勤怠管理がロクに存在しない会社に勤務している場合、どうやって勤怠記録を保管すればよい?PCのログインは証拠になる?

労働基準法において企業は労働時間の把握義務を負っていますが、中には勤怠管理システムを整備せず、労働時間の把握を行っていない企業も多く存在します。

そうした企業に勤務している人が未払いの残業代を請求する際などに、客観的な証拠を集めるにはどうすべきなのでしょうか。

労働時間把握は企業の義務、政府も対策に本腰

まず覚えておくべきなのは、「労働時間の把握は企業の義務」ということです。厚生労働省は、2016年末より「過労死等ゼロ」緊急対策を実施しており、先ごろその一環として、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を公表しました。

これは、自己申告による労働時間と実労働時間の差について実態調査を促す、労働時間の範囲を明示するなどが定められており、企業は今後このガイドラインに沿った労働時間管理が求められます。労務管理の基本となるこのガイドラインの概要をまず把握しておきましょう。

1.適用の範囲

  • 労働基準法のうち労働時間に係る規定が適用される全ての事業場が対象事業場となる
  • 適用対象は、以下を除くすべての労働者
  1. 林業以外の農林水産業に従事する者
  2. 労務管理について経営者と一体的な立場にある管理監督者(部長、工場長など)
  3. 監視や断続的な労働に従事する者で、労働基準監督署から許可を得ている場合
  4. みなし労働時間制が適用される労働者

みなし労働時間制が適用される労働者でも、みなし労働時間に当たらない勤務時間(事務作業など)は勤務時間を把握しなくてはいけません。また、管理監督者はガイドラインの適用範囲外とされていますが、「管理職だから」という会社の言い分も、労働基準法に照らし合わせると通用しないことも多いので、鵜呑みにしないようにしましょう。

2.「労働時間」の考え方
労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」をさします。以下についても、労働時間としてみなされます。

  • 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(ユニフォームへの着替えなど)や業務終了後の業務に関連した後始末(掃除など)を事業場内において行った時間
  • 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
  • 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
  • これらの時間を労働時間としてみなすことは、過去の判例からも明らかです。しかし、実際の現場では守られていないことも多いため、ガイドラインで新たに明示したといえます。

    3.労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置

  • 企業は労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録する。
  • 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法は、「使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録する」ほか、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する」こと。
  • 上記の確認手段がなく、労働者の自己申告制で行わざるを得ない場合。入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有しており、労働者からの自己申告で把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に明らかな差があれば、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をする。
  • 労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならない。
  • 時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認する。
  • 企業は、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならない。
  • 賃金台帳に上記事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、30 万円以下の罰金となる。
  • 企業は出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、3年間保存しなければならない。

業務日誌や手書きメモなども証拠になる

上記ガイドラインでは、企業側の記録、労働者の自己申告に加え、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録」を客観的な勤務時間の証拠としています。出退勤記録を会社側が保管していて証拠として保存できない場合は、業務日誌、出退勤時間を記したメモ、通勤に使うパスネットの印字記録、会社から自宅または家族への電話の着信記録なども、労働時間の証拠になりえます。

中には企業が、「会社からの指示ではなく、労働者が自発的に残業していた」と主張することもあります。そうした場合は、業務日誌に出退勤の時間だけでなく、業務を指示している上司の名前も記しておくと、さらに証拠能力が高まります。業務を指示すべき監督者が、残業しているのを知った上で、中止せずに放っておいたということで、業務上必要なものとして承認していたとみなされるためです。

ブラック企業戦士の味方、スマホアプリが登場

手書きメモなどの証拠の場合、未払い残業代を請求しても、信頼性に欠けるとして満額返還されないこともあります。そんなとき、最近はスマホのGPS機能で位置情報を記録できるものがあるので活用しましょう。

・残業証拠レコーダー
残業証拠レコーダー、略して「残レコ」。GPSで位置情報を取得するほか、アプリで記録した労働時間から残業代を自動推計してくれます。弁護士が設計に関わっており、アプリから、全国の弁護士に残業代請求を依頼できます。

半年ほど記録を残せば、「過去2年分の残業代を取り返せる可能性が高い」と説明しています。
ただ、アプリ自体は無料で、アプリに掲載されている弁護士に依頼する場合は出退勤記録(証明書)の確認も無料で可能ですが、自分で確認したい場合や任意の弁護士に依頼したい場合は5万4,000円の手数料がかかります。

・俺の残業代がこんなに少ないわけがない
略して「俺残」。GPSで位置情報を取得するだけでなく、全国の残業企業戦士が集う「残業広場」を用意。同じ状況にある仲間たちと励まし合えます。また、「応援キャラ設定」という項目があり、「妹」や「秘書」などのキャラクターが残業時間や状況に応じたメッセージを投げかけてくれます。このアプリは、自分の勤務時間を無料で確認できるので、使い勝手がよいと評判です。

これらのスマホアプリなら、機械的に勤務情報を取得するので証拠として信頼性が高く、法廷でもその効力が認められています。勤怠管理がロクにされていないブラック企業で働く戦士の強い味方といえるでしょう。