出張で貯まったマイレージって、従業員が私的利用しても許されるの?

こんにちは。会社のルール作りを支援するスピカ社会保険労務士事務所代表の飯塚知世です。

先日、動画配信サービスでの配信が終了間近とのことで、「リストラ宣告人」という職業を描いたジョージ・クルーニー主演の映画『マイレージ、マイライフ』を観賞しました。

主人公のライアン・ビンガムは企業のリストラ対象者に解雇通告をするプロのリストラ宣告人。年322日間も出張でアメリカ全土を飛び回り、「バックパックに入らない人生の荷物はいっさい背負わない」をモットーに人間関係も仕事もあっさりと淡泊にこなし、結婚願望も持たず家族との距離を置いたまま、マイレージを1000万マイル貯めることを人生の目標としています。人を切ることを職業としている彼が、ある出会いをきっかけに人とのつながりの大切さに気付かされていくヒューマンドラマです。

映画の中でライアンは、出張で貯まったマイルを使って新婚の妹夫婦に世界一周旅行をプレゼントしています。世界一周旅行に必要なマイルは夫婦二人で合計100万マイル。一般的にマイルを国際線の航空券と交換した場合、1マイルあたり3円~10円の価値があると言われていますので少なくとも300万円相当です。

勤勉にハードな出張をこなしたからこそ、これだけの価値のあるマイルが貯まったといえますが、そもそも会社が経費として支払ったお金で生じたマイルを私的利用してもいいのでしょうか?

同様に、社員が業務上必要となる備品を立替払いし、個人のポイントカードにポイントを貯め、それを私的に利用した場合はどうでしょう。

一部家電量販店では購入額の10%がポイントとして還元されることもあり、パソコンなど高額商品を購入した際に付与されるポイントは数万円分にもなります。

立替払いしたお金は後日会社から精算されるとしても、付与されたポイントは誰のものになるのでしょうか?ポイントを私的利用した場合、懲戒処分を受けることはあるのでしょうか?

結論から言いますと、「会社のルール次第」です。

現在、業務に関連して発生したマイルやポイントが誰に帰属するのかを明確に定めた法律は存在しません。個々の会社が就業規則や出張旅費規程等(以下就業規則等)に定めるルールによって取り扱いが異なってきます。

マイルは法人には付与されない?

国内大手航空会社のマイレージサービスの会員規約によると、マイルの付与対象者は搭乗した個人に限られており、企業などの法人を対象としていません。また、付与されたマイルを使用できるのは個人かその親族のみと定められています。

会社にマイルが付与されず、付与された従業員以外には使用できないのならば、従業員にマイルが帰属し、私的に利用しても問題無いのではないかと思われます。

しかし、経費を実質的に負担するのが会社である以上、就業規則等に「業務で取得したマイルは会社に帰属し、貯まったマイルは次回以降の出張で利用する」といったルールを定め、私的利用を制限することは合理的だと考えられます。

映画の主人公、ライアンのように頻繁に出張をしていれば、かなりの経費削減効果が見込まれます。ただ、実務上は従業員ごとに個別にマイルの獲得数や残高を管理する手間もあり、このような就業規則等を定めている会社は珍しいでしょう。

一般財団法人労務行政研究所が全国の上場企業とそれに準ずる企業156社に行った「2011年国内・海外出張旅費に関する実態調査」によると、従業員に積算されるマイルの取り扱いについて「個人の自由とし、会社は関知しない」とする会社が98.7%を占めており、多くは従業員個人のモラルに任されています。

マイルで公費節減

一方、各省庁では公務により発生したマイルを個人のマイレージカードへ登録することを自粛するよう呼び掛けています。頻繁に出張をする必要がある場合など、一定の要件を満たした職員へは公用マイレージカードの作成を促し、次回以降の出張では貯まったマイレージを使用することにより公費節減を図っています。

現に外務省では、公用マイレージ制度を導入した平成21年1月から同年10月末までの間で合計26,339,902マイルを取得し、300万1360円の公費節減効果があったと発表しています。
※1公費による航空機利用に伴うマイレージの有効活用(旅費節減効果等についての検証結果)

都道府県、市区町村でもマイルを有効活用していく動きがあり、一定の旅費節減効果が実証されれば、今後は民間企業にも波及するのではないでしょうか。

法人名義のポイントカード

ポイントカードの中には、法人名義でのカード作成が可能なものがあります。

法人名義のカードを私的利用した場合や、法人名義のカードへのポイント加算が命じられているにもかかわらず、意図的に個人のカードにポイントを加算し利用した場合は、懲戒事由に該当する可能性があります。

法人名義のカードが存在せず、就業規則等にポイント付与の放棄や私的利用を禁止する旨が定められている場合に、個人のカードへポイントを加算し、利用したときも懲戒処分を受ける可能性がありますので、予め社内のルールを確認しておくと良いでしょう。

トラブルを防止するためにはルール作りが重要

マイル、ポイントが最終的に誰に帰属するかはその会社のルール次第です。

ルールを定めず、私的利用を黙認していると、出張の多い社員や購買担当の社員など特定の社員だけが恩恵を受けることになり、他の社員から不満の声が出てくることが考えられます。

トラブルを未然に防止するためにも社内で取扱い方針を定め、無理のない範囲で自社に合ったルール作りを検討してはいかがでしょうか?

【ルール例】
・業務により発生したマイル、ポイントは会社に帰属し、航空券、備品の購入に充てる。
・会社名義のカードにポイントを加算し、個人のカードへのポイントの加算を禁ずる。
・社員は業務で得たマイル数を出張の都度報告し、会社でマイル残高を管理する。貯まったマイルは次回以降の出張に使用する。

社会保険労務士
ヨーヨーパフォーマー
飯塚  知世(旧姓:七田)
スピカ社会保険労務士事務所代表
学生時代よりヨーヨーパフォーマーとして活動する異色の社労士。一児の母。
東京都新宿区にスピカ社会保険労務士事務所を開業。子育て世代の経営者、社員の働き方サポート、クラウドを活用した業務効率化、人事労務コンサルティング、就業規則作成、助成金申請を得意としています。freee1つ星認定アドバイザー。

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