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2019年11月25日(月)

震災を乗り越え、事業創造拠点として東北をリードするMAKOTOグループ代表竹井智宏氏の挑戦

経営ハッカー編集部
震災を乗り越え、事業創造拠点として東北をリードするMAKOTOグループ代表竹井智宏氏の挑戦

未曾有の被害がいまだに尾を引いている、2011年3月に起こった東日本大震災。その震災を機に立ち上がった竹井智宏氏は、仙台を拠点に、地方特化でかつ一気通貫型のインキュベーションハブ事業を行っている。地方特化ファンドの運営、アクセラレータープログラム 、コミュニティとエコシステム作り、自治体連携、大学連携とここまで一つの機関が取り組んでいる例は聞いたことがない。
 
そんな中、竹井氏は「東北では、東日本大震災以降の取組みが蓄積し、スタートアップエコシステムも開花寸前」だという。MAKOTOグループの活動もあって仙台市は、起業率が全国2位となった。仙台市は、毎年2月には起業家月間として、1か月で30以上のイベントを開催するなど、スタートアップ支援に力を入れている。また、山形県鶴岡市では、バイオベンチャー群に成⾧が見られ、ヒューマンメタボロームテクノロジーズ(マザーズ上場)等の動きがある。また、竹井氏は「 各コンテストで東北勢の入賞が増加した」と指摘する。
 
グループ名の由来でもある「誠」は、私心の無い状態を表しており、その究極の「至誠」は、私心を無くし尽くすという事。「強い事業を作り、命を守り輝かせる」をビジョンとして、その志を持つ全ての 人々の理想郷を東北に作り上げ、人作り・事業作り・ 仕組作りを通じて、世界・ 社会に貢献する企業グループとなることを目指している。
 
過去に例がない事業体ゆえ前置きが長くなったが、竹井氏はこのユニークなイノベーションエコシステムを拡大し、東北から世界へ飛び立てる、世界初の独創的な産業創造の仕組みを作ろうとしている。
 
それはいったい何なのか?他のインキュベーションの仕組みと何が違うのか?どのようなマネジメントによりそれが可能となっているのか?今回、その発展プロセスを聞いた。

東日本大震災が最大の転機

-なぜMAKOTOを立ち上げたのかその背景を教えてください。

もともとは大学の研究者を志して生命科学を研究していました。領域は地球や生物の進化、さらに活性酸素の研究などです。しかし、黙々とタコ壺の中に籠って研究するよりも、ダイレクトに人々に役立つことをすべきではないかと気づき、大学院時代に休学し、自らが起業家として挑戦したこともありました。その修行のため産学連携プロジェクトに潜り込み産業界の知見を獲るとともに、その後は民間ベンチャーの現場、さらに仙台のベンチャーキャピタルに転職して、ハンズオン型のベンチャー支援を経験しました。
 
時代背景的には、2001年アメリカの同時多発テロの発生や国内での長引く不況で、人々が不幸に巻き込まれることが多くなってきたことがあります。さらに、「人の役に立つ仕事をしたい」とまじめだった妹の悩んだ末の予期せぬ自死・・・。世の中何でこんなにひどい状況なのか、苦しんでいる人がたくさんいる。世の中がどんどん悪くなっているというトレンドを変えなきゃ。しかし、何をどうしたらいいのかと悶々と考えているときに、2011年3月に東日本大震災が起きました。
 
これには、「いつか、誰かが」ではなく、「今、自分自身が」やらなくてはいけない、この状況を変えなくてはいけない、と背中を強く押された感覚があります。そして直ちに会社を退職し独立しました。もともとファンドをやりたくて会社を立ち上げたわけではありません。世の中をよくしたいという一心で、アントレプレナーを応援し、人が育ちやすく輝くような仕組みづくりを構築したかったのです。

東北の起業家支援エコシステムの成り立ち

-事業構造はどうなっているのか教えてください。

これまでの事業の柱は4つあります。
まず、起業環境整備事業では、オフィス・資金調達・イベント・コミュニティなど、起業家育成のための仕組み作り(エコシステム)を行っています。
 
例えば、世界最大の起業家ネットワークEO (Entrepreneur Organization)の東北支部を立ち上げ、私が設立発起人を務め、現在もコミュニティに深く関わっています。売上1億円以上で、成⾧意欲の高い起業家・経営者が集まっており、互いに切磋琢磨する東北で最も熱い起業家ネットワークが形成されています。

2つ目に、地方創生事業ですが、東北の県や市、町を含め15以上の自治体様と連携し、地域内の起業家支援の他、多様な地域の課題解決を通じて、新規事業創出を行っています。
仙台市との連携例では、世界級ベンチャーを育てる 「東北グロースアクセラレーター」を展開し、東北6県の有望ベンチャー企業を選抜、成功事例に育て上げる取り組みを行っています。東北6県のベンチャーを網羅的に発掘し、育成する。ICTや大学シーズを活用したスケール型ベンチャー育成の試みです。

3つ目の大学連携事業では、東北大学と連携し、大学発ベンチャーを創出・育成する事業を行っています。2030年までに大学発ベンチャーを100社にする事を目標としています。 
具体的な例としては、スタートアップ講座を開催したり、在学中に起業を目指すコミュニティ、東北大学起業部VEXを支援したりしています。約30名の部員に対し課外活動や定期的に、ゲストを呼び勉強会を実施、さらにピッチ&ビジネスプランの作成など行っています。

そして、最後にファンド事業ですが、東北の起業家に対する投資事業を行っています。投資先には経営支援を行い、事業成功を目指して伴走します。
 
ファンドは、現在複数のファンドを運営していて、約20社に投資し、投資先の株価も順調に伸びている状況です。
 
先進的な取り組みとしては、日本初の経営者の再チャレンジに特化したファンド「福活ファンド」を福島銀行と共同で設立しました(2015年)。このファンドは社会問題とも言える再チャレンジ環境を整備することで、東北全体の起業促進を狙ったファンドです。
 
具体的な支援先としては、例えば株式会社ZIG。こちらは、東京と福島(郡山市内)にオフィスがあります。経営者の小泉さんは倒産や個人破産も経験しています。再起に当たって再チャレンジファンドから数千万円の投資をしました。主要事業はSNSマーケティング事業、VTuberのデビュー・プロデュースを行うプロダクション事業などのサービスです。その後、他のベンチャーキャピタルも追加投資して頂き、1年で従業員数が何倍にも増えています。

起業家支援会社から事業創造会社へ

-こういった事業がどう発展していくのか、今後の展望を教えてください。

今、私達は、起業家支援会社から事業創造会社に進化しようとしています。その意味するところは、これからは支援者としてだけでなくプレイヤーとしての立場を強め、地方から事業をどんどん作って行くということです。近年、東北をはじめとした全国の地方都市では、人口減少の流れの中で、インパクトとサステナビリティのある経済を作って行かなければいけないという課題に直面しています。私達は、創業以来、その方法を模索し、一つ一つ具体化してきました。ファンド、アクセラレータープログラム 、コミュニティ作り、自治体連携、大学連携と、これだけの機能を地方で一気通貫的に提供しているところは、全国的に見ても非常に珍しいと思います。 しかし、これだけでもまだ足りません。そこで私達はスタートアップスタジオの概念を取り入れ、グループ内に、事業が生まれ、人材が育ち、ノウハウを共有しあって、成功のサイクルが連鎖的に回るという仕組みを作り込もうとしています。地方には大きな成長を目指し事業を主体的に取り組むプレイヤーが絶対的に不足しています。私達自らがそのように進化することで、志ある人材が、まず初めに私達の門を叩き、東京に行かずとも地方から大きなチャレンジができる。そんな未来を描いています。 当面は、2035年に100社1,000億円のグループ規模になる事をイメージしていますが、私がこの世を去った後でも、永続的に地域のインフラとして機能し続ける仕組みを作って行こうと考えています。私の人生での仕事として、使命感を持って取り組んでいこうと思っています。

 

<プロフィール>
竹井智宏(たけい ともひろ)

 
1974年生まれ。東北大学生命科学研究科博士課程卒。仙台のベンチャーキャピタルに勤務していた際に東日本大震災を経験。2011年7月にMAKOTOを設立し、東北の起業家・経営者の支援を開始。
 
日本初の再チャレンジ特化型ファンド「福活ファンド」を組成。また東北のスタートアップに投資する「ステージアップファンド」を組成し、投資育成活動を展開。起業環境作りにも力を入れ、仙台市と「東北グロースアクセラレーター」、JPモルガンと「Tohoku Rebuilders」など育成プログラムを実施。東北大学の起業家育成にも取り組んでいる。
 
2011年、米国カウフマン財団のカウフマンフェローに選出。2015年、日本ベンチャーキャピタル協会より「地方創生賞」を受賞。2016年、日本財団より、日本で10人の「ソーシャルイノベーター」に選出。2017年Forbesより、日本を元気にする88人に選出。2019年、全国イノベーション推進機関ネットワークより「堀場雅夫賞」受賞。東北大学特任准教授(客員)。
 
株式会社MAKOTO 
https://www.mkto.org/
 
代表者:代表取締役 竹井 智宏
スタッフ数:25名(フルタイム16名)
本社所在地:〒984-0075
宮城県仙台市若林区清水小路6-1
東日本不動産仙台ファーストビル 1F
 
シリコンバレーオフィス
3350 Scott Blvd. #29 Santa Clara, CA 95054 USA,
B-Bridge International, Inc.内

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