一般の株主・投資家が安心・安全に投資ができるよう、上場企業に適切な事業運営及び投資判断に必要な情報を適時・適切に開示させることにあります。また、上場企業として関連する法令を遵守し、ステークホルダーに迷惑をかけないことも当然必要となります。

では、実際にIPO準備に入る場合、全体スケジュールは以下のイメージとなります。 article-6

(引用:東京証券取引所HP

上場準備の期間というのは会社のビジネスや管理状況等により様々であり、一概に何年要するというものではありませんが、以下の要件を考慮する必要があり、最低2年間は必要と言えます。

 ・証券会社:1年以上の管理体制等の運用実績  ・監査法人:2会計期間(基本的に2年間)の監査証明

会社によっては、毎年直前期を繰り返してしまう会社も存在します。IPOは新規事業と同様で、成長していく企業の中(毎年変わる環境)でその時々の最適解を探していくプロジェクトと言えます。そのため、会社によっては永遠に同じところをループすることもありうるのです。

さて、上述の実質基準が満たされているかどうかを確認することが主目的でもあり、各社IPO準備を始める前に“ショートレビュー”と呼ばれる概括的な問題点調査を証券会社や監査法人に実施してもらうことになります。

このショートレビューで発見された問題点を、各社の実情に合わせた形で上場企業に適した形に修正していくプロセスことがIPO準備の主となります。(当然並行して事業の拡大は必要です!) article-7

まとめ

IPO実施までの大枠を掴んでいただけましたでしょうか?

タイトルにも書いたとおり、IPOはどこまでいっても目的ではなく、事業の成長や創業者の相続対策等その他の目的を達成するための手段の一つでしかありません。ただ、IPO準備により会社のビジネス安定性や事業の見える化は進むものと考えています。

過度な期待も無用な不安も抱かず、IPOが会社のためになると思われたら、ぜひ小さな一歩でもいいので進みだすことです。

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