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2019年06月21日(金)

『経営に役立つ“管理会計”』第五回:目的地にたどり着くために大切なこと

経営ハッカー編集部
『経営に役立つ“管理会計”』第五回:目的地にたどり着くために大切なこと

皆さま、こんにちは、公認会計士・税理士の矢野です。これまで、このコラムでは、経営者の皆さまと、「経営に役立つ“管理会計”」について考えてきました。
最終回となる今回は、これまでの振り返りと、これまでの連載を通じて一番お伝えしたかったことを深掘りしていきたいと思います。
 

1.これまでの振り返り

まず、これまで4回にわたってお伝えしてきたことを簡単に振り返ってみたいと思います。

①“管理会計”できてますか?

初回は、「経営に役立つ“管理会計”」を、「経営者の方が自信を持って経営判断を下すために参考となる情報を提供するもの」と定義づけたうえで、「“管理会計”できているか?」という問いを投げかけてみました。
そして、「経営に役立つ“管理会計”」を実践していくためには、PDCAサイクルをしっかりと回すことが重要ということを共有しました。もし、皆さまの会社が、「“管理会計”を実践できているかどうか」今一度チェックしたい、という方は、ぜひ1回目の記事を振り返ってみてください。

②目的地はどこですか?

2回目の記事では、PDCAサイクルの“P”に焦点を当て、「経営者の方が自信を持って経営判断を下すため」の“計画”についてのポイントをお伝えしました。
旅行の際、旅を楽しむために、あらかじめ旅程を計画するように、経営においても、経営者皆さまの想いを計画というカタチにすることでそれを実現しやすくなります。
この回では、最終的な目標値であるKGI(Key Goal Indicator)と、最終的な目標を達成するための鍵となる数値であるKPI(Key Performance Indicator)を用いて、経営に役立つ計画の例をお示ししました。

③現在地はどこですか?

3回目の記事は、PDCAサイクルの“D”と“C”に焦点を当てて、掲げた目標を達成するために必要なことについて考えてみました。
この回では、カーナビも“PDCAサイクル”を回しており、例え途中で道を間違えてしまっても(=予定通りに“Do”できなかったとしても)、現在地をリアルタイムで把握できている(=“Check”できている)から、すぐさま次のルートを提案してくれる(=必要な“Action”を提示してくれる)ということを例に挙げ、経営においても、現状をタイムリーに把握できるツールの必要性についてお伝えしました。

④このまま進んでOKですか?

4回目の記事では、PDCAサイクルの“A”のイメージを深掘りしてお伝えしました。タイムリーに把握(=“Check”)した現在地が、もし予定していたものと違った時、当初の目的地を目指し続けるのか?もしくは、目的地を変更するのか?という、次なる“Action”の選択肢について、飲食店をモデルケースに挙げて考えてみました。
一度作成した計画に固執するのではなく、現在の経営状況をタイムリーに把握し、経営理念の実現のために、必要に応じ目標自体も修正していく、それを可能にするのが“管理会計”だということをお伝えしました。

このように、今回の連載では、「経営に役立つ“管理会計”」の大前提として、「PDCAサイクルを回すこと」に着目しました。前回までの記事では、その“PDCAサイクルの重要性”をお伝えしてきたので、最終回の今回は、そのPDCAサイクルを回して、目的地にたどり着く(=経営の目標を達成する)ために重要なことについて考えていきたいと思います。

2.タイムリーな会計情報の入手と、計画との比較

実際にPDCAサイクルを回すうえでは、"P"、"D"、"C"、"A"、すべての局面でキーポイントが存在しますが、最終回の今回は、特に"C"に絞ってお伝えしていきたいと思います。

第3回目の記事でもお伝えしたように、現状把握に時間がかかってしまっては、当初設定した目標に照らして順調に進んでいるか否かが分からず、不安定な状態で経営をしていくことになります。したがって、設定した目標を達成するためには、「いかにタイムリーに会計情報を把握し、計画と比較できるか」が重要になってきます。

皆さまの会社では、“タイムリーな会計情報”が手に入る体制となっているでしょうか?
 
売上が少しでも増えるように、経費を少しでも節減できるように、目標が達成できるように、日々経営課題に真剣に向き合っている経営者の方の中には、自信を持って判断を下せる方もいれば、「これで大丈夫だろうか」と不安を抱えながら判断される方もいらっしゃると思います。

これは、私の経験上ですが、経営者の方々とお話する中で、会社の現状をタイムリーに把握できていないことがその不安の原因の一つであると常々感じてきました。

逆に、自信を持って決断を下している経営者さんは、会社の現状をタイムリーに把握し、計画との対比ができている、といった方が多いように思います。

ここでは、タイムリーな会計情報の入手と計画との比較について、「①インプットの速度」と、「②アウトプットの速度」の二つの視点で考えてみたいと思います。

①インプットの速度

インプットとは、会計ソフトへの入力のことです。例えば、現状把握が遅れるパターンのひとつに、記帳代行を依頼している会計事務所が月次決算をまとめるのに時間がかかっているということがあります。
会社側で記帳に必要な情報を整理して会計事務所に提出し、そこから会計事務所が記帳をするという流れを組んでいると、どうしてもタイムリーさに欠けることとなってしまいます。私も、丸投げ記帳代行の仕事をいくつかいただいていますが、こちらで反省すべき点は多々あるものの、やはり自社で経理をされている会社に比べ、月次の数字をまとめることに時間を要してしまっているのは事実としてあります。
また、自社で記帳を行っていたとしても、従来型の入力方法を続けている場合には、やはり現状の取りまとめに時間を要してしまうケースがあります。

②アウトプットの速度

アウトプットとは、計画と比較するために会計システムから情報を取り出すことを意味しています。例えば、会計システムの情報を、手打ちでexcelに転記し、予算実績対比表を作成する、といった作業をされているような場合には改善の余地ありです。

もし、皆さまの会社で、「知りたいときに計画対比情報が手に入らない!」という状況に陥っているとしたら、「インプット」の速度に原因があるのか、「アウトプット」の速度に原因があるのか、(もしくは両方に原因があるか、)まずはそこから把握してみましょう。

3.インプットの速度を上げる

インプットの速度をあげるために、例えば、以下のような状態になっていないか、確認してみてください。

①手入力不要にもかかわらず手入力をしていないか

従来型の記帳作業を続けている場合には、不要な手入力作業をしている場合があります。例えば、私がオススメしているfreeeを始め、クラウド会計ソフトは、オンラインバンクの入出金明細やクレジットカードの利用履歴の情報を自動で取り込む機能があります。
「日付」「金額」「入出金・利用内容」を会計ソフトに手入力している場合には、このような自動化ツールでインプット速度を上げることが可能です。

②同じ情報を2度入力していないか

例えば、営業担当者がexcelで作成した請求書を見て、経理担当者が会計ソフトに売り上げ情報を入力している、なんてことはないでしょうか?これは、同じ情報を別々のツールに、2度入力していることになるので、もし、1度の入力で済ますことができたらインプットのスピードアップにつながります。
この点、上記同様に、freeeは会計ソフト内で請求書が作成でき、作成と同時に売上の仕訳が登録されます。また、他のクラウド請求書作成ソフトとも連携可能です。

このように、インプットの速度をあげることで、結果として現状と計画の対比までに要する時間を短縮することができます。

私が、経理業務の効率化をお手伝いする中で感じているのは、今まで大きな不都合がなかったために、現状の方法を変えるという視点に至らず、現状よりもインプットの速度を上げられることに、担当者自身が気付けていないことが多いということです。

その兆候はいろいろなケースが考えられますが、上記2点は比較的発見しやすいので、自社の経理業務を今一度見渡してみて、インプット速度があげられないか、確認してみてください。

4.アウトプットの速度を上げる

先に述べたように、会計システムの情報を、手打ちでexcelに転記し、予算実績対比表を作成しているような場合には、さらにスピードアップが可能です。

こちらも、担当者が経営会議に向けて夜な夜な報告資料を作成せざるを得ない状況になっている場合には、改善の余地ありです。

この点、例えばfreeeでは、会計ソフト内に予算情報を入力でき、他のツールに打ち直す必要がないため、タイムリーに予算実績比較が可能となります。(プロフェッショナルプラン以上で利用可能。)freeeの経営管理機能はこれからも機能拡充が予定されているとのことなので、経営に役立つ管理会計を行うためのツールとして、今後ますます期待できると考えています。

このようにして、会計情報のインプット速度を上げ、また、その情報をアウトプットして活用する際の速度を上げることで、結果としてPDCAサイクル全体のスピードが速まります。
そのために、既存の作業方法にとらわれず、"C"の段階の効率化に目を向けていきましょう。

5.連載の終わりに

皆さま、ここまで私の連載を読んでいただき、ありがとうございました。

freeeは、必要な情報がリアルタイムに集められ、いつでも経営者が意思決定できるようなプラットフォームになることを目指す「リアルタイム経営ナビゲーター」というプロダクト思想のもとに日々開発が進められています。これは、今回の連載のテーマであるタイムリーなPDCAサイクルを実現するために期待のできる考え方だと、私自身とても共感しています。

実際、連載開始当初に比べ、様々なアップデートが重ねられ、ますます便利になっていると、私自身もユーザーの一人として実感しているところですし、これからの開発・改善も期待しています。
 

最後に、私なりの“freeeを使いこなすコツ”をお伝えして終わりたいと思います。

“freeeを使いこなすコツ” ーそれは、「ユーザー同士の交流を図ること」だと私は考えています。

私は、ちょうどこの連載がスタートしたタイミングで、「freee“マジ価値”meetup!」という、freeeユーザー会計事務所のコミュニティの東京リーダーのひとりとしてお声掛けいただき、今もその活動をしています。
それまで、freeeを使いこなしたいと考えたときには、freeeのヘルプページやチャット、問い合わせなど、「対freee」の枠の中で物事を考えていました。
しかし、ユーザーコミュニティ―を立ち上げ、様々な方に参加していただくことで、今までの自分では知り得なかった活用アイディアをたくさん知ることができました。もはや、freeeを使うというのは、ひとつの“スキル”であると感じています。

もし、皆さまも、もっとfreeeを使いこなして、経営のプラスにしていきたいとお考えなら、ぜひfreeeに関するイベントに足を運んで、ユーザー同士で交流を図ってみてください!ひとり、もしくは、自社だけでは足踏みしているようなことでも、解決の糸口が見つけられるはずです!

これで今回の連載は終了となりますが、また別の機会で皆さまのお役に立てるよう、自分自身も精進してまいりたいと思います。あらためまして、お読みいただいた皆さま、貴重な機会をご提供いただいたfreeeの皆さまに感謝をお伝えして、連載の結びとさせていただきます。

執筆者:矢野裕紀(やの ゆうき)

公認会計士・税理士

矢野会計事務所/代表
つながるサポート株式会社/代表取締役

矢野会計事務所では、クラウド会計freee活用支援を主軸に、“数字や仕組み”でお客さまの目標達成をサポート。つなサポでは、~1/1のひとつなぎ~をテーマに、“場づくりやひとつなぎ”を提供。

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