脱税は割に合わない?大きく変わった「過少申告加算税」と「重加算税」

フリーライターの小林義崇です。

税制改正は毎年行われているものですが、最近、大きな改正があったことをご存知でしょうか?誤って本来の税額より少なく申告してしまったときに課せられる「過少申告加算税」や、意図的に脱税をしたときに課せられる「重加算税」などの税率が、これまでよりも高くなったのです。

さらに、無申告や脱税を繰り返す人に対しては、罰則を重くするという制度も始まりました。今回は加算税の仕組みとともに、改正の内容について解説します。

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正しく申告をしないと、本来の税金に加算税が加わる

所得税や法人税など、申告を必要とする税金には必ず申告期限が設けられています。たとえば所得税であれば、1年分の所得税を正しく計算した確定申告書を3月15日(休日の場合は、ずれます)までに提出しなくてはなりません。

この手続きに間違いがあった場合、「加算税」として、本来の税額に加算して税金を納める義務が生じます。

本来の税額に比べて少ない金額で申告することを「過少申告」、申告期限までに申告していないことを「無申告」といいますが、このような手続き誤りの内容によって、加算税は以下の3パターンに分けられます。

1 過少申告加算税
過少申告であったため、申告のやり直し(修正申告)をした場合に課せられるもの。

2 無申告加算税
無申告であったため、申告期限後に申告(期限後申告)をした場合に課せられるもの。

3 重加算税
意図的に少なく申告するなど、「仮装・隠蔽」があった場合に課せられるもの。「仮装・隠蔽」とは、意図的に領収書を改ざんしたり、売上を隠したりしたりと、いわゆる脱税行為のことを指します。

これらの各加算税は、それぞれ、「自分から申告をしたのか」「税務署から指摘されて申告をしたのか」といった状況次第で、税率が変動します(税率については後述)。

今回の税制改正により、加算税の税率や、課せられるパターンが変わりました。次のトピックで確認していきましょう。

なお、申告の期限とは別に納税期限もあり、納税期限におくれた場合は、別途「延滞税」という税金が追加となりますので、こちらも注意しましょう。

税務署から調査の通知が来たら、加算税を免れない

税制改正の影響を受けるのは、2017年1月1日以降に申告期限が到来する税となります。たとえば平成28年分(2016年)の所得税の申告期限は、2017年3月15日ですから、改正後の加算税の税率が適用されることになります。

改正の内容については、まずは以下の表をご覧ください

<国税庁ホームページより抜粋>

この表の中段、太線で囲まれた部分が変更されたポイントです。過少申告加算税、無申告加算税がそれぞれ、3段階の税率が設定されていることがわかります。

税制改正の前までは、税率は2段階でした。「法定申告期限等の翌日から調査による更生等予知前まで」と「調査による更生等予知以後」の2段階です。

「調査による更正等予知」という言葉は耳慣れないと思いますが、イメージとしては、「税務調査によって、税務署の職員から誤りを指摘された」タイミングで理解していただければと思います。学説や裁判例が多くあり、判断が難しいケースがあるのですが、詳細はここでは触れません。

したがって、通常は、税務署から連絡をする前に自分から修正申告をしたのであれば「更正等予知前」と判断されます。過少申告加算税であれば対象外、無申告加算税でも5%と、加算税の中では最も負担が小さくなります。

それでは、税務署から税務調査の日程調整の連絡があったため、慌てて税務調査当日までに、自分から正しい納税額で修正申告をしたときはどうなるでしょう?

このような場合、その時々の状況総合的に加味して判断するのですが、税制改正前は、「更正予知前」と判断して、過少申告加算税を課さないということもありえたのです。

ところが、改正後はそうはいきません。新たに「調査通知以後」という区分ができ、過少申告加算税であれば5%(一部は10%)、無申告加算税であれば10%(一部は15%)が課せられてしまいます。

なお、ここで言う調査通知とは、①実地の調査を行う旨、②調査の対象となる税目、③調査の対象となる期間の3項目を通知することをいいます。こういった通知を受けた以上は、たとえ更生等予知前であっても、結果的に申告内容に誤りがなかった場合などを除き、追加の税金が発生することは避けられません。

無申告や脱税を繰り返す人はブラックリスト入り?

次の表も、2017年1月1日以降に申告期限が到来する税に対する改正内容を示したものです。5年間に繰り返して無申告や、仮装・隠蔽が行われた場合、加算税が重くなるという制度が始まりました。

<国税庁ホームページより抜粋>

たとえば、Aさんが平成28年分の所得税をうっかりミスで申告しておらず、税務調査によって期限後申告をしたとしましょう。すると、通常は15%(一部は20%)の無申告加算税が課せられます(上の表の左上の枠)。

このAさんが、平成26年分の所得税について、意図的に無申告をしたため重加算税が課せられていたとすると、なんと平成28年分の無申告加算税の税率が、50%まで増えてしまうのです(上の表の右下の枠)。

この加算税の改定がこれまでにない点は、「過去の申告が、将来の加算税に影響する」という点でしょう。これまでは、過去の申告状況がどうであれ、その後の税の計算には影響しませんでしたから(税務署からマークされる可能性はありますが)。

この改定により、無申告をしたり、脱税をするリスクはかなり上がったと言えるでしょう。

この改正の影響が出てくるのは、まさにこれからです。というのも、2017年1月1日以降を申告期限とする税の調査は、基本的に来年以降始まるからです。

なお、「過去5年以内」の基準は、2016年12月31日以前に法定申告期限等が到来した国税も含まれます。最近の5年間に、無申告加算税や重加算税が課せられたことのある人は、特に注意しましょう。

今後は、脱税や無申告をしないのはもちろんですが、誤りを自分で把握した場合には、税務署から連絡を受ける前に、速やかに修正申告をしておいた方が良いと思います。

1981年生まれ、福岡県北九州市出身。埼玉県八潮市在住のフリーライター
西南学院大学商学部卒。
2004年に東京国税局の国税専門官として採用。以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事する。2014年に上阪徹氏による「ブックライター塾」第1期を受講したことを機に、ライターを目指すことに。2017年7月、東京国税局を辞職し、ライターとして開業。
twitter:小林義崇
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