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2020年08月21日(金)

リビン・テクノロジーズ 川合大無氏に聞く~不動産プラットフォームで社会にインパクトを与える企業創造

経営ハッカー編集部
リビン・テクノロジーズ 川合大無氏に聞く~不動産プラットフォームで社会にインパクトを与える企業創造

 「世の中にインパクトを与えたい!」との夢の通過点として上場したリビン・テクノロジーズ株式会社(東証マザーズ4445)代表の川合大無氏。サイバーエージェントなど3社で会社員として経験を積んだのち、予定通りに20代で起業にこぎつけ、40代で上場を果たした。次なる目標は10年後に「社員1000人の企業」になることだと言う。そしてゆくゆくは「日本の経営者トップ100」に入ることを目指し、リビン・テクノロジーズの成長戦略を推進する。不動産売却領域を中心に、不動産関連のニッチなカテゴリーに目を付け、成功報酬型というビジネスモデルでベースを創り、周辺領域へと次々と事業領域を拡大。コロナ禍による世界的経済危機を跳ね返し、未来に向かって進化し続ける同社の展望、およびWebテクノロジーと不動産を融合した不動産プラットフォーム事業の未来と可能性を聞いた。

 

社会にインパクトを与えたい~起業までの道のり

―まず、不動産プラットフォーム事業について教えてください。

簡単に言うと不動産の一括査定など不動産取引が円滑に行われるよう支援するサービスプラットフォームの開発・運営事業です。当社では、不動産会社とエンドユーザー(不動産所有者等)の双方をターゲットとして、Webテクノロジーと不動産を融合したプロダクトの開発と運営を行っています。不動産売却を起点とし、その周辺領域へと徐々にビジネスを拡大しており、いずれは不動産取引全般を全方位的に網羅したいと考えています。

―川合社長と不動産プラットフォーム事業との出会いは、どのようなものだったのでしょうか。

最初に起業することが重要だと思っており、対象業種などは決めていませんでした。自分には何ができるのかを考えたところ、会社員時代にインターネット広告に携わっていた経験から、知っているビジネスでスタートするのがよいだろうと思いました。しかし大手から中小まで様々な企業が参入しているネット広告業界で抜きん出るのは難しい。商品で差別化しないと会社は成長できないだろうと考え、ネットで色々なキーワードの検索数を調べたのです。すると「不動産査定」など不動産売却関連のワードが多いのに対し、このカテゴリのネットサービスに進出している企業はとても少ないことに気が付きました。

当時のネット広告業界は営業すればすぐに売れるという時代だったので、起業して半年位で単月黒字を達成しました。たまたまこのようなニッチなカテゴリーによいタイミングで参入できて幸運だったと思っています。もっとも、会社の成長だけを考え、給料も家賃も滅茶苦茶安い状況で頑張った結果ですが。当時の給料は13万円、オフィスの家賃は8万円で、エレベーターもなかったので毎日5階まで階段で上っていました(笑)

―それがここまで成長されて、何とも夢のあるお話しですね。そもそも、なぜ起業されようと思ったのでしょうか?

学生時代に遡ると、就職活動で色々な企業の説明会に参加しましたが、どこに行ってもピンと来ない。「自分は特にやりたいことがないからピンとくるものがないのではないか、じゃあ、何をやりたいのか?」と自問したところ、「人生の多くの時間を仕事に費やすのだから、それに値することをやりたい。それはたくさんの人にインパクトを与えることのできる仕事ではないのか」と自分の求めている答えに気づき、それを実現する手段として「社長」になることを決めました。

つまり、社長になるのがゴールではありません。社会に大きなインパクトを与えるには、それなりに大きな企業に育てる必要があります。現在は「夢」の途上といったところですね。

―起業するまでの道のりを教えてください

5年間の間に3社で働いて経験を積めば、20代で起業できるノウハウを得られるのではないかとプランニングしました。まずは商売の基本を学ぶべく商社に入社したところ、農学部出身の私は農業部門に配属され、2年間、在庫管理や請求書発行などの営業事務を担当しました。ですから今でもバックオフィス関連の事務は完璧にできる自信があります(笑)。

次に営業力を鍛えようと入社したのが、アフィリエイト広告のベンチャー企業です。ちょうどITバブルの時代でした。ここで初めてテレアポ後、対面営業して契約を取り付けるという営業を経験しました。トップセールスマンに上り詰め、「全然知らない人に勝手に電話して営業しても契約してもらえるのだ」という事に気づき、「人脈がなくても売り上げをつくれば、社長になれる」との確信が得られ、夢に向かって一歩前進した気分でした。

そこで2年半の経験を積んだ後、3社目として選んだのが、サイバーエージェントです。ネット広告代理店部門に配属され、ネットビジネス、Webマーケティング部門全般のスキルを身に着けました。その頃、最初に入社した商社の友人2人が私の起業計画に賛同してくれて、2004年、念願の会社設立にこぎつけることができたのです。

 

今の暮らしに役立ち社会の進歩に役立つ企業を目指して

―会社を設立されてから上場まではずっと順風満帆だったのでしょうか。

いいえ、岐路に立たされ悩んだ時期があります。創業後、努力の甲斐もあって、会社は成長していきました。そこで私は2~3年後の上場を目指し準備を始めたのです。私は業績を伸ばそうと厳しく仕事に向き合いました。ところがほかの2人は和気あいあいと仕事をするのが望みでした。私たちの仕事に対するスタンスは大きく乖離していることが浮き彫りになり、創業5~6年後に袂を分かつことになってしまいます。営業力の高い中核メンバーを失った結果、当社の売り上げは下がり、一旦、上場を諦めることになりました。しかしそんな中、新規ビジネスとして着手していた不動産の一括査定サイト事業が伸びを見せ、その内、ネット広告の代理店事業をバーティカルメディア事業の売り上げが上回るようになりました。かくして当社は息を吹き返し、再度、上場を目指すことができるようになったのです。

―御社のミッションや事業の全体像について教えてください。

「人々の生活に密着した手放せないインターネットサービスを提供し、世の中に必要不可欠な企業になる」ことをミッションとしており、社名には、「暮らしに役立つ社会の進歩を促すテクノロジーカンパニー」という思いが込められています。

事業の全体像としては、不動産会社への見込み客の送客や人材紹介などのマッチングサービスと、ビジネス情報提供や認知度をアップする広告などのブランディングサービスを2本柱として、不動産会社のビジネス基盤となるサービスをWEBを通じて提供するというもです。


 

プラットフォーム事業の中核を成す「リビンマッチ」の成功とビジネス領域の拡大

―現在のメインビジネスである「リビンマッチ」のしくみについて教えてください。

リビンマッチは不動産の売却価格の一括査定を中心に、不動産買取の一括査定や土地活用、リノベーション会社などに無料で一括問い合わせができる、日本最大級の不動産サービス・価格比較のポータルサイトです。エンドユーザー(不動産の所有者)は査定額や業者の比較を手軽に行えます。一方、査定する側の加盟企業にとってはチラシなどの従来の広告手法とは異なり、問い合わせ件数分だけ利用料が発生するという成功報酬型のため加盟するハードルが低く、費用対効果が高いというメリットがあります。

リビンマッチでは、不動産・住宅関連業界に特化した人材紹介や不動産業界従事者向けのWEBマガジン「リビンMagazine Biz」、オンライン講座やワークフローなどの業務支援システムサービスの展開により、見込み客を獲得するだけではなく、成約率を高めるための支援も行っています。そこが他社サイトとは最も大きく違うところではないでしょうか。また、リビンマッチを安心して利用して頂けるよう、Web上だけでなく対面でのフォローも行っています。

そのような使いやすさやサポート力により、現在の加盟店は全国2,600事業所。年間9万件のマッチングを実現しています。今後はさらにサービスを拡充し、もっともっと愛されるサイトにしていきたいです。

―現在でもリビンマッチの周辺にはさまざまなサービスが広がっていますね。

問い合わせや商談の際など、反響のあった顧客の携帯電話に自動的にSMSでステップメールを送信し、コンタクトを取り続けることで不動産会社の業務負担を軽減しながら成約率を高める「SMSハンター」や、不動産価格査定書作成システムなどのあらゆる不動産関連分野で事業を拡大しています。「SMSハンター」は現在は不動産売却しか対象にしていませんが、今後は不動産を購入したい顧客も対象に追客できるようにする予定です。

不動産一括査定の周辺サービスのさらに周辺へと逐次サービスを拡大し、それぞれのサービスで蓄積した情報をつなぎ合わせることで全体をパワーアップし、不動産プラットフォーム事業としてさらに進化を遂げていきたいと思っています。

 

ニッチな市場で差別化を図りNo.1に

―御社の成長を促した理由やサービスの魅力とは?

従来の大手不動産ポータルサイトは「借りたい」「買いたい」といった不動産を所有していない人向けのものでした。しかし当社では「売りたい」「貸したい」「土地を有効活用したい」など、所有している人を対象としています。大手が進出していないニッチなカテゴリーに参入したのが一番の成長の理由ですね。そのほか成功報酬型のビジネスモデルであることや、効果的なWebマーケティングによる集客力の高さ、また、成約率を高めるための手厚い支援サービスといった付加価値も、当社ならではの魅力づくりに役立っています。

―コロナ禍の影響はありませんか。

今のところマイナスの影響はほぼ受けていません。むしろ数字が伸びた位です。「家を売りたい」「家が欲しい」という実需の底堅さを見せつけられたというか、不動産売買仲介業の強さを実感しましたね。また、緊急時にはいつでもリモートで滞りなく業務が進められる体制が整うなど、社内でのDX化が急速に進みました。

―上場されて約1年。現在はどのようなことに注力されていますか。

主力のリビンマッチが現在は投資フェーズに入っていると思っています。最近TVCMが始まったばかりなのですが、認知度を上げて全国で顧客をたくさん獲得したり、営業拠点網の増設を進め営業の網目を小さくしていきたいです。

また、今期のテーマとしてM&Aを掲げています。上場したことによりM&Aのための資金調達もやりやすくなりました。また、時価総額が毎日見えることで、新しいことに挑戦したいという思いが強くなりました。

―成長戦略について教えてください。

事業を拡大すべく、3方向で戦略を立てています。

まずは主力のリビンマッチを不動産一括査定カテゴリで圧倒的ナンバーワンサイトにしたいです。保険や引越など一括問い合わせサイト市場はある程度認知されています。しかしそれが不動産査定でもできると知っている人は多くはありません。リビンマッチの認知度向上で不動産一括査定サイト市場も拡大させ、そこで断トツのトップになるのが目標です。

次に新しい事業領域への進出です。たとえば相続や空き家活用サービスなどの未着手の不動産関連分野、そして物件管理システムなどのテクノロジー分野へ領域を拡大したいと思っています。

3つ目としてはM&Aや提携の推進ですね。M&Aにより不動産業界でイノベーションを起こせる可能性がさらに高まったと感じています。

 

10年後、1000人企業を目指す

―今後の展望はいかがでしょうか。

当社としては、市中の不動産会社の「今」のニーズに寄り添ったサービスを展開するのが願いです。不動産取引は扱う金額が大きいので、100%ネットで済ませるというのは無理だと考えています。しかし当社が信頼できる企業として介在することで、お客様が安心して取り引きできる環境を整備することができるでしょう。ニッチな市場を見つけてサービス領域を広げ、進化していきたいですね。

また、もっともっと新しいことに取り組みたいと思っています。社内で新しい企画やサービス機能を提案する「プレゼン大会」を定期的に開いて新しい発想を募っています。まだまだ人手が足りません。開発部門、営業部門、そしてマネジメント層などで、さらなる人員確保が必要です。一緒に未来を見つめ、新規事業をクリエイトしていける人材と一緒に、ますます会社を盛り上げていきたいですね。

―川合社長ご自身の目標やビジネス観をお聞かせください。

まずは10年後をめどに「1000人規模の会社」にしたいです。社会にインパクトを与えるには、その程度の規模は必要ですから(笑)。そうなると時価総額としては3,000億円、少なくとも1,000億円は超える規模に成長しているのではないでしょうか。

そして25年後。70歳になるまでに「日本の経営者トップ100」に入るのが最終的な目標です。「夢」ではありません。達成できる可能性が100%であるとは言い切れませんが、25年間かけて目指すに値する目標として掲げています。

そんな目標実現に向け、いつも「自分はできる」「ほかの人にできて自分にできないわけはない」「今できなくても、いつかはできるようになる」といったポジティブな言葉を自分に言い聞かせ、日々、成長したいと思います。

―グロースを目指すマザーズ市場の企業らしい素敵なお話、ありがとうございました。

 

◆プロフィール
川合 大無(かわい だいむ)

リビン・テクノロジーズ株式会社代表取締役社長。東京農業大学卒業。ニチモウ株式会社、バリューコマース株式会社、株式会社サイバーエージェントを経てリビン・テクノロジーズを設立。
  
リビン・テクノロジーズ株式会社  
https://www.lvn.co.jp
本社所在地:東京都中央区堀留町1-8-12さくら堀留ビル8階
2004年1月設立、資本金:1億9253万2000円、従業員:90名、上場:2019年6月、上場市場:東京証券取引所マザーズ市場(証券コード 4445)、事業内容:不動産プラットフォーム事業(Webテクノロジーと不動産を融合したプロダクトの開発と運営)
役員構成:代表取締役社長 川合大無、取締役:小櫻耕一、佐藤慎也、 取締役(監査等委員会):藤井千敏、永富一勲、大下徹朗

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