事業承継の基本

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事業承継に関して経営者が知っておくべき論点を公認会計士が説明します

相続税の増税や中小企業の後継者難もあり、昨今特に事業承継が注目されています。ただ、一言で「事業承継」と言っても、実はたくさんの論点が含まれた概念なのです。今回は、この「事業承継」について、経営者が知っておくべきポイントについて幅広くご説明します。

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1)事業承継とは

どんな事業にも、お客様があり、仕入先や外注先があり、従業員・経営者やその家族があります。また、場合によっては他の出資者があるかもしれません。経営者は、これらの関係者全ての幸せために、事業を継続させていく義務があります。
しかし、これらを構成しているのは全て人間ですから、未来永劫同じように続くという訳にはいきません。特に経営者は、現在経営している事業をいずれ誰かに引き継がせなければならない宿命を負っています。

また事業は、一つの生き物であるとも言えます。生き物が新陳代謝により生命を維持しているのと同様、事業も常に新しいチャレンジや成長を目指し、人や物の出入りがあり、そして資金が循環していなくては衰弱してしまいます。

経営者は、現在の経営だけではなく、事業を取り巻く関係者全てのために、自分がいなくなった後も、事業が長い期間生き物のように継続し、成長すること、すなわち「事業承継」を常に意識し、実践していく必要があるのです。

このコラムは、事業を継続する上で大変重要となる「事業承継」について経営者が知っておくべき事柄について、幅広くご説明します。

2)事業承継について知っておくべきこと

経営者が事業承継について知っておくべきこと、考えておくべきことは、大きく分けると以下の5点になります。

1.対象の観点…事業を構成する「ヒト・モノ・カネ」
2.方法の観点…どのような方法で事業承継を行うか
3.法律の観点…事業承継に関係する法律にはどのようなものがあるか
4.専門家の利用…どのような専門家を活用すべきか
5.ロードマップ…長期間にわたる事業承継方針

3)ヒト・モノ・カネ

よく言われるように、事業は「ヒト・モノ・カネ」の集合体です。このため、事業承継を考える際には、その事業がどのような「ヒト・モノ・カネ」から構成されているかを認識する必要があります。
しかし、「ヒト・モノ・カネ」を、「人、物、金」と単純にとらえると、事業承継は上手くいきません。

例えば、ヒトの側面については、単独の人材について採用や教育を考えるだけではなく、事業を構成する「組織」のあり方、将来の姿なども含めて十分に検討する必要があります。
また、モノの側面については、生産設備や車両・備品、事業所などの不動産といった物理的財産だけではなく、特許や商標、ノウハウなどといった無形の知的財産も将来に渡って大変重要な役割を担っています。
最後にカネの側面においては、単に事業が動かしている金銭だけではなく、出資や借入金など資金の源泉も認識しておく必要があります。もちろん、上場による資金調達などもこの分野に入ります。

さらに重要なのは、これら「ヒト・モノ・カネ」はそれぞれ単独の概念ではなく、有機的に結びついているという点を理解することです。例えば、「ヒト」についての意思決定(人材採用方針など)は「モノ・カネ」に関する意思決定(設備投資や資金調達計画)に大きな影響を与えますし、「カネ」に関する制約(資金繰り)はそのまま「ヒト・モノ」の制約となります。

事業承継においては、これらの側面を「長い期間に渡り事業が継続して収益を上げて行くための仕組み」としてとらえることが重要です。

4)事業承継の方法

事業承継の方法には、大きく分けて以下の3点があります。

・親族に対する承継
・従業員等への承継
・M&A(合併・買収
親族に対する承継とは、例えば経営者の子供や兄弟など、親族に対して事業を譲り渡すことを言います。親族の場合は単なるビジネスを超えた信用がある反面、他人との間にはあり得ない確執を生みだす場合があり、その両面が事業承継に大きな影響を与えます。また、親族間には他人間とは違い相続制度の影響を受ける場合があるため、他の承継とは相当大きく異なる配慮や対応をする必要が出てきます。例えば、他人への事業承継が原則として有償(金銭などを支払う)譲渡となるのに対し、親族の場合には、無償での移転(相続など)があり得ます。また、医業・歯科医業や各種士業のように、比較的難しい資格を獲得しなければ事業が承継出来ない場合もありますが、親族にそのような資格者がいない、能力が乏しい場合には事業承継の大きな障壁となってしまいます。

長年経営者を支えてきた従業員(親族外の取締役も含みます)への事業承継は、事業や取引先の安定した継続を考えた場合、大変良い方法です。社外の取引先にとって、これまで現場で対応してきた者がそのまま経営者となる訳ですから、安心して取引ができる訳です。しかしながら、元の経営者が持つカリスマ性が失われたり、現場主義のあまり中長期を見据えた経営がなされなかったりといった問題点があります(但しこれは親族間の承継においても発生しうる問題です)。

M&Aによる承継は、昨今急激に増加しています。M&Aには単純な合併・買収だけではなく、営業譲渡や株式交換などの組織再編手法を用いた方法、合弁など様々な方法が用意されています。この手法は、良い承継者を見つけた場合には事業そのものの承継には非常に良い効果を発揮することが見込まれますが、反面、元の経営者がどのように創業者利益を獲得するかという点については十分な検討が必要となります。また、M&Aの相手を見つける方法(自ら探すか、仲介業者を活用するか等)も大変重要です。

5)法律

事業承継を考える際、一種の「制限」として考えておかなければならないのが法律の分野です。我が国は法治国家ですから、弱者が一方的に不利となったり、利害関係者を騙して不当な利益を得たりするような行為は法の下防ぐ必要があります。事業承継は、経営者にとってそのような誘因が発生しやすい分野でもありますので、様々な法律が定められています。主なものは以下の通りです。

民法

事業を行う上で必要となる基本的なルールが定められています。権利義務や債権債務、財産権などが主ですが、時効に関する規定も重要です。その他、民法においては親族間承継で大変重要になる相続に関しても細かく定められています。

会社法

事業を行う上でもっとも一般的な「株式会社」を中心に、会社の有り方(従業員、役員、株主などの関係や、運営の方法、情報開示方法など)を定めた法律です。

相続税法

時々混同されている方がありますが、「相続」と「相続税」は全く別物です。相続は前述の民法に規定された「人が亡くなった場合の決まり」ですが、相続税は「相続があった場合の税金計算」について定めています。
相続税の負担は比較的大きいですが、工夫(相続対策)によって大きく税負担額が変わる場合もあります。

その他の法律

様々な業種にはそれぞれ法的な規制が置かれている場合が多くあります。また、これらの規制に基づき、多くの場合は関係する役所等への届出を行わなければ事業が継続できなくなってしまう可能性もあります。そのため、上記の基本的な法律のみならず、事業が関係する法律やその規制内容については十分知っておく必要があります。

6)専門家の利用

ここまで説明しました通り、事業承継に関して、経営者は様々な点について認識しておく必要があります。しかしながら、「ヒト・モノ・カネ」はともかく、事業承継の方法や法律分野は、その専門家ではない経営者にとって理解することが非常に難しいものとなっています。

そこで通常、事業承継に関して経営者は各種の専門家を活用します。専門家の例は、以下の通りです。

  • ヒト・モノ・カネ…人材育成、技術、経営、保険・金融などのコンサルタント
  • 法律…弁護士(法律全般)、司法書士(社内手続や登記)、税理士(税務)、社会保険労務士(労務)
  • 事業承継の方法…公認会計士、弁護士、M&Aコンサルタント

中小企業の場合は稀かもしれませんが、事業承継を目的として社外取締役を採用する場合もあります。

重要なのは、「どのような専門家を、どのようなタイミングで、またどのように活用するか」という意思決定を、経営者が熟慮の上正しく行うことに尽きます。この意思決定については様々な論点があり一概には言えませんが、唯一「専門家が決定するのではなく、専門家の提供する情報に基づいて経営者が意思決定する」ことが最も重要であると言えます。

7)ロードマップ

冒頭でも述べた通り、経営者はどんな段階でも事業承継のことを考えておかなければなりません。相当なご高齢になってから事業承継を考える経営者ならともかく、まだ十分に活躍している経営者の場合は実際の事業承継までかなりの時間がかかる場合があります。

となると、経営者は自らの事業承継について明確なロードマップ(中長期の基本方針)を認識しておく必要があります。このような方針は、経営者自身だけではなく他の役員や従業員、専門家など事業承継に関わる全ての関係者にとって指針となるからです。

しかしながら、このロードマップについても一度決めたら終わりというものではありません。事業は生き物であり、新陳代謝もあれば成長も退化もあり得ます。また、残念ながら大きなダメージや廃業といったリスクもあります。事業はこのような変化に常にさらされていますから、事業承継のロードマップについても常に一つの形にとらわれず、機動的に適応していく必要があります。そのためには、事業承継に関するシミュレーション等によって常に現状を正確に把握しておくことが重要です。

8)まとめ

ここまで、非常に簡単ですが事業承継に関して経営者が知っておくべき論点を幅広く説明しました。
私が事業承継に関する仕事に携わっていて常に感じるのは、経営者にとって事業承継は「一種のリスクマネジメントである」という考え方です。経営者は、「長期間にわたる事業の継続」という非常に大きなリスクを、日ごろの経営や事業承継対策によって少なくすることが経営者に与えられた最も大きな課題なのです。

以上

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目次

  1. 法人にも確定申告って必要なの?
  2. 法人税とは
  3. 法人の確定申告の全体的な流れ
  4. まずは法人決算書と勘定科目内訳明細書
  5. 法人税の申告書類の作り方
  6. 作成した申告書を提出して納税する
  7. 最後に
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