子会社とは|メリット・デメリットと管理する際の注意点

今日の企業経営においては、子会社や関連会社、グループ企業など、企業統合を活用した事業展開が活発になっています。
実際、子会社を設立するということはさまざまなメリットがありますが、子会社をどのような手法で管理するかという点や子会社の予算や実績比較、分析などをどのように行うべきかについては、十分に理解し留意する必要があります。

以下では、子会社を設立することのメリット・デメリットや、親会社が子会社を管理する際の注意点などについてご紹介します。

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子会社とは

まず、そもそも「子会社とは何か」についてですが、これについては会社法で「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社、その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」と規定されています(会社法2条4号)。
そして、上記でいう「当該会社がその経営を支配」とは「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」をいうとされています(会社法施行規則3条、4条)。

つまり、子会社が否かを判断する際には、財務及び事業の方針の決定を支配しているといえるだけの実質的な支配があるか否かを基準として判断されることになります。

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平成14年に連結納税制度が導入され、平成22年にはグループ法人税制が導入されて、所得通算のメリットがクローズアップされたこともあり、子会社や関連会社、グループ企業など企業統合を活用した事業展開は近年ますます活発になっています。しかし、子会社を設立して事業展開する際には、子会社を設立することのメリット・デメリットを十分に理解し、親会社として万全の管理体制を構築するのはもちろんのこと、税務面での子会社の会計処理と税務についても必要な対策を検討することが重要となります。

子会社のメリット

子会社を設立すると、以下のようなグループ企業内の多種多様な人材や情報といった資源を有効活用できるというメリットのほか、税制面でもさまざまなメリットがあります。

1. 人材や情報を有効活用できる

子会社を設立すると、個々の企業が自主性や創造性を発揮しながら事業展開をしていきます。したがって、人材や情報を有効活用し競争力を高めることが期待できます。

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2. 消費税が2年間免税される

課税売上高が1,000万円以下の事業者は、設立から2事業年度の間納税義務が免除されます。このような事業者のことを免税事業者といい、子会社を設立した場合も同様に2年間消費税がかかりません。

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ただし売上が5億円を超えているような大規模な会社から出資を受けている場合、つまり親会社の売上が5億円を超えている場合には、「その子会社にも、納税する余力は十分あるだろう」とみなされ免税事業者とはなりませんので、この点については注意をする必要があります。

3. 交際費の経費算入限度額が2倍になる

中小企業(期末資本金又は出資金1億円以下の会社)の場合、年間800万円までの交際費は損金に算入することができます。そして、子会社を設立した場合には、子会社は別会社となるため親会社と子会社と併せて2社で合計1,600万円まで交際費として損金に算入することができます。

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(参照:中小企業庁「中小企業を支援する様々な税制上の措置」

 

4. 法人事業税の軽減税率を利用できる

事業税とは、個人・法人が事業を営んでいる場合にその所得にかかる都道府県税で、「課税所得×税率」で計算します。
例えば東京都では、超過課税(地方団体が標準税を超える税率を条例で定めて課税すること)を実施しており、同時に資本金の額(または出資金の額)と所得等の大きさによって異なる税率を適用します。
資本金等の額が1億円以下の中小企業の場合、800万円以下の所得に対しては軽減税率を利用することができますので、子会社を設立したことによって利益が分散されれば、親、子会社共に法人事業税の軽減税率を利用することができます。

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子会社のデメリット

前述したとおりさまざまなメリットがある子会社の設立ですが、反面デメリットも指摘されています。

1. 不祥事による信用低下

例えば、グループ内一企業に不祥事が発生した場合には、親会社を含むグループ企業全体の信用を低下させてしまうという点です。

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確かに親会社と子会社は別法人であり、子会社取締役は親会社とは独立して経営を行っているのですから、その意味で子会社に不祥事が生じたとしても、それで当然に親会社やその取締役にその子会社に対する責任を認められるべきではないといえるかもしれません。
しかし、具体的な事例の中では子会社取締役が親会社取締役の指示を受けて行動した結果不祥事を招いているケースも多々ありますし、逆に必要な指示を怠ったりしたために子会社の不祥事を招いてしまったというケースもあります。
したがってこのような場合には、子会社の不祥事とはいってもやはり親会社の責任が追及されるのは免れないと考えておいた方がよいでしょう。

2. 税制面でのデメリット

子会社を設立することで、税制面でのデメリットもあります。
複数の所得があり、その所得のうちに赤字が発生している場合には、黒字の所得から赤字分を差し引く「損益通算」が可能となりますが、基本的に親会社と子会社は別会社なので、損益の通算はできません(ただし、親会社の100%子会社を除く)。

また、道府県民税、市町村民税といった地方税には、赤字でも支払わなければならない一律負担の「均等割」の部分がありますが、子会社を設立した場合には、親会社・子会社共に、均等割を支払わなければなりません。

関係会社との違い

子会社と関係会社の違いについては、資本関係の有無に関係なく混同して使用しているケースが多いようです。
しかし会社計算規則や財務諸表規則では、関連会社について「他の会社等及び当該会社等の子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業または事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合で、子会社以外の会社」の会社を指すとされています(財務諸表等規則8条5項)。

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具体的には、関連会社と認定されるためには①子会社以外の他の会社等の議決権の20%以上を自己の計算において所有している場合②子会社以外の他の会社等の議決権の15%以上20%未満を自己の計算において所有している場合、などの要件が必要です。
ただし、これらの要件に該当する場合でも財務上または営業上重要な影響を与えるとは言えない場合には、関連会社ではないとされることもあります。

なお、「グループ会社」の定義については法律や会計基準等で明確な基準が示されている訳ではありませんが、一般的には親会社、子会社、関連会社を含めているケースが多いようです。

 

連結子会社とは

連結財務諸表では、支配従属関係にある2つ以上の企業の集団を単一の組織体とみなして、親会社がその企業の集団の財政状態、経営成績などを総合的に判断して報告するために作成するもので、原則としてすべての子会社は連結の範囲に含まれます。

ただし、子会社のうち意思決定機関に対する支配が一時的と認められる場合や、連結の範囲に含めることが利害関係人の判断を誤らせる恐れがあると認められる場合などは、連結の範囲には含まれないとされます。

連結納税制度とは

連結納税制度とは、グループ企業の一体性に着目して、グループ内の個々の法人の所得と欠損を通算して所得を計算するなど、グループ企業全体をあたかも1つの法人として捉えて法人税を課税する仕組みです。
個々の法人を納税単位として課税するよりもグループ全体を1つの納税単位として課税した方が、より実態に即した課税ができるというメリットがありますが、連結子法人にある連結納税制度開始前または加入前の欠損金は原則として切り捨てられることになるので、連結親会社や他の連結子会社の課税所得を減額することはできないなどのデメリットもあります。

 

親会社が子会社を管理するための手法

親会社が子会社を管理するための手法としてはさまざまなものがありますが、大きく①集積方式(親会社集中管理体制)、②分権方式(分権的連合体制)、③中間方式、④統合ネットワーク型管理体制の4つの類型に分類することができます。

1. 集積方式

子会社や関連会社など、グループ企業に関する権限や責任の委譲を一定の限度に納めて、できる限り親会社に権限を集中させる方式です。
グループ全体の経営管理を適時・有効に行うことができる、親会社が集中的に管理することができるなどのメリットがありますが、反面親会社の意思決定が遅れるとそれがそのまま子会社に影響するなどのデメリットもあります。

2. 分権方式

子会社に経営に関する権限の相当部分を委譲する方式です。
子会社の自主性を保つことができ、迅速な意思決定が可能となるなどのメリットがありますが、子会社の経営リスクを十分に管理することができなくなってしまうことがあるので、不祥事などによって重大な損害が発生するリスクがあります。

3. 中間方式

中間方式とは、集積方式と分権方式の中間といえる方式で、子会社の経営状況に応じて集積方式にしたり分権化を図ったりする方式です。
子会社の経営責任者の能力や子会社の所在地などを考慮して、状況に応じて管理方式を検討できるというメリットがあります。

4. 統合ネットワーク型管理体制

統合ネットワーク型管理体制とは、オペレーションの権限と責任については子会社に委譲するものの、マネージメント機能については親会社が管理するという方式です。

 

子会社を管理する際の注意点

親会社は、子会社の業績評価を行いその達成状況を検証する必要があります。
確かに子会社は独立した活動単位ではありますが、グループ予算を構成する各社別の予算については、親会社がその責任を持つからです。
それでは、子会社の業績評価や予算・実績比較などを行う際には、どのような手法で行い、どのような点に注意をすべきなのでしょうか。

子会社の業績評価

親会社は自社の業績のみならず、子会社の業績についても適正に把握する必要があります。
そして、把握した情報を元に予算の達成度合いや業績評価を行うことになります。
なお、子会社の業績評価を行う際には、会社としての評価と管理者の人事上の評価を分けて考えるというのが大前提です。
会社として評価する場合には、その評価の対象は子会社単体の利益となりますが、管理者の場合にはその管理者にとって管理可能な利益(管理者が管理可能な利益)で評価するべきです。
したがって、子会社の業績評価を行う際には、事前に業績評価の対象となる子会社の管理可能利益と予算の責任範囲は一致させておくようにしましょう。そして管理可能利益と予算の責任範囲を一致させるために管理会計上は部門別損益計算書を作成して明示するようにしましょう。
なお、部門別損益計算書を作成する際には、会社及び部門管理者の管理可能利益を明示しておくことも重要です。

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子会社の予算・実績比較と分析

子会社は、月次決算もしくは四半期決算による実績を集計し、予算と比較して分析を行います。そして、年度予算達成に向けての進捗状況について親会社に報告します。
そして親会社では、これらの子会社からの報告に基づいてグループとしての実績と予算の進捗状況を集計して、経営の指標とします。

子会社が報告する事項は、営業損益に関する分析が中心となります。営業損益は、売上高、売上原価と販売費及び一般管理費に区分して分析します。
なお、この時にはキャッシュ・フローについても注意します。
営業活動からキャッシュ・フローに影響のある債権債務や棚卸資産等の賃借対照表の項目の増減については、特に詳細な分析が必要です。
営業活動以外にキャッシュ・フローに影響を与える要因としては、設備投資の実行や借入金の調達・返済と言った財務活動がありますので、これらについても子会社が随時親会社に報告する体制を整備しておくことが望まれます。
そして、これらの報告を分析した結果については改善案を策定して、予算達成に向けて活動することになります。

なお、クラウド会計ソフトfreeeでは、導入する企業の子会社も含めた試算表を自動で集め、グループ全体の財務状況やキャッシュ・フローなどをリアルタイムで可視化することができます。グループ会社間で異なる勘定科目や重複する取引も統一することができます。

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子会社からの報告

これまで述べてきたような子会社の業績評価や、予算・実績比較・分析といった作業を行うためには、前提条件として子会社からの業績に関する正確な情報が提出されるための体制を構築する必要があります。
子会社から、業績に関する正確な情報を適正に報告を受けるためには、まず子会社において財務報告を適正に行う体制を整備して、運用していくことになります。
具体的には、いつ(報告頻度、報告期限)、誰が(子会社の報告責任者)、誰に(親会社の管理部署)、何を(報告内容)、どのように(報告様式、手段など)の体制について規定を作成しマニュアル化します。
また、どのような内容の報告を受けるかについては、賃借対照表や損益計算書の月次推移、前年同期の比較、売上カテゴリー別分析などはもちろん、親会社として子会社の債権管理の実態をモニタリングするために売掛金年齢表やクレーム状況などのリスク情報も含むようにします。

 

まとめ

以上、子会社の意味やメリット・デメリット、親会社が子会社を管理する際の注意点などについてご紹介しました。
ご紹介してきたように、子会社を設立することは親会社にとっても税制上で有利になることがありますし、人材や情報を有効活用できるなど多くのメリットがありますが、反面いくつかのデメリットもあります。
親会社による管理体制の構築する際には、これらの点について十分留意する必要がありますし、個々の状況に応じて注意すべき点やとるべき対策方法も変わってきますので、できる子会社を設立する際には、できるだけ早期に弁護士、税理士等のアドバイスを受けることをおすすめします。