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2020年08月14日(金)

【最新版】内部統制監査報告書の変更ポイントと注意点

経営ハッカー編集部
【最新版】内部統制監査報告書の変更ポイントと注意点

皆さんは、「内部統制監査報告書」という言葉を聞いたことはありますか。上場企業もしくはIPO準備中の企業の方であれば、一度は耳にしたことがあるかもしれません。

この書類は、監査法人が企業の作成した内部統制報告書を評価基準に沿って適切に作られたものかを監査し、その結果をまとめたものです。内部統制を進めるにあたり、必ず用意しなくてはいけない書類となります。

この記事では内部統制監査報告書の概要をはじめ、内容改訂の背景や企業側が意識したい変更点を中心にご紹介します。上場準備に向けて内部統制を意識し始めた時期だからこそ、知っておいて損はない情報です。

内部統制報告書とは?

内部統制監査報告書についてお話する前に、同報告書とセットで扱われる、内部統制報告書について簡単にご紹介します。内部統制報告書というのは、「財務報告に係る内部統制を1年間かけて評価した報告書」です。内容実施の証明として、公認会計士の監査を受けた上で提出する必要があります。金融庁のひな形に沿って作成し、書類枚数は一般的に1〜2枚程度の分量です。

内部統制報告書
(引用元:内部統制報告書を作成する際に必要な書類や記載項目  必要な記載事項https://keiei.freee.co.jp/articles/c0501672

 

内部統制報告書の提出先

提出先は金融庁です。年に一度、有価証券報告書に添付して提出します。

EDINET(開示書類等提出者のサイト)
https://submit.edinet-fsa.go.jp/

 

内部統制報告書の提出期限

上場企業は事業年度ごとに提出する必要があります。なお新規上場企業については、上場して最初の決算日から3カ月以内に提出しなければなりません。
 

IPO準備会社も作成対象

市場の活性化を目的とした新規上場に伴う負担の軽減として、「内部統制報告書」については上場後3年間は公認会計士による監査免除が選択可能です(※)。しかし報告書の作成が免除されたわけではないため、IPO準備会社においても準備は必要となります。

(※)ただし社会・経済的影響力の大きな新規上場企業(資本金が100億円以上又は負債総額が1,000億円以上を想定)は免除の対象外。

内部統制監査報告書とは?

今回のテーマである内部統制監査報告書というのは、企業が作成した内部統制報告書に対し「監査人の意見を記載した報告書」です。金融商品取引法によって、全ての上場企業に対し、内部統制報告書と内部統制監査報告書の公表が義務付けられました。
 

報告書作成にあたり、内部統制の評価基準に沿って内部統制報告書が適切に作成されているかを監査法人はチェックし、「無限定適正意見」「不適正意見」「限定付適正意見」「意見不表明」のいずれかで意見表明する必要があります。

 

内部統制監査報告書の改訂で何が変わる?

2019年9月に内部統制監査報告書の改訂に関する告知が金融庁からなされ、2020年3月決算から改訂版が適用されています。同報告書を作成するのは監査法人ですが、改訂概要や変更点を理解しておくだけでもきっと今後の仕事がスムーズに進めやすいはずです。

 

改訂の理由は「金融証券取引法の改正」

金融証券取引法の改正によって、財務諸表監査における監査報告書の記載区分等が改訂されました。それに伴い、記載を合わせるために内部統制監査報告書並びに実施基準についても改訂されたのです。なお監査基準の改訂によって義務付けられようになったのは、KAM (Key Audit Matters)と呼ばれる「監査上の主要な検討事項」の記載です。

 

内部統制監査報告書の改訂内容が適用される時期

内部統制監査報告書の改訂は基本的に2020年3月決算からの適用されます。

改訂基準及び改訂実施基準は、令和2(2020)年3月31日以後終了する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用する。

(引用元:金融庁 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)三 実施時期等 )https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20190904_naibutousei/1.pdf )
 

内部統制監査報告書の改訂によって企業が受ける影響

結論からいうと、監査を受ける企業自体は大きな影響を受けません。それは、内部統制監査報告書は監査法人が作成するものだからです。ただ、内部統制の意見区分の大幅な見直しが行われているため、報告書式が一部変更となっています。その点は担当者として把握しておく必要があります。

 

内部統制監査報告書の改訂内容

金融庁が公表している「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準 新旧対照表(案)」と照らし合わせながら主な変更点をご説明していきます。

 

変更点1:監査委員会の表現

変更前:監査役又は監査委員会
変更後:監査役、監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)

変更後の表現に合わせ、報告書中の監査役又は監査委員会という記載は全て「監査役等」に変わります。

(引用元:金融庁 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準 新旧対照表(案)P.1
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20190904_naibutousei/2.pdf

 

変更点2:内部統制監査報告書の記載区分

変更前:「内部統制監査の対象」、「経営者の責任」、「監査人の責任」、「監査人の意見」
変更後:「監査人の意見」、「意見の根拠」、「経営者及び監査役等の責任」、「監査人の責任」

記載区分の内容が大幅に変更されました。なお区分数に変わりはありません。

 

(引用元:金融庁 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準 新旧対照表(案)P.5
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20190904_naibutousei/2.pdf

 

変更点3:内部統制監査報告書の記載事項

「変更点2:内部統制監査報告書の記載区分」に併せ、記載事項が変更や新設、または一部削除されました。監査人の意見により重きを置いた仕様変更となっています。変更詳細については以下画像をご確認ください。





(引用元:金融庁 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準 新旧対照表(案)P.6-P.8
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20190904_naibutousei/2.pdf

 

変更点4:監査人の意見を表明する位置

変更前:別に区分を設けて記載
変更後:意見の根拠の区分に記載


(引用元:金融庁 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準 新旧対照表(案)P.9
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20190904_naibutousei/2.pdf

 

まとめ

IPOを準備している企業に向けて、監査法人が内部統制の結果を担保するために作成する内部統制監査報告書の概要と改訂内容を中心にご説明しました。改訂による変更点を把握しておき、監査法人の担当者とのコミュニケーションをより円滑に進めましょう。

 

なお、下記では、内部統制と業務効率化の両立についてバックオフィスが意識すべき4つのルールをご紹介しておりますのでご参考までにお使いください。

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