海外への輸出入取引をされる方が、より適切な税務申告をできるようになるために

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昨今では、インターネットを利用した販売が活発となっており、特にAmazonを始めとする楽天市場、Yahooショッピング、Yahooオークション、メルカリ等のプラットホームを利用した販売者は日々増加傾向にあります。

上記のようなプラットホームを利用した販売は、従来の「企業から個人へ販売する」ビジネスモデルとは違い、「個人から個人へ販売する」ビジネスモデルを新たに確立しました。

またAmazonやE-bayといった海外発のプラットホームの参入により、日本国内への販売に限らず、海外への販売も比較的容易に出来るようになりました。

しかし、海外へ商品を販売する際には、非常に難解な税務上の論点が多々あります。
例を挙げますと、日本国内の消費税の還付、通関時の関税、輸出先国の税金(代表的なものとして、米国ではSalesTax、欧州では付加価値税)の申告の要否等といった論点です。

非常に残念ながら、このような税務上の論点に対して適切な対応が出来ず、後日の税務調査で否認されるケースが数多くあります(実際に、日本国内の消費税還付の取り消し、欧州付加価値税の無申告による追徴課税といったケースが生じています)。

特に最近では、OECD(経済協力開発機構)を主導としたBEPS(税源浸食と利益移転)最終報告書が公表されたことにより、「インターネットを利用した海外への輸出入取引」について、世界各国が足並みをそろえて課税を強化しようという動きがあり、日本国内においても税制が改正される等、環境が頻繁に変化しています。

海外への輸出入取引をされる方がより適切な税務申告ができるよう、何回かに分けて、インターネットを利用して海外へ販売をされる場合の注意点について解説します。

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海外への販売を行う場合、消費税還付を受けることが重要

まず本記事では、海外への輸出取引をされる場合に非常に重要な「消費税還付」について取り上げます。

消費税還付とは、仕入や経費の支払い時に支払った消費税額が、後日の税務申告により、還付される制度の事です。輸出販売をされる方は、この消費税還付を受ける事により、仕入等で支払った8%分の消費税額が還付されるため、薄利多売のビジネスでは非常に重要な利益源となります。ライバルセラーに負けないためにも、ここは必ず抑えておきたい論点です。

なお「消費税還付」というキーワードは、海外への輸出販売を経験されている方の場合、既に身近なキーワードではないかと思います。しかし、実際にどのような資料を準備しなければいけないのかを十分に把握されていない方が多く、結果的に誤った税務処理に繋がるケースが珍しくありません。

よくある勘違いとして、「税理士に依頼(丸投げ)しておけば消費税還付は受けられる」というものがあります。しかし、輸出販売での消費税還付の実務は「税理士に丸投げするだけでは不十分」であり、実際には、「お客様自身で数多くの資料を準備しなければいけない」ケースが数多くあります。この事実を十分に把握しているか否かにより、「適切な税務申告=税務調査で否認されない消費税還付」を受けられるかが決まります。本記事ではこちらについても合わせてご説明いたします。

消費税の計算方法を理解しよう

さて、まずは簡単に消費税の納税額・還付額の計算方法をご説明いたします。

消費税の納税額・還付額の計算方法は、「売上に含まれる消費税額(預り消費税)」から「仕入・経費に含まれる消費税額(支払い消費税)」を差し引く事で金額を算定します。こちらは非常に重要なポイントですので、以下で数値例を交えながら説明いたします。

<原則>

原則として、国内の顧客に商品を販売する場合、消費税を含めた金額で商品を販売する必要があります。

国内売上額:540円→500円+40円(8%分の売上に含まれる消費税額)
仕入・経費:324円→300円+24円(8%分の仕入・経費に含まれる消費税額)
納税すべき消費税額:40円-24円=16円(納税額)

このように、国内販売のみの場合は、仕入・経費に含まれる消費税額(24円)よりも、売上に含まれる消費税額(40円)の方が多いため、16円(40円-24円)の納税となります。

<特例~輸出販売のみをされる場合>

一方、海外へ輸出する場合は、「輸出免税」と呼ばれる特例があります。
輸出免税の特例を適用した場合、以下のような計算例に変わります。

輸出売上額:540円→500円+ 0円(輸出免税の特例によりゼロと見做されます)
仕入・経費:324円→300円+24円(8%分の仕入・経費に含まれる消費税額)
還付される消費税額:0円-24円=△24円(還付額)

輸出免税の特例により、売上に含まれる消費税額はゼロと見做されます。その結果、売上に含まれる消費税額(0円)よりも、仕入・経費に含まれる消費税額(24円)の方が多くなるため、仕入・経費に含まれる消費税額24円(0円-24円)が全額還付される事になります。

<国内販売と輸出販売を同時に行う場合>

なお、実務上は国内販売と輸出販売を同時に行う事例がありますので、こちらも合わせてご説明いたします。

国内売上額:270円→250円+20円(8%分の売上に含まれる消費税額)
輸出売上額:250円→250円+ 0円(輸出免税の特例によりゼロと見做されます)
仕入・経費:324円→300円+24円(8%分の仕入・経費に含まれる消費税額)
還付される消費税額:20円-24円=△4円(還付額)

国内販売と輸出販売を同時に行う場合であっても、あくまで「売上に含まれる消費税額(20円)」から「仕入・経費に含まれる消費税額(24円)」を差し引いた金額によって、納税額・還付額(今回は4円の還付)が算定される事になります。

上記の内容が、消費税の計算方法の概要になります。

このように、輸出販売をされる方の場合は、輸出免税の特例=消費税還付(以下、消費税還付)を受ける事が非常に重要なポイントとなります。ただし、消費税還付を受けるためには、消費税法で定められた厳しい要件を全て満たす必要があります。この点について、以下で順にご説明いたします。

消費税還付を受けるためには「帳簿要件」を満たすことが必須

消費税法では、消費税還付を受けるための要件として、以下の事項を帳簿に記載するように求めています。

<売上>
  1. 販売先の氏名又は名称
  2. 年月日
  3. 商品名、商品毎の数量及び価額
  4. 資産の譲渡等の対価の額(税込み)
  5. 輸出先の国名、住所(仕向地)

(消費税法施行令第71条(帳簿の備付け等)、消費税法施行規則第27条(帳簿の記載事項等)、消費税法施行規則5条(輸出取引等の証明)より必要部分のみ抜粋して記載)

<仕入・経費>
  1. 相手方の氏名又は名称
  2. 年月日
  3. 資産又は役務の内容
  4. 支払対価の額

(消費税法第30条(仕入れに係る消費税額の控除))

上記の内容のうち、特に売上面については、国内の販売のみをされている方と比較して難解な内容となっています。なぜならば、国内販売のみの小売業の場合、帳簿に記載すべき内容のうち、「①販売先の氏名又は名称」、「⑤輸出先の国名、住所(仕向地)」を省略できる特例があるのに対して(消費税法第30条9項1号(仕入れに係る消費税額の控除)、消費税法施行規則第27条2項(帳簿の記載事項等))、輸出販売の場合は、原則通りすべての情報を帳簿に記載する必要があるためです。
(実際に税務調査の場合でも、必ずチェックされる箇所です。)

これらの情報を帳簿に正確に記載するためには、利用するプラットホームによって全く違う方法で情報を入手しなければいけません。この情報の入手方法が難解で、利用するプラットホームによっては、期限が定められており、当該期限を過ぎると情報の入手が出来なくなるケースもあります。

対応策としては、「税理士と協力し、事前の綿密な打ち合わせによりプラットホームに合わせた資料の受け渡し方法を決めておく」事が重要になります。(少なくとも、毎月の打ち合わせにより、資料の入手漏れがないか等の確認を取る事をお勧めします。)

また、仕入・経費の帳簿要件については、実務上は「③資産又は役務の内容」の詳細な内容まで帳簿に記載する事が困難なため、帳簿には概要を記載した上で、仕入時に発行された領収書等をファイリングし明瞭な整理を行う事により対応されるのが一般的です。(国税庁タックスアンサーNo.6497(仕入税額控除のために保存する帳簿の記載内容))

しかし、輸出販売等に限らず、インターネットを利用した販売は、薄利多売となり取り扱う商品量が膨大になる事や、インターネット仕入等により領収書の入手が上手くできないケースも多々ありますので、こちらも税理士との事前打ち合わせにより、仕入先別に「どのような証憑を準備しておくべきか」を確認しておくことが重要です。

なお、仕入先の領収書等の形式によっては、詳しい商品名等が記載されていないケースがあります。このような場合は、直接ボールペン等で内容を追記して頂く事で、帳簿要件を満たす情報を準備する必要がありますので、留意して下さい。(会計freeeでは電子帳簿保存法に対応した帳簿を作成できます。この場合は、プリントアウトの必要がなくなりますので、検討の価値は十分にあります。)

海外に商品を輸出した際の証明書が必要!

消費税還付を受けるためには、海外に商品を輸出した事を証明する書類を保管しておく必要があります。保存すべき書類は、海外に輸出した際の方法によって、以下のように分類されます。

  1. 郵便を利用した場合
    1. 20万円以下⇒輸出した相手先の国等の情報を帳簿に記載するのみで足りる
    2. 20万円超⇒輸出許可書(通知書)の保管
  2. その他の配送方法(FEDEX、UPS、DHL等のクーリエ便)等)を利用した場合
    1. 輸出許可書(通知書)の保管

このように、20万円以下の郵便による配送以外は、通関時に税関から発行される輸出許可通知書を手元に保管しなければいけません。しかし、利用する配送方法等によっては、こちらから配送会社に申請しないと、輸出許可通知書を送付してもらえない場合がありますので、この点についても、事前の調整により確実に書類を入手できるように手配する必要があります。

海外のプラットホームから請求される販売手数料に含まれる消費税額の還付方法
平成27年10月1日より改正消費税法が施行され、海外のプラットホームから請求される販売手数料に消費税額が上乗せされるようになりました。この販売手数料に含まれる消費税額についても、適切な対応をする事により、消費税還付の対象とすることが出来ます。

改正消費税法によると、販売手数料に含まれる消費税額を還付対象にするには、「登録国外事業者から発行されるインボイスの保存」を要件としています。この登録国外事業者とは、国税庁のホームページにて開示されている国外事業者の事を言います。
プラットホームを利用して輸出販売をする方は、登録国外事業者に該当するプラットホームで販売する場合にのみ、販売手数料に含まれる消費税額を還付対象とすることが出来るため、事前に登録国外事業者に該当するか否かの確認をする事が重要です。

登録国外事業者の名簿はこちら
※ページ下部の「登録国外事業者名簿はこちら」のPDFファイルをクリック

その後、登録国外事業者から発行されるインボイスの消費税額を帳簿に記載する事により、消費税額の還付を受けることが出来るようになります。

なお、細かい話になりますが、E-bayについては、登録国外事業者に登録した日付が平成28年4月28日であり、当該日付以降の販売手数料に含まれる消費税額から還付対象となるため、還付額の計算には注意が必要です。

このように、消費税還付の論点を一つとっても、入手すべき書類が多岐にわたる事や、期限を過ぎると入手が出来なくなる書類もありますので、インターネットを利用した輸出販売をされる場合は、1年後にまとめて税務対応をするのではなく、事前に適切な情報を入手した上で、必要な書類を準備できる環境を整える必要があります。

また利用されるプラットホームや、商品の仕入方法によっても準備すべき書類が変わりますので、綿密なコミュニケーションが出来る税理士との事前の打ち合わせを適切に行う事で、資料の入手漏れがなくなり、結果、「後日の税務調査で否認されない消費税還付」を実現することが出来ます。

弊事務所では、インターネットを利用した販売をされる事業者様に特化してサービスを提供しておりますので、税務上の論点への対応は勿論の事、販売手法の提案等といった売上に直結するご提案も含めた打ち合わせを行っております。

次回は、海外への商品の配送を代行業者に依頼する場合の注意点をテーマとして執筆したいと思います。

弊事務所は、Amazon、e-bay等のマーケットプレイスを利用した越境ECに特化した税務サービスを提供しております。その他に、輸入仕入による国内販売、店舗仕入によるせどり等のビジネスモデルについてもサービスを提供しております。
弊事務所の代表者は、FEDEX様/ペイオニア様/グローバルブランド様が主催する越境ECセミナーの講師役として登壇しており、日本国内の税務だけでなく、国際税務、特に欧州付加価値税に精通しております。
越境ECは、様々な国の税法が複雑に絡み合うビジネスであるため、日本国内の税務知識だけでは到底対応できません。また、世界各国で越境ECに関する税法の見直しが進んでおり、税務リスクは日々増加しております。本格的に越境ECビジネスを展開されている方は、是非、一度、弊事務所にご相談ください。 (お問い合わせの際は、弊社メールアドレス宛にご一報ください。)

*経営ハッカーでは書き手を募集しています。

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目次

  1. 法人にも確定申告って必要なの?
  2. 法人税とは
  3. 法人の確定申告の全体的な流れ
  4. まずは法人決算書と勘定科目内訳明細書
  5. 法人税の申告書類の作り方
  6. 作成した申告書を提出して納税する
  7. 最後に
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