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2019年08月22日(木)

若者へのSNSマーケティングはどうする?~ネクスター代表細田悠巨氏&27万人のフォロワーをもつインスタグラマー伊藤実祐氏に聞く

経営ハッカー編集部
若者へのSNSマーケティングはどうする?~ネクスター代表細田悠巨氏&27万人のフォロワーをもつインスタグラマー伊藤実祐氏に聞く

10代、20代の若者の間ではインスタグラムや、Twitterが日常に溶け込んでおり、マーケティングもSNSを意識しないといけないことはよくわかる。しかし、具体的にどうするかというとやり方はよくわからない。そこで、今回若者に特化したマーケティング会社ネクスター株式会社代表取締役細田氏と、27万人のフォロワーを持つ人気インスタグラマーの伊藤氏に話を聞いた。

SNSは人がリアル媒体

-まず、はじめにネクスターがどのような事業を行っているのかお聞かせください

細田:私どもは、若年層に特化したマーケティング事業を行っています。その範囲は「SNSマーケティング事業」「スチューデントマーケティング事業」「インフルエンサーマーケティング事業」といった分野です。設立して今期で8期目を向かえ、スタッフの平均年齢も28歳台と若く、子供のころからインターネットが身近にあり、使いこなしている「デジタルネイティブ世代」で構成されています。
 
もともと、私は学生の時に某エナジードリンクのブランディング活動や、公的機関の若者向けマーケティング活動に関わらせていただいた経験があります。当社を創業してからもその経験や資産を活かしています。私自身も「デジタルネイティブ世代」であり、SNSが当たり前の中で育ってきており、私どもの強みとなっています。
 
今、WEBの普及、さらにはSNSの普及により「個人」が気軽に情報発信できる時代になりました。SNSを活用して情報発信するひとりひとりの個人を私どもは「リアル媒体」と呼称しています。従来のテレビ、新聞、雑誌といったマス媒体に対して個人自体がメディアになる、いわば「リアル媒体」という存在が価値を持ってきているのです。

-リアル媒体の流れが出てきている背景は何でしょうか?

細田:20年くらい前からブログで情報発信をする「ブロガー」が登場していますが、SNSの時代になり、もっと手軽に個人が自己表現ができる時代になってきたことは言うまでもありません。SNSも会員型(クローズド型)のmixiから、オープン型と呼ばれるfacebook、インスタグラム、Twitter等が上陸し、普及することで機会が増え、情報発信のハードルを下げる効果を果たしてきました。ネクスターでは、部活、サークル、ゼミ、研究室、学生団体など学生が所属する1,200以上の団体31,000人以上の所属学生とリレーションを有しており、これらの「リアル媒体」をリソースとして、効果的な情報発信や情報収集を可能にしています。
 
学生自身も、情報発信は日常的にやっていることなので、自然な活動として学生のインスタグラムへのポスト発信、ストーリー発信やTwitterへのツイート、リツイートの促進、学生特化のサンプリング、学生集客支援、アンケート、グループインタビューなどに繋がっているということです。私どもはこのような「リアル媒体」をソリューションとして「リアル媒体ビジネス」を行っているとも言えます。
 
また、インスタグラムなどのフォロワー数の多いインフルエンサーと連携し、企業とインフルエンサーとのコラボをサポートしています。サポートするインフルエンサーの累計フォロワー数は600万人を超えています。

 -伊藤実祐さんとの連携もそういった中から生まれたと?

細田:はい、タレントは除いて27万人のフォロワー数を持つ日本トップクラスのインスタグラマー、みゆちゃい(伊藤実祐)も私どもがサポートさせていただいています。SNSの中でも特に個人の媒体として、世界的にも主流なのはインスタグラムであると考えていますが、みゆちゃい(伊藤実祐、以下みゆちゃい)についてはこのインスタグラムの世界において、ステルスマーケティングではない、まっとうな取り組みでフォロワーを増やしインフルエンサーとして伸びてきている日本のトップクラスのインスタグラマーと捉えています。
 
また、私どもは企業のSNSの運営管理(アカウント運用)そのものを、クライアント様と一緒に行っております。企業の担当者はどのように自社アカウントのSNSを運営するか、お客様とコミュニケーションを取るかといった点で、戸惑われている場合も多いので、我々が管理を支援しています。

そもそもSNSマーケティングはWebマーケティングとどこが違うのか?

-若者マーケティングはSNSと言われていますが、どういう特徴があるのでしょうか?

細田:「SNSマーケティング」という用語は、かなり一般的になってきたと思われますが、
一般の経営者、担当者がざっくりと捉えている「WEBマーケティング」というイメージでは内容を正確にとらえることができません。WEBの中の「SNS」というカテゴリーの中で、取り組まれるマーケティング手法が「SNSマーケティング」であり、インスタグラムやTwitterの機能や特性を熟知して効果的に情報発信等を行っていくマーケティング手法と位置付けられます。既存のコーポレートサイトやブログといったWEBの機能と異なるものであるという理解が重要になります。
 
若者はWEB、SNSを使いこなし、そこで発信されている情報の特性や意図を見抜きます。単にお金をかけただけの「広告」では、若者に響くことはなく、むしろ逆効果であることもあります。SNSも様々な種類があり、それぞれの特性と機能を熟知して活用することが大前提です。
 
もはやFacebookを若者は使わないという話がありますが、確かにその傾向にあります。ただ若者もFacebookのアカウントは有しています。Facebookは公的なアカウントというイメージが強く、いわば「履歴書」「身分証」のような位置づけになっています。Facebookで若者向けにプロモーションを行う場合、若者がどのようにFacebookをとらえているか踏まえることが必要です。
 
現在、若者がエンターテイメント的要素を始め、気楽に使うのはインスタグラムであり、SNSマーケティングでは、インスタグラム、Twitter、YouTubeが主戦場になります。

インスタグラムを使ったマーケティングは実際にどのように行うのか?

-企業に対してどのような支援をしているのでしょうか?

細田:最近は企業によってはインスタグラムそのものをホームページとして活用するところもあり、SNS活用への認知は企業経営者、担当者間で高まっています。私どもが企業のSNSを担当者の方と行う場合、その企業がSNSを運営する目的に則ってKPI設定を行います。企業の目的は商品のプロモーションであったり、人材採用の促進であったりと様々ですので、KPIも企業によって異なります。
 
例えば「コンプレックス商材」と呼ばれる美容整形業界において、美容整形の企業のSNS運営を想定すると、KPIは単純にフォロワー数や「いいね!」の獲得数を増やすことにはなりません。美容整形に関心のある方は、友人・知人に自分が美容整形に関心を持っていることを知られたくない傾向が強いので、別のKPIを設定することが重要になります。この場合は、インスタグラムのインサイトという項目を使い、閲覧者がどれだけ「プロフィール」を見たか、「情報をタップ」したか、「保存(お気にいり)」したかを把握するのがポイントです。具体的には「保存」された数をKPI設定します。このように私どもはSNS運営を行わせていただく場合は、その企業の商品や目的などを研究し、それぞれのKPI設定を行っており、意味のあるマーケティング活動を支援しています。

フォロワーに支持されるインスタグラマーとは?

-インスタグラマーになった背景は?

伊藤:もともと私は病院で働きながら、サロンモデルをやっていました。2015年くらいから「せっかくきれいに撮っていただいた画像が埋もれていくのはもったいない」と思い、この撮影していただいた画像をインスタグラムにアップしはじめたのが、きっかけです。サロンモデルの画像やその他の画像をアップしていく中でフォロワーが増えていきました。

-フォロワーが27万人に増えているのはなぜでしょう?

細田:まず、SNSマーケティング的な観点で説明をすると、先述のような写真が多かったため、フォロワーは最初男性が多かったのです。実際インスタグラマーのフォロワーは異性が多いことが一般的で(女性であれば男性、男性であれば女性)、アパレルショップのカリスマ女性店員のフォロワーでも男性が5割ほどという例もあります。しかし伊藤実祐の場合は現在、女性のフォロワーが7割を占めています。27万人のフォロワーのうち7割を女性が占めているインスタグラマーは日本にほとんどいないのではないかと思います。
 
伊藤:なぜそうなったのかというと、私自身はコンプレックスが沢山あります。そのようなネガティブな面もさらけ出すことによって、同じ悩みを持つ女性に共感していただき女性のフォローが徐々に増えていきました。
 
私は、あくまでも自分が気に入ったもの、使ってよかったものを紹介することを絶対的なポリシーとしており、これが女性フォロワーの共感・支持をいただいているのだと思います。このため、様々な企業様から商品の紹介を依頼されるのですが、このポリシーは変えることなく続けていくつもりです。

-実祐さんのインスタグラマーとしての次の展開は?

伊藤:実は密かに大きな計画を立ててるのですが…秘密です。(笑)

-楽しみにしていますね!(笑)

企業が上手く、SNSやインスタグラマーを活用している事例や課題

-企業の上手い活用例にはどのようなものがありますか?

細田:NHKやシャープでは、Twitterをうまく活用していると感じます。大組織・大企業とは思えない「自虐ネタ」がアップされていて、発信される情報が身近に感じられたり共感を得たりしていると思われます。このような手法は、おすすめとは思いますが、企業によってはコンプラや企業ポリシーによって実際には簡単には取り組めないことでもあるとは思います。
 
逆によくあるFacebookのタイムラインのニュースフィード内の広告などは、いかにも広告然としてしまいますので注意が必要です。インスタグラマーの活用においても、そのインスタグラマーの特性、フォロワーの属性を考慮して起用することが重要です。著名インスタグラマーだからと言ってコストをかけて商品紹介を行っても逆効果となることが懸念されます。

-SNSマーケティングの課題はなんでしょうか?

細田:多くのインスタグラマーが登場し、個人ビジネス化している状況があります。海外、特に米国はじめとする英語圏においてはフォロワー100万人以上がインスタグラマーと定義されるのに対して日本においては、タレント・芸能人のカテゴリーを別とすると、そのような人数のフォロワーを獲得しているインスタグラマーはいません。これは日本語圏が対象となりフォロワーの母数に限りがあるという実情があります。日本は世界的にみればニッチな市場であると見られています。そのような中、国内では現状10万人以上のフォロワーを獲得しているインスタグラマーをインフルエンサーとして位置づけています。また1万人から10万までのフォロワーをもつ人はマイクロインフルエンサー、1万人以下をナノインフルエンサーとしています。
 
しかし、10万人以上のフォロワーがいるインフルエンサーであっても、インスタグラマーだけで生活がなりたっている人は限られます。一方、ナノインフルエンサーであっても当該コミュニティに影響力のある存在であったりします。そのような多様なインフルエンサーを取りまとめ、当社ではSNSマーケティング事業を展開しておりますが、インフルエンサーにとっても私どものような特化型のエージェントが必要と考えています。瞬間的にフォロワーを増やしてもだめで、インスタグラマーとしての一貫性が保てるような、エージェント側でのコンサルティングが必要です。また、企業にとってはインスタグラム、Twitter、YouTube等のそれぞれのSNSの特性に沿ってアカウントごとのマネジメントを行うことも一層必要になります。
 
SNSの登場により、企業のプロダクトのイメージを表現する「モデル」の定義が拡張してきています。プロダクションに所属して芸能界などで活躍するモデルだけでなく、インスタグラマーも広い意味で「モデル」としてとらえられるようになりました。これにともない今後は従来の芸能プロダクションのような伝統的な形態ではなくSNS時代に即したエージェントも確立されていくと思います。
 
10代、20代のデジタルネイティブ世代も年齢を重ねていきます。やがて全世代が「デジタルネイティブ」になっていくでしょう。したがって今後ますます、SNSマーケティングも若者文化に即したものだけでなくマーケティング活動全般にとって必須のものになっていきます。私どものようなSNSマーケティングの専門家集団の役割はますます重要になっていくと考えています。

<プロフィール>
細田 悠巨(ほそだ はるおみ)

 
平成元年 5月17日生まれ 東京都出身
学生時代に、ネクスタ―株式会社を創業、代表取締役社長に就任。位置情報サービスのスタートアップから、ピポッドし当時ライスワークとしていた若者マーケティングに本腰を入れる。
 
伊藤 実祐(いとう みゆ)
 
平成四年 6月1日生まれ 大阪府出身
医療事務に勤めながら趣味の一環でサロンモデルを始める(当時 フォロワー1,000人程)
細田とはサロンモデルとして東京を行き来しているタイミングで知り合い、
互いの母親の名前が「タカコ」というところから意気投合をする。
様々な相談をし合い、二年半前に東京へ上京する。
 
現在では、フォロワー27万人と、国内トップクラスのインスタグラマーとして活躍。
またインフルエンサー連合TOKYO creatistの執行役員CCOに就任した。

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