セルフブランディングで自分の看板ってどう作ればいいの? 10人のインディペンデント・コントラクター(IC)に訊いた

独立起業すると自分のブランドづくりは必須である。組織の看板がなく、自分の信用で仕事が頼まれる。だからこそ、どんな仕事を、どのようにするのかを知ってもらう努力を続ける必要がある。

筆者が理事長をつとめるNPOインディペンデント・コントラクター(IC)協会には、IC(アイシー)といわれる多様な分野のプロワーカーが120名集まっている。雇われない・雇わない働き方を選び、自分の専門性を複数の企業に提供する。最近では複業家という言われ方もするし、ゆるく表現するとビジネスピン芸人である。彼らは、どのように自分をみせて、仕事へつなげているのか。人間性も仕事内容も個性的な10人のICに聞いた。

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強みを知ってもらう

ICは、最初に”その道のプロ”であることを示し、理解してもらうことが必須である。「生業は何か?」はIC協会のスタートアップセミナーで最初にたずねられる質問だ。例えば「人事コンサルタント」である場合、その分野で独立している他の人との差別化は何かを考える。独立する前に「自分のコアは何か」「どのような強みでお金を稼ぐのか」を最初に整理してもらうのである。

では、その強みや専門分野を知ってもらうためにはどのようにしたらよいか。

ブログやWebメディアで執筆を続けるのは、人事関連のコンサルティングをてがけるユニティ・サポート 代表 小笠原隆夫氏だ。ブログは書きはじめるのは簡単だが、継続できる人は少ない。小笠原氏はブログで人事制度やその周辺の記事を継続的に執筆し、自身の専門性を伝え、何かのタイミングで思い出してもらう、遠い将来のための種を植えている。またブログは自分の考え方を伝えている。「読んで相談にくる人で相性が合わない人はまずいない」と語る。
 
経営コンサルティング業の株式会社ブレインパートナー 代表取締役 和田一男氏も情報発信に力を入れる一人だ。テーマ別に3つのWebサイトを運用している。大手企業を中心に18年間かけて積み上げてきた実績や、コンサルティングで伝えている経営ノウハウを積極的に公開している。

ブラックカードを日本で最初に導入した富裕層マーケティングの専門家の土屋浩二氏は、パーソナルブランディングをプロから学び、名刺やロゴをリニューアルした。ジャケットもすべてオーダーメードである。自身も富裕層となった今、土屋氏はポルシェに乗り、別荘を持つ。富裕層の生活を知ることがユーザー理解につながるとともに、富裕層マーケティングを実践する際の説得材料にもなる。

相談しやすい雰囲気をつくる

経営コンサルタントや講師をしている“その道のプロ”は、一見近寄りがたい印象を与えかねない。また「実は人見知り」と打ち明ける人もいる。そういいながらも、実際にはICのコミュニケーション力は高く感じる。それは、人見知りである自分を脇に置き、意識して自ら話しかけるとともに、気さくな雰囲気を作ろうと努力しているからである。

前述の和田一男氏は相談しやすい雰囲気をつくり、講演や執筆も気軽に受ける。人材育成・組織開発の支援をする株式会社メロスパートナーズ 代表取締役 宮本寿氏も「困ったときに声をかけやすく、相談してみたい人」と思ってもらうよう意識しているという。新たなつながりが生まれやすくなり、ふと思い出したときに声をかけてもらえるからである。

前向きなパワーを放つ存在としてみられたい」と語るのは池照佳代氏だ。経営者とともに人事制度の仕組みを構築する池照は、現場にも入り込んで新たな仕組みを根付かせる。言動を前向きかつ目的を持ったものにすることで、ポジティブな空気を作り出し、プロジェクトを成功へ導いていく。

また「威圧感を与えない人」というイメージづくりを意識しているのは、ファッションリテールを中心に人材育成のコンサルティングをするマイソリューションズ 山村真砂子氏だ。「研修はつまらない」「講師はこわい」というイメージを持っている人は多い。一度そう思われると、受講者の気持ちが遠ざかってしまう。楽しく、何を聞いても受け入れてくれる人であることを示すため、気さくに名前で呼んだり、日常で出会った身近なエピソードを交えてトレーニングに使ったりしているという。

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自分を安くしない

仕事を安く受けない、値下げに応じないことは、自分の価値やブランドを守る方法のひとつである。自分の納得のいく価格を提示し、圧倒的な成果を出すことで、結果的に仕事が集まってくる。

多くのICは「下請け業者扱い」をする人とは仕事をしない。成果を出すためにはクライアントと同じ目線で、同じゴールに向かうことが必要である。対等なパートナーとして仕事ができない場合は、価値が提供できないと考え、基本的には仕事を受けない。
 
会社で雇われていると、組織が大きくなるほど、方針の合わない上司や部下と一緒になる可能性があり、我慢して仕事せねばならないケースもある。独立する価値の一つは、仕事も仕事する相手に選べるという点である。ICは基本的に仕事が好きな人種だ。だからこそ自らが共感した企業や経営者、担当者と仕事がしたいと考えるのである。
 
「なんでも屋」にならないことも仕事の質を担保するために大切だ。土屋浩二氏は得意な分野以外の仕事は受けないと決めている。幅広くマーケティング関係の案件を受けていた時期もあったが、いまは富裕層マーケティングの案件のみに取り組むという。

「Microsoft Accessで業務改善を支援する」株式会社オフィスリテラシステム 代表取締役 牧野真紀氏は、Access以外のことは引き受けない。Excelの仕事さえも受けないという徹底ぶりだ。

さらに、ファッション専門店の在庫最適化コンサルタントの齊藤孝浩氏は、「お金のためにやりたくない仕事を引き受けることはしない」と語る。

動き続け、学び続けることで新たな知識を獲得し、信頼も得る

ICはとにかく好奇心が強い。

売れる事業を生み出すプロデューサーのTopdas株式会社 久保修氏は数十年拠点をおいていた大阪から、去年いきなりベトナムへ移った。ベトナムに関心を持ち始めた数年前から、仕事をつくってはたびたび訪問し、訪問前にSNSでアナウンスして、現地の知り合いを広げていった。今はベトナムに進出したい日本企業の支援をサポートしている。急成長するベトナムの変化を目を輝かせながら報告する久保氏は、「ずっと少年のように見られたい」を体現する60歳である。

書籍を読む、講座を受講するとともに「人と会う」ことも学びのひとつとして挙がってきた。和田一男氏は「刺激的な人と会う、志ある若い経営者を支援すること」を自分の学びだと言う。また池照佳代氏は、専門領域外の人から学んだり、出会う機会を定期的に設けている。

齊藤氏のブログは読むアパレル関係者は多い。ブログというアウトプットのためにアンテナを立て、それに必要なものをインプットすることで、自分の感覚を磨き続けている。また、毎年夏に東京の未来図のヒントになりそうな海外の都市を旅するインスピレーショントリップを行なっているという。

FRP Consultant 株式会社、代表取締役 吉田州一郎氏も世界中のニュースや専門書の技術的内容を題材に、「自分ならどう考えるか、想定される課題に自分ならどう対応するか」という記事を発信する。そうすることで自身の学びとブランディングの両方を実現している

土屋氏は年に1回「自分合宿」を課している。家や職場から離れ、数日間宿にこもってパーソナルブランディングをチェックしている。自分合宿で仕事の振り返りや、将来のビジョンを考える人もいる。

吉田氏は「クライアントと経験した実務が最も大事な勉強」だと語る。池照氏も「日々の仕事自体が学びの機会」だという。

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ICの信頼は仕事の成果で得られる。成果を出すためには自分の専門性を深めつつ、広い視点で世の中の流れをとらえる力が求められる。ただし、何も発信しないとどんなことができるか、どのような実績があるかは伝わらない。学び続ける、情報を出し続ける。常に変化と発信を行うことで、自分のブランドを形作り続けている。

<ご案内>
IC協会では、2018年9月22日(土)にICフォーラム、
人生100年時代 「第三の働き方の行方」 Independent Contractors Forum 2018を開催。和田氏、齊藤氏、池照氏などが登場し、セルフブランディングほか自身のノウハウを発表します。※無料(事前登録制)


【取材協力者(順不同)】
Topdas株式会社 久保修氏
株式会社ブレインパートナー 代表取締役 和田一男氏
ディマンドワークス 齊藤孝浩氏
ユニティ・サポート 代表 小笠原隆夫氏
株式会社メロスパートナーズ 代表取締役 宮本寿氏
KTマーケティング株式会社 代表 土屋浩二氏
FRP Consultant 株式会社 代表取締役社長 吉田州一郎氏
株式会社アイズプラス 代表取締役 池照佳代氏
株式会社マイソリューションズ 代表取締役 山村真砂子氏 
株式会社オフィスリテラシステム 代表取締役 牧野真紀氏 

小林利恵子

株式会社オプンラボ 代表取締役
近未来ハイスクール スクール長
インディペンデント・コントラクター協会 4代目理事長
変人コレクター

ベンチャーから大手企業まで、人にフォーカスした企業広報支援や、コミュニティづくり・イベント運営をサポートするオプンラボ代表。”変人=エッジのたったプロフェッショナル”
との対話が3度の飯より好き。最初、IC協会に足を運んだところ変人ぞろいで、すっかりはまってしまい、いつのまにか理事長に。変人の個性を最大限いかせるICという働き方の普及につとめる。また、2017年からはオプンラボで変人と高校生をつなぎ行動変容をうながすプロジェクト「近未来ハイスクール」をスタート。