誰にも相談できない…中小企業の会社売却(M&A)による事業承継の相談先

中小企業を中心に、経営者の高齢化による後継者問題が顕在化しています。昨今では、実子や親族が家業を継ぐべきという風潮も薄れ、事業承継の選択肢として第三者への会社売却(M&A)を選択する企業も増えています。

しかし、経営者とは孤独なもの。M&Aを検討したくとも、なかなか相談先が見つからないというケースもあるでしょう。それでは、M&Aを思い立ったらどういった機関に相談すべきなのでしょうか。

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機密保持を第一に

M&Aを実行する場合に大切になるのが機密保持です。会社の売却を検討しているという噂が立ってしまうと、従業員や取引先に動揺が広がることは間違いありません。また、従業員の中に反発が生まれると、仮に会社売却に成功したとしても、その後の統合作業が難しくなってしまいます。

中小企業庁の「中小企業白書」によると、「M&Aに関する課題と対策・準備状況」として、「M&Aを検討する上での情報管理が課題」と回答した人は67%にも上っています。そのため、相談相手は慎重に選ばねばなりません。身近な役員や従業員、地域の同業者などに相談すると機密がどうしても漏れがちになるので、まずは機密保持ができる第三者に相談することをおすすめします。

( 出典:中小企業庁「2017年版 中小企業白書・小規模企業白書」 

 

 事業承継は誰に相談すべき?

中小企業白書によると、「事業承継を勧められた相手」として「顧問の公認会計士・税理士」を挙げる経営者が最も多くなっています。彼らは、日ごろから会社の状況や経営理念などをよく把握している身近なエキスパートです。会社の経営状態を見る中で、自然と会社の将来や事業承継、後継者選びなどの話題になることが多いと考えられます。特にM&Aでは財務や税制上の問題も多く発生するので、事業承継の選択肢としてM&Aを検討する場合でも、まずはこうした専門家に相談するのが良いでしょう。

次いで多く挙げられているのが、取引先の金融機関です。こちらも、日ごろから融資の相談をするうちに、自然とそういった話題になるのでしょう。地元に密着した地銀などは、地域の企業についてよく知っているので、金融機関を通じてM&Aの相手先を紹介されるケースもあるようです。最近では、こうした中小企業M&Aに注力している地銀や金融機関も出てきています。そして、回答は「経営コンサルタント」「親族・友人・知人」「親族以外の役員、従業員」と続いています。

( 出典:中小企業庁「2017年版 中小企業白書・小規模企業白書」 )

 

 M&Aアドバイザリーとは?

上記の調査では、「経営コンサルタント」に事業承継の相談をしたという人も12%存在します。最近ではM&Aの認知向上・普及によって、企業間M&Aを専門に手掛けるM&Aアドバイザリーの活躍がめざましくなっています。M&Aを手掛ける専門家には、大手証券会社や投資銀行、コンサルティングファームなどもあります。

ただ、中小企業同士のM&Aの場合は規模が小さい取引になることがほとんどなので、こうした大手の事業者が介入するケースは少なく、多くの場合は中小企業中心の独立系ファームや、M&Aの売り手と買い手の仲介のみを行う仲介業者などが手掛けるようになります。

M&Aアドバイザリーは、会社を売却する側と買収する側、双方を結びつける役割を担うほか、以下のような業務を担当します。

  1. 買い手候補の選定・リスト作成、諸条件の検討
  2. 買収・売却戦略の決定など各種調整・手配
  3. M&Aにあたっての法務面でのアドバイス、契約などの実務
  4. M&Aを実行する上での会計・税務面でのアドバイス
  5. 買収される企業の資産や負債などの査定(デューデリジェンス)

M&Aの仲介を行う事業者は、それぞれ得意分野や業務の範囲、報酬体系などが異なります。そのため、M&Aアドバイザリーの強み・弱みを見極め、自社の状況下ではどういったサービスが必要なのかを判断する必要があります。

( 出典:中小企業庁「2017年版 中小企業白書・小規模企業白書」

 

 M&Aコンサルティングサービス業務の流れ

一般的なM&Aアドバイザリーによるコンサルティングサービス業務は、以下のような流れで行われます。

  1. M&A戦略の策定、相談
    「M&Aによる会社売却は可能か?」「後継者がいない場合の事業承継はどういった手段があるか」「自社の企業価値はどれくらいか」「今後の成長ステージを描くために、買収先となる優良企業を紹介してほしい」など、事業承継や経営課題に関する悩みを相談します。この時点では、M&Aの実行ありきではなく、さまざまな可能性を含めた企業戦略を探ります。

  2. M&Aアドバイザリー業務の契約、戦略・計画の立案
    アドバイザリー業務の内容、報酬体制、契約期間などを確認・合意した上で、具体的なサポートを受けるための契約を締結します。いよいよM&Aの実行開始です。

  3. 売却・買収手続きの実行
    簡易な企業概要書(ノンネームシート)をもとに買収に関心を持つ企業が現れたら、秘密保持契約を締結した上で詳細を開示します。合意を得られたら、両社のおおまかなスケジュールなどを決定し、実際の売却・買収の手続きに移ります。

  4. 契約交渉・取引実行(クロージング)
    買い手企業は、売り手企業の資産や債務などを含めた調査(デューデリジェンズ)を念入りに行います。全て完了したら、いよいよM&A案件のクロージングです。法務の専門家と連携し、売り手側・買い手側の双方で最終契約の書面を作成します。最終契約において規定される諸条件への対応、M&A実行後の財務諸表作成、譲渡価格の決定などをしていきます。


公的機関に相談する選択肢も

もし、「民間企業であるM&Aアドバイザリーに相談するのはハードルが高いな」と感じる場合は、公的機関に相談するという選択肢もあります。最近では、国も中小企業の後継者探しやスムーズな事業承継を重視しており、対策に本腰を入れ始めています。平成29年度は、「地域事務局」として採択された19県と、独自事業として実施している4県において、事業承継診断が実施されました。

また、各地の都道府県や商工会や商工会議所なども事業承継の相談を受け付けています。さらに、国は全国47カ所に後継者不在の中小企業の事業引継ぎを支援するための専門の支援機関「事業引継ぎ支援センター」を設置し、事業承継に関する幅広い相談への対応や、M&Aをはじめとする第三者承継の支援も実施しています。

事業承継に漠然とした悩みは抱えているけれども、どういった対策をとればいいかわからない、もしくは相談相手がいないという方は、まずこうした窓口に相談してみてはいかがでしょうか。

( 出典:中小企業庁「事業承継診断~10年先の会社を考えてみませんか?~」