飲食店も投資を受ける時代が来る。猿丸浩基が「PIZZA SLICE」を法人として立ち上げたワケ

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2012年代官山にオープンした「PIZZA SLICE」。クオリティの高いピザとこだわりの外観・内観でオシャレに敏感な層の心を掴み、一躍人気店となりました。

2015年には表参道に二号店を出店。快進撃を続ける「PIZZA SLICE」のオーナー猿丸浩基氏に店舗立ち上げから現在に至るまでのストーリーを尋ねました。

ピザ屋を始めるためにNYへ

僕がピザ屋を始めようと思ったきっかけは、幼いころに観ていたアメリカの映画やアニメーション。登場人物たちがピザを食べている姿は、僕の目にはとてもかっこよく映りました。でも、当時の家の近くにはピザ屋がなかった。ピザへの憧ればかりが膨らんでいったんです。

カット売り形式のピザに出会ったのは、僕が中学生のときです。旅行好きが高じて国内旅行では飽き足らず、ついにハワイへ。そこでカット売り形式のピザと出会ったんです。1ピースから頼めるから、ひとりでも気軽に食べられるし、安いんですよね。日本でもカット売り形式のピザは流行ると確信したんですよ。

それまではアパレルや洗車のアルバイトなど職業を転々としていたのですが、大人になってもピザへの思いは消えず、25歳になったときにピザ屋を経営しようと決意。修行のためNYへ行ったんです。

誰もやらないことをやって認めてもらう

NYではピザの技術だけではなく、誰もやっていないことをやる大切さを学びました。

「長いものには巻かれろ」という言葉があるように、日本の人は周囲に流されやすい傾向があるように思います。でも、NYにいる人には「他人と違うことをして認めてもらおう」というマインドがありました。だから僕も、誰もやっていないことで注目を浴びてNYの人たちに認めらたいと考えたんです。

僕が好きなのは、ピザとサブカルチャー。だからアートと音楽を融合したイベントをNYで主催しそこでピザを振る舞いました。はじめは小規模なイベントでしたが、次第にSNSで広まり、最終的には400人を集客するほどに成長しました。

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投資を受けるために法人を立ち上げる

日本に戻ってからは、真っ先に法人の立ち上げをおこないました。日本の飲食店は地元に根付いた個人経営が多いですよね。飲食店は法人ではなく個人事業主がほとんどなんです。そのスタイルでは成長性もある程度限られる。拡大していく事業に興味のある人にはあまり魅力的に映らないように思えたんです。だから、法人化して投資を受けようと考えました。

また、僕がNYにいたころは飲食に投資するビジネスが増えていました。多くの飲食を事業にした企業は投資を受けて成功していたんです。日本でも「ブルックリンブーム」にチョコレート工場を構えた企業「Mast Brothers」が報道されていたり、優秀な方が飲食の分野で投資を集めて成功していた。その姿勢がとてもカッコイイと思えたし、日本もそうあるべきだと思ったんです。

NY在住経験のある人物に投資を依頼する

投資家を探すときは、前に働いていた会社のツテをたどりました。最終的に投資をしてくれたのは、NY在住経験のある方です。正直、今の日本で飲食に投資をしてくれる人はなかなかいないかもしれません。でも、NYの飲食ブームを考えると、日本でも絶対に飲食への投資はメジャーになると信じています。

建物のオーナーに直談判

投資を受けられるようになった。次は、店舗を決めなければなりません。建物を探すときには、立地や人通りよりも建物自体のかっこよさを重視していました。そこで出会ったのが、代官山の店舗です。

pizzaslice3木材倉庫だった建物をリフォームした代官山店。巨大な入り口にはかつての面影が残る

僕がそこを見つけたときはちょうど家賃の下がっていたタイミング。ただ、同時期に入札してきた競合が3社ほどありました。

本来ならオーナーさんとのやりとりは、不動産業者の営業担当を介しておこなうもの。でも僕はどうしてもあの建物でやりたかった。だからオーナーさんに直談判したんです。「絶対に格好良いお店にします。絶対に僕のお店を入れた方がいいです」って。オーナーさんは柔軟な考えの持ち主で、実績のない僕の訴えを受け入れてくれました。

撮影場所として提供し始めたことで客足が増える

こうしてオープンした「PIZZA SLICE」。予想に反して最初は全然お客さんが来ませんでした。1日を通しても客数は4人だけのときすらあったんですよ。

でも、希望は失っていませんでした。僕は美味しいものを作っているし、お店も格好良い。もし自分がお客さんなら、絶対にこのお店のファンになると信じていました。スタッフ全員も同じ気持ちでいてくれていたのも心強かったです。売上が立たないことは辛かったけど、スタッフとスケートボードやカードゲームをしながらお客さんを待ちました。

あるとき、お客さんとして来ていた雑誌関係のカメラマンさんに撮影場所として使えないか聞かれたんです。ファッション誌だったのですが、誌面に掲載されればきっとファッションの好きな層にアプローチできる。そういった狙いもあって、お店を撮影場所として提供しはじめました。

これが口コミを呼びモデルやライターなどの雑誌関係者に広まりました。彼らがSNSにアップしたPIZZA SLICEの画像や雑誌を見て、新規のお客さんがお店に訪れてくれるようになったんです。

My sweet ANNAとPIZZA SLICE行ってきた😎♡ * * * #pizzaslice #pizzaslice2 #aoyama #omotesando #withmylove

目見田早弥子 さやこりんさん(@sayako_memida)が投稿した写真 –

モデルなどもPIZZA SLICEを訪れ、写真をSNSに投稿している

実は、初期構想からSNSでの拡散を狙っていました。内装を手掛ける段階で、写真映えしそうなスポットを作っていたんですよ。写真を撮れる場所があれば、きっとSNSにアップしてくれると考えていたんです。

「飲食店」というくくりに固執しないスタイル

SNSを飲食店で積極的に取り入れていくスタイルは、NYで400人規模のイベントを主催した経験から生まれました。当時はまだSNS黎明期でしたが、きっと飲食店も同じだろうと考えていたんです。

おそらく、SNSによる拡散を見越して内装を設計している飲食店はまだあまりないと思います。誰もやっていないような施策を考えられたのは、僕が「飲食店」というくくりに固執していなかったことが理由なのかもしれません。

従来の飲食店は、食べ物を食べにくる人だけに訴えかける施策をおこなっていましたよね。でも僕は、ファッションに興味のある人たちに興味を持ってもらう方法を考えていたんです。

たとえば内観。ブルックリン在住のアートディレクターEric Elms(エリック・エルムズ)のイラストを壁やデリバリーボックスに使用しています。サブカルチャー好きの子はオシャレな内観に加えて、こういうネタがあると嬉しいだろうな、と思ったんです。
ericelms店内のいたるこころにあしらわれているEric Elmsのイラスト

自分を信じ続けることで困難を乗り越える

立ち上げ当初はたしかにお客さんも集まらず苦労しましたが、辞めようと思ったことはありません。僕は自分を信じて疑わない節があるんです。自分がワクワクしたものは、きっと他の人もワクワクしてくれる。スタイリッシュなものを格好イイと思う感情は、他の人も持ってるハズ。

認められれるまでには時間がかかるんですけど、自分を信じるのが一番なのではないでしょうか。人と違うことをやるのは困難が多く忍耐力がいります。でも、自分が自分を信じ続ければ乗り越えていけるんですよ。

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猿丸浩基
1985年生まれ。兵庫県芦屋市出身。25歳で渡米し、ニューヨークスタイルのピザを学ぶ。2013年、東京都・代官山に「PIZZA SLICE」を立ち上げる。2016年4月には表参道に二号店「PIZZA SLICE 2」をオープンさせた。