竹中平蔵氏が解くテクノロジーでビジネスを効率化する未来「フラット化する世界から取り残された日本の運命とは!?」|後編

第1回【後編】「経営ハッカー」対談 竹中平蔵 × 佐々木大輔

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竹中平蔵(Heizo Takenaka) 公式サイトhttp://www.takenaka-heizo.com 1951年生まれ。和歌山県出身。日本開発銀行、ハーバード大学客員准教授、慶応義塾大学総合政策部教授を経て、2001年、民間人として経済財政政策担当大臣に。2002年、金融担当・経済財政政策担当大臣。2004年、参議院議員に当選し、経済財政政策・郵政民営化担当大臣。2005年、総務大臣・郵政民営化担当大臣を歴任。現在、産業競争力会議メンバー。

佐々木大輔(Daisuke Sasaki)東京都出身。一橋大学商学部卒。データサイエンス専攻。派遣留学生として、ストックホルム経済大学にも在籍。大学在学中からインターネットリサーチ会社でリサーチ集計システムや新しいマーケティングリサーチ手法の開発を手がける。卒業後は、博報堂などを経て、2008年、Googleに参画。日本市場のマーケティング戦略立案や日本、アジア・パシフィック地域の中小企業向けマーケティング統括を担当した。2012年、freeeを創業。

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リーダーはどれだけ基本に忠実であるか

竹中 私は小泉(純一郎)さんという“異色”の総理大臣に約6年間お仕えして、側で見ていてものすごい勉強になったんです。小泉さんはよく「学者ってすごいよな」「ホントに頭が良いよな」って言うんですけど、どう考えても一番頭いいのは小泉さんなんだよね(笑)。だってあれだけのことをやってのけたんだから。学者にできませんよ。で、小泉さんの頭の良さは、地頭の良さなんです。

 

佐々木 地頭、ですか?

 

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竹中 そう。戦略を深く考えたり、勝機を必ず見つけないといけないのが経営者ですよね。そこに必要なのは地頭なんです。それが何かと考えたんですが、どう考えても “基本”なんですよ。基本にどれだけ忠実にやっているかどうかということ。しかし、いまの日本のリーダーたち、政治家も経営者も、その基本ができていない人が多い。昔、ベンチャー三銃士と言われた孫さんや南部(靖之)さん、澤田(秀雄)さんがどうしていまも活躍し続けているのかというと、彼らはそれぞれのやり方で国を変えたい、人を幸せにしたいという基本があったわけです。するとブレないし、どんな困難に直面しても怯まずに戦える。単に金をもうけようとしていた人はみんな失敗しているでしょう?

 

佐々木 そうですね。組織って、みんなが貢献したいと考える何か、それに向かってがんばれる何かがないと機能しないと私も思います。単にお金のつながりだけでは絶対にうまくいかないですから。

 

ベース・オブ・ピラミッドに日本の中小企業のチャンスがある

竹中 日本の中小企業は、これから世界の中で非常に大きな役割を果たしていく可能性があると思います。いま、世界の人口は70億人ですが、日本の大企業は、所得のピラミッドでいえば頂点だけを狙って商売をしてきたわけです。しかし、その下には“ベース・オブ・ピラミッド”と呼ばれる、非常に巨大なマーケットがある。新興国の中間所得層がどんどん増えているでしょう。いま、アジアで5億人、それが2020年には17.5億人になるといわれています。しかし、その巨大なマーケットを相手にいくらトヨタががんばっても、タタ・モーターズの「ナノ」に対抗できるような安い車は作れませんよね。ただし、日本の中小企業なら入っていける。実際、オート三輪の電気自動車をフィリピンで売り込もうとしているベンチャー企業がすでに渋谷にあります。

 

佐々木 なるほど。

 

竹中 日本の中小企業のチャンスであると同時に、新興国側も日本企業の参入を望んでいるんです。“中進国の罠”って聞いたことありますか?

 

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佐々木 いえ…。

 

竹中 新興国は、国民一人当たりのGDPを5000ドルから10000ドルくらいに高めるまではそう難しくないんですが、そこから日本のように35000ドル程度に突き抜けるためには、それまでとは異なるイノベーションが必要になるんです。そういう意味で突き抜けた国が、韓国とシンガポール。逆に突き抜けられず、中進国レベルの状態が長年続いた典型がメキシコです。メキシコもようやく先進国の仲間入りをしたけれど、それまでに30年はかかっている。いま、インドネシアやタイは勢いがあるけれど、その罠に陥らないかどうかを心配しているんですね。だからこそ、日本の中小企業の力を借りて、ベース・オブ・ピラミッドに入っていけるようなイノベーションを起こしたいんです。

 

佐々木 でも、そうした国々がイノベーションを起こすために何が必要なんでしょう?

 

竹中 難しい話ですが、新しい結びつきではないでしょうか。イノベーションはドイツ語の「neuer kombinationen」という言葉に由来するとされていますが、「新結合」という意味なんですね。中進国が持っているアニマルスピリットや労働力と、日本の企業が持っている繊細な技術は結びつきやすいと思いますし、特にインドネシアは親日的な国ですから、親和性があるのではないかと私は期待しています。しかし、そのためには日本の中小企業の生産性を高めないといけないし、グローバルなマインドセットを持つ必要がある。

 

世界がフラット化する中、先進国の宿命とは?

佐々木 グローバルという意味では、言葉の問題もありますよね。シリコンバレーのベンチャーキャピタルは中国の企業にかなり投資していますが、中国の起業家は英語がしゃべれるのが当たり前だし、国内でビジネスをしていてもグローバルなマインドを持っている人ばかりです。しかし、日本ではなかなかそういうふうにはなりません。

 

竹中 韓国も同じ問題がありましたが、この10年で英語力が抜群に上がりました。それは徹底的な教育の大改革を行って、グローバル教育を徹底したから。いま韓国では、少しお金のあるような家庭の子どもは小学生のうちからアメリカに行かせます。小さい時から祖国を離れるのは決して良いことではないと思いますが、そのくらい教育に力を入れている。韓国国内には英語だけで教育している高校もいくつかあって、そこからたくさんの人がアイビーリーグに入学している。つまり、やればできるんですよ。日本人は本気になってない。切羽詰まってないだけでね。

 

佐々木 その韓国の変化は、民間主導なんですか?

 

竹中 民間ですが、ジャーナリズムの影響が大きいでしょうね。日本ではそんなことをすると「日本らしさが…」と叩かれるけれど、日本らしさがあることなんて当たり前ですから(笑)。トーマス・フリードマンというアメリカのジャーナリストが書いた『フラット化する世界』(日本経済新聞社)は、世界中でベストセラーになりましたよね? 原題の「The world is flat」っておもしろい言葉で、コロンブスの「The world is not flat」をもじっているわけです。地球は丸かったけど、再びフラット化したと。例えば、このビルの近くにブラジル銀行東京支店があるんですが、そこのオペレーターはブラジルにいるんですよ。東京の企業のコールセンターのオペレーターも、沖縄や九州にいるでしょう? 電話がデジタルになったことでコスト面での問題が解消されたわけだけど、これからどうなるのかというと、日本のオペレーターの給料がブラジルやインド人のオペレーターと同じになるということです。

 

佐々木 フラット化していくということですね。

 

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竹中 それが先進国の宿命なんです。私たちは昨日と同じことをしたら必ず生活水準が下がります。生活水準を保ちたい、上げたいと思ったら、昨日と比べて賢くなっていかないといけない。それがグローバル化なんです。しかし、日本はグローバル化を舐めてかかっていた。だからこの20年間で地盤沈下している。

 

佐々木 グローバル化の波に取り残されていても、地盤沈下がゆっくりで気付かなかったということもありますか?

 

竹中 それが日本の素晴らしいところでもある。これだけ政治が悪い状況が続いても、経済がそこそこ保っているわけですよね。どうしてかというと、例えば東日本大震災の時に、あの混乱の中でもタクシーに乗るために列を作ったような社会の力、ソシオ・キャピタルと言いますが、そういう秩序の正しさが間違いなく日本にはあるからです。だから、景気が多少悪くても、社会を安定させることができているのかもしれません。

 

佐々木 ただ、その力が強いから、競争というものができない。

 

竹中 おっしゃる通りです。フラットな世界になってくると、生活水準も下がる。ですから、「下がってもいいい」と言うなら良いけれど、努力もしないで「豊かになれない」と怒るのはおかしいということなんです。

 

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佐々木 いま、クラウドソーシングでちょっとしたデザインならすぐに発注できますが、世界中に投げると、とても高いクオリティのものを安く仕上げることができます。

 

竹中 友人も英語の翻訳をやっているけれど、ものすごい単価を叩かれるって言っていますよ。ただ、フラット化する世界という言葉を最初に使ったのはフリードマンではなくて、インドのインフォシスという会社のCEO、ナンダン・ニレカニなんです。インドの山奥にいてもウォール街の中心にいるのと同じ条件で仕事ができると。つまり、世界がフラット化することは、発展途上国や中進国にとってはものすごいチャンスなんです。

 

佐々木 確かに。

 

竹中 彼らが豊かになることを拒む権利は私たちにはありませんから。だからこそ、私たちはもっと先にいくしかない。

 

佐々木 なるほど。もっとお話を伺いたいのですが、そろそろ時間なので…。今日の対談の記念に、「freee」のTシャツにサインをしていただきたいのですが、よろしいでしょうか?

 

竹中 はい、こういう感じでいいですか?(Tシャツにサインを入れる竹中さん)

 

佐々木 ありがとうございます。

 

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竹中 でも、佐々木さんの今後の活躍にも期待していますよ。

 

佐々木 はい。本日は本当にありがとうございました。

 

前編はこちら

 

竹中平蔵(Heizo Takenaka) 公式サイトhttp://www.takenaka-heizo.com 1951年生まれ。和歌山県出身。日本開発銀行、ハーバード大学客員准教授、慶応義塾大学総合政策部教授を経て、2001年、民間人として経済財政政策担当大臣に。2002年、金融担当・経済財政政策担当大臣。2004年、参議院議員に当選し、経済財政政策・郵政民営化担当大臣。2005年、総務大臣・郵政民営化担当大臣を歴任。現在、産業競争力会議メンバー。

 

[ 文: 成田敏史(verb)写真: 柚木大介 ]

 

 

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