【元起業家、退いた事業を振り返る:後編】 事業が軌道に乗らないと、朝の起床がとてつもない恐怖と化す

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前回に続き、現在はfreeeで働く元起業家の宇津木さんに、起業に至った理由や経緯を取材した回の続きです。

後編では、失敗続きだった事業がようやく軌道に乗り、「順風満帆!ついに成功者!」と思いきや、内心はぜんぜん満足できていなかったこと。やがて事業から退き、心機一転してfreee入社に至った話をご紹介します。

宇津木さんプロフィール

青山学院大学理工学部卒。インターンとして関わっていたベンチャー企業に新卒として入社。事業部長として事業拡大に貢献し、5年目に本事業を買収し独立。その後改めてゼロから事業を作りたいと考え、中小企業向けに集客支援クラウドサービスを提供する会社を設立し2度目の独立。2015年にfreeeに参画し、セールス内のコンサル営業チームに従事。

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仕事がうまくいかないと、朝の起床が恐怖と化す

ずっとお話聞いてまして、まだ何ひとつうまくいってないですよね。失敗を繰り返していると、どういう精神状態になってくるんでしょう?

だんだん起床が辛くなってきます。朝を迎えるのが怖いんです

朝?夜に眠れなくなるんじゃなくて?

目覚めとともに恐怖に襲われるんですよ。「こんな状態が続いてこれから生きていけるのか、生活をどう維持しよう、計画中のサービスは穴だらけでとても世に出せる代物ではない…もうダメだ…」ってマイナス思考になります

その恐怖は、起業未体験の私にはわからない感覚ですね

あと、周囲と自分を比較してしまいます。同級生の中には結婚したり、子供が生まれたり、知り合いの起業家たちはそれなりに成功していたので、これも劣等感を刺激しました

みじめな自分の境遇と同年代の成功者を照らし合わせて、その落差にショックを受けて落ち込む……それなら私も経験があるのでわかる気がする

爽やかな早朝に、「年金どうなるんだろ…老人になって身体が動かなくなったらどう生きればいいんだろ…」って考えてしまい、落ち込むんです。これは辛いですよ

完全な負のスパイラルにはまってしまったんですね

だから、目が覚めたくない、起きたくない、起床が怖いって考えて、「ならば寝なければいいのだ」という結論にいたりまして

何の解決にもなっていないですが、それは徹夜するってことですか?

それに近いです。深夜はサービス開発で手を動かしまくっているので、ハイになっているんです。「よしっ!いい仕上がりだぞ。このサービスは大ヒット間違いなしだ」ってワクワクしながら床に就くんです

でも、朝起きて我に返るんですね

「やっぱダメだ…」の繰り返しでした(笑)

祖母の葬式で、命の連鎖の重みを感じた

妙な例えですけど、深夜に書いたラブレターを翌朝読んで、赤面するかんじですか?

それに近いです(笑)。そのうち、「人は何のために生きるのか」というような哲学的なことばかり考えるようになっていました。仕事すらないのに(笑)

へんな思考回路になりかけたんですね

そんな時期に祖母が亡くなり、葬式に参列したんです。親戚が25人ほど集まったでしょうか

はいはい

勢ぞろいした親戚らを眺めながら思ったんですよ。「ばあちゃんがいなかったら、子孫である我々25人はこの世にいなかったんだよなぁ」と

命の連鎖、的なものを意識したんですかね

「命を自分の判断で絶ってはいけない、血というか一族の連鎖を断つのは良くないことだ」って思い至ったんです。偶然に親戚の中に「つむぎちゃん」という赤ちゃんがいて、「命を紡ぐってことか!」ってハッとなって、人間は一生懸命に生きなくちゃいけないんだって気持ちを新たにできたんです

順風満帆な時期であれば、そんなこと考えもしなかったかも

ですね。「人間は何のために生きるのか」とか「自分はどう生きるべきなのか」って悶々と考えていた時期だったから、親戚一同を眺めながらそう思えたんじゃないかなと。てゆうか、このくだり怪しくないですかね(笑)。大丈夫ですかね?

ぜんぜん大丈夫です。むしろもっと聞きたい

祖母の葬式を機に事業が軌道に乗るも、拭えない不満に襲われる

そこで気持ちを強く持つことができたんですか

そうです。しかも不思議なもので、くすぶっていた事業が祖母の葬式を機に軌道に乗りはじめました。最終的に、さほど働かなくても生活が成り立つ収入が得られるようになったんです

それはよかった。今思えば、お葬式がターニングポイントだったんでしょうね

しゃかりきに働かなくてもお金が入ってきましたから、平日の昼間に「鎌倉の海でも眺めに行くか」と海辺のカフェでのんびりノマドしたりして、しばらくはその生活は楽しかったです。「自分もついに勝ち組になったのかな」なんて思いかけました

まるで、その生活が長続きしなかったかのような口ぶりですね

しばらくしたら、「あれ?オレは何のために事業しているんだっけ」と冷静になりまして、「好きなことにフルパワーで打ち込む」ことが自分の幸せなのに、それができていない

ラクすぎて面白くない、と?

社会人の生活って、極端に言うと「仕事」と「睡眠(&プライベート)」で構成されているじゃないですか。1日の大半を労働に費やしているわけで、だったら仕事を大好きになりたいでしょう?

ですね。遊ぶように働けたら最高に幸せですよね

[そんな思いを知人らにぶつけてみたんです。そしたら、「お前、転職活動でもしてみたら」って言われました。「新卒でインターンしてた会社に就職 >> 起業」って流れでずっと生きてきたので、転職という選択肢にまったく気づいていなかったんですよ。その手があったか、と

転職活動してみた中のひとつがfreeeだったんですね

ええ。ダントツでワクワクしたのがfreeeでした。自分が元々やっていたクラウドって領域で共通していたし、中小企業をクラウドで支援するということをずっとやっていたので、freeeのビジョンにもむちゃくちゃ共感しました。あと、いろんなバックグラウンドの社員がいて、多様性を大切にしているって知れたのも大きいです。とくに下の二つの記事に出会えたのがよかった

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※宇津木さん(左)

freeeにジョインすることに迷いはなかった?

なかったと言えばウソになります。一人(or 少人数)でしか働いた経験しかなかったので、集団の中ででうまく働けるか、不安はありました

[ひとつイジワルな質問をしていいですか?それなりに成功をおさめかけていた起業家が勤め人になるのって、なにかしらの「負けた感」って感じるものですか?

元経営者が会社に転職している時点で、なんらかの失敗はしているって認めているようなものですので、別に気にはしていないです。完全なゼロと言ったらウソになりますけど(笑)

正直に答えてくださって、ありがとうございます(笑)

元起業家ではありますが、そんなの関係なしで「新卒のつもりでガムシャラに働く」って覚悟で入社しました。freeeで働き始めて1年ちょっとが過ぎましたが、今の職場には大満足してます

言い切りましたね

人生の1秒たりとも無駄にしていないって断言できるくらい、充実しまくってます

私はまだ入社して2か月に満たないですが、同感です。では最後の質問ですが、単身で起業するときって怖かったですか?

猛烈に怖かったです。当時は独身でしたけど、それでも怖い。失敗したらどうしよう、借金を抱えたらどうしようって、不安に押しつぶされそうになりました

でも、結果的に逃げずに起業してますよね。どうやって踏ん切りをつけたんですか?

考えるのやめて、法務局に行って登記してしまうんです。これは思考停止するって意味ではないです。いくら考えても答えの出ない問いを繰り返しても意味はないので、ならばいったん考えるのを強制的にストップして行動してしまうという荒療治です

まず行動が先である、と

吉と出るか凶と出るかわからないなら、思い切って行動して、それから軌道修正していくんです。結果的にうまくいったことのほうが圧倒的に多いですよ

私も肝に銘じます!



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