休職期間中に病状が回復せずに復職できない場合、休職期間満了時に一方的に解雇してもよいか

昨今増えている職場の様々なトラブルに、「従業員の健康問題による休職」にかかわるものがあります。休職については法律で定められているわけではないので、一般的には就業規則などで取り決められた範囲で適用することになります。

しかし、休職期間が終了しても病状が回復しない場合、解雇してもよいものかどうか、心情的に迷う人事担当者も多いでしょう。今回は、こうしたケースについて詳しく見ていきましょう。

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休職は法律で定められた制度ではない

私傷病(ししょうびょう)による休職制度は、従業員が業務外の傷病にかかり勤務ができなくなった場合、従業員としての地位を保持したまま一定期間は療養に専念できるという制度です。

法律上は、労働基準法で「休職を定めている場合は,労働契約の締結に際して明示しなければならない」と記されているのみです。

産休や育休のように、休職・復職についての取り扱いを法律で定められているわけではないので、会社としては産休や育休以外の休職の申し出があった場合、必ず対応しなければいけないということではありません。実際は、就業規則などで一定期間の休職を認めている場合が多いのではないでしょうか。

労働政策研究・研修機構の調査によると、何らかの休職制度のある企業(「病気休職」「自己啓発休職」「起訴休職」「事故欠勤休職」「出向休職」「その他(専従休職等)」など)は、69.3%に上っています。病気休職の休職期間の上限については、「6か月~1年未満」が22.0%に上っています。(参照:労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査(平成17年)」
(出典:休職制度について

通常、私傷病でも欠勤が続けば人事考課に関わりますし、解雇ということもありえます。私傷病による休職は、一般的には解雇猶予期間と考えるべきでしょう。

あくまで労働者側の事情による休暇なので、解雇事由(傷病)がなくなれば復職できますし、期間終了時に病状の回復がみられず、引き続き勤務が難しいとされた場合には、解雇することも可能です。

労働者側に配慮した判断が主流に

ただし、従業員側の病状がある程度回復しており、「以前通りの勤務がすぐに難しくても、ある一定の配慮の下であれば勤務できる」というような場合には、企業側に配慮が求められることもあります。近年はこうした労働者に配慮した考え方が主流になってきているといえます。

特に、日本企業の正社員の場合、服務の範囲を限定せずに労働契約を結んでいるケースが多くみられます。平成11年の「東海旅客鉄道事件」では、大阪地裁によって「労働者が職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合においては、休職前の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動の実情、難易等を考慮して、配置替え等により現実に配置可能な業務の有無を検討すべきである」との判決がくだっています。

また、反対に従業員が休職を申し出た場合も、配置転換や異動で病状が回復する場合は、そうした措置をとることも可能です。

休職理由となる傷病が業務に起因するものかどうか、復職が可能かどうかについては、産業医など専門医の判断を仰ぐことになります。

なお、休職については法律上の定めがないので、就業規則で定められていない限り、上司や会社側から従業員に休職を命じることはできません。職場規律に違反した従業員に対する「労務指揮権」の行使による「自宅待機命令」とは性格が異なりますので、注意すべきでしょう。ただし、使用者は従業員に対し、専門医の診察を受けるよう指示することはできます。

休職期間、退職後の生活費はどうなる?

一般的に「労働していない時間は給与もない」というノーワークノーペイの原則がありますが、休職期間中の給与については、就業規則に従って取り扱うことになります。もし年次有給休暇が余っていれば、それを休職期間に充当することもできます。その場合は、給与が支払われることになります。

前述の労働政策研究・研修機構の調査によると、病気休職の期間中の賃金については、「全額あり」の企業は全体の7.2%のみです。健康保険上の「傷病手当金」に加え各種健康保険組合における独自の傷病手当付加金を含めた企業負担がある「一部あり(傷病手当金+傷病手当付加金)」が19.4%、「一部あり(傷病手当金のみ)」が29.2%、「なし」が33.5%となっています。

休職期間終了時に復職できなければ、退職もしくは解雇もありえます。ただ、体調が悪い上に無職となれば、従業員の経済状況は困難になることが予想されます。休職にまつわるトラブルには、こうした金銭的な事情に関わるものも多いでしょう。

健康保険上の「傷病手当金」は、退職したら支払われなくなると誤解している人も多いですが、「退職日までに健康保険の加入期間が1年以上ある」「退職前に傷病手当金の給付を受けている」といった条件に該当していれば、退職後も引き続き残りの手当金を受給することができます。傷病手当金の支給期間は、最長1年6カ月です。

金銭的な事情から、病状が回復していないのに退職を拒む従業員がいた場合、こうした手当金の説明をすることで、納得してもらえることもあるようです。本人側としても、手当金の支給があれば、体調が悪いのを押して復職するよりも、当面治療に専念できるので、自身の健康にプラスになるということもあるようです。