所得税と源泉徴収の違いは?誤解しやすい税の基本を税理士が徹底解説

所得税と源泉徴収の違い サラリーマンを経験した方は、給与額面と手取りが違う理由の1つとして、源泉徴収という言葉を聞いたことがある方も多いかと思います。「源泉」=「ものが生ずるもと」、「徴収」=「法規に基づいて、国家が税金を取り立てる」という意味ですが、所得税特有の行為でわかりづらいかと思います。そこで今回は、誤解しやすいポイントをまとめて解説したいと思います。

1) そもそも源泉徴収とは?

源泉徴収について、国税庁は以下のように説明しています。

  1. 給与や報酬などの所得を支払う者が
  2. その所得を支払う際に所定の方法により所得税額を計算し
  3. 支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付する

少し難しいので、かみ砕くと

1. 給与や報酬を支払う者(=源泉)が 2. 税額をザックリ計算し 3. 支払額からそのザックリ計算した税額を差引いて(=徴収)国に納付する ことを意味します。基本的には

企業=給与や報酬を支払う=源泉徴収をする サラリーマン・フリーランス=給与や報酬を受ける=源泉徴収をされる

という関係性になります。 また、源泉徴収は所得税を納める方法の一つであるため、所得税の中に源泉徴収が含まれるという位置づけになります。

2) 誤解しやすい3つのポイント

1. 税金は給与・報酬などを受け取った人が納めるのでは?

申告納税制度

所得税は、所得がある本人がその年の所得金額とこれに対する税額を計算して、これらを自主的に申告して納付する、いわゆる「申告納税制度」が建前とされています。つまり、通常は、給与や報酬を受け取る側のサラリーマンやフリーランスが所得税を申告して納付します。

企業がサラリーマン・フリーランスに1,000円の報酬を払い、サラリーマン・フリーランスが100円の税金を税務署に納めるという形です。

三者のお金の入出金を見ると、企業は1,000円報酬を支払ったので−1,000円。サラリーマン・フリーランスは、1,000円の報酬を受け取った一方、100円だけ税金を納めるので差引で+900円。税務署はサラリーマン・フリーランスから100だけ税金を徴収するため+100円という状態です。

源泉徴収 一方、源泉徴収の場合はお金の流れが少し特殊になります。

企業はサラリーマン・フリーランスに1,000円の報酬から100円の税金分を控除して900円だけ支給、税務署に対して、100円を天引きした税金を納める形になります。3者のお金の入出金を見ると、企業−1,000円、サラリーマン・フリーランス+900円、税務署+100円と、最初の図と結論は同じというわけです。

源泉徴収によって税務署としては、事前に企業が天引きして税金を納めてくれるので未納を防げるというメリットがあります。また一方、企業としては、源泉徴収額を計算して納付する手間がかかるというデメリットがあります。

2. 天引きされるのなら、所得税の申告をしなくていいのでは?

年末調整-確定申告

サラリーマン・フリーランスは源泉徴収されているのであれば、所得税を申告する必要はないのではと考える方もいるかもしれません。結論として、源泉徴収はザックリ計算した税金を納めているため、それだけで手続きは完結しないのです。

サラリーマンは比較的手続きが簡単な年末調整、フリーランスは手間のかかる確定申告が必要になります。それぞれの手続きで、ザックリ計算して納付済の源泉徴収額と、正確な税金額を比較して差額を清算する手続きを行います。これらの手続きにより、所得税の一連の手続きが完結します。

<参考> 年末調整ガイド|年末調整に関する疑問すべて解決【永久保存版】 【個人事業主必見】確定申告の書類の書き方完全ガイド

3. 申告納税が原則なら、企業は源泉徴収しなくてもいいのでは?

税金は自分で申告し、自分で納税する申告納税が原則のため、経営者はこのように考える方も多いかと思います。また、仮にフリーランスに仕事を依頼した場合、「源泉徴収しない額で送金して」と依頼される場合もあり、悩むケースも。結論として、罰則があるため源泉徴収は正しく行いましょう。

まず、罰則は誰に適用されるか。それは、源泉徴収をすべき者=企業側に罰則が適用されます。仮に企業がフリーランスなどの相手側から「源泉徴収しない額で送金して」と依頼され、その通りにした場合でも、何かあった時の罰則はフリーランスでなく企業が受けることになります。

具体的な罰則ですが、正当な理由があると認められる場合を除き、納付税額の他に不納付加算税として、納付額の10%(税務署から通知を受ける前に自主的に納付した場合は5%)が課されます。また、納付が遅れた期間に対する利息として延滞税も課されます。延滞税の利率は9%を超えるような高利率が適用されるケースがあるため注意が必要です。

3) まとめ

源泉徴収は仕組みがわかりづらく、企業側からするとどうしても手間がかかるため、省略したい気持ちもわかります。しかしながら、法律はあるが罰則がないような形骸化されたものではなく、罰則がきちんと定められ、その罰則が日常的に運用されている仕組みのため、正しく理解し源泉徴収を実施することをおススメします。


この記事は、税理士法人のむら会計 野村 篤史様に寄稿いただきました。 経営ハッカーでは、記事制作にご協力いただける方を募集しております。 お申し込みはこちらから