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2020年08月25日(火)

内部統制システムとは何か?分かりやすく簡単にご説明します

経営ハッカー編集部
内部統制システムとは何か?分かりやすく簡単にご説明します

内部統制を適切にかつ、法律的にに正しい形で進めるために「内部統制システム」を各社整えなくてはなりません。これは企業が内部統制を進めるにあたり、整備すべき体制です。

この記事では内部統制システムの概要を始め、導入メリットや整備に必要なこと、検討時の注意点を中心にご紹介します。内部統制には欠かせない要素のため、IPOに向けて準備を進める担当者には理解しておいてほしい内容です。

内部統制システムとは?

内部統制システムというのは、「財務書類の適正性を確保し、法令などに沿った形で円滑に業務を進めるため」の仕組みです。

内部統制を意識し始めた企業は、事業拡大・多店舗展開などから会社の器を強化する時期であったり、上場の準備を始めたことで会社自体が社会の公器になろうと変化していく段階だったりすると思います。

こうした自社の成長と適切な経営を両立するためにも、内部統制の目的である「業務の有効性及び効率性」、「財務報告の信用性」、「事業活動等に関わる法令等の遵守」、「資産の保全」といった4つの達成が欠かせません。

内部統制システムの構築は、これら4つの目的が法令等に沿った手順で適切に進められる上で必須となります。横領やリコールなど、社会的にあってはならない問題を予防する上でも重要です。

内部統制システムの整備とコーポレートガバナンスの関係

社会情勢の変化に併せ、内部統制システムの整備が進んだのはここ10年ほどの話になります。 そのきっかけとなったのが、2006年の会社法制定です。

1995年に起きた大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件などを始め、企業のガバナンスが問われる不祥事が相次いで起こりました。こうした現状を改善し、会社経営の健全性を確保するための一環として、内部統制システムの整備が会社法に定められたのです。

会社法の制定と同時期に、金融商品取引法でも内部統制報告制度(J-SOX)が定められました。この背景にあるのが、総合エネルギー会社のエンロンを始めとする米国で相次いだ大規模な粉飾決算事件です。これらの事件によって決算書に対する信頼性が失われ、それがきっかけとなり制定されました。

会社法と金融商品取引法に内部統制が組み込まれた背景については、内部統制システム導入における注意点で詳しく紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。

参考:内部統制システム導入における注意点
https://keiei.freee.co.jp/articles/c0501667

「会社法」「金融商品取引法」における内部統制の定義とその違い

2006年に「会社法」「金融商品取引法」でそれぞれ内部統制に関する定義がなされましたが、内部統制の対象となる会社とその範囲は異なります。

【会社法の場合】
会社:主に大会社
範囲:内部統制全体

【金融商品取引法の場合】
会社:主に上場会社

範囲:財務報告に関わる内部統制

ここで伝えたいのは、両法の内部体制をカバーできるような内部統制システムの構築が企業に求められている点です。制度整備が一方だけに偏らないよう、注意が必要となります。

 

会社法における目的

会社法上の内部統制システムでは、「子会社なども含めた会社組織における業務の適正化」を目的としています。実際に会社法においては、以下のように書かれています。

取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

(引用元:e-Gov 会社法 第362条4項6号
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086#2548

「法令及び定款に適合」「業務の適正」を確保するために、取締役会で内部統制システムの基本方針を決議するよう定められています。会社法における内部体制の概念は広範囲にわたるものであり、「財務報告に関わる内部統制」の整備も含め、網羅されるものと理解されています。

また会社法では、具体的な整備内容として「情報保存管理体制」「リスクマネジメント体制」などを含む9つの内容が挙げられています。項目の詳細説明については、内部統制システム導入における注意点で詳しくご紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。

参考:内部統制システム導入における注意点
https://keiei.freee.co.jp/articles/c0501667

 

金融商品取引法における目的

金融商品取引法では、主に財務統制の面から規制を行い、株主等に対する適切な情報開示を目的としています。実際に金融商品取引法においては、以下のように書かれています。

当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なもの

(引用元:e-Gov 金融商品取引法 第24条4項4号より必要箇所のみを一部抜粋
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000025

決算書の作成に欠かせない「財務報告に関わる内部統制」が適切に行われるよう、内部統制体制を整えることが定められています。なおこの範囲は、あくまでも自社の財務計算に関する体制に限定されています。

「大企業」には内部統制システムの構築義務がある

内部統制システムの構築は、全ての企業において必須ではありません。ただし、「資本金が5億円以上または負債の合計が200億円以上の大会社」に対しは内部統制システムの構築が義務化されています。

(参考:e-Gov 会社法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086#2548

内部統制システムを導入するメリット

内部統制システムを導入するメリットはいくつもありますが、特に大きいのは「業務の効率化」「法令違反の防止」「社外に向けたアピール」の3点です。

 

業務の効率化

内部統制システムの構築を通し、これまで属人的だった業務の進め方や組織独自のルールで進められていた運用方法などが見直されます。全社的に統一されたルールが構築され、明確な基準が設けられることにより、業務の効率化が期待できます。

 

法令違反の防止

横領やリコールなど、社会的にあってはならない法令違反を防止するためにも内部統制システムを導入することは重要です。工程ごとの責任や業務マニュアルが明確化され、監視体制が強化されます。

 

社外に安心安全をアピール

内部統制システムを整えることで、企業としての体制を整え、トラブル等も生じないように対策をしている印象が保たれます。社外に対し、安心安全な企業をアピールする一つの材料となるのです。

内部統制システム導入の注意点とは?

では、実際に導入するにあたり何を注意する必要があるのでしょうか。ここでは大きく3点をご説明します。

 

会社法と照らし合わせ、整備度合いを確認する

1つ目は、内部統制の内容が会社法上と照らし合わせたとき、項目が十分に満たされているかどうかです。内部統制システムは大企業において導入が義務化されていますが、整備のレベルについては法律に具体的な明記はされていません。業種や企業規模ごとに内部統制システムの内容やそのレベルが異なるからこそ、自分たちでひとつひとつ検討、判断しながら整備することが求められます

 

内部統制におけるPDCAサイクルを確認する仕組み作り

2つ目は、整備した内部統制が、実際に継続的に運用していく仕組みを作ることです。会社を取り巻く環境や会社の組織・業務などが変化することで、それまでの内部統制システムでは適合しなくなる場合があります。整備して終わりにならないよう、社内の監査部門、あるいは監査役により内部統制システムが適切に整備・運用されているのかを、継続的にチェックする体制を整えましょう。

 

問題が発見された場合の対処法を把握

3つ目は、問題が発生した場合の対処方法を決めておくことです。大まかな流れは「リスクの重要性を判断」「リスクに対する対応を決定」です。問題が生じるとすぐに改善をしたくなりますが、リスクの可能性と影響度合いから重要性を判断します。

その重要性に応じて、どのように判断するのかを決定します。あまり重要ではない問題の場合、コストと照らし合わせて放置するという選択肢もありえます。特に初めて内部統制システムを検討する場合には、重要な問題が発見する場合もあります。その場合には、部門規模ではなく、経営層も巻き込み、社として改善を図るようにしましょう。

まとめ

内部統制システムを検討、もしくは準備中の企業に向け、導入目的から注意点までを一気に解説しました。社内で運用されている内部統制と照らし合わせることで、自社とマッチするシステム導入を目指しましょう。

 

なお、下記では、内部統制と業務効率化の両立についてバックオフィスが意識すべき4つのルールをご紹介しておりますのでご参考までにお使いください。

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