元国税局職員芸人・さんきゅう倉田「あなたの知らない税務調査 後編 ー本当にあったこんな話ー」

さんきゅう倉田です。僕は今よしもとクリエイティブエージェンシーに所属しているお笑い芸人で、元国税局の職員です。楽しく正しく税を理解してもらうため様々な活動をしています。

前編では、税務調査のイロハをお伝えしましたが、後編は100を超える税務調査に関わってきた経験則からみなさんの耳目を集めそうな事例や否認されやすい勘定科目を紹介していこうと思います。ポイントは、焦らずまずは税理士に依頼することがお勧めです。

>> 前編「元国税局職員芸人・さんきゅう倉田「あなたの知らない税務調査 前編 ー税務調査のイロハー

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現金商売に要注意な“内観調査”

飲食店やパチンコ、風俗など現金売上が主たる収入である場合、実地調査の前に“内観調査”が行われることがあります。税務署職員がお客のふりをして来店し、事業の様々な部分をチェックします。

昔、知り合いの洋食屋に内観調査が行われたことがありました。きっと、こんなことをチェックしたと思われます。

  • 客は何人くらい来ているか
  • 単価はどのくらいか
  • 従業員は何人いて何という名前か
  • 予約台帳はあるか領収証は渡しているか
  • 支払い済みの会計伝票はどうしているか
  • レジは打っているか
  • お土産を販売した場合はどのように処理しているか

税務調査に関係あることだけをメモし、翌日に統括官に報告したはずです。ちなみにデータ上残せないので紙とペンでメモすることが多い印象です。

どうして、内観調査が行われたと分かったのでしょうか。調査担当者と内観調査に来ていたのは異なる職員だったそうです。しかし、前年に税務署に行ったときに見たことがある職員が内観調査に来ており、プライベートかなと推察したのですが、その後すぐに調査の連絡が受けたため分かった、とシェフは言っていました。

もともと店主は、調査があっても問題が出ないように、日々正しい会計処理を心がけていたので、調査ではあまり指摘が出ませんでした。

 

今もっとも否認される勘定科目

調査の基本は、売上です。架空の経費を計上するのはエネルギーが必要ですが、売上を除外するのは書類を破棄したり現金をポッケに入れたりするだけで可能なので、比較的簡単に行われます。特に、イレギュラーな収入は除外のインセンティブが働きやすいようですが、税務調査官も鋭い目線を持っているのですぐに見抜かれるケースが多いです。

売上にはこのような不正もありますが、単純なミスによる計上漏れもあります。また、決算期末の売上は翌期に計上すべきものかどうかの判断が難しく、調査ではよく指摘されます。いわゆる“期ずれ”です。客観性のある正しい収益基準を採用していれば、問題となることはありません。

個人事業者の一般的な会計処理は“期中現金主義”です。基本的には、入金ベースで売上を立て、入金日が12月31日を超えるものは、入金がなくとも売掛金として売上を計上します。
※freeeを使っている場合は、請求書発行の段階で売上と売掛金が計上されます。

経費では、個人的な使い込みが散見されます。私的な支払いを事業の経費として落としていると、調査でたやすく否認されてしまいます。例えば、家族と食事にでかけたときの支払い、愛人へのプレゼント、友人と旅行に行った際の交通費・宿泊代、趣味のゴルフに使った費用です。事業と関係のない支払いは経費にできません。

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収入が全然ないタレントへの調査

どうせ調査なんかないだろう、自分のところへは来ないだろうとみなさん考えるようです。特に「このくらいの売上なら来ないだろう」と高を括っている方がいらっしゃいます。2月になると、芸人さんたちが劇場で確定申告の話をしていますが、その中には過去に税務調査を受けた方もいます。

タレントとして売れていないので、確実にアルバイトをしている芸人さんです。多く見積もっても手取りで月に20万円。年収は240万円ほどでしょうか。事務所からの収入は年50万円にも満たないと推察されます。

しかし、税務調査を受け、所得税を追加で支払ったそうなのです。具体的な金額は分かりませんが、過少申告加算税や延滞税を払い、住民税や健康保険料の金額にも影響があったはずです。聞き耳を立てていたぼくは、この人の年収で調査が行われたことに驚きました。

税務調査では常に効率が求められます。結果が出ない調査先に行くことはありません。必然的に、収入の多い方に調査をすることが多くなります。この芸人さんくらいの収入では、大きな結果が出ることがありませんので、申告書が大きく誤っていたなどの理由があったのかもしれません。

もしかすると、調査担当者が家に来るようなものではなく、簡易な接触が行われただけかもしれません。それでも、税を納めることには代わりありませんから、若手芸人にとっては手痛い出費となったことでしょう。

副業のライティングを申告しなかった会社員

世の中には正しく確定申告をしている個人事業者もいれば、会社員として働きながら副業で稼いでいるにもかかわらず申告を怠る人間もいます。とあるライターの男性は、上場企業に勤めながら、空き時間を利用してライティングの副業を行っていました。

イベントに行き、取材をして、そのイベントの記事を書く仕事です。平日の昼間から「取引先に行く」と偽ってイベントに出席し、週末も複数のイベントに出張ることで年数百万円を稼ぐまでになりました。

どうせ調査などないだろうと、無申告のまま副業を続けて数年、ついにそのときがやってきました。税務署から、手紙が来たのです。書いてある内容はわからないけれど、とにかく電話をせよ、とのこと。

男性は焦りました。自分は脱税で逮捕されるのだろうか、預金や家を差し押さえられてしまうのだろうか。ああ、どうして自分は申告を怠ったんだ、神様、時間が戻せるなら副業を始めたばかりのころに戻してください、今度は正しく納税して、なんなら少し多く納めたってよいのです。そんなことを考えたそうです。

なぜ、無申告であることが分かったのか調査担当者は教えてくれませんでしたが、執筆にかかる報酬を受け取る際、源泉徴収が行われていました。もちろん、住所も伝えていますし、源泉徴収票ももらっています。税務署はそれらの情報を掴んでから、男性に接触したのです。

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アイドルの高額な追徴課税

知人の中で、税務調査による追徴課税が最も大きかったのはアイドルの方でした。ぼくと知り合った数年前に調査を受け、3,000万円ほど追加納税したようです。年収は教えてくれませんが、衣装代として経費にしていたものを半分ほど否認され、そもそも領収証がないにもかかわらず赤字申告にしていたことで保管している領収証とレシートを徹底的に確認されて、申告内容が嘘であることがバレてしまいました。

ただ、貯金も多額だったため、一括で納税し、それからは税理士さんと契約して、完璧な帳簿を備えているそうです。最初から税理士さんに頼み、調査にも立ち会ってもらっていれば、3,000万円も払うことはなかったかもしれません。
※勉強編にリンク


専門性の必要な税務調査は一人では対抗できません。税理士がいないにも関わらず、調査で何もなかった人をぼくは知りませんし、事業を大きくするのなら税理士さんの協力はかかせません。事業を始めたら、今は税理士にお願いしていなくとも、税務調査が来たら早期に税理士事務所のインターホンを押すと良いと思います。

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