令和2年(2020年)から変わる給与所得控除をわかりやすく解説
給与収入の所得税を計算する際に必要なのが「給与所得控除」です。税制改正によって給与所得控除の計算方法が変わり、令和2年(2020年)1月1日からは新しい計算方法が適用になります。そこで、給与所得控除についての基礎知識と新旧の計算方法などについてご紹介します。
給与所得控除とは
給与所得控除とは、所得に応じた一定の金額を収入から差し引くことです。
事業主が経費等を収入から差し引いて所得を確定するのと同じ考え方で、給与所得者は給与所得控除額を経費の代わりに給与から差し引いた額を所得とします。
所得税の計算方法
所得税の納付額は、収入から所得を引くところから順番に考えていくと理解しやすくなります。
まずは、「収入−必要経費」で「所得」を算出します。
所得から所得控除を引いた金額が「課税所得」です。
「課税所得×所得税率」で「所得税」になります。
「所得税−税額控除」で「所得税納付額」が算出されます。
「給与所得控除」は、収入から最初に差し引いた「必要経費」に該当する部分で、社会保険料の控除や医療費控除、扶養控除、生命保険の控除などは「所得控除」という項目として扱われます。
“源泉徴収をするときは、その年1年間の給与等の収入の合計額から、給与所得控除額を引いた金額に対して課税することになっています。”
<引用元>経営ハッカー:会社員の給与の所得税、計算方法を分かりやすく解説します
給与所得控除の意義とは
給与所得控除の意義は、「勤務にかかる経費」と「他の所得との負担調整」の2つです。
「勤務にかかる経費」の中には、交通費など一部会社から支給される項目があるものの、被服費などは支給されないのが一般的です。
個人事業主であれば、仕事に関わる出費は経費として控除が可能ですが、会社員は経費を収入から差し引く仕組みがありません。
税務署が給与所得者の経費を細かくチェックすることは事実上不可能です。
そこで、給与所得控除によって経費分を差し引こうという考え方になったのです。
効率面から見たらとても便利な仕組みですが、給与所得者の税金への理解が薄れる要因のひとつとして問題視されている部分でもあります。
給与所得控除の計算方法
所得税法によって定められている給与所得控除の計算方法は、年間収入に応じて段階的に計算式が異なります。
計算に用いられる金額は、1月1日から12月31日までの1年間の年収です。
複数の収入源がある場合は、収入を合算した金額で計算します。
令和元年(2019年)までの給与所得控除
年収100万円の場合は180万円以下なので、計算式は100×40%=40万円です。
この場合、65万円に満たないので「65万円」が給与所得控除額です。
年収が500万円の場合は(500万円×20%)+54万円=154万円で、控除額は「154万円」です。
年収1,200万円の場合は1,000万円以上なので、上限の「220万円」が控除額です。
<引用元>国税庁:給与所得控除
令和2年(2020年)から改正される給与所得控除
平成30年(2018年)の税制改正により、令和2年(2020年)から給与所得控除が一律で10万円引き下げられることになりました。
給与所得控除額は減りますが、引き下げた分が基礎控除に振り替えられるので、所得税の金額は変わらないケースがほとんどです。
年収100万円の場合は162.5万円以下なので、控除額は「55万円」です。
年収が500万円の場合の計算式は(500万円×20%)+44万円で、控除額は144万円です。
年収1,200万円の場合は850万円以上なので、「195万円」が控除額です。
“給与所得控除額を一律 10 万円引き下げ、その上限額が適用される給与等の収入金額が 850 万円(改正前:1,000 万円)とされるとともに、その上限額を 195 万円(改正前:220 万円)に引き下げ ることとされました(所法 283)。”
<引用元>国税庁:平成30年分 所得税正のあらまし
“働き方の多様化を踏まえ、働き方改革を後押しする等の観点から、特定の収入にのみ適用される給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げ、どのような所得にでも適用される基礎控除の控除額を10万円引き上げます”<引用元>財務省 :個人所得課税
給与所得控除の例外
給与所得控除には、例外として「特定支出控除」というものもあります。
基準額は、年収1,500万円以下で給与所得控除の半分、1,500万円以上で125万円となります。
特定支出控除の対象となるのは以下の項目です。
・通勤費
・転勤に伴う転居のための支出
・職務に直接必要となる研修を受けるための支出
・職務に直接必要な資格取得費用
・単身赴任などの場合の帰宅旅費
・職務に関連する図書費
・勤務に必要な衣服購入費
・職務上関係のある者に対する接待費等
「職務に関連する図書費」「勤務に必要な衣服購入費」「職務上関係のある者に対する接待費等」については、合計65万円が上限で、控除を受けるためには給与支払者などからの証明書が必要です。
年収500万円で特定支出が100万円の場合、100万円−給与所得控除額144万円÷2=28万円となり、さらに28万円が控除できるようになります。
まとめ
会社員には必要経費がないと思われがちですが、実は給与所得控除が経費に該当する部分であることがお分かりいただけたかと思います。
特定支出控除の対象になる支出があるならば、控除申請すれば節税になります。
給与計算をミスなく、ラクに行う方法
従業員の給与計算や書類手続きなどに追われていませんか?
こうした業務は人事労務 freeeを使うことで、効率良く行えます。
ワンクリックで給与計算・給与明細の発行が完了。 最新の制度に準拠してソフトを自動アップデートするので、いつでも正しく給与計算を行えます。
労務担当者のみなさん、人事労務freeeをぜひお試しください。