失敗をポジティブに捉えたい。東京銭湯代表番頭・日野氏のチャレンジとは

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自身が設立したデザイン制作会社「Superposition Inc.」と並行して株式会社東京銭湯の「代表取締役番頭」として銭湯特化型ウェブメディア「東京銭湯-TOKYO SENTO-」を運営する日野祥太郎さん。メディアのみならず、銭湯「喜楽湯」の運営を始めるなど精力的な活動を続けています。なぜ次々と事業に取り組めるのでしょうか。これまでの経験から、そのマインドをお伺いしました。

きっかけは震災で意識した「地域の結びつき」

僕が銭湯経営を始めようと思った理由はふたつあります。ひとつめは、元々銭湯が好きだったこと。ふたつめは、2011年の東日本大震災で「地域の結びつき」を考えるようになったことです。震災では、近所の方と助け合うことが求められます。だから、普段から近所の人と交流しておいた方がいいと考えました。でも、僕の近所にいる知り合いを思い浮かんだのはよく通っていた銭湯で会うおじいさんだけだったんです。

かつて銭湯は「地域のコミュニティの場」でした。同じ風呂でもスーパー銭湯はレジャー施設だし、温泉は観光施設。対して、銭湯は土地に密着して、地域の人々が気軽にコミュニケーションをとれる居場所です。

しかし現在、銭湯の数は下降傾向にあります。つまり地域の結びつきを作る場所が減ってきているんですよ。

だから僕は、銭湯を活性化させることで地域の人々が交流する場所を作りたいと思いました。そこで「株式会社東京銭湯」を立ち上げたんです。
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銭湯メディアの運営から銭湯経営へ

僕らの運営する「喜楽湯」は、もともとあった銭湯を引き継ぐ形で経営をスタートさせました。前身の喜楽湯は1950年以前からある老舗の銭湯。「東京銭湯」の取材で行ったとき、当時のオーナーさんに「(喜楽湯の経営を)やらない?」って誘われたことがきっかけでした。

僕は性格的に目立ちたがり屋。やりたいと思ったらやるタイプなんです。経営やリスクに関しては深く考えませんでした。ブレーンとなったのは、株式会社東京銭湯の取締役たちです。彼らは僕と違って冷静なタイプで僕よりも優秀。マネタイズ方法や人件費の捻出について、日々アドバイスをもらいながら助けられています。現場の番頭2人も優秀です。最近では彼らに現場の業務のすべてを任せています。

「喜楽湯」は使い勝手の良い銭湯。集客のための施策を打ちやすい

「喜楽湯」の設備や内装のほとんどは、僕らが手をつけたわけではありません。自分たちが経営する2〜3年前にすでにリフォームされていました。自分たちでリフォームする必要がなく、初期投資は少なくて済みました。銭湯は湿度や温度が高かったり、1日に大勢の人が入浴する施設のため設備が劣化しやすい。そのうえ、設備が特殊だったり、銭湯専門の業者も少なく、リフォームすると何百万円単位での出費になってしまいますからね。

また、「喜楽湯」には普通の銭湯にあるような富士の絵はありません。シンプルなのでアレンジしやすいことがメリットです。5月5日の「こどもの日」には震災があった熊本に向けて、こいのぼりに地域の子供たちのメッセージを書いてもらうイベントを実施しました。そのこいのぼりを、今では入浴場に飾っています。
tokyosento3入浴場には近隣の小学生や幼稚園生・保育園児の書いた熊本へのメッセージが飾られている

イベントを実施するにあたっては、近隣の小学校や幼稚園・保育園に営業をかけました。「子どもたちに銭湯のマナーを教え、熊本に応援メッセージを伝えようと思うんです」と言って、告知していただくようにお願いしたんですよ。実際、大勢の人に来てもらえたのは嬉しかったですね。

銭湯業界のつながりを作り、銭湯管理のノウハウを学ぶ

実際に銭湯を経営してみて気付いたのは、銭湯同士の横の繋がりが希薄なことです。そこで、メディア「東京銭湯」でさまざまな銭湯を取材しながら、つながりを作っていきました。

僕らはどの銭湯の経営者よりも、銭湯に関する知見がありません。掃除の仕方ひとつとっても、先輩たちから教えてもらっています。銭湯は効率的に掃除をしないと、全然綺麗にならないし、時間ばかりかかってしまうんですよ。そこは先人の知恵を拝借して、コツを掴んでいます。

言い方は難しいのですが、業界のしがらみなど大変なところは沢山あります(笑)。20代なら反発していたかもしれませんが、僕はいま30代。仕事で色々な人と知り合い蓄えた「人と関わる感覚」の知見を活かし、身のこなしも上手になったと思います。

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売上を伸ばすための施策を模索する

銭湯は入浴料が決まっているので、マネタイズの施策はシンプルです。当たり前ではありますが、売上は単価×人数。この2つを上げるための工夫を考えればいいわけです。

客単価に関しては、入浴料は決まっているので有料のアメニティや飲み物を購入してもらうことが鍵となります。今後は、ドリンクやサービスを充実させたり、若い人が好きそうなイマドキのアメニティグッズの販売も視野に入れています。アメニティじゃないけど、黄色いあひるのおもちゃを置いてもいいのかもしれないですね(笑)。

tokyosento5季節にあわせて内装を模様替えしているという

若年層を取り組むための工夫を凝らす

人数に関しては、前述の「5月5日のイベント」のようにイベントを企画し、一見さんを増やすことに注力しています。同時に、常連さんを増やす施策を打っていきたい。

現在、銭湯のユーザーはご年配の方が中心です。しかし、銭湯業界がこの先生き残っていくためには、20〜40代くらいまでの若年層を常連さんとして取り込まなければなりません。そのためには、ホスピタリティを高めることが必要だと考えています。

たとえば「喜楽湯」では新規で来たお客さんに「どこから来たんですか?」と声をかけて、アウェイ感をなくしてもらうような環境作りを心がけています。バーなどで見られる声がけも、銭湯でやっているところはあまりないんですよね。

これはまだ実施できていませんが、銭湯というハコを使った広告収入によるマネタイズも進めていきたいと考えています。たとえば、棚の上にスペースに広告として近隣のお店のポスターを貼るといった具合です。僕はデザイナーなので販促物を自分で作れるのが強み。自分が動ける部分でできることをやっていきたいです。

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「ネガティブに捉えるか、ポジティブに捉えるか」で、物事はいかようにも変化する

銭湯の経営はチャレンジングな行為だけど、失敗することへの恐れはありませんでした。僕は失敗が好きなんですよ。勉強が苦手なので、体感して学ぶしかないんです。失敗は学びになる、ポジティブな体験だと思っています。

こうしてポジティブに物事を捉えているのは、僕のハンディキャップにも起因しているかもしれません。じつは僕、生まれつき片方の耳が聞こえないんです。ただ、卑屈になっても仕方ありません。大事なのは、これを「障害」と感じるか「個性」と感じられるか。つまり、「ネガティブに捉えるか、ポジティブに捉えるか」で、物事はいかようにも変化するんですよね。
失敗は恥ずかしいことではない

起業したい人に対して言いたいのは、「とりあえず始めればいいじゃん」ってこと。社員100人以上の規模で始めるなら事業計画書を立てて、どこに投資するとか考えなきゃいけないだろうとは思います。でも従業員が5〜10人ほどの規模なら、そんなにガチガチに固めなくていい。

世の中、2年経つと潰れる会社が多いので、たとえ失敗しても恥ずかしくありません。最終的にはあらゆる物事をポジティブに捉えて行動できるかどうか。それさえ意識していれば、新しいことに挑戦できるのではないでしょうか。

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日野祥太郎
多摩美術大学卒業。いくつかの会社を経て、2012年に「Superposition Inc.」を設立。2015年に「株式会社東京銭湯」を立ち上げる。並行して銭湯特化型のウェブメディア「東京銭湯-TOKYO SENTO-」をローンチ。2016年4月、埼玉県川口市で銭湯「喜楽湯」の経営を開始。

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目次

  1. 個人経営主と法人のメリットを比較
  2. 会社の種類は?4つの形態の違いを比較
  3. 新会社法は会社が守るべきルール
  4. 会社は6万円の費用で設立できる
  5. 最短時間で会社を設立するための流れとは?
  6. 会社設立の際に決めるべき5つのこと
  7. 定款の作り方とは?定款は会社のルール集
  8. 電子定款の作成手順を完全解説
  9. オンラインで電子定款を送信してみよう
  10. 紙で行う定款作成・認証方法まとめ
  11. これで完了、登記の手順
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