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2015年02月26日(木)

ベンチャーに7年間の優遇!? 2015年度の税制改正の目玉「法人課税」って何?

経営ハッカー編集部
ベンチャーに7年間の優遇!? 2015年度の税制改正の目玉「法人課税」って何?

2015年度企業が納める法人課税が税制改正の目玉となっている。

三本の矢 法人税とは、企業が国に納める税金の事。ざっくり言うと、以下2つの税金が法人にかかってくる。

・国税=法人税 ・地方税=事業税

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上記2つを合計した納税額が利益に占める割合を「法定実効税率」と呼びます。 ちなみに下記に、日本の「法定実効税率」が世界の国々と比べてどの程度なのか図表とグラフを用意しました。これを見ると日本は国際的にかなり高い水準だという事が一目瞭然ですね。 法定実効税率グラフ 法定実効税率表<図表参照:2014年度 財務省資料より>

これって、要するに企業側からすれば「日本の法定実効税率36.99%って重税だから税負担の軽い海外に移転した方が良いよね!」って事になりかねない。そこでアベノミクスでは、世界のトレンドになりつつある法人税率の引き下げを行う事にしたわけです。2015年度は32.11%、更に2016年度には31.33%に引き下げる事になります。最終的には20%台にしようとしているみたいですよ。バンザイ! 税率引き下げ

これだけなら万々歳なのですが、アベノミクスでは国によるリストラとも言うべき赤字企業に厳しい措置が盛り込まれました。どんな世界でも足を引っ張るぶら下がりは切り捨てるってことですかね。儲かっている企業には負担減、赤字企業には負担増という、要するに落ち目になったものには厳しい現実を突きつけるんです。その政策は以下になります。

◎繰り越し控除 ◎外形標準課税

◎「繰り越し控除」とは

これまでの「繰り越し控除」は、企業が赤字を出した場合、最大9年間、所得の80%を毎年の課税金額から差し引いてもらえた。これにより、税務負担が軽減されたので、例えば今年多額の負債を抱えても、翌年以降利益が出た場合の税金負担額は軽減され制度なわけです。これがあるおかげで、借金を返すことができ、生き残れた企業は数知れずなわけですね。しかし! 政府はこの繰越の割合をガクッと減らす方針を打ち出しました。その内容を下図にまとめました。 スクリーンショット 2015-02-24 9.11.52 お分かりでしょうか? 赤字企業の延命措置は絶たれたと言っても過言でないようです。 (※今回の見直し案は、すべて大法人に関連するもので中小法人は含まれていません。)

◎「外形標準課税」とは

「法人税」は利益が出た企業に対して課税するので赤字企業には課税しないのですが、この「外形標準課税」の場合は黒字でも赤字でもかまわず課税するので、例えば赤字になってしまった企業には辛いわけです。これによって都道府県は財政が逼迫(ひっぱく)する事なく、安定した税収が得られておいしいわけです。しかし中小企業など赤字になりやすい規模の企業では厳しい課税です。大企業の場合は利益率が高いので痛手は被らないのですが、赤字続きの中小企業ほど税負担が増えるわけですからたまりません。

アベノミクス骨太方針ポイントはこれ!

下図で「三本の矢」と言われるいわゆるアベノミクスの政策を改めて見てみましょう!

噛み砕くと、人口が減れば税収も減る。だから未来の稼ぎ手になる子供を増やし、沢山税金納納めてくれるように教育する。高齢社会で現役世代が激減したから、外国人労働者を招き入れ、これまで育児などで家庭に入っている主婦にも働いてもらって、そのために女性の役員増やして女性が働きやすい環境整備する。それでも足りない税金は、裕福な外国の方々に日本に長く滞在してもらい恩恵を頂きく。その為に観光や商売で必要な交通網の整備が必要。受け身だけでは不安だから、ロボットビジネスなど日本の技術を活かした攻めの施策も盛り込む。企業が働き手に長時間勤務させても文句が出ない様に時間ではなく成果で評価する。医療費はみなさん自腹を切ってもらう様にし、農業も民間に投げるなどなど……、そろそろ国の借金返していきますので国民の皆さん頑張ってねと言う事ですね。

■1)骨太の方針

・税制改革:数年の後に「法定実効税率」を20%台まで引き下げるという方針。 ・人口維持:1億人という人口を50年後も維持できる様な対策。 ・少子化対策:夫婦が2人の子を育てても人口は増えない。そこで3人目以降を出産した場合、育児や教育面の支援を手厚くする。

■2)成長戦略

・子育て支援:「子育て支援員」や放課後教室などを増やし、両親が仕事に打ち込める環境を作る。 ・企業の女性役員比率向上:「有価証券報告書」に女性の役員比率を書くように義務化。 ・外国人の雇用:「技能実習制度」で、外国人が日本で働ける職種の拡大や、実習期間の延長を行う。 ・教育支援:国立大学の運営費交付金の見直し。 ・産業振興:ロボット産業の市場規模や技術開発を促進する。 ・観光対策:ビザ発給要件を緩和し、外国人富裕層に向け日本で長期滞在できるようにする。 ・交通インフラ:高速交通網の整備を急ぐ。

■3)規制改革

・雇用構造:「脱時間給」により、時間ではなく成果で評価する新たな働き方を導入。 ・医療制度:「患者申出医療制度」の創設。混合診療を大幅に拡充する。 ・農業見直し:農業に企業参入を大幅に促進。JA 全中の組織改革。

中堅企業には厳しい時代?ベンチャー企業に手厚い支援!

上記の様に、こんな時代になってしまいますが、これから起業しようとしている起業家の方々には嬉しいニュースもあります。いつか起業しようかな?って考えている方にも頭の片隅に入れておくといいでしょう。

■ベンチャー起業に手厚すぎる特例のなぜ?

上記の「繰越控除とは」の説明で、赤字を出した大企業について、毎年所得の80%を課税金額から差し引いてもらえたが、今後は段階的に50%まで引き下げられるとお伝えしました。ここに中小企業は含まれていませんが、ベンチャー企業には特例があるようです!

■特例について!
ベンチャー企業はとにかく赤字が先行しやすいので、創業前後に税負担が大きいとそれがネックになります。事業を促進できる様にするには税負担の軽減が必要なんですね。そこで政府はベンチャー企業に特別控除を行う方針です。内容は7年の間は100%控除という大胆なものです。これが新たに導入されたのでキャッシュ・フローを前向きな投資に回すことができるので、企業の成長促進に繋がることは言うまでもありません! 

下記の図は、創業間もないアーリーベンチャー程雇用を生んでいて、古い企業程雇用を生んでいないというデータです。 スクリーンショット 2015-02-24 10.19.10

これを見ると、若くて元気な企業が雨後の筍の様に創業して行く事こそが、日本の経済においてV字回復に繋がるのではないかとワクワクさせられますね。ただ、日本はアメリカに比べると格段にベンチャーが生まれない土壌らしく、経済産業省などでは様々な優遇措置を行っています。今やスタートアップ企業は、大企業が元気ない時代において大躍進を遂げており、ビジネスシーンにおいてイノベーションを起こしています。これから起業しようとする人も、既にしている方も、国の優遇措置をフル活用し、便利で豊かなサービスを作っていきましょう。

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