「美容室のお客さんは、何にお金を払ってる?」 会社設立のプロが起業家のマーケティング支援に力を入れる理由

「美容室で髪を切ったとき、一番かっこいいのは髪を切ったときじゃないですか。それって本当にお客さんが求めてるものなんですかね?」

3,000人以上の起業家を支援してきた株式会社ウェイビーの伊藤健太代表は、多くの経営者にはマーケティングの考え方が足りないと言います。会社設立後しばらくは行政書士として会社設立を生業にしていた伊藤代表。事業や考えの変化と、背景にある想いを語っていただきました。

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多くの経営者は「なぜお金を得られるのか」を考えていない

美容室を例にとって話しますと、そもそも美容室に来るお客さんは、「かっこよくなること」、「可愛くなること」に期待してお金を払うわけです。

でも、髪を切った後の一番かっこいい(&可愛い)瞬間って、「切ってもらった当日だけ」なんです。髪が伸びるにつれ、徐々にかっこ悪くなっていく。つまり、どんどんベネフィット(利益)が失われていくんですよ。

僕のような短髪の男性だと、下手をすると2分でカットが終わってしまうわけです(笑)。でも、髪の長さに関係なく一律で同じ数千円も払わされるのは、お客さん視点からすると非常に不公平な気がしませんか?

では、お客さんが「かっこよさ」を維持できるようにするには、どうすればいいでしょうか。

例えば、翌日以降のセットの方法をレクチャーしてくれたり、こまめに少しずつ切りたい人向けに月定額で通い放題のちょっと高めの料金体系を作ってみるなど、「かっこよく居続ける」ためのサービスってもっと可能性があるはずです。

このように、サービスをより良くするヒントが「マーケティング」にあります。つまるところ、マーケティングとは、「お客様に、価値を提供すること」です。

行政書士としての支援から、起業家支援へ

少し僕自身の話をさせてください。僕は今でこそ起業家の支援をしていますが、実は7年前に自分自身で起業し、しかも7か月売上ゼロで借金もして苦しんだ経験があります。

色々な事業を検討する中で、行政書士の資格を生かして外国人のビザ問題を解決するビジネスに挑戦しましたが、それもうまく行きませんでした。

行政書士の資格登録には30万円もかかるんです。登録代金だけは回収したいと思い、その資格を生かしたものができないかと考え、会社設立のサポート事業を開始することにしました。

当時、自分自身が受けた会社設立のサービス自体を思い返すと、料金が明確ではなく、サービスにも満足できていませんでした。ここにもっと可能性があると思い、とにかくこの事業だけに一点集中をしました。

自分が設立をお願いした行政書士事務所が年間3,000社近く設立していたので、そこをベンチマークにして、もっと良いサービスを追求すれば勝ち目があると考えました。webサイトもひたすら改善し、わかりやすさにこだわった結果、最終的には年間200件の会社設立をするまでになりました。

このときは誰かを支援するような気持ちは無く、とにかく数を稼ぐことだけに注力していましたね。

年間200社の会社設立をして気づいたこと

あるとき、自分が会社設立した支援先が資金繰りに窮していることを知りました。そのとき、ただ会社を作ることに疑問を感じてしまったんですね。

そこで、「会社を作ること自体だけでは価値がない」と気づき、行政書士を法人化して、もとの会社に戻りました。その行政書士法人も設立だけでない長期的な経営サポートをしているのですが、もっとお客様の本質的な成長や成果に繋がるアプローチもできるよう、他の方法も模索し始めました。

例えば、3000人以上が参加したイベントTERAKOYAの開催や、チャレンジャーズという経営者支援事業、コワーキング施設の運営なども展開し、起業の応援では国内でも有数の会社になっていました。出版、メディア出演などでも注目され、ありがたいことに世界経済フォーラムの若手リーダーなどにも選出されました。

6年間で3,000社以上の支援をする中、起業家に足りないと最も感じることが多かったのが「マーケティングの考え方」でした。

経営者にマーケティング支援をする理由

僕の支援先には若い経営者が多いのですが、「なぜお金がもらえるのか」を分かっていない人が多いです。

口では「お客さん第一主義」と言いつつも、実際は自分主義になっている人とよく会います。マーケティングや経営に関する知識がWebで簡単に手に入る時代ですが、それを自分勝手に解釈して、自分が儲ける手段としてしか捉えられていない人ばかりなんですね。

若いのでリテラシーは高く、いろいろな手法を素早く吸収はするのですが、短期的な儲けを狙いすぎて、長期的に稼げていない。要するに、「お客さんとの信頼関係を構築していくためにどうすればいいか」という視点が欠けているのです。

彼らに必要なのは、手法ではなく、マーケティングの背景にある考え方だと思います。

ライフタイムバリューを意識する

ウェイビーではWeb制作も提供しているのですが、そこでもお客様の目的を意識してサービスを作っています。

Webサイトを作りたいお客様が求めているのは、「きれいなウェブサイト」ではなく、その後の集客です。つまり、本当は制作した”後”に価値を感じているはずなのです。

ウェイビーは制作だけでなく、集客までコミットします。一般のウェブサイト制作会社よりも長く価値を提供できるからこそ、何倍も高い金額で受注できる仕組みが作れました。

マーケティングに「ライフタイムバリュー(生涯顧客価値)」という考え方があります。

背景にあるのは、お客様に長期的に価値を提供できれば、それに応じて長期的にお金をいただけるということ。継続的に信頼されて、喜ばれるからこそ成り立つ考え方です。

いまは情報が溢れており、表面的な理解で勘違いする人がいるかもしれませんが、「継続的にラクにお金を稼ぐための考え方」とは発想が全く逆です。ただ、エクセルで長期的な売上を計算するだけの考えとは違うのです。

「長期的にお客様を幸せにすること」。それができるようになって初めて、長期的な利益が返ってくるのです。

起業環境の変化と、より重要になるマーケティング

6年間で3000社も見ていると、起業環境の移り変わりや起業家の変化を感じます。

いまは起業のハードルは下がってきており、会社設立freeeなどの技術で手続きも簡単になっていますし、多額の資本金も必要ありません。ある意味、起業自体は特別なことではなくなっています。

色々なものが手軽にアクセスできる反面、「全部をネットで完結しましょう」と考える人や、信頼関係の重要性を軽く見ている人が目につきます。

本当に稼ぎ続けるためには、「お客様にどう喜んでもらうか」について考えきることが必要です。そのために最近の起業支援ではマーケティングを重要視し、最近は本も書きました。

起業家向けにマーケティングの書籍を出した理由

繰り返しになりますが、マーケティングには経営に役に立つ考え方がたくさんあります。一方で、自分勝手な解釈に捉えられやすい言葉も少なくありません。

この本では、分かりやすいよう様々な業種やビジネス事例を紹介していますが、決してマーケティングのHowやWhat(手法)を覚えてもらうためのものではありません。なぜマーケティングの考え方が経営に必要なのか。つまり、Whyの部分を理解してもらいたいと思っています。この本によって、自分のサービスを一つ改善する人が、一人でも多くなればと思っています。

売上とは、「あなたが提供する価値に対する、お客様からの評価」

言い換えると、「お客さんが圧倒的に信頼している会社ってつぶれるんでしたっけ?」ということです。

「ビジネス」とは人との信頼関係をいかに強固し、相手に喜んでもらうのか、というところにかかっています。起業家は限られたリソースしか無いので、「お客様を幸せにする」ことにフォーカスしてもらいたいと思います。

「起業家のためのマーケティングバイブル」

慶應義塾大学在学時にリクルート主催のビジネスコンテストに優勝。就職した金融機関を9か月で退職し、23歳のときに、病気をきっかけにし、小学の大親友4名と全くの経験なし、資本金5万円で起業。7か月売上0の状態が続き、どん底を経験。ひょんなことから起業家の会社設立をお手伝いを開始。約6年が経ち、年間起業応援数5,000社以上となり、国内屈指の起業支援の会社に成長。

400社以上のコンサルティング先を持ち、ベンチャー投資も4社に渡り、特に起業家のための超実践的マーケティング手法には抜群の定評がある。起業に関する著書が23歳での出版を皮切りに、既に6冊(現在執筆含む)、NHK、産経新聞、東スポ、みずほ総研、ヤフーニュース、日刊工業新聞など多数のメディアに出演。

累積4,000人以上が参加をしている国内最大となった起業イベントTERACOYAを主催、
同じく国内最大規模の起業家のためのメディア「助っ人」を運営

2016年10月には、世界経済フォーラム(WEF)のU33世界の若手リーダーとして日本代表に選抜される。

自立した、お客さまを圧倒的に喜ばす起業家を多数輩出するべく、起業家育成コミュニティー「チャレンジャーズ」を主宰。

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