事業承継とは何なのか?事業継承とは何が違うのか?知っておきたい5つのステップ

「事業承継(じぎょうしょうけい)」と聞いても、ピンと来ない人も多いかもしれません。よって中には、「事業承継(じぎょうしょうけい)」と「事業継承(じぎょうけいしょう)」を混同してしまっている人もいるのではないでしょうか。

そういった誤解を解消するために、今回は「事業承継」と「事業継承」の違いや、スムーズな事業承継を実現するための5つのステップについてご紹介していきます。 

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「事業継承」と「事業承継」は似ているけれど違う

まず、「継承(けいしょう)」と「承継(しょうけい)」は似ている言葉ですが、意味が少し違います。「大辞泉」によると、継承は「前代の人の身分・仕事・財産などを受け継ぐこと。」であり、承継は「前の代からのものを受け継ぐこと。」とあります。つまり承継の場合、引き継ぐのは地位や財産だけでなく、伝統や理念といった目に見えないモノも含まれるということです。

例えば、天皇陛下の代替わりは「皇位継承」であって「皇位承継」とは言いませんね。この場合、主に天皇としての身分や役割を引き継ぐことを指すので、「皇位継承」と言うのです。

では、「事業承継」と「事業継承」の違いに戻りましょう。事業承継の場合、後継者は社長としての地位や保有する株式、不動産といった財産のほかに、のれんや創業の精神、社風といった、事業を続ける中で長年育まれてきた精神的なものまで引き継ぎます。

社長としての身分や、株式、不動産といった財産であれば、弁護士や会計士といった専門家の力を借りて法に則った手続きをすれば容易に引き継ぐことができます。しかし、社風や伝統といったものは、一朝一夕では引き継げません。経営者が後継者にその背中を見せつつ、肌で感じ取って学んでもらうことが必要になります。だからこそ、「事業承継」には時間がかかるのです。

 

後継者にバトンタッチするまで10年かかることも

事業承継が必要であることをぼんやりと感じていても、まだまだ自分もしくは先代が元気だから先のことだと思ってはいませんか。

経済産業省の「中小企業白書」によると、「後継者探しを始めてから了承を得るまで3年以上かかった」という企業は3割以上に上っています。とくに最近では、「家業を継ぐ」という意識が薄れてきており、実子などの親族が必ずしも後継者になるとは限りません。そのため、事業承継にかかる時間も長引く傾向にあり、中には後継者にバトンタッチするまで10年かかるというケースもあります。

後継者に了承を得てから、さらに経営者教育を始めるとなると、気の遠くなるような時間がかかります。スムーズな事業承継には、早め早めに手を打つことが大切なのです。

(出典:経済産業省「中小企業白書」 )

 

事業承継に必要な5ステップ

では、ここからは中小企業庁の「事業承継マニュアル」をもとに、事業承継に必要な5ステップを見て行きましょう。

ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性を認識する

前項で説明したように、事業承継は数年~10年以上を費やす作業になります。中小企業庁の「事業承継ガイドライン」によると、全国の経営者の平均年齢は 59 歳 9 ヵ月と、高齢化社会を反映して、経営者も高齢化が進んでいます。

後継者に事業を引き継ぐまでに10年かかるとなると、50歳代のうちには後継者探しに着手したいものです。さもなければ、70~80代になっても後継者が見つからず、引退できないという事態にもなりかねません。

最近では、少子化や国内市場の縮小を受けて、実子や親族への承継をせずに、事業譲渡や会社売却といったいわゆるM&Aで第三者承継を選ぶ企業も増えています。

ステップ2:経営状況や経営課題を見える化する

事業承継に向けて自社の経営状態を適切に開示するために、正確な決算書や、知的資産等の評価書などを作成し、会社の資産の「見える化」に取り掛かりましょう。これは、親族承継であっても第三者承継であっても必要な作業です。

親族承継の場合は、自社株の買い取りに必要な資金や相続税、贈与税の目安を先に考えておきます。中小企業であっても業績が好調な優良企業の場合、株式の評価額が予想以上になり、後継者に莫大な相続税がのしかかることがあるためです。一方、第三者承継を選ぶ場合は、買い手先企業を選定するために、会社の資産や経営課題、強みなどの棚卸が必要になります。

こうした作業を経営者ひとりでこなすのは難しいため、身近な専門家や金融機関などの支援を受けると良いでしょう。

ステップ3:事業承継に向けた経営改善

会社を最良な状態で引き継ぐためにも、会社の資産を磨き上げましょう。磨き上げるための対象は、業績や固定資産だけでなく、取引先・金融機関との良好な関係、会社の基盤を支える優秀な人材や株主、技術力やブランドイメージ、知的財産や営業ノウハウまで、有形無形に関わらず多岐にわたります。会社経営の総決算だと考えて臨みましょう。

ステップ4:事業承継に向けた計画・行動を開始する

この後の段階は、親族もしくは従業員に承継させる場合と、M&Aによる第三者承継を選ぶ場合で、やるべきことが変わってきます。それぞれのパターンを見てみましょう。

<事業承継計画を策定する(親族・従業員承継の場合)>
親族・従業員による承継を選ぶ場合は、今後10年を見据えた経営計画を策定しましょう。
例えば、今後10年も同じ事業領域にとどまって専門性を高めるのか、それとも多角化して収益の増加を目指すのかなど。後継者も共に策定作業に参加することで、経営者としての自覚が増してくるでしょう。

この時、事業計画だけでなく、創業の精神や経営理念など、経営者として次代に伝えていきたい価値観や信念も伝えることを忘れてはなりません。日本の老舗は、時代が移り変わる中でも、その精神性を次代に伝えていくことで、のれんを守ってきたのです。

<M&Aのマッチング開始(第三者承継の場合)>
M&Aによる第三者承継を選ぶ場合は、M&Aアドバイザリーや仲介業者などの専門家の協力を仰ぐことをおすすめします。M&Aは、法務・財務面などでさまざまな手続きや知識が必要であり、専門家による支援が欠かせないためです。

金融機関などにもM&Aを手掛ける部門がありますが、中小企業のM&Aは小規模な取引が多いため、対象外になる可能性があります。最近では、都道府県の商工会議所や事業引き継ぎセンターなどでもM&Aに向けた経営相談などを受け付けているので、そういった機関に相談しても良いでしょう。

ステップ5:事業承継を実行する

親族・従業員承継の場合も、M&Aによる第三者承継も、準備が整ったらいよいよ事業承継を実行に移します。後継者へのバトンタッチは、事業を飛躍させる絶好のチャンスでもあります。若い世代に引き継ぐことで、新たな成長ステージへの扉を開きましょう。


(出典:中小企業庁「事業承継マニュアル」