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2016年07月19日(火)

会計の専門家が体験した儲けるために役立つ会計の勉強方法~マネジメントゲームのススメ・前編~

経営ハッカー編集部
会計の専門家が体験した儲けるために役立つ会計の勉強方法~マネジメントゲームのススメ・前編~

マネジメントゲーム

会計の勉強方法を知らないビジネスパーソン

ロングセラー本『稲森和夫の実学~経営と会計~』に代表されるように、会計の重要性は幅広く認識されています。ところが、会計を本当に理解しているビジネスパーソンは少ないです。会計の知識で税理士との決定的な差は勉強時間ではなく、実は学ぶ方にあります。その穴を埋めるのがマネジメントゲームです。

会計の正しい勉強方法とは?

会計は何のために存在すると思いますか? 「経営に役立てるため」とおっしゃるビジネスパーソンは多いです。しかし、本当に会計を経営に活かしきれず、もがき苦しんでいるのが実態です。その証拠に「分かりやすい決算書の読み方」の類いの本が次々と出版されています。

実際に社内の書庫には古く黄ばんでいる会計関係の書籍が埃(ほこり)をかぶっています。中には経理担当者向けの勘定科目の解説書まで置いてありました。これらの現実から読み取れるメッセージは3つあります。

  • 会計を経営に活かそうと熱心であったこと
  • 勘定科目の解説書が象徴するように経営者が的外れな勉強をしていること
  • 会計を学ぶことに苦痛を感じて挫折したこと

不本意ながら、会計を確定申告で税金を計算するための手段にしか活用できていません。

上記のビジネスパーソンと会計の重要性を熟知している税理士とでは、勉強の仕方に決定的な差があります。それは体感して習得してきたかどうかです。税理士の場合は簿記検定で、手元資金から事業展開した結果、いくら儲けてどのくらい財産が残るかというプロセスを問われるので、ペンと電卓を使って解いてきました。中には「問題を解くのが楽しい」と言う人までいます。私自身も税理士の簿記論という科目で、プロセスの理解度を試される預金残高から売上高を推定する問題が好きでした。

このように税理士の勉強方法は、 「体感=楽しさ」 の側面があります。ビジネスパーソンは楽しさがないために挫折して、会計に苦手意識を持つのはもったいない話です。

楽しく会計が学べる“マネジメントゲーム”とは?

会計の勉強を体感して、苦手意識をなくす方法があります。それが会計の切り口からの経営をシミュレーションするマネジメントゲームです。参加者には会計を知らない・知識に乏しいと自覚される方がたくさんいます。そして、何度も参加する常連の方が多いです。大阪市などの遠隔地から東京都へ出向いて参加するビジネスパーソンまでいます。

マネジメントゲームのルールは次のとおりです。

  1. 参加メンバーを決めます。
  2. 手元資金から開業の準備をします。そのために人材の採用、商品や材料の仕入、設備投資からのスタートです
  3. 入札制度で販売します。メンバーの中で最安値を提示した人から買い取るルールです。
  4. ゲームの進行中にペンと電卓で入出金を出納帳に記入します。
  5. ゲーム終了後に決算で業績を計算します。

以上のサイクルを何期か繰り返します。

このゲームで最初に学習することは利益の概念です。

「利益=収入-支出」 ではないことがハッキリ分かります。いくら売り上げで収入を獲得しても、必ず商品・材料などの原価を先に支出しているからです。つまり、収入金額が手元に残るわけではありません。

マネジメントゲームで教わる利益とは「利益=粗利益-固定費」です。

さらに粗利益とは「粗利益=売上高-変動費」です。

家計に例えると次のようになります。

  1. 給料=売上高
  2. 天引き分=変動費
  3. 手取り金額=粗利益
  4. 生活費=固定費
  5. 貯金(可処分所得)=利益

それでは、会社に当てはめましょう。変動費とは原価であり、販売数量に比例して増えます。一方、固定費は販売数量に関係なく支出する定額費用です。たとえば、給料や家賃などが典型的な例だといえます。

ところが家計と会社では異なる点があります。それは会計の利益が可処分所得のように現金預金とは限らない点です。換金能力のあるものは利益を構成する資産になります。販売する前提の在庫は分かりやすい例です。設備投資をした分も間接的でも自己資金にするポテンシャルがあるので、会計では在庫と同じ扱いになります。マネジメントゲームの体験で利益は計上できましたが、途中で自己資金が底を尽きて仕入ができません。その結果、決算は赤字に陥りました。

つまり、手元資金→仕入・設備投資→売上→入金のサイクルをトータルで考えないとマネジメントゲームで勝つことはできません。

事業経営において借金は悪ではない

マネジメントゲームは利益の追求と自己資金残高を同時にコントロールしなければなりません。そのためには、まず利益を稼ぐのが必要条件になります。

そこで、どこに手を打つべきかを戦略的に考えなければなりません。具体的には「利益感度分析」という手法を用います。特徴なのは利益の構造を4つの要素に分けて、手を打ちやすくするところです。

  1. 売上単価
  2. 販売数量
  3. 仕入単価
  4. 固定費

それでは、売上単価と販売数量が10%ダウン、仕入単価と固定費が10%アップした場合に利益の減少額を検討しましょう。同じ10%でも結果が異なることが分かります。

1、損益要素の変化

現状 売上単価 販売数量 仕入単価 固定費
         10%ダウン          10%アップ
売上単価 10,000円 9,000円 10,000円 10,000円 10,000円
販売数量 10,000個 10,000個 9,000個 10,000個 10,000個
仕入単価 8,000円 8,000円 8,000円 8,800円 8,000円
固定費 10,000千円 10,000千円 10,000千円 10,000千円 11,000千円

 

2、利益の減少額                          (単位:千円)

現状 売上単価 販売数量 仕入単価 固定費
         10%ダウン          10%アップ
売上高 100,000 90,000 90,000 100,000 100,000
変動費 80,000 80,000 72,000 88,000 80,000
粗利益 20,000 10,000 18,000 12,000 20,000
固定費 10,000 10,000 10,000 10,000 11,000
利益 10,000 0 8,000 2,000 9,000
利益の減少額 - 10,000 2,000 8,000 1,000

3、結論

利益に敏感なのはダウンした金額の大きい順から。売上単価10,000千円→仕入単価8,000千円→販売数量2,000千円→固定費1,000千円になります。結論から言えることは、安易な値引きが会社の首を絞める点です。

また、マネジメントゲームでは自己資金の不足を避けることができません。実はここから本では学ぶことができない要素があります。それは借金が気軽にできることです。しかも、マネジメントゲームのルールでは業績のよさに比例して、融資を受けられる金額が多くなります。現実の世界でも、会社の信用度により銀行から調達できる金額が変わるのと同じ理屈です。マネジメントゲームで講師から強制的に借金をさせられて抵抗感がありましたが、言うとおりにしなければ自己資金は途中でなくなっていたことを思い出します。

利益の出し方、借金を体感できるのがマネジメントゲームならではの魅力といえます。

会計の勉強は継続できるどうかがポイント 以上から経営と会計が密接に関係することが分かります。ビジネスパーソンが興味あるのは、会計の知識そのものよりも、いかに自己資金を多く残すかどうかのはずです。

ということは本で勉強しても、挫折するのは仕方がありません。マネジメントゲームには常連メンバーの多さから、継続するのに適した勉強方法といえます。ただし、これで会計が分かった気になっては困ります。まだ、この記事では全体の半分しか伝えていません。残りは中編に掲載します。

まとめ

前編では事業活動における自己資金の流れを中心に記事を書きました。利益は個人の可処分所得と違って自由に使えるとは限りません。あくまでも自己資金を残すための手段です。利益を稼ぐために借金が必要であることはマネジメントゲームでないと実感できません。そのような意味で実際に役立つ会計の勉強ができるツールです。

>> 中編はこちら >> 後編はこちら

TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。

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