「freeeのために、新しいビジネス用クレジットカードを作った」ライフカード社が語る業界初の仕組みを取り入れてまで開発した理由

freeeカードの連携先であるライフカード。事業用クレジットカードには年会費がかかるカードが多いなか、同社は多くの個人事業主や小規模事業者に年会費無料のカード「ライフカードビジネス」を提供しています。

このインタビューでは、クレジットカードの審査の仕組みから、なぜ創業者に無料でクレジットカードを提供できるのか、freeeカード誕生の背景など、事業用クレジットカードについてお聞きしました。

前半はライフカードさんや審査の仕組みについてでしたが、後半では「freeeカード開発の裏側」を伺いました。

(聞き手︰freee 金融事業部 木本)

 

既存のカードではなく、freeeとの提携のために新しいカードを作った

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 ー前半では、ライフカードさんのサービス展開やスモールビジネス向け事業への思いを伺えましたが、ここからはfreeeカードについて教えてください。

はい。何でも聞いてください。

ー大川さんがfreeeカードのリリースを担当されていましたが、一番印象に残っていることは何でしょうか?

freeeカードはいわゆる「提携カード」なのですが、実は「freeeカードライト」は、今まで社内にあるカードをベースにしておらず、新しいカードの仕組みを開発しました。

紙で申し込む「freeeカード」は弊社のライフカードビジネスがベースになっていまして、Web申し込みで最短4営業日発行のfreeeカードライトを作るときは完全にイチからカードを作ったんです。これは提携カードの常識ではあまり考えられないことだと思います。

freeeカードのどこが新しかったのか?

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ー私もその話を聞いたときは驚きました。ちなみにfreeeカードのどこが新しかったのですか?

色々ありますが、Web完結で発券後に口座振替用紙を提出する申込みフロー、利用限度額が最低50万円以上というのは、freeeカードの非常に新しい点です。

ーWeb完結っていままでできていなかったんですか?

はいWeb申込みをすると先にカードが届くような仕組みはまず無いと思います。

スモールビジネスの方に求められる、簡単に、開業時から申し込めて、しかもすぐに届くという要件を全て満たそうとしました。必要書類は免許証だけでいいですし、Webだけで申し込みが完了してカードが到着します。

開業するときの「銀行がなかなか口座を作ってくれない」という一番の問題も、カードを先に発券して「銀行情報の登録は後からでいいですよ」という仕組みにしてクリアしました。スピードはこれ以上無いほどこだわりましたよ。

その上で、最低利用額を50万円以上にしたので、様々なスモールビジネスの方のニーズはクリアできたのではないかと思っています。

ーそうですよね。かなり優れた機能のカードを作っていただいたので、非常に好評いただいてます。

freeeカード実現までの苦労

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ーそこまで新しいことばかりだと、実現は簡単ではなかったのでは?

これはですね、全てじゃないのですけれどもその通りで(笑)。それぞれ思い出がありますよ。

ーどこに苦労されましたか?

それぞれの仕組みの構築もそうなのですが、やはり時間ですよね。「ある程度の期限の中で完成させなければいけなかった」というところが非常に難しかったです。今までにない取り組みなので、社内での議論にかなり時間を費やしました。

もともと弊社のカードでも、最低額を50万も出している商品はなかったですし、ほぼカードをゼロから作るようなプロジェクトでした…。大変だったのは確かですが、満足感の方が高いですよ。リリース時は「あぁ、やっとできたな。よくやったな。この短期間でよくここまでできたな」という思いに浸りました。

freeeさんにも色々お知恵を借りながらやり切りましたね。

ー大変でしたよね...。正直freee社内も新しいサービスだったのでバタバタでした(笑)。「この調整は厳しかった」などのエピソードはありますか?

Web完結にするために、問題になったことのひとつは、本人確認書類の提出方法ですね。いま、クレジットカード業界では郵送提出がスタンダードです。でも、他業界を見れば、みんなもうWebどころかスマホ完結なんですよね。金融業界でも、サービスによってはWeb完結が当たり前です。

それで、freeeカードでもWeb完結しなくてはいけないことが一つの山場になりました。システムが関わるので、他業界の本人確認システムを応用して、ぴったり1か月で作り上げました。これはそれなりに苦労したところですね。

ー「他の業界だったら当たり前のことだからできないはずはない」という感じで話をされたのでしょうか。

そうです。他の業界から見ると当たり前だけれども、カード会社では当たり前ではないのです。

特に、freeeさんのお客さんのようなWebに強い方向けのカードなのに、お客様が紙で送るとか、プリントアウトしてもらうとか、また免許証を郵送してもらうというのは考えづらかったので、粘り強く解決方法を探しました。

ーカード発券後に銀行口座を申し込む、という仕組みも初めてだったんですよね?

今までの常識からすると、とんでもないことですよ(笑)。

「口座振替を確認してからカード発行しないと危ない」と考えるのが当たり前です。社内でも「発行後にコンビニできちんと払ってくれるのか?」という話は出ましたが、最終的にはfreeeのお客さんを信じてやってみよう、ということでスタートしました。

ーあとは、「最低限度額50万円以上」ですよね。

年会費無料で最低限度額が50万円以上なのは、おそらく業界初ではないでしょうか。

とはいえ、無謀な挑戦ではなく、明確な仮説に基づいて作ったものですよ。多くの個人用のカードは、最高で限度額が50万円なのです。freeeカードも、個人カードと同様に「代表者個人の信用力を評価するのに、最低限度額は50万円しかない」というのはチャレンジでした。

ただ、ある段階でのカード発行実態を調査してみると、弊社の法人向けのビジネスカードは平均70~80万円程度の限度額で発行されているわけですね。法人向けの審査をするとそのぐらいの金額になるのです。

一方で、これを代表者個人として審査してみると平均で20万円~30万円の限度額になると思います。

ーでも、例えば個人事業主だったらどちらも申し込めるんですよね。

代表者が保証人になっているかどうかなどの違いはありますが、必要書類も大きな差がないのに、同じ人でも入口と計算方法が違えば、金額が大きく変わるのはおかしいではありませんか。

こう考えてみると「できないことはない」とわかったので、「最低50万で作り直してくれ」と言って弊社のスコアリングチームに依頼して、評価方法を調整し、今のカードの仕組みができました。

カード発行開始から半年経って利用実績を見直していますが、大きな問題もなく、非常に満足していますよ。経過を見るまではドキドキでしたが、「やっぱり私共が作ったものは正しかったんだ」と。

蓋を明けてみると、会計freeeを利用している人とそうでない人で、予想以上に利用状況がぜんぜん違うなど、新たな発見もありましたね。

大川さんが、業界の常識を変えることにこだわった理由

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ーどの調整も大変だったのだと思うのですが、なぜそこまで大川さんはこだわれたのでしょうか?

「これを実現しないとユーザーに使われない」という意識が常にありました。

例えば、多くのカード会社が個人事業主用・中小企業用・コーポレート用とカードを分けているのに、ライフカードはビジネスカードは1種類など、まだまだ足りない部分が多いんですよ。

前編でお話したように、スコアリングなど弊社の強みはあるのですが、いま法人向けのカード決済の波が来ているというときに、「業界の当たり前を変えるような商品を生み出さないといけない」、「それを担うのがライフカードであるべきだ」という使命感を持っていました。

「他社と同じなら、まだ最低レベル」ということを大前提に動いて、社内の関係者に納得してもらいました。

ー社内の方はどんな反応だったのですか?

「やらなくてはいけないですね」と賛同してくれる人が多かったです。できる限りの個別の調整や、リスク回避には動きましたが、やはりやってみないとわからない範囲が残ってしまので、最後には勢いが必要でした。

最終的には、当時の関連部長たちに集まってもらって「こういうfreeeカードという新しい個人版でWeb完結を出します」と伝え、役員からも関連部署や関連会社に「皆で力を合わせてやりましょう。」と、ある種、全員号令のような形で最後は一気に進みました。

結局、カード発行が始まって蓋を開けてみたら「すごいな」という反応が次々に起こって、私個人としては「すごいなんて今さら言わないで」みたいな気持ちではあったのですが…(笑)

そんなこんなで、やっとWeb完結ができた、ということなのです。

freeeカード開始から半年で気づいたこと

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ーfreeeカードが発行開始してまだ半年ではありますが、実際やってみて今わかったこととかありますか。

クレジットカードという商品の特性上、発行開始よりもその後が大事なので、途中経過ではありますが、発見は色々あります。

利用状況や取引履歴を毎月分析しているのですが、利用実態からも明らかに信用の4Cで言うところの「人格」や経営姿勢というようなものが感じられます。

Character-人格
「借りたお金は後で必ず返済する」という約束を正しく理解し、約束どおり返済する意志があるかどうか。

Capacity-支払能力
借りたお金をスムースに返済していける支払能力があるかどうか。勤務先の安定度などで判断。

Capital-資産
病気や事故などにより返済が困難な状態におちいった場合でも、これをカバーする資産などがあるかどうか。担保があるかどうかを判断材料にすることもある。

Control-自己管理
自分の返済能力の範囲内で計画的に利用し、計画的に返済することができるかどうか。 

一時的にお支払が遅れてしまう方もおられますが、その中でも会計freeeを利用されている方は、水道や電気など、事業上必要不可欠な決済ばかりです。

カード会社として支援できることは少ないのですが、数字を見るだけでも、事業として苦しい時期を乗り越えようとされているのだな、と分かるようなものばかりでした。

さすがです。言い方は悪いですけれども事業をやろう、という姿勢が見えますよね。そのような姿勢は信用情報機関のデータでは確認できません。

freeeカードを始めてから、税理士さんに顧問契約したり会計freeeでお金の管理をしようとしている事自体が、経営への姿勢を表す指標の一つになるのがわかりました。

これからは、もっとスモールビジネスのニーズに応えられるサービスを開発していきたい

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ー今後やってみたいことはありますか。

自信を持って紹介できる製品ができたので、もっとたくさんの方に知っていただきたいです。中小事業者さんが集まるセミナーなどでもfreeeカードを紹介したいですね。

あとは、使った人に「どうでしたか」と感想を聞きたいです。最近初めてアンケートも取ってfreeeカードのページでも一部紹介をしていますが、やはり生の声を聞くと気づきが多いです。他にも、すでに会計freeeを利用している方や、すでにfreeeカードを利用している方向けにも、特別なキャンペーンもやってみたいと思います。「やってみたいことばかり」というのが正直なところです(笑)

ー「キャンペーン」とは具体的に何か想定しているものはありますか?

実現できるかどうかは別として聞いてくださいね(笑)。

ひとつは、今までの審査方法ではカードを作れなくて本当にクレジットカードが必要な人に、限度額が10万円でもカードを出せるようなものを作れないかな、と思います。会計freeeを使っている人の信用力が高いのはわかっていますから、かなりチャレンジングではありますが、検証してみる価値はあるかなと。

もう一つは、freeeカードをすでに利用している人の利用可能枠を早期で拡大することですね。

freeeを利用する方は、早期に事業成長する方もいらっしゃるでしょうし、たとえば創業半年だったとしても、会計を管理しながら健全にカード利用しているような方には利用限度額を100万円アップできるような取り組みをしたい。いってみれば、いままで以上の早さで信用力を評価できるような仕組みを作っていきたいですね。

ーありがとうございます。ぜひ、これからも一緒に、いままでになかった価値ある取り組みに挑戦していきましょう。

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