【LLP専門税理士が解説】 LLP(有限責任事業組合)の可能性と活用法

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LLPの専門家が語るLLPの可能性

LLP(Limited Liability Partnership)というものを聞いたことがありますか?
今から11年前、2005年8月にスタートした制度で、正式名称は有限責任事業組合といい、有限責任事業組合契約に関する法律及び関連諸法令(以下、LLP法という)によって制定されています。早いものでLLP法制定から数えて、11年目を迎えました。私はLLP法制定時より、LLPの会計・税務に携わってきましたが、今改めてこのLLPは役に立つものなのか、有効活用するとすればどのように使えば良いのか、まとめてみたいと思います。

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まずはLLPについてざっくり解説

LLPの特徴について箇条書きでまとめてみました。まずはざっくり全体像をご理解下さい。

その1)

2名以上の個人又は法人が、出資を行い設立する。出資を行った者(社)は組合員となり、業務に直接関与していく必要がある。(お金だけ出す投資家という立ち位置では、ダメ)

その2)

有限責任である(組合員は出資額の範囲内で責任を負うこととなる。もちろん組合員に不法行為や過失などあった場合、その個人に損害賠償請求が及ぶことは株式会社の取締役等と同じである)。

その3)

LLPは、株式会社と同じく営利を目的とした組織である。

その4)

LLPでは弁護士、公認会計士、税理士、行政書士、弁理士などの士業並びに公営ギャンブル関係は禁止されている。

その5)

存続期間を決めなければならない(正直不要なルールだと思うが、法律なので仕方ない)。
具体的な終了時期の予定がないようであれば、30年から50年の長期で設定しておけばよい。

その6)

事業活動から出た損益を組合員に自由に分配出来る(ここが一番の誤解ポイントだが、生じた利益を分配せずに、組合内にプールしておくことや節税等を目的として合理性のない損益分配を行うことは出来ない)

その7)

構成員課税(パススルー課税)であること
すなわち、LLPが税務申告を行い法人税や消費税を支払う必要はない。しかし毎年、以下のような書類を作成しなければならない点に留意が必要。

【決算書】
組合決算における貸借対照表、損益計算書、附属明細書

【法定調書】
有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書合計表、有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書

(個人組合員の場合)
【所得税確定申告用添付書類】
有限責任事業組合の組合事業に係る所得に関する計算書、
(付表)組合事業に係る事業所得等の必要経費不算入損失額の計算書

(法人組合員の場合)
【法人税確定申告用添付書類】
法人税 別表九(二) -組合事業等による組合等損失額の損金不算入又は組合等損失超過合計額の損失算入に関する明細書

その8)

登記は第三者に組合の概要を知らしめるための行為であり、LLP成立の要件ではない。

① 有限責任事業組合契約書の締結(株式会社の定款に相当するもの)
② 出資金の払い込み(組合員の中の任意の誰かの普通預金口座へ、組合員全員が出資金を送金すること)。
③ 組合契約の効力発生年月日の到来(上記①の契約書内に明記することとなる)。

以上の3条件を全て満たした時点でLLPは成立します。株式会社や合同会社は法務局に設立登記申請を行って初めて成立するのに対して、LLPは異なる点に留意が必要です。

登記簿に記載される主な内容は、以下の通り

社名:
所在地:
事業内容:
組合員の氏名(名称)及び住所:

細かい話かもしれませんが、出資金の額は登記事項ではないため、どれだけの出資金(資本金のようなもの)を持っているのかは、登記簿謄本を通じて外部からは分かりません。

2)LLPのメリット、デメリットとは?

LLPのメリット、デメリットをまとめました。

① LLPの強み

その1)
民法組合(任意組合)は無限責任となるが、LLPは有限責任のためリスクを限定出来る。

その2)
民法組合(任意組合)は登記できないが、LLPは登記が可能(第三者に対する信頼性の確保)。

その3)
株式会社・合同会社は法人税が課されるが、LLPは不要でいわゆる構成員課税(パススルー課税)となる。(ちなみに、民法[任意]組合も法人税は課されない。)

その4)
組合員において、損益の取り込みは年1回(LLPの決算期末)のみとなり、LLP事業損益の計上(取り込み)時期を組合員の決算月と異なる月に設定することで、損益計上及び課税時期をコントロール出来る。

その5)
LLPの損益を出資割合に関係なく組合員に分配可能(組合員が家族や利害関係者の場合、合理性が必須)。組合員が家族や利害関係者の場合、合理性が必須であるが、その寄与度合の考え方に、明確な規定がある訳ではないため、ある程度の自由裁量(幅)が許容され得ることが魅力。

その6)
組織運営のルールをほぼ自由に決められる(基本的に自由自治が認められている)。

その7)
次のような複数の個人・法人による共同事業のメリットが期待できる
-相互補完メリット
-相乗効果(シナジー)
-スケールメリット など

② LLPの弱み

その1)
許認可事業に向かない(LLPとして各種許認可を取得することが、ほぼ不可能なため)。

その2)
銀行口座は開設出来るが、証券会社口座は開設が困難。

その3)
LLPに法人格がないため、不動産登記や知的所有権を所有する場合、組合員の共有財産(持ち分)となる。すなわち、組合員の脱退や新規加入の都度、登記変更等手続きが必要となり煩わしさを伴う。

その4)
LLPの組合員が個人の場合、個人の所得税が適用されるため、売上を請求する際、源泉徴収が必要となる場合がある(個人が同じサービスを提供した場合に源泉徴収が必要であれば、LLPを通じても同様で、源泉徴収が必要)。

その5)
会計処理が簡単ではなく、個人の青色申告程度の体制では無理(法人の会計処理を行う場合と同等の体制が必要)。

その6)
個々の組合員には、株式会社で言うところの、株主兼代表取締役のような権限があるため、組合員の人数が多く(3-5名程度以上)なると意思統一が難しい(ある程度は内部自治により制度設計することで回避が可能)。

3)LLPの有効活用術

LLPはどのような場面で有効に機能するのか、3つの例示について解説します。

その1)友人同士や個人と企業による共同事業

複数の個人や法人がそれぞれの強みを持ち寄り、1つの事業を展開する場合、LLPはその受け皿として最適。「事業から生じた利益を組合員で分け合いたい」という場合は是非LLPを検討してください。但し、上述の「LLPの弱み」が事業に影響しないことは事前チェックが必須となります。

その2)ファミリービジネス

家族で営む個人事業の場合、家族の中で中心となる人が事業所得として確定申告し、その他の家族はその個人事業から給与をもらうという形が一般的。また会社を興して家族で経営する場合、基本的に役員報酬又は給与となり、全員給与所得を得る形となります。しかし、LLPであれば事業に関与する家族全員が個々に個人事業を行うという形に変化させることが可能。節税面で検討する価値があると言えます。詳しくは 個人事業主の節税対策!節税本には載っていないポイントを税理士が解説『5)節税の極意の中の極意(難易度C)』を参考にして下さい。

その3)共同投資事業

現在、他人から投資を受けて事業を行うことは非常に難しいです。何故なら投資家&運用者という構図が成立するものは全て金融商品取引法の対象となり、許認可がないと違法となってしまうから。では免許を取れば...と思うかもしれませんが、そのハードルはかなり高く、免許がないと投資家の募集から投資資金の運用まで全てアウトとなります。

そこで脚光を浴びたのがLLP。LLPは共同事業のため投資家&運用者という構図になりません。組合員の全員が投資家兼運用者となります。そのため、このスキームに関して数多く問い合わせを受けてきましたが、結論から言って、実態が伴っていないとアウトとなります。すなわちLLPの組合員と称して投資家を募り出資を受け、実質的な運用を行う組合員が投資や事業を行う行為は、共同事業性が否認され結果的に、金融商品取引法の対象となり無免許の場合、アウトとなってしまいます。

では全く駄目かというとそうではありません。

投資家を募るのではなく、事業(投資)計画に賛同する個人や法人とともに共同事業として実施することで、金融商品取引法の対象外になると解されます。あくまでも実態が問われるので十分注意が必要ですが、資金運用したい投資家と資金を集めたい運用者とが、投資家&運用者という構図になるのではなく、共同事業(投資)として行うことはおかしな話ではありません。

実務上の話として、詐欺まがいの行為は論外ですが、金融商品取引法に触れるのか否かが実際に問われるというのは次のような場合です。共同で設立したLLPの事業が失敗し、多大な損失が生じた場合、大きな損害を被った組合員から次のようなクレームが出ることで懸念されます。

「そもそも、私は出資(投資)しただけで、事業や運用に関与していない」
「儲かると聞いて、投資しただけだ」
「そもそも、無免許なので金融商品取引法に抵触するのではないか?」

LLP事業の企画立案から立ち上げまで行ってきた、中核の組合員は事業が失敗するだけでなく、別の組合員から訴えられるというリスクも抱えることとなるので、十分検討が必要です。LLPによる共同投資事業については、当初から共同事業性を十分確保出来ていることが最重要ポイントとなります。

4)詳しいLLPによる節税術

節税面からLLPはどのような効果をもたらすことがあるのか、少し踏み込んで解説します。

その1)消費税の課税売上の分散

消費税は基本的に2年前の税込課税売上が1000万円を超えると納税義務者になるわけですが、LLPで共同事業を行う場合、その売上も組合員で分け合うこととなります。つまり課税売上を組合員の数で割ることが可能となり、結果的に各人の課税売上が1000万円以下となり、納税義務が生じない場合が考えられます。例えば、LLPの年商3000万円、組合員4名(個人)で損益分配割合が均等の場合、各人の課税売上は750万円(1000万円以下)となり、消費税の納税義務が個人組合員4名の全員について、生じないこととなります。

その2)役員報酬の事業所得化

会社を設立して共同事業を行う場合、その出資者兼経営者は役員報酬として事業収益を獲得することとなります。しかし、役員報酬は事業年度を通じて変更することが出来ない(原則期首から3カ月以内のみ変更可能)ため、会社が生み出した利益を自由に役員報酬としてもらうことが出来ません。(厳密にはもらうことは出来るが、会社の経費とならず、所得税と法人税の両方が課税される結果となるため)

事業年度の初めに月額の役員報酬を決め、仮にその年度赤字になろうとその役員報酬をもらい続け、その報酬に対する所得税・住民税を払うこととなります。しかしLLPを通じての個人事業であれば、年間を通じて生じた利益を事業所得として所得税・住民税が課されだけで、赤字の場合は所得税ゼロ、住民税も最低税額のみ。その他の要因も総合勘案する必要がありますが、法人として1年間変更出来ない役員報酬を設定して所得税・住民税を支払うよりも、個人の事業所得として儲かった所得に対する所得税・住民税だけ支払うのが無駄がないと言えます。
※LLP事業(個人組合員)による所得(利益)の分配額が年間700-800万円以上になってくると所得税(超過累進税率による課税)の負担が重くなってくることから、更なるプランニングが必要となってきます。

その3)社会保険加入義務の回避(税務ではないが)

会社を立ち上げ、共同事業者がそれぞれ役員報酬として給与をもらう場合、社会保険に加入することとなります。しかし、個人がLLPとして事業を行う場合、各人それぞれが個人事業主となるため、社会保険の加入義務は生じません。
※但し、LLPが従業員を雇った場合、その従業員に関して社会保険の加入義務が生じます。

その4)損益計上時期のコントロール

LLPとして事業を行う場合、会計年度を定める必要があります。仮に法人組合員(3月決算法人)がLLP事業を行ったとして、そのLLPの決算期末が4月とすると、
LLPの損益は4月に計上されるので、法人決算の3月の後ということになります。すなわちその法人側から見ると3月の決算には損益を取り込むのではなく、その翌年の3月決算に取り込むこととなります。結果として大きな利益がLLP事業で生じていた場合、その利益に対しての納税は、LLPの決算期末の4月から11カ月後の翌年3月の法人決算にて税金計算を行い納税することとなります。

重要なことはこの11カ月の間で、LLP利益の法人組合員自身の事業へ再投資が可能ということ。通常1年を通じて生じた利益は、まず法人税を納税し残った残余利益を事業に再投資するしかないですが、LLPの場合、決算期末が組合員の決算期末と一致しないことで課税の繰り延べ効果が生じることとなります。もし多額の損失がLLPで生じた場合はその損失の計上が先送りされることで納税額の圧縮が出来ず、逆にデメリットです。このように絶対的に節税になるというものではないですが、その点がかえって、税務署側から租税回避という指摘を受けないためには都合が良いとも言えます。

以上、税務上の取扱いについては、必ず専門家のアドバイスのもと実施する必要がありますので、十分ご留意して下さい。

LLPは分かりにくく馴染みがないため、取っ付きにくいと思うかもしれません。しかし、他にない面白い特徴を持ったLLPには無限の可能性があると思います。

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目次

  1. 法人決算と提出処理
  2. 会計ソフトの目的
  3. freeの特徴
  4. 日々の経理におけるfreeeの操作方法
  5. freeeを使った収支分析
  6. 決算申告に必要な作業
  7. freeで行う決算書作成
  8. 税理士の役割
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