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2016年04月27日(水)

1977年に起業した74歳のオトンに、どんなキャリア人生を歩んできたか息子がインタビューした(前編)

経営ハッカー編集部
1977年に起業した74歳のオトンに、どんなキャリア人生を歩んできたか息子がインタビューした(前編)

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いつも経営ハッカーをお読みいただき、ありがとうございます。

今回と次回は、ゴールデンウイーク直前スペシャルとして、経営ハッカー編集長(中山)が実の父親(会社経営者)にディープなインタビューをしてきた模様をお伝えします。インタビュー内容は、「父はいかなるサラリーマン人生を歩み、起業のネタを見つけ、会社を興し、七転び八起きしながらも40年間経営し続けてこられたのか?」です。

本題に入る前に、カンタンに私とオトンの自己紹介をしておきましょう。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

私(息子):1971年生まれの45歳のおっさん。経営ハッカー編集長。

オトン:1942年生まれのじいさん。35歳で起業し、いまだに切り盛りし続けている。今年創業40周年。

実の親といえど、そのキャリア人生は意外に知らなかったりするものなので、一足先に実家に帰省にした際に、改めて話を聞いてみることにしました。

新卒で入った証券会社を3年で辞め、税理士を目指したオトン

――えっと、社会人になっていきなり起業したんじゃないよね?

うん、新卒で入ったのは東京の証券会社だ

――そこで何年か営業をしたんだっけ

ずっと営業をして、丸3年で辞めたよ

――なんで?

ストレスが強烈でな……先輩社員が次々と身体を壊していくのを見てて、”こりゃいつまでもいる職場じゃないぞ”って気がしてた

――ストレスの原因は、過剰なノルマ?

それもあったけど、もっときつかったのは、お客さんに損をさせてしまって、謝らなくちゃいけないことのストレス

――辞めて、次はどうしたの?

地元(三重県四日市市)に帰って、会計事務所に転職した。事務所は名古屋だったから、四日市市からの電車通勤だ

――なんでまた、会計事務所に?

会計と税法を学んで、税理士として独立しようと思って

――ということは、働きながら資格取得の勉強をしたということか

そう。仕事で忙しい合間に勉強時間を確保するのは至難の業だったな。会計事務所に勤務してたときに結婚して、お前と〇〇〇(弟)が生まれたこともあって、公私ともに忙しくなった

――で、結果的に税理士にはなっていないんだよね

会計事務所で働きながら合格を目指したけど、毎年試験には落ち続けた。実務経験は豊富になったんだけど、税理士試験はそれなりの対策も必要でな。でも、そこまで手が回らなかった

――そーだったのか

税理士の道を断念し、デベロッパーに転職したオトン

で、会計事務所は4年半で辞めることになる

――税理士を目指してたのに、なんで?

父さんの勤めていた会計事務所の給料が安くてな。たぶん、当時のOLさんらよりも安かったと思う。給料の3分の1を家賃に充ててたことからも、厳しさがわかるだろ

――3分の1はきつい。しかも子供が二人いて

食べていくことすらなかなか満足にできない状況に家族をつき合わせることが心苦しくて、志半ばで税理士はあきらめた。ついでに会計事務所も辞めた。32歳のときだった

――起業はたしか35歳で、だったよね?間の3年間はどこで働いていたの?

分譲住宅と分譲マンションのデベロッパーに転職した

――デベロッパーとは……かなり畑違いな分野だね

不動産の知識はぜんぜんなかったよ。会計事務所での経験を買われて、”経理担当”として入社したわけ

――なるほど

昭和49~50年の当時はいわゆる高度経済成長期で、景気がそこそこよかった時代でな。そのデベロッパーも勢いで億ションを建設して、大々的に売り出し

――当時で億ションって、そうとうな金持ちしか買えないと思うけど、完売したの?

何部屋か売れ残ってしまい、なかなか買い手がつかなかった。1~2年も売れ残ると、その物件の管理が大変になる。しかも、購入者の中にも滞納者が現れたりして、面倒くさい案件になってしまった

――その管理とか督促業務って、誰がするの?

営業部が対応してた。しかし、本来の業務じゃないし、専門知識もないので、経理の父さんに”手に負えないから、どうにかしてくれ”と泣きついてきたわけ

――ほうほう

だが父さんにも担当業務があったから、はいそうですかと安請け合いはできなかった

――突っぱねたの?

業務時間外に対応するから、給料とは別に特別手当がほしい”と、社長に直談判した

――厚かましいね

まあな。だが、社長が条件をのんでくれて、おかげで給料が増えた

――やったじゃん

ビジネスチャンスを見つけ、勢いで会社を辞めるも、いきなりつまづくオトン

――で、その業務は大変だったの?

めちゃくちゃ大変。140部屋の所有者の通帳を2年間さかのぼって、数字をかき集めて、完璧な決算書を作りあげた。ペンと電卓だけでだぞ

――140所有者×24か月って……想像しただけで、気が遠くなりそう

会社にはすごく感謝されたよ。で、思ったんだ。これって商売になるんじゃないかと

――それが起業のキッカケか

そうだ。マンションにも管理が必要な時代が来るって直感した。マンションというものは、一度建設されたらそこに人が住み続ける限り、誰かがモノとカネの管理をしなくちゃいけない

――そこにビジネスチャンスがあると思ったのね

で、具体的な計画はなかったものの、会社を辞めちゃった

――妻子を抱えて……かなりの冒険やね

まあ、父さんはゴマすりが嫌いだったから、生涯会社員として勤めるのは無理って思ってたんだ。遅かれ早かれ、起業するつもりだったし、できるって信じてた

――会社経営ができるって自信はどこから?

営業経験と経理経験の2つがあることだ。証券会社時代に培った営業力、そして会計事務所とデベロッパーで養った税法や簿記能力。この2つの能力を兼ね備えることが、経営者の条件だって思っていた

――兼ね備えている経営者って、少ないの?

両方に長けた経営者は意外に少ないぞ。営業力は抜群だけど、数字はからきしとか。数字には詳しいけれど、売ることができないとか。だいたいどっちかなんだよ

――で、自信満々で起業して、順調に会社設立まで持って行けた?

それが、当時は有限会社設立に100万円かかる時代で、その100万円さえ用意できなかった

――ちょっと! しかも、母さんと2人の幼子がいたんでしょ。いきなりつまづいているじゃん

開業資金を貯金しておく余裕は当時はなかった。だから、まず親戚に頭を下げて100万円借りてきた

――ビジネスプランに賛同してもらえてよかった

いや、ぜんぜん理解してもらえなかった。”なにバカなことしてるんだ!”って怒られたが、まあなんとか借りてきてだな(笑)

――借りてきたんかい

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※起業直後のオトン(35~36歳)

有限会社を設立し、スーパーカブで名古屋を走り回るも、注文ゼロ

――どうにかこうにか有限会社を設立した、と。次にどうしたの?

事務所を借りる資金もなかったから、会計事務所に勤務してたときの知り合いの会社の隅っこを間借りして、机と電話を置かせてもらった

――机と電話だけで開業したんか……。でも、注文の電話が来るわけないから、営業したんでしょ

ホンダのスーパーカブで名古屋中を走り回って、飛び込みをしたよ。”お宅のマンションを管理しますよ!これからのマンションは管理が大切ですよ!”ってかんじでな

――注文は取れた?

まったく相手にしてもらえなかった。コネなし、カネなしからのスタートだったし、当然ながら売り上げはゼロ

――ダメじゃん……

今でこそ当たり前になったが、昭和50年初頭はマンションに管理業務が必要って概念がない時代だったから、サービス内容を理解してもらうことすら苦労した。これは誤算だった

――パイオニア的な存在だったゆえ、理解を得るまでがたいへんだったわけだ

相手には、会計業務を外部に頼むって発想もなくて、”経理作業くらい自分でしますけど、何か?”って言われる始末。ただ、ほとんどの人が、会計を軽く考えていた。現金出納帳の記録さえ取っておけば問題ないでしょって感じで、総勘定元帳ってなに?複式簿記で管理するってどういうこと?って反応だったんだ

――いくらアイデアが素晴らしくても、お客さんに理解してもらえないようでは先が思いやられる。さんざん断られ続けて、どうなったの?

名古屋中を駆けずり回って1件も注文を取れず、営業先がなくなってしまった。仕方なく、昼間から映画館に入り浸っていたよ

――「………」

確実に言えることは、飛び込み営業がすべて断られ、売り上げがゼロで、将来の見通しが立っていない状況で観る映画は極めてつまらん

――でしょうね(笑)

後ろめたい気分になるわ、家族に申し訳ないわ、やるせなかったね

――その崖っぷちから、どう突破口を開いたの?

それが、ひょんなことがキッカケで、道が拓けたんだよ

後編に続きます!

<その他インタビュー記事>

『官僚コースを捨て起業、複数会社の経営を経てたどり着いた“あえての会社勤め”という選択』 [前編]

【元起業家、退いた事業を振り返る:前編】 起業に失敗したので、南アフリカを放浪して“どう生きたいか”を考えた

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