「会社設立って面倒なイメージがあるけど実際どうなの?」 企業法務のプロに聞いてみた


※伊藤多嘉彦先生(右)

(聞き手:複業研究家/株式会社HARES 西村創一朗)

 

テクノロジーの発展によって人間の平均寿命はどんどん伸びる一方、激しい環境変化により企業の平均寿命は年々短くなっているいま、「終身雇用」はもはや幻想です。これからは日本でも「起業・独立」がキャリアプランの選択肢のひとつになっていくことは間違いありません。

筆者自身、会社員時代に自分自身が代表を務める会社をゼロから設立し、しばらくは「会社員経営者」として二足の草鞋を履いた後、年末に会社員を辞め、『二兎を追って二兎を得る生き方』をさらに世の中に広げるべく、2016年1月に独立をしました。

今後、副業解禁など働き方改革が進めば、かつての筆者のように会社員をやりながら起業する人も増えるはず。一方、現時点では日本の労働人口の約9割を会社員が占め、「会社設立って、なんとなく面倒そう」というイメージもあって、具体的な会社設立の方法はほとんど知られていません。

今回は、会社員時代に忙しい業務の合間を縫って「スキマ時間」で会社設立をした株式会社HARESの西村が、会社設立の具体的な方法について、企業法務の専門家で、スタートアップ企業の支援もされている、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の伊藤多嘉彦先生にお話を伺いました。

 

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どうやったら会社を設立できるの?会社設立までの5ステップ

西村:
今日はよろしくお願いします。僕自身、会社員時代に起業を経験したので、周囲の会社員の友人から「会社をつくりたいんだけど何からはじめたらいいの?」と相談を受けることが多いのですが、実際に起業するにはどうしたらよいのでしょうか。

 

伊藤:
一口に「起業」と言っても、大きく2つのパターンがあります。ひとつは個人事業主として開業するパターン。もうひとつは、株式会社、合同会社などの会社を設立して起業するパターンですね。個人事業主として開業する場合は「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に届け出るだけでOKですが、会社を設立する場合はもう少し手続が複雑になります。

 

西村:
確かに、個人事業主として起業した時よりも、会社を設立した時の方が大変だった記憶があります。個人事業主ではなく、会社を作りたい場合はどんな手続きが必要でしょうか。

 

伊藤:
手続的な部分に絞ってお話をすると、会社の設立を完了するには次の5つのステップが必要です。
STEP1:定款の作成
STEP2:公証人による定款の認証
STEP3:登記に必要な書類の作成
STEP4:法務局で登記の申請をする
STEP5:概ね1-2週間で登記完了(設立日は登記申請日)

 

まず、はじめに「定款」を作成しなくてはなりません。「定款」は耳慣れない言葉かもしれませんが、言わば「会社の憲法」のようなもので、会社の組織・活動の内容について定めた根本規則です。

 

西村:
「定款の作成」。STEP1から耳慣れない言葉が出てきましたね。「会社の憲法」というだけあって、「ちゃんと作らないと」「素人が作れるものなんだろうか」と気が重たくなった記憶があります。「定款」では具体的にはどんなことを定める必要があるんですか?

 

伊藤:
まず定款には、会社法上必ず記載することが義務付けられている「絶対的記載事項」があります。
【絶対的記載事項】
●目的:会社の事業目的を記載します。
●商号:会社の名称のこと。
●本店所在地:本社・本店の所在地。市区町村を記載。
●設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
●発起人の氏名又は名称及び住所
●発行可能株式総数

「絶対的記載事項」の記載が無いと、定款として無効になってしまうので、必ず定めなくてはなりません。ただ、通常は「絶対的記載事項」だけでなく、「相対的記載事項」(定款に定めないと効力が認められない事項)や「任意的記載事項」(会社が任意に定款に記載する事項)も一緒に定めることになります。

「相対的記載事項」は、取締役会を設置する旨の定め、株式譲渡制限に関する定め、取締役会を書面決議で行う旨の定めなどが典型例です。「任意的記載事項」には、取締役等の人数や事業年度、それから会社法に定められている手続について明確化のために定款にも重複して記載する内容などが含まれます。

西村さんも2年前に会社を設立されたとのことですが、定款は自分で作成されたんですか?

 

西村:
まさに僕自身、定款を作成するところでつまずいてしまった経験があります。「27歳の誕生日の日に会社を設立しよう」と決めたのは良いものの、会社を設立する上で必要な手続きがあまりに複雑で、一度挫折してしまったんです。

特に悩ましかったのが定款の作成です。本業や家事育児の合間を縫って本を読んだり、ネットで調べたり、起業経験のある知り合いに聞いたりして、おぼろげながらに「定款とはそもそも何で、どんなことを書く必要があるか」はわかったんですが、いざ自分の会社の定款を作成しようとなると、手が止まっちゃうんです。

起業経験者の友人からは「定款の作成もそうだけど、会社設立手続はとにかく面倒だから専門家に依頼しちゃうのが早いよ」とアドバイスされたんですが、お小遣いが月15000円しかない僕には専門家に依頼するようなお金はありませんでした(笑)。

結局、「面倒くさいな」という心理もあいまって、日々仕事や育児に忙殺される中、会社設立に必要な手続を先送りする日々が続きました。

 

伊藤:
そうだったのですね。

初めて起業される方にとっては、そもそも定款とは何か、どんなことを定めなくてはいけないのか、自分の会社ではどのようなことを定款に定めたほうがよいかを理解することが出発点となります。そして、定款を作成したら、次に作成した定款が正当な手続により作成されたことを公証役場で認証してもらわなくてはなりません。その後、登記に必要な書類を作成して法務局に登記を申請して、承認されてようやく会社設立が完了します。

これを全部一人でやろうとすると、本を読んだりネットで調べたりする時間も含めて何十時間とかかってしまうこともあると思います。

このように会社設立に実際に手間がかかるのは事実なので、ご友人が「会社設立は面倒だ」とアドバイスされた気持ちもよく分かります。西村さんは最初の「定款の作成」でつまずいたとのことですが、その後どうやって会社設立まで辿り着いたんですか?

 

西村:
仕事が忙しかったこともあり、しばらくは放置状態だったんですが、とあることがきっかけで改めて「起業しよう」と思って、Twitterで「決めた。起業しよう。兼業起業家。」とつぶやいたんです。

そうしたら、友人のfreeeの前村さんから「実はいま、『会社設立freee』というサービスを作っているんだけど、良かったらモニターにならないか?」と連絡があったんです。具体的に話を聞いてみると、「会社設立に必要な書類を、5分で一括作成できるサービス」だといううんです。

「でも、お高いんでしょう?」と聞くと、なんと無料※だということだったので、即決で「会社設立freee」の利用を決めました。定款の作成も含めて、「面倒な書類作成」のところでつまずいていた僕にとってはまさに「渡りに船」でした。※freeeユーザーでなければ定款代行費用5,000円(2017年6月時点)

冗談抜きに、「会社設立freee」がなかったら僕は起業していなかったかもしれません。

 

昔に比べれば、起業のハードルははるかに下がっている

西村:
「会社設立freee」のおかげで、書類作成はあっという間に終わったのですが、その後に定款認証のために公証役場に行ったり、登記申請のために法務局に行ったり、一苦労した思い出があります。会社設立って昔からこんなに大変だったんですか?

 

伊藤:
手続的には、色々面倒だと感じるかもしれませんが、それでも昔に比べれば随分ハードルは下がっているんですよ。10年以上前ですが、株式会社を作るには最低でも1000万円の資本金が必要でした。また「一人社長」ではダメで、取締役3人、監査人1人を揃える必要がありました。

2006年の会社法施行によって、こうした規制は撤廃、緩和され、資本金は最低1円以上、取締役は1名以上(代表取締役のみ)でも会社を設立できるようになったので、法的なハードルは大きく下がりました。また、インターネットやテクノロジーが普及したことによって、誰でもPCひとつあれば簡単に事業を立ち上げることができるようになったため、自分で会社を設立して事業をやってみようという人も昔に比べると増えているように思います。

 

西村:
会社法が改正されて、昔に比べれば、起業のハードルは確実に下がっているということですね。僕の場合、資本金1000万円なんて絶対用意できなかったので、会社法施行前だったら起業できてなかったですね。会社設立の手続やプロセスは簡単になっていないんですか?

 

伊藤:
実は、あまり簡単になっていません。2007年に「電子公証制度」がはじまって、定款の電子認証を受けることができるようになりました。ただ、これは原本が電子データになったことにより、印紙代を節約できるというメリットがあるくらいで、依然として公証役場に出向く必要があります。インターネットで手続が完結するというわけではないんです。また、法務局に提出する書類も押印した紙の原本を提出する必要があるなど、紙文化・ハンコ文化から脱却するのはまだまだという感じです。

 

西村:
なるほど。エストニアのようにオンラインだけで会社設立が完結できたらいいのに、と思っていたのですが、まだまだ道のりは遠いのでしょうか。

 

伊藤:
実はエストニアでも、マネーロンダリング規制等への配慮があるため、すべての手続きがオンライン完結するわけではありません。それでも日本と比べると、オンラインでの申請や作業がかなり進んでいるのは確かですね。先日、欧米のベンチャーのカンファレンスにも参加してきたのですが、申請に限らず、オンラインの普及度合いは全く違うと感じました。

 

起業家たるもの「作業」の時間を減らして「価値創出」に集中すべし

西村:
2年前の僕のように「会社設立したいけど、面倒でできていない」という人は僕の周りでも増えてきました。そういう人にとって、面倒な書類作成業務をサポートしてくれる「会社設立freee」は本当にありがたいサービスだと思うのですが、伊藤さんのような専門家は、このサービスをどのように見ていますか?

 

伊藤:
本来起業家は、会社設立に必要な知識を学んだり、書類の作成・準備という「作業」に時間を費やすのではなく、会社を通じて何を実現したいのか、社会に対して、お客様に対してどんな価値を発揮したいのか、利益を生みだすためにどんなビジネスモデルで勝負するのか、といった本質的なことに時間を投じるべきですよね。

テクノロジーの本質は、機械でもできる単純作業はテクノロジーが代替してコモディティ化し、人間が「人にしかできないこと」や「人がやった方が上手くいくこと」に集中できるようにサポートすることにあるように思うんです。

そういう意味では、テクノロジーの力で会社設立に関わる作業を極力減らす「会社設立freee」のようなサービスは、起業を志す人にとって役に立つのはもちろん、私たちのような専門家にとっても歓迎すべきサービスです。

我々のような弁護士はもちろん、税理士も会計士もそうだと思うのですが、「士業」として働いている人たちは、専門家としてバリューが発揮できるところにフォーカスして仕事をしたいと考えている人が多いです。

任せられることはシステムに代行してもらえると、我々はより専門性が求められる仕事にフォーカスできますし、起業を志す人にとっても、自分で作業する時間や専門家の作業にかかる費用を節約できることになり、双方にとってメリットがあるのではないでしょうか。

 

西村:
なるほど。専門家にとっても、よい話ということなのですね。
「会社設立freee」の使いやすさという観点からはいかがでしょうか?

 

伊藤:
先ほど、この対談の前に少しデモを見せていただく機会がありましたが、画面上の指示に従って入力したり項目を選ぶ画面も分かりやすくて、仮に将来自分自身で会社を設立することがあったら、ぜひ「会社設立freee」を使ってみたいという気持ちになりました。これ、対談用のコメントではなく、本心ですよ(笑)。

 

西村:
大変勉強になりました。伊藤先生、ありがとうございました!

 

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参考:はじめての起業と会社設立。10年つづく株式会社のつくりかた

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