有給休暇を会社に買い取りさせることは可能なのか?

旅行会社のエクスペディア・ジャパンが2016年に実施した調査によると、日本の有給消化率は50%と、調査対象(28の国と地域)の中で最下位という結果でした。(出典:エクスペディア・ジャパン「有給消化率3年ぶりに最下位に!有給休暇国際比較調査2016」 )

毎年、消化できず消えていく有給を前に、「休みがとれないなら、せめて買い取りでお金に換えたい」と思っている人も多いのではないでしょうか。今回は、有給を会社に買い取ってもらうことは可能なのかを検証していきます。

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そもそも、有給の法律上の扱いは?

有給休暇については「労働基準法39条」で以下のように明記されています。

・使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
(出典:厚生労働省「労働基準法第39条(年次有給休暇)について」

つまり、企業は採用日から6か月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した社員に対しては、最低10日間の有給休暇を与えなければならないという意味です。これは、正社員、パートやアルバイトといった非正規社員などの区分に関係ありません。

また、勤続勤務年数が1年伸びるごとに、勤続年数に応じた有給日数を付与する必要があります。6.5年目以降は年間20日となり、これが最高日数となります。ちなみに、有給は2年間のみ繰越しが可能です。「労働基準法第115条」には、次のように記載されています。この条文により、2年を経過した有給は消滅してしまいます。

・この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する

(出典:電子政府の総合窓口イーガブ「 第十一章 監督機関:第百十五条」

有給休暇の買い取りは原則違法

有給休暇の本来の目的は、「労働者のゆとりある生活を保障し、心身を休ませること」です。もし、有給休暇の買い取りを認めてしまうと、「休ませないかわりに有給の買い取りでお金をあげるから我慢してね」という理屈がまかり通ってしまい、本来の休暇の目的から逸脱してしまいます。

「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じ、ないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である」(昭和30年11月30日 基収第4718号)という行政解釈もあるのです。
(出典:ウィキペディア「年次有給休暇:2.5 年次有給休暇の買取予約禁止」

一方、有給の買い取りが認められる例外的なケースもあります。従業員が退職する際、これまでにたまった有給をまとめて消化することも多いでしょう。しかし、引き継ぎの都合などでまとまった休暇が取れなかった場合は、例外的に買い取りが認められています。

この場合、従業員がすでに退職することが決まっており、有給を買い取っても本来の目的を逸脱するわけではないからです。また、2年が経過して消滅してしまう有給や、法律で定められている以上に付与している有給についても、買い取りが認められています。

有給の買い取りが認められるケースもあるが……

ただ、有給の買い取りについては、「差し支えない」というだけで会社側の義務ではないため、従業員が申し出てきた場合でも、企業側は断ることができます。しかし、中には買い取りに応じたほうがよいケースもあります。それは、退職までに未消化となっている有給が存在する場合です。

退職時の有給買い取りに応じた場合、退職日が早まるため、企業側はその分社会保障費にかかるコストを削減できます。買い取りには金銭が発生しますが、買い取りに応じなければ従業員側は休暇を取得する(=給与を支払わなくてはならない)ことになりますから、大差はありません。

ただ、最大2年分、40日間の有給が残っている社員が、退職時に一気に有給を消化してしまうと、勤務実態がないのに賃金や社会保障費だけは支払うことになりますから、会社側としては大きな負担になります。

なお、労働基準法39条には…

・使用者は、前3項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。

とあり、従業員は自らの指定する時期に休暇を取得する権利(時季指定権)があります。
一方、同条には…

・ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

ともあり、企業側は繁忙期などに有給申請があった場合、取得時期の変更を依頼する権利(時季変更権)があります。(出典:電子政府の総合窓口イーガブ「第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇:第三十九条」

ただ、退職する社員はすでに戦力ではなく、また退職時期が決まっているため取得時期の変更もできないので、この時季変更権は適用されないと考えるべきでしょう。買い取りもせず、未消化の有給も取らせないという対応は会社側の非となってしまいますので、いずれかには応じるようにしてください。

有給買い取り時の計算方法

では、未消化の有給を買い取った場合、金額の算出方法はどのようにすべきでしょうか。

実際のところ、企業としては必ず支払わなくてはいけない報酬ではないため、計算方法は退職する本人と相談の上、という形になるでしょう。労働基準法39条では、有給休暇の賃金算定方法について3つの方法が定められています。

1.平均賃金による支払い  
2.所定労働時間分労働した場合に支払われる通常賃金に準じた支払い
3.健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額、または当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところによる支払い

1と2については、就業規則などで定めることが必要とされ、3については、労働組合か労働者側の代表者との合意が必要です。

一般的に、買上げとなる休暇分の賃金は、労働基準法12条の平均賃金の計算方法(算定事由発生日前3カ月間の賃金総額÷その期間の総日数)を用いて算出します。月給制の場合は「月収÷20日」という計算方法も用いられているようです。

なお、買い上げ分の有給については、一般の給与所得としてではなく、退職所得としての課税計算方式が適用されます。

計画年休などで、消化を促進すべき

先に述べた通り、有給休暇は、基本に立ち返れば「ゆとりある生活をし、心身を休める」ための休暇です。未消化の休暇をためて消滅してしまう、退職時にまとめて取得する、もしくは買い取るというのは、有給休暇の目的に反していると言えます。

「働き方改革」が意識される中、政府は労働者の有給取得率向上も促進しています。人事・総務担当者の皆さんが率先して、有給が未消化で残ってしまうことのないよう、計画年休などを利用して積極的に消化していくよう働きかけることが重要です。