【完全版】5分で理解できる源泉徴収の仕組みと業務|経理・税務の基本知識

源泉徴収会社勤めや会社経営・個人事業をされている方なら経験されている「源泉徴収」
給与や事業の税金に関する制度ですが、その仕組みや実際の手続き・注意点について把握するのはなかなか大変です。

今回は、源泉徴収の仕組みはもちろん、日々の手続きや実務上の注意点、よくある間違いをご紹介していきます。

目次

  1. 源泉徴収とは
  2. 源泉徴収の対象となる支払い
  3. 源泉徴収金額の計算方法
  4. 源泉徴金額の納付
  5. 源泉徴収票と支払調書
  6. まとめ

1)源泉徴収とは

まずは源泉徴収とは、個人に代わって、給与や報酬などの支払いを行う者が関係する税金を差し引いて納税する制度のことです。

所得税にまつわる課題

日本の所得税(個人のもうけに対する国の税金)は、個人が自分のもうけを集計し、税金を計算して納税する「申告納税方式」が採用されています。しかし、全国民が「申告納税方式」で納税を行うには、いくつかのハードルがあります。

まずは対応時間で、全国民が納税のための申告書を税務署に提出し、税務署の職員がその手続きに対応するとなると大変な時間がかかります。

次に、適切に納税を行うことも課題です。税制の詳細は多岐にわたり様々な改正が加えられ、国民全員が制度を正しく把握することが難しくなっています。そのため、計算まちがいによる所得税の払い過ぎ・不足や申告漏れが発生してしまいます。

また安定的な税収の確保という観点もあります。所得税は原則としてその年の1月~12月のもうけを計算して、翌年1〜3月に納税を行うため、その他の期間に国が安定的に税収を確保することが難しくなります。

課題を解決する「源泉徴収」

そこで、給与や報酬などの法律で定められた支払いを行う者が、その支払いを行う際に関係する税金(所得税)を差し引いて、個人に代わって定期的に国に納付する制度が導入されました。この制度を「源泉徴収」といい、その支払者のことを「源泉徴収義務者」といいます。

似た制度として、住民税(都道府県や市区町村に申告納税する税金)や社会保険料が差し引かれる特別徴収があります。手続きは若干異なりますが、基本的な考え方は同じです。

「源泉徴収」の4ステップ

毎月の源泉徴収業務は、「対象判定」→「金額計算」→「支払(徴収)」→「納付」の4ステップに分けられます。この流れをきちんと理解することで源泉徴収の全体像をつかむことができます。次の章から各ステップを詳しく解説していきます。

〈参考〉源泉所得税|源泉徴収の対象となる報酬や料金は多岐にわたっている?

2)源泉徴収の対象となる支払い

実際に源泉徴収の対象となる支払いを見ていきましょう。源泉徴収の対象は法律で定められているものに限られており、代表的な取引としては下表のようなものがあります。

「源泉徴収」の範囲

■支払い先が個人の場合

支払内容 具体例
給与 給与や賞与
報酬 ・原稿料・デザイン料・講演料などの報酬
・弁護士・会計士・税理士・社労士などへの報酬
・外交員、集金人、検針人、プロスポーツ選手などへの報酬
・芸能人への報酬
・ホステスへの報酬
その他 利子・配当、退職金、年金

■支払い先が法人や海外居住者(外国法人)の場合
・利子や配当等

勘違いしやすい3つのポイント

■ 源泉徴収は支払先が個人以外でも行われる
源泉徴収は個人に対する支払い以外にも、法人や海外居住者(外国法)人に対する支払いにも行われる場合があります。徴収方法などを詳しくおさえる必要はありませんが、法人では入金のあった利子や配当は源泉徴収がなされているため、会計データの入力が少し特殊になる点には留意してください。

■ 源泉徴収は法律で定められた取引のみ行う
個人に対しての支払いは、すべてが源泉徴収の対象となるわけではありません。源泉徴収が必要となるのは、所得税法や租税特別措置法などの法律で定められた取引に限定されています。そのため、販売業や製造業などを営む個人と取引する場合であっても、法律で源泉徴収が定められていない取引に関しては支払う際に源泉徴収をする必要はありません。

■ 源泉徴収義務者に個人や法人は関係ない
一定の個人を除いて、支払いを行う者は、個人または法人、官公庁、町内会などの属性に関係なく、源泉徴収の対象となる取引の支払いを行う際に源泉徴収する必要があります。

3)源泉徴収金額の計算方法

源泉徴収金額の計算は支払内容によって変わります。源泉徴収は上述のように様々なパターンがありますが、今回は一般的な給与と報酬の計算方法を紹介します。

給与

給与の源泉徴収税額は、給与計算の一環で計算します。支給金額から社会保険料等の控除を行い、その金額を扶養者の数等を考慮して源泉徴収税額表に当てはめると算出できます。

報酬

報酬の源泉徴収税額は、支払金額に税率を掛けて計算します。

おさえておきたい2つのポイント

■ 100万円を基準に計算方法(税率)が異なる
支払金額によって、源泉徴収税額が計算方法が異なる可能性があるので注意が必要です。税率には0.21%(0.42%)分の復興特別所得税が含まれています。
源泉徴収税額

■ 消費税の取り扱い
源泉徴収は、原則として消費税も含めた金額を対象に計算を行います。ただし、請求書で報酬金額と消費税額が明確に区分されている場合に限り、消費税抜きの報酬金額を源泉徴収の対象とすることができます。

たとえば請求書に報酬108,000円とだけ記載すると、源泉徴収税額は 11,026円(108,000円の10.21%)となります。
一方で、請求書に報酬100,000円と消費税8,000円を区分して記載すると、源泉徴収税額は 10,210円(100,000円の10.21%)にできます。

消費税の納税義務が免除となる場合に消費税を請求できない、という考え方がありますが、消費税の課税対象外(課税されないこととなっている)の取引を除き、事業上の請求には消費税を含めなければなりません。そのため、消費税はなるべく区分して表示しましょう。

請求書の作成時の注意点

請求書を作成する際には、支払われる報酬が源泉徴収の対象となるかの判定をする必要があります。このとき「源泉徴収の対象となるか」の判定を誰が行い、トラブルがあった場合に誰が責任をとるのかがよく問題となります。

■ 支払者は源泉徴収対象の判断を
結論としては、源泉徴収の適切な判断とトラブルの責任を負うのは 報酬を支払う者(源泉徴収義務者)です。支払者は、その支払が 源泉徴収の対象の場合には、必ず源泉徴収をしなければなりません(受け取った請求書に源泉徴収の記載がなかったり、源泉徴収をしないよう依頼等があったりした場合でも、です)。

源泉徴収を怠った場合には、よほど正当な理由がある場合を除き、ペナルティとして不納付加算税と延滞税が別途課税される恐れがありますので、注意しましょう。

■ 請求者もトラブル防止のために把握を
請求側は、報酬の対象となる業務が源泉徴収の対象となるかを把握しておきましょう。請求書への記載義務がなくても、把握しておくことで取引先とのトラブルを回避できます。

なお消費税については、消費税の区分を明記しても、消費税を含めない金額を源泉徴収の計算対象とするかは支払者の判断となります。この点にも考慮し、源泉徴収金額を含めた(控除した)請求書を発行するように努めましょう。

〈参考〉請求書に源泉徴収を入れる理由。個人事業主やフリーランサー必見!

4)源泉徴金額の納付

納付時期

源泉徴収した者は、原則として実際に支払いを行った(源泉徴収を行った)月の翌月10日までに、源泉徴収額を税務署に納付します。たとえば、3月1日~31日の間に支払いを行った場合、4月10日までに納付を行います。

しかし、小規模の事業者が、源泉徴収した税金を毎月納付するのは事務的にも資金的にも大変なため、

・給与の支払人員対象者が 10人未満(9人以下)の源泉徴収義務者が
・「源泉所得税の納期の特例」を適用(「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出して承認を受ける)すると、
給与と一部の報酬(弁護士や税理士等の資格を有する者)で源泉徴収した金額

に関しては、納付期限が猶予されます。
その結果、1月から6月までに支払った分に対する所得税は7月10日まで、7月から12月に支払った分に対する所得税は、翌年の1月20日までに納付することとなります。

おさえておきたい3つのポイント

■ 「納期の特例」の適用開始日と適用停止日
「納期の特例」は、申請書が承認された月(却下の通知がない場合は申請月の翌月)の源泉徴収から特例の適用を受けることができます。たとえば3月に承認があった場合、3月の支払い分から適用することができます。

また給与の支給人員が常時10人以上となり納期の特例の要件に該当しなくなった場合には、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出」を税務署に提出する必要があります。この場合、この届出書を提出をした月の前月までに猶予を受けていた源泉徴収した税額は、その提出月の翌月10日までにまとめて納付します。その後の源泉徴収は、原則通り10日に納付することになります。

■ すべての報酬には「納期の特例」を適用できない
「納期の特例」が適用される報酬は、弁護士や会計士、税理士等の特定の資格者業務に対する支払いに限定されています。その他の報酬の支払い対する源泉徴収には適用できないため、注意が必要です。

■ 「納期の特例」の適用開始日と適用停止日
「納期の特例」が適用される報酬は、弁護士や会計士、税理士等の特定の資格者業務に対する支払いに限定されています。その他の報酬の支払い対する源泉徴収には適用できないため、注意が必要です。

所得税の納付方法

所得税の納付の際は「所得税徴収高計算書」という納付書に源泉徴収に関する金額情報を記載し、税務署や銀行で納付します。納付書は、源泉徴収の対象となった報酬により、使用する様式がとこなるため、注意が必要です。
給与と資格者報酬には「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を使用し、その他の報酬の場合は「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」を使用します。

5)源泉徴収票と支払調書

毎月の源泉徴収実務に加え、翌年1月に「源泉徴収票」と「支払調書」、および それらの情報を合計した「法定調書合計表」を作成するまでが、源泉徴収の業務になります。「源泉徴収票」は年末調整を終えた1年間の給与に関する源泉徴収の情報をまとめたものですが、「支払調書」は報酬等に関わる源泉徴収の情報をまとめたものです。

※源泉徴収票に関しては年末調整の記事をご覧ください。

「支払調書」は、同一の相手に支払った金額の合計が年5万円を超える場合に作成する必要があります。調書は一部だけ作成して税務署へ提出しますが、一般的に二部作成して残りの一部を源泉徴収を行った支払先に対して発行します。

支払先は、支払調書を必ずもらえるとは限らないため、源泉徴収された入金を把握できるように会計データを登録しましょう。

〈参考〉法定調書と支払調書の提出期限前に記入方法を理解しよう!

6)まとめ

毎月の源泉徴収実務は、上述のとおり、「対象判定」→「金額計算」→「支払(徴収)」→「納付」のサイクルを繰り返していきます。源泉徴収の仕組みをきちんと理解して、税金周りの作業の効率を上げていきましょう。

〈参考〉
確定申告|源泉徴収票を紛失した場合の手続きまとめ
給与事務者必見!所得税の源泉徴収の計算方法丸わかり!

Text = 高橋 啓太

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