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2019年10月24日(木)

OKRとは?OKRの導入により企業が人材と組織をイノベーションする手法を考える

経営ハッカー編集部
OKRとは?OKRの導入により企業が人材と組織をイノベーションする手法を考える

OKRとは、個と組織の目標を連動させて、人材の潜在能力を最大限に引き出し、ブレークスルーを生み出し、組織の生産性を飛躍的に向上させようとする人材マネジメント手法です。グーグル、フェイスブックをはじめ日本でも多くの成長企業で導入が進んでいます。今、なぜOKRが必要とされているのか、導入のメリット、目標設定の方法、進め方の注意点、1on1ミーティングとの連動のさせ方や、具体的なOKR設定のサンプル事例などを具体的に解説します。

OKRとは?

OKRの概要

OKRとは、Objective and Key Resultsの略で、企業や組織における目標管理と人材開発が一体となったマネジメント手法です。企業や組織の目指す姿(ゴール)の実現に向けて、その目標(Objectives)と、主な成果指標(Key Results)を設定して、個と組織の目標を連動させて、人材の潜在能力を最大限に引き出してブレークスルーを生み出し、組織の生産性を飛躍的に向上させるための人材マネジメント手法です。

目標(Objectives)と成果指標(Key Results)の関係

目標(Objectives、以下O)と成果指標(Key Results、以下KR)の関係は以下の通りです。
Oは、私達は何を実現するのか、どういう成果を出すのか、どこに向かうのか、という私達が目指す状態を設定します。その目指す状態(O)を実現するためには、どのような状況が実現されていなければならないかが成果指標(KR)であり、いわばマイルストーン・ゴールとなります。一般的に、Oは定性的または定量的なゴール、KRは定量的なゴールを設定します。

OKRの目標設定方法

OKRの2つの目標

OKRの目標設定には、「ムーンショット目標」と「ルーフショット目標」の2つ種類があります。通常、2つとも設定します。
 
ムーンショット目標は、1961年にケネディ大統領が発表した人類初の月面着陸プロジェクトのような、現状の延長戦では実現が難しいが目指すべき未来を示す魅力的な目標という意味で使われます。OKRでは、60~70%の達成率で成功とされます。一方のルーフショット目標は、実現可能なレベルの目標設定で100%の達成率を目指すものです。
 
今のやり方では到底達成できないようなムーンショット目標を設定する効果は、①根本的な解決策が生まれる、②イノベーションにつながる、③困難な共通の目標に挑むことで組織に一体感が生まれる、④手が抜きにくい、などの効果が期待されます。

(参考)ムーンショットとは?ムーンショット経営でイノベーションを生み出す

OKRの目標設定に必要な4つの要素

目標が鮮明でかつ納得できる目標ほど達成しやすいため、OKRの目標設定には次の4つの要素が必要です。

  1. 具体性
  2. 測定可能
  3. 達成可能
  4. 期限

つまり、①誰が見ても、何にどのように取り組んでいるかがわかり、②どのように達成状況を判断するのかが明確になっていて、③高い目標であっても達成の可能性があり、④それがいつまでに実現するのかが明確である、というものです。
 
特にムーンショット目標の設定は、到底到達できないような夢のある目標であってもいいのですが、全く不可能であることがわかっているものでは逆にモチベーションの低下を招く可能性があります。不確定要素が多くても、一定の条件をクリアできれば実現可能であるという材料が見えているものであることが必要です。

OKRの目標は組織の階層ごとに設定してすり合わせる

OKRは、組織と個人が同じ方向を向いて進めるように、全社、部門・チーム、個人の目標が連動するように設定します。
具体的には、以下のような構造になります。

まず経営層が会社のOKRを設定します。それを製造、営業、管理などの責任者が各部門の役割に応じたOKR、あるいはチーム毎の役割に応じた目標にブレークダウンして、部門・チームのOKRがさらに個人のOKRにブレークダウンされることになります。
会社の目標が個人の目標につながっていること、全員に見えるように共有されていることが重要です。個人の目標の達成が会社の目標の達成に直結しているため、会社への貢献が実感できるわけです。
  このような階層別のOKRを設定する際には、部門やチーム間、個人間の横の調整も必要になります。それぞれ部門長やリーダーなど責任者とすりあわせをして、会社全体として目標が達成しやすように部門、チーム、個人が有機的に連携していくことが必要です。

OKRの運用ポイント

OKR、MBO、KPIの違い

OKRは、よくMBOやKPIなどの目標管理手法と比較されることが多いため、それぞれの概念を整理してみましょう。

  OKR MBO KPI
目的 生産性向上、イノベーション 人事考課、報酬決定 プロセス管理、目標達成
考え方 目指す方向を示して、自発的なアクションに繋げる 実績を定量的に測定し、業績を評価する 実績を定量的に測定し、達成状況を把握する
目標設定の水準 高い目標 達成できる目標 達成できる目標
理想的な達成度 60~70%でも可 100% 100%
マネジメントサイクル 四半期で評価、月・週単位で振り返り 人事評価のタイミングでチェック 組織や業務により異なる
評価 業績評価とは別運用 報酬に直結 業績評価に直結
全社目標との整合性 全社目標と個人の目標が連動する 会社と個人の目標は異なる 部門目標と連動している

 

OKRは、

  • 人材のモチベーションを高め、ブレークスルーを生み出し、飛躍的な生産性向上を目指すためのマネジメント手法。
  • 全社目標、部門目標、個人目標が全社員に共有され、オープンに運用されるため、組織の目指す方向性と自分の役割が明確になる。
  • 到底達成できないような高い目標(Objectives)を設定(達成率60~70%水準でも可)。
  • 高い目標を達成するための鍵となる3つ程度の要素をシンプルに成果指標として設定(Key Results)
  • 個人や組織の限界を突破し、新たなやり方を見つけ出すような自由な発想で行動し、その結果を振り返ることが求められる。
  • 全社では四半期ごとに、チーム・個人では毎週~月1回は上司と進捗をレビューする。
  • 業績評価とは連動させないことが多い。

MBO(Management by Objectives)は、

  • 主に人事考課(報酬決定)を目的にしたマネジメント手法。
  • 達成率は100%が評価水準となる。
  • 本人と上司が目標を設定し、非公開で運用される。
  • 人事考課のタイミングで評価を行う。
  • 誰がどんな目標を持って動いているのかがわかりづらい。

KPI(Key Performance Indicator)は、

  • 組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標。
  • KGI(Key Goal Indicator)の目標の達成状況を図るプロセス目標。
  • 目標がどこまで達成できたかを測定、把握するもの。
  • 達成率は100%が評価水準となる。
  • 部署、個人単位で設定される。
  • 会社全体の目標とどのようにつながっているのかが把握しづらい。

なぜ今OKRが注目されるのか?その理由と背景

OKRはグーグルやフェイスブックで導入され、日本でも多くの成長企業でその導入効果が報告されています。こうした日本でも多くの企業で注目されている理由は、まずOKRの手法が必要とされる時代背景にあります。

VUCAの時代

現代はVUCA(ブーカ)の時代と呼ばれるように、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が高い、混沌とした世界市場の急速な変化のスピードに適応していかなければなりません。

少子高齢化、労働人口の減少

グローバル化、テクノロジーの進化と共に、日本は世界に類を見ないスピードで超少子高齢化社会が進展しています。労働人口が減少し、多様な働き方の人材の流動化が始まっています。商品やサービスでの差別化が難しくなり、これまで以上に従業員1人ひとりの工夫や能力の向上で企業の競争優位性を創り上げていく必要があります。

正解がないマネジメント

このような変化のスピードが激しく、不確実性が高い時代のマネジメントには正解がなく、経験則が通用しません。私たちは、個と組織が、既存の枠組みに捉われない発想で、想定外のことも起こりうるものと考え、自ら最適解を考え、スピーディーに市場環境に適応すべく行動して、検証、軌道修正をしていかなければなりません。

日本企業でOKRが注目されるようになったのは、こうした時代背景があります。日本企業が変革期を迎える中、OKRを企業が導入する目的は、

  • 常識に捉われない柔軟な発想でイノベーションを起こし企業を成長させたい、業績を向上させたい
  • 成長企業は、組織が大きくなり、創業時のミッションやビジョンを組織に浸透させたい
  • 世代交代を迎えた企業は、既存の組織風土やコミュニケーションを改善したい、生産性を飛躍的に向上させたい
  • 柔軟な発想ができるようにして優秀な人財を採用したい、若手に活躍してほしい、マネージャーを育てたい、等

といった企業のニーズがあります。

これまでと違うやり方、誰もやっていなかったことにチャレンジしなければならないため、1人ひとりが新たなやり方を見つけ出し、ブレークスルーを生み出すことが必要になっているため、これまでの人材マネジメントのやり方を変え、

  • 時間ではなく成果で評価する。
  • 組織の命令でなく、個人の自主性やアイディアによる独創性を尊重する

といったマネジメントが求められているのです。

OKRを導入するメリットとは

Googleが運営するGoogle re:Work(リワーク)では、OKRは「チームや個人が自らの殻を破り、仕事の優先順位を判断して、成功と失敗の両方から学ぶことができる点が、OKRのメリット」としています。
 
こうしたイノベーティブな仕事の仕方を実現できることで、OKRには様々なメリットがありますが、代表的なメリットとして、以下のようなメリットがあります。

1.個人と組織のベクトルあわせができる

組織が拡大し、複雑になるにつれて、ミッション、ビジョンが曖昧になりがちになります。組織の方向性を明確にし、メンバーの行動を揃え、モチベーションを高めるうえで、OKRは有効です。

2.重要な目標と成果に集中できる

会社の期待することと自分の役割が明確になり、組織と自分にとってより重要性が高いシンプルな目標に向かって意識をフォーカスできるため、また、繰り返し振り返りの機会があるため、本来の目的を見失わず、重要事項と成果に向けた仕事に集中できます。

3.生産性の向上

組織や自分が目指したい姿を実現するために、これまでの延長線上では到底実現できないような高い目標に向けて挑戦しやすくなるため、個人とチームの英知を結集して、より本質的な解決策や飛躍的な改善効果が期待できるアプローチが可能となります。そのため、より高いパフォーマンスが期待でき、業績の向上や経営課題の解決が実現しやすくなります。また、四半期単位の限られた時間で最大限のパフォーマンスを発揮できるような生産性の高い仕事の仕方を追求するため、個人と組織の飛躍的な生産性の向上が期待できます。

4.働きがい、エンゲージメントの向上

組織の目標と個人の目標が連動し、同じ目標に向かっていることが実感しやすくなり、また、自分の能力の発揮が自社にどのように貢献しているのかが明確になります。組織も個人の能力を発揮できるようにサポートしてくれるため、組織への信頼、連帯感も高まり、働きがいを感じやすくなります。また、個人のありたい姿とやるべきことが組織のベクトルと重ねあわせやすくなるため、個人の能力も発揮しやすくなり、自己実現につながります。

OKR導入の進め方、そのポイントと注意点は?

ポイントは、最初から完璧を目指さず、企業のビジネスモデル、組織風土、メンバーのスキルに応じて運用方針を自社にあったものに変えていくことが成功の秘訣です。

OKRの基本的な導入のステップは以下のようになります。 

導入のステップ

1.企業のOKRの設定

会社全体のOKRを設定します。部門に案を打診して意見を求めて調整します。

2.部門のOKRの設定

全社のOKRをブレークダウンして部門のOKRを設定します。個人に案を打診して調整します。

3.個人のOKRの設定

部門のOKRをブレークダウンして個人のOKRを設定します。リーダーや他部門との調整が必要な場合もあります。

4.定期的なコミュニケーションとレビュー

OKRの進捗をリーダーやチームと定期的に共有して、必要に応じて途中でも見直しを行います。

5.成果の測定と評価

達成状況とその要因を分析し、目標の水準やテーマの変更の必要性などを検討します。業績評価との連動はしないことが重要です。

6.次のOKRの設定

今回の結果を踏まえて、同じテーマを継続するのか、見直すのか、全社や部門の方針を踏まえて新たなOKRを設定します。

OKRを運用するのは通常四半期単位で見直しを行います。四半期単位という理由は、OKRの新鮮さを維持し、メンバーのモチベーションが低下しないようにするためで、必ずしも四半期に1回でなくてもかまいません。見直しをしながら、新鮮さを維持できるように気を付けてください。

OKR導入の注意点

1.老舗企業への導入

業歴の長い企業は、創業時のミッションやビジョンが希薄になっていくことがあります。また、老舗企業が、第二の創業や事業承継を機に組織風土改革に迫られたり、多様な人材を組織になじませていくプロセスでOKRを導入するといった場合があります。
 
OKRを導入する理由は会社ごとにさまざまですが、いずれの企業も自社の経営課題を解決するために、重要な目標を設定し、活動を組織の隅々まで浸透させていく必要があります。そのため全社を巻き込んだ活動を展開するには、以下のようなポイントがあります。

  • トップ層のコミット、サポートを得る
  • 導入のメリット、重要性を組織に周知する
  • 導入のロードマップを明確化する
  • 導入のキーマンを配置する
  • OKR設定の仕方や運用方法についてトレーニングを行う
  • シンプルなマネジメントを維持する

2.透明性の確保

前述のGoogle re:worksのサイトによれば、組織にOKRを導入する際に重要な点として「透明性」だとしています。

具体的には、

  • OKRとは何か?どのように機能するかをわかりやすく説明すること。
  • なぜOKRを使用するのか?現状の目標設定の方法を検証し、その問題点や限界を指摘すること。
  • OKRはどのように機能するか?スケジュール、各自に求められること、重要な節目となる指標、目標達成度をどのように自己管理するかについて説明すること。
  • OKRの説明会などで質疑時間を十分にとり、疑問をできるだけ挙げてもらうようにすること。

といったヒントが記載されています。

こうした従業員への理解が大変重要で、抵抗勢力のような反対意見ができることもあります。その場合、丁寧な説明と経営トップ層の理解と働きかけが重要です。こうした理解が得られれば、OKRは目標設定の方法や運用が簡易であることから、導入は比較的スムーズに進みます。

3.導入しやすい企業、導入しにくい企業

KPIやMBOは古い、これからはOKRの時代だ、という意見もあります。しかし、管理手法はあくまでも戦略実行のための手段ですので、手法の良し悪しではなく、自社の組織、あるいは目指すべき組織のあり方に適したマネジメント手法かどうかが最も重要です。
 
たとえば、グーグルやフェイスブックは、OKRを採用しています。マイクロソフト、アマゾンなどはKPIをベースにしたマネジメントです。
 
OKRは、特に、イノベーティブな組織を実現したい、メンバーの自己実現を支援したい、ビジョンを組織に浸透させ、理念経営を実現したい、個が自ら考えチームで連携して動くような強い組織を創りたい、という場合に有効です。
 
一方で、トップダウンでビジョンを浸透させ、効率性を重視した組織を目指したい、目標と人事評価を完全に連動させたい、という場合はKPIが向いていると言われています。
 
また、特定の業種や職種に関わらず、OKRは導入されています。
 
OKRを導入する多くの企業は、まずOKRを試して、運用しながら自社にあったやり方を見つけ出していくのだと言います。また、OKRと他のマネジメント手法を併用したり、一部の部署のみ導入するという方法もあります。

4.OKRの自信度を可視化してチームの力を結集する

ムーンショット目標を設定する際に、目標が高すぎて自信がないという場合、モチベーションが低下してしまいます。チームで協力関係がつくりやすいように、個人が目標達成の自信度を共有して相談・協力できるようにすると高い目標にもチャレンジしやすくなります。

5.コンディションも重要

健康やプライベートでの出来事などでメンバーの状態は常に変化します。リーダーはこうしたメンバーのコンディションをチェックしてフォローしていく必要があります。

6.チェックインミーティングで進捗をチェックする

KRの進捗状況を確認することは非常に重要です。こうした定期的な進捗チェックは、チェックインミーティングと呼ばれ、週1回程度、今何をしているか、何をしようとしているか、うまくいっていること、うまくいっていないこと、そのボトルネック=うまくかない要因と解決策をメンバー間で共有し、チームで解決策を検討してきます。こうした連携を生み出すのがチェックインミーティングです。

7.リーダーとは1on1ミーティングで課題を解決する

OKRを運用するにあたっては、1on1ミーティングは必須になります。1on1とは、メンバーが新たなチャレンジができるように自分の課題をリーダーに相談するための1対1の対話型のミーティングのことです。OKRを導入するほぼすべての企業が1on1を並行して運用していると言われています。四半期でOKRを回す場合、週1回程度の頻度が理想とされています。詳細は次章で紹介します。

(参考)1on1とは?1on1ミーティングの目的と効果、導入のポイントと具体的な進め方の事例

8.組織と個人のOKRを摺合せして頻繁に見直す

OKRは一度設定しても、四半期の期間内で必要に応じて見直しをします。KRを見直すタイミングは、達成がほぼ不可能であると判明したり、達成の見込みが立った場合にも見直します。実現が難しそうだからやめるのではなく、メンバーがより能力を発揮できるようなモチベーションをキープすることが重要なのです。

9.OKRと人事評価を連動させるか、切り離すか

OKRは、新しい挑戦をするためのものです。人事評価と連動させると思いきったチャレンジができない場合があります。組織と個人が同じ方向を向いて走るというメリットは人事評価と切り離して運用しても影響あまりありません。むしろ心理的な安全性を確保した状態で思い切ってチャレンジをしてほしいという会社側のメッセージになるため、社員へのモチベーションの源泉になります。業績と連動させるには、もともとの組織風土との相性が重要です。社員が委縮しないように留意して、チームの評価と業績を連動させる、といった方法もあります。

OKRと1on1を連動させて相乗効果を狙う

OKRと1on1を連動させる必要性

前述のようにOKRを機能させるには1on1の導入が必須です。OKRで設定した高い目標を達成するには現在の延長線の発想では実現できません。個人の能力を最大限に引き出し、限界突破をするためには、リーダーや上司のサポート、チームの協力が欠かせません。OKRを機能させるためには、1on1のように、個と組織が共に成長していけるような、マネジメントと教育が一体となった運用の仕組みが必要なのです。

1on1は、日本ではヤフーがいち早く全社で導入して人材育成に成果をあげた事例が紹介され、注目されているコミュニケーション手法の1つです。1on1でOKRを運用する場合、

  • 期間内にKRを達成するには、現時点で達成率はどの程度が望ましいか
  • 現状の達成率と比較して進捗状況はどうか
  • その理由と対策はどのように考えているか
  • 目指すべきOに対してKRは現在も適正か

などを検討します。

あくまでもメンバーが主体的に自らの課題をリーダーに相談するためのもので、リーダーは、メンバーが経験した、うまくいったこと、うまくいかなかったことなどから何を得たのか、今後どうしていくか、を聞いて、質問して、部下が自ら結論が出せるようにサポートするのが役割です。

OKRと1on1を連動させる効果

OKRと1on1を組み込んで運用すると、以下のような効果が期待できます。

1.会社と個人のベクトルの一致

全社やチームのOKRと個人のKRが同じ方向を向いているかを考えさせることができます。個と組織の価値観が共有され、組織との一体感が得られやすくなります。

2.パフォーマンスの向上

KR達成に向けた課題を振り返り、対策をスピーディーに講じていくことで、成果につながりやすくなり、モチベーションも維持されます。

3.業務効率の向上

課題解決がスピーディに図られ、メンバーへの協力などをリーダーとすりあわせることで、業務を効率的に進められるようになります。

4.自己実現と成長スピードの加速

自らが目指す姿になるための課題を振り返り、自ら対策を講じて解決していくことができるので、成長スピードも加速し、自己実現がしやすくなり、KRへのメンバーのコミットが向上します。

また、1on1では以下のような点も重要です。

心理的安全性を確保する

1on1でメンバーからの相談を受けたり、新たな気づきを与えるサポートをするには、メンバーとの信頼関係の構築が必要です。多くのメンバーは、言いづらいこと、問題があることを話したがらないものです。そうした状況であっても報告すべきことを包み隠さず相談できるように、進捗に問題があってもそれを追及するのではなく、許容してその対策をメンバー自らが導き出せるように一緒に考える場であることが重要です。メンバーの仕事の進め方だけでなく、仕事の姿勢や考え方を深く理解して、「どうすればいいか」を部下に問いかけ、部下が自分で答えを出せるようにします。部下が高い目標に向けて自らの限界突破にチャレンジしていくことができるようにサポートしていく必要があります。

OKR達成に向けてOの有効性を確認する

1on1では、OKRの達成に向けてメンバーは自ら、組織とチームのOKR達成への貢献度(時間、スキル、ナレッジ、計画、予算等)、OKR達成に向けた他者の協力体制(他部署の協力、成果等)、目標の有効性(全社、顧客、社会との整合性、優先順位、顧客や社会への影響等)などを確認します。こうしたOKRの意味を常に問い続けることで、OKRを形骸化させずに、メンバーの主体的な行動を引出すための仕組みとして機能させることができます。

まとめ

OKRは、会社と個人がミッションとビジョンを共有し、互いに成長しながら実現するための目標管理手法でもあります。混沌とする世界情勢、超少子高齢化社会において、自ら課題を解決できる人財の育成、働きがいのある会社づくり、好ましい組織風土の醸成を通じて、ダイバーシティへの対応、イノベーション創出、企業の社会的責任を果たしていくことで企業価値の向上につながります。
 
このように、OKRは自社が目指すあるべき姿に向かって、自社にあった最適な運用の方法を見つけていくことができるクリエイティブなマネジメントツールです。多くの成長企業がOKRを活用している理由も、このようなイノベーションを生み出す自由度とシンプルさにもあります。

OKRは、日本企業特有の業務改善型のボトムアップの企業文化をさらに進化させ、より日本らしさをより発揮できる新たなマネジメント手法といえるのかもしれません。
 
参考文献:成長企業はなぜ、OKRを使うのか?ピュートル・フェリクス・グジバチ著(ソシム刊)

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