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2019年11月22日(金)

バチェラー2から「ハイブリッドサラリーマン」へ。ハイブリッドサラリーマン1万人化構想を小柳津林太郎さんに聞く

経営ハッカー編集部
バチェラー2から「ハイブリッドサラリーマン」へ。ハイブリッドサラリーマン1万人化構想を小柳津林太郎さんに聞く

婚活サバイバル番組バチェラー・シーズン2の主役という印象が強い小柳津林太郎さん。だが、最近は「ハイブリッドサラリーマン」へと次のステージに進化を遂げていた。そして、ハイブリッドな8名が持ち回りで運営するサロン「ハイブリッドサラリーマンズクラブ」を2019年8月に立ちあげた。
 
折しも組織とワーカーの関係がゆらぐ現在、経営サイドが持ち出す働き方改革だけでなく、双方がどのような関係を結びながら、イノベーションを起こすことができるのかが求められている。そのひとつの回答がワーカーの側からの積極的なアプローチだ。企業内スタートアップやデュアルワーク、ビジネス以外でも活動するパラレルな働き方が広がる中、「ハイブリッドサラリーマンズクラブ」は、何を目指しているのか?
 
そもそも、パラレルではなく、ハイブリッドにこだわる理由は何か?また、この昭和の響きさえある「サラリーマン」という言葉をあえて持ち出すには、何か狙いあるに違いない。
 
バチェラー2の経験を経て、新境地を拓く小柳津さんに話を聞いた。

「ハイブリッドサラリーマン」とは?

―「ハイブリッドサラリーマン」を理解するためには、今どんな活動をされているのか聞くのが早そうです。まずは、ご自身の現在について伺わせてください。

現在、業務委託という立場で株式会社トレンダーズともう1社の顧問を務めています。サイバーエージェントの13年間で培ったノウハウ、ネットワークを駆使して、会社のバリューをあげるのがぼくのミッションです。こちらの活動に週2日くらいをあてています。また、バチェラー・ジャパン出演のおかげで、依頼が増えた講演会やメディア出演のほか、エンジェル投資家として4社に投資していますので、その支援も行っています。そして、もちろんこの「ハイブリッドサラリーマンズクラブ」の運営業務。これらが全体の活動の中の半分ですね。あとの半分は、最近立ち上げたモノとコトをプロデュースする事業会社で、自分のプロデュース商品や他のインフルエンサーのプロデュース商品のサポートも行っています。

―小柳津さんは、ご自身では「ハイブリッドサラリーマン」をどう定義していますか?

組織人として本業をもちつつ、「アンド」で2つ、3つのわらじを履いていて、その2つめ、3つめが1つめの本業にシナジーが生まれるように持っていこうとする人たちのことを「ハイブリッドサラリーマン」と定義しています。もちろん、男性だけではなく女性も含むので、実質はハイブリッドビジネスパーソンですが、サラリーマンが持つ雇用者としての鮮明なイメージをブランディングしたいという想いもありました。さらに、サラリーマンの方が語呂がいい。
 
実は、「バチェラー・ジャパン」が終了した頃、ツイッターなどで自分が「ハイブリッドサラリーマン」と呼ばれているのを知り、造語としてキャッチ―だな、と思ったのも命名の理由です。

―最近、企業が社員の副業を解禁したことで、パラレルワーカーが増えていますが、ハイブリッドサラリーマンはどこが違うのでしょう。

副業は自分の持っている能力の切り売りなので、多少の学びがあっても物凄い成長はない。どちらかという収入目的ですよね。ハイブリッドサラリーマンが提唱しているのは、補てんという意味の「副業」ではなく、複数の「複業」です。本業があり、「アンド」でいくつかのことを行いますが、それは単なるアルバイトではないものです。NPO法人で何かしら社会にコミットする、すごく好きな趣味に没頭する、何かのマスターになるなど。そうやって自分のタグを2つ、3つと増やしていき、それぞれのタグが強くなり、掛け合わせていくことで新しい価値を生み出す、という考え方です。

―小柳津さんのタグは相当多そうですし、強そうです。

ぼくの場合、#タグでいうと、#サラリーマン、#2代目バチェラー、#オンラインサロン運営、#起業家…ですね。子どもの頃からアメリカのプロバスケットボールNBAのオタクなので、#NBAオタクというのもあります。事業と2代目バチェラーやメディア出演という表現活動を掛算していくことで、自分のPR価値になり、採用活動などにも強みが生まれています。また、2012年くらいにNBAのゲームを作ったのですが、#NBAオタクだからこそ作れたゲームと自負しています。

―#タグを作れば、SNSでどんどん拡散していきますよね。ハイブリッドサラリーマンは、タグの数がどれくらいあればいいのか知りたいところです。

ちょっとかいつまんだことでタグを作ってしまう人もいれば、数年かけて専門家レベルまで行ってからタグを作る人もいて、人それぞれなので言い切るのは難しいんです。ぼく自身は、数年かけてやったことがひとつのタグになると考えていて、その観点で言うとタグはたくさんあるに越したことはないけれど、いろいろ手を出すとどれも中途半端になり、よくない。タグを作る時にはそこに気をつけてほしい、とアドバイスしています。

―マーケティングで言うと、それぞれの分野で第一想起される人を目指すとすごく強いタグになると思います。そうだとすると、数を増やすことよりも集中するものを絞ることが大事かな、と。

そのとおりですね。タグは、他人からどう想起されているかがポイントだと思います。ぼくの場合はサイバーエージェントにいたこと、バチェラー、知る人ぞ知るですがNBAオタクと認識してくれる人もいます。他人から自分とタグの結びつきを認識されるところまで持っていけるよう、時間をかけてその領域を追求する必要があるので、ハイブリッドサラリーマンなら多くて5個くらいだと思います。
 
また、最初からタグとタグの掛け算を目指すのではなく、どこかで点と点が結びついて結果的に価値が生まれるのがいいと思います。「ハイブリッドサラリーマンズクラブ」の運営メンバーは、皆結果的にそうなっています。自分の志向に忠実に生きている人たちなので。複線的に生きていてアンテナを張っていれば、どこかで結びつく可能性は高いと思います。

チャレンジしたい組織人や行き詰まりを感じている人を、クラブ活動で後押し

―8月にスタートした「ハイブリッドサラリーマンズクラブ」は、どのような目的で運営しているのでしょうか。

ぼくを含めて8人のハイブリッドな運営メンバーがリーダーになり、さまざまなクラブ活動を行うことで、組織人でありながら自分がやりたいことをやっていくハイブリッドサラリーマンを生み出すことが目的です。8人は、ぼくのコネクションで集めた人たちで、例えば、サラリーマン兼グルメインフルエンサー、公認会計士で2児の母であり、筋トレ女子、また、エンジニア兼マンガ家など、それぞれにハイブリッドに活躍しています。
 
また、クラブの月会費は1,000円と敷居を低くしました。法人にはしていますが、営利目的ではないので株式ではなく合同会社です。現在の会員数は200人程度ですが、ゆくゆくは会員1万人のクラブを目指しています。それくらいの規模になるとサラリーマンの中のひとつの勢力になれると思いますので。

―オンラインサロン会員の説明に「多様な働き方に興味がある人、何かを変えたいけどノウハウがない人、新しいライフスタイル・ワークスタイルについて語れる仲間がほしい人など」とありましたが、現在のメンバーは、どういう人たちが多いのでしょう。

IT、コンサル、メーカーの社員を中心に、中にはダイエットコーチ、郵便局員などさまざまな方が参加しています。首都圏だけではなく、大阪や宮崎からもイベントに来てくれているんですよ。年齢層は25~35歳ですが、今後は学生にも参加してもらい、社会に出ていく時の生き方のベースにしていってほしいと思っています。

―具体的な活動は、オンライン上での交流が多いのでしょうか。

オフラインでのイベントや部活動も定期的に行っていきます。オンラインでの情報発信では、リーダーが持ち回りでコラムを書き、毎日更新しています。テーマはさまざまで、最近だとぼくともう一人のリーダーが時間管理の方法を全公開しました。オフラインでは月に1回ミーティングを行い、50人くらいを対象にリーダーがプレゼンし、懇親を深めています。
また、ハイブリッドサラリーマンは、発信することと、自分のパーソナルメディアを持つことが大切なので、その場づくりを現在模索しているところです。ラジオ部、イベント運営部などの部活制度にし、クラブメンバーが自由に交流できるような仕掛けを作っていくなどですね。大事なのはメンバーがやりたいことをぼくらが把握し、必要とする人とつなげていくなど、ちゃんと後押ししていくことです。

―活動を始めて約2カ月、ここまでの手ごたえはいかがでしょうか。

組織人として行き詰まりを感じている人や、現状に満足しながらチャレンジしたいと思っている人はこんなにたくさんいるんだな、と実感しています。運営者としては、この先メンバーの数が増えていっても対応できるよう、文化や価値観を流通させる仕組みを作っていかないといけない。このクラブに入ったから新しいチャレンジができた、ここでこういう人と出会ったから新しいビジネスができた、そういう実績をどんどん作っていきたいですね。
 
ただ、今は無理やり会員を増やそうとはしていないんです。まずは、メンバー同士が活発にコミュニケーションをとり、ハイブリッドサラリーマンという概念をツイッターやブログなどで発信していく状態に持っていきたい。濃度が低いまま数だけ増やしてもカルチャーの形成にはつながらないですから。初期の200人が価値観を共有し、今後の活動に積極的にコミットしてもらえるようにする。そういう進め方です。

ハイブリッドな個と個が結びつくことで、企業や社会にイノベーションを起こす

―個の力が求められる時代に、「ハイブリッドサラリーマンズクラブ」の目指すところは、働く人はもちろん、企業サイドの注目も集めると思います。

そうですね。これまでのように会社にぶらさがって働き、65歳で定年退職するのはクールじゃないというか、人生100歳という時代なのにもったいないですよね。働けるだけ働いた方が断然楽しい。組織人として勤めあげる場合も、定年後は会社を起こしたり、後継者がいない会社を買ったり、さまざまな方法があります。そういう人たちが増えていくためには、組織に依存していてはダメで、できれば20代、30代のうちから考えておくのがいい。このクラブは、そのための大きな後押しになると思っています。

―組織は、個が集まって成立するものですが、個の視点では、抑えつけられるものという意識もあります。マイナスに振れつつある組織と個の関係が修復できるといい、と感じました。

理想は、「ハイブリッドサラリーマンズクラブ」で活動することでメンバーのタグが増えていき、「組織にいるのは、組織じゃないとできないことをするため」と割り切って働けるようになることです。ぼくは、生きるため、食べていくために会社で働くという概念自体がムダだと思っています。会社は好きだからいる。でも、会社がなかったら最悪自分でごはんくらい食べられる、という状態の人をどれだけ増やせるか。そうしたら定年後も自分の仕事を作っていくことができ、極論、日本のGDPを増やすことができると思います。

―ハイブリッドな働き方が広がっていくことで、企業や社会を革新していくこともできるかもしれない。将来こうなるのではないかという議論はあるんですか。

そういう議論はこれからしていこうと思っています。あのトヨタが終身雇用はできないという時代ですから、高度経済成長期のように会社にいれば安心、年金に依存するという生き方を脱し、個として生きることが求められています。そのためには、組織での経験を個の力に還元していけるはずだし、そういう個と個が組織を超えて結びついていく。さらに、昨今のオープンイノベーションではないですが、ハイブリッドサラリーマンが属する、大企業とスタートアップが組む、企業群でひとつの大きな価値を生んでいく、なども発展形として考えられると思います。

―サラリーマンがハイブリッドになり、個と個の結びつきで事業が起こり、それが企業と企業のコラボに発展し、大きな新しいものができる。日本人がイノベーションが苦手なのはマネジメントがPDCAになりすぎていて、ムーンショット型のチャレンジができないという面があると思います。グーグルのOKRがはやりつつありますが、日本社会ではこちらのような活動が現実的に感じました。

そうですね。やるからには中途半端はいやなので、新しい価値や新しいビジネスを生み出していきたいと思っています。組織の成長は、個人の成長と比例しているはず。そのために、個人の成長を促す「アンド」のチャレンジです。大前提として、組織人としての本業がいちばん大事。本業に煮詰まって転職するしかない、と思い詰めている人に、「そこにいながらも別のチャレンジをすることで自己充足感をあげることができるかも」とアドバイスもできると思います。大きなことは組織でやりながら個人の力を伸ばし、生きる能力を高めていけるよう啓蒙していきたいです。

―最後に、小柳津さんご自身の今後について伺わせてください。

2019年10月2日に、先ほど言及したビジネスプロデュース集団的な位置づけの会社GHOST(ゴースト)を立ち上げました。自分たちのブランドを作っていく事業のほか、大企業の新規事業の請負なども事業内容に盛り込んでいます。ぼくの経験とネットワークが活かせるところがあれば、ぜひコラボしていきたいですね。

【プロフィール】
小柳津林太郎(おやいづ りんたろう) 

株式会社GHOST代表取締役 CEO
 
1981年 京都府生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。6歳から14歳までニューヨークで過ごし、大学時代は英語演劇に打ち込む。新卒で株式会社サイバーエージェントに入社、広告部門に配属された後、モバイルウェブサイト制作やスマートフォンゲーム開発の子会社を率いる。2018年にAmazonプライム・ビデオ配信の婚活サバイバル番組「バチェラー・ジャパン」で2代目バチェラーに抜擢され、大きな話題を呼ぶ。現在は、自身の会社も立ち上げ「ハイブリッドサラリーマン」として、ビジネスと表現の領域で幅広く活躍中。

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