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2017年09月12日(火)

パラレルワーカーとして、二足の草鞋を履きこなすために準備した3つのこと(スキル・勤務先・マインド)

経営ハッカー編集部
パラレルワーカーとして、二足の草鞋を履きこなすために準備した3つのこと(スキル・勤務先・マインド)

こんにちは、井田と申します。社会人6年目の27歳です。

私は現在、新卒で入社した大手人材系企業で営業職として働きながら、同時平行で、ネクタイを始めとするビジネスファッションアイテムが月額で借り放題のサービス「KASHI KARI」を運営する株式会社カシカリの経営をしています。いわゆる「パラレルワーカー」です。

株式会社カシカリは、「事業譲渡」という珍しい起業の形で去年2016年11月からスタートしています。出身は神奈川の川崎で、社会人1年目から3年間を福岡で過ごし、どこかのタイミングで移住しようと思うくらい福岡を愛しています。

パラレルワーカーをしていると、周囲から「どんな準備をしたの?」とよく尋ねられます。そこで今回は、「二足の草鞋を履きこなすために準備したこと」を書いてみます。

1回目から読む 会社を辞めるのではなく、会社員を続けながらやろうと思った理由

二足の草鞋を履きこなすために準備した3つのこと

二足の草鞋を履きこなすとは、「パラレルワーカーでも現職の仕事のパフォーマンスを落とさずに、もう一つの仕事もやりたいだけやること」だと考えています。

まだまだ未熟ですが、現職のパフォーマンスを維持しながら、起業したビジネスも体力が続く限りやりたいだけやれているので、少しは履きこなせているのかもしれません。

僕の場合、二足の草鞋を履きこなすために準備したことが、結果的に良かったと思っています。

会社員を続けながら、起業するために準備したことは3つでした。

1:スキル 2:勤務先 3:マインドセット

今回はこの3つの準備したことをご紹介しますが、先に結論を言ってしまうと、何よりも重要だったことは「3:マインドセット」です。極論、スキルや勤務先のことは準備しなくても、そこまで問題なかったと思っています。

なぜそのように思ったのかをご紹介します。

二足の草鞋を履きこなすために準備したこと(スキル編)

僕が二足の草鞋を履きこなすため(起業するため)に準備した「スキル」は、大きく2つです。

1:ビジネスを作るフレームワーク思考 2:論理的に思考を組み立てるスキル

正直なところ、僕は業界特有の専門知識は勉強していません。起業したビジネスは「アパレルの領域」ですが、これまで5年以上携わってきたのは「人材業界」ですので、アパレルに関する知識は人並み程度です。これから事業をグロースさせる上で、アパレルに関する専門知識が必要になるタイミングがやってくるかもしれませんが、起業段階では必要ないと判断し、事業フェーズによってその専門知識を有する方と何かしらの形で協業すれば問題ないと考えました。

起業段階では、「仮説検証力」が非常に重要だと僕は考えています。既存業界が成立している分野ではなく、新たな領域でのビジネスモデルであるほど、仮説検証が必要になります。

ビジネスの仮説検証サイクルを回すために、「何を考えるべきか(フレームワーク)」、「考えたことの確からしさ(論理的思考)」を重点的に準備しました。

準備したスキル1:ビジネスを作るフレームワーク思考

起業する2年前、起業するために何をするべきか、わかりませんでした。「経営がわからないから、まずは経営を学ぼう」という安直な考えで、ビジネススクールに通うことを決めました。幸いにも、そこでたくさんの「ケース(あらゆる企業の意思決定の場面で、自分が経営者だったらどう意思決定するのかを考える問題)」に触れ、ビジネスとして成立する規模まで成長させている会社の思考方法で共通する点を見つけることができました。

共通する思考観点とは、どの会社、どのビジネスであっても必ず明確に存在する下記5つのポイントです。

「顧客は誰か?その顧客は何に困っているのか?(WHO)」 「その顧客に対して何を提供するのか?(WHAT)」 「その価値はどう提供するのか?(HOW)」 「なぜその方法が競合に勝てるのか?(WHY)」 「どのくらいの時間軸で実現していくのか?(WHEN)」

これら5つのポイントは、どんなビジネスであっても、ビジネスとして成立している会社の経営者には必ず明確な答え(仮説)が存在します。M&Aやらファイナンスやらは重要ではありますが、全てこの5つの論点に対する答え(仮説)を実現するための手段でしかないのです。僕はその5つの論点でビジネスを捉え、考えることが何よりも重要だと感じました。

極論、専門的なスキルや知識は必要になったときに身につけるか、その手段に精通した人材をアサインすればよいでのす。

このことに気づいてからは、全ての面でプロ級のスキルや知識を身につけることはやめました。起業してからは、「誰に対して、どんな価値を、どのように提供し、いつまでにどの状態まで持っていくのか」を常に考えてビジネスを組み立てています。この考え方をなくして、ビジネスは成立しないと信じています。

準備したスキル2:論理的思考

もう一点重要だと考え、訓練したのは「論理思考」です。

先に挙げた5つの論点に対する”仮説の確からしさ”は、イメージをベースにするのではなく、事実をベースに考えられないと、事業の成功確率は高まりません。直感にも頼るべきシーンも時にはあるでしょうが、あまりにも脆弱なロジックでビジネスを組み立てるのは危険すぎます。

普段の会社員の仕事の中で「論理的思考」を意識しながら、一つ一つのメールや顧客課題への提案などで活用することに努めてきました。起業するために準備したスキルは、とりわけて専門的な技術や知識ではなく、どんなビジネスをやる上でも、必ず使う「思考力」でした。足りない専門的な知識やスキルは、必要に応じて精通している人にわかりやすく教えてもらったり、協力してもらったりしています。

「すべてを自分ができる訳ではない」という諦めが、結果的に自分が集中して習得するべきスキルを絞り込むことにつながったと思います。

二足の草鞋を履きこなすために準備したこと(勤務先編)

次に、パラレルワークしやすい環境を作る準備をしました。

パラレルワークには物理的な制限、特に「時間の制限」がつきものです。サラリーマンとして勤めている会社で、ふだんは11時間〜13時間程度働いているのですが、自分の経営する会社でどうしても緊急の対応などが生じたり、午前休を取得して各種書類手続きをしたりと、サラリーマンとしての仕事を中断せざるを得ない場面もあります。こうなることは予想できていたので、「周りの人から理解してもらう環境づくり」を事前に準備しました。

周囲から理解してもらうための事前準備は、大きく二つあります。

1つ目は、会社から理解してもらうための「兼業申請」です。勤務先が珍しく兼業OKで、兼業を正式に申請することができました。コソコソ隠れてパラレルワークをするよりも、会社から正式に認められた方が柔軟に働ける環境を作りやすいと思ったからです。その点、僕はラッキーだったと思いますし、兼業できることは入社前からおぼろげに知っていたので、期待通りでした。

日本にはまだ兼業OKの会社が少ないですが、今後増えていくと思います。労働力が不足していくことは間違いないので、多様な働き方を認めていかなければ、事業を推進する上で、人材不足がボトルネックになると思われます。少なからず、自分の会社は兼業OKにしようと思っています。

2つ目は、「周囲にパラレルワークを公言した」ことです。会社の同僚や友人、家族など、パラレルワークを表明することで、働き方の部分で少し理解を得られたと思います。公言したことで応援もしてもらえたし、コソコソとやってストレスを溜めることはなかったので、公言するメリットを大きく感じています。まあ、リクルートの仕事が進んでいないと、「あれ?ネクタイばっかやっているんですか?」とからかわれることがありますが、「何クソ!」と逆にスイッチが入ることが多かったです(笑)。

ひとつ注意しなければならないのは、当たり前のことはしっかりと当たり前にやることです。遅刻する、自分の経営する会社を言い訳にパフォーマンスを落とすなどはもってのほか。とてもカッコ悪いですし、両立できないなら辞めた方がいいと思います。公言することで理解は得られますが、一緒に仕事をする分、周りの人に迷惑をかけないよう心がけることが求められます。

恥ずかしながら、自分の経営する会社を言い訳にしてしまった時期もありましたが、会社員として働くことで得られる成長の機会を、自分で減らしていたと反省しきりです。

二足の草鞋を履きこなすために準備したこと(マインドセット編)

会社員として勤めながら起業する上で何よりも大事だと思うことは、「気合・根性・覚悟」というマインドセットです。完全に体育会系のノリですが、覚悟を決められない人があまりにも多い。このマインドセットを持っているかどうかで結果(起業できるか、できないか)が変わってきます。

僕自身も起業した当時、サラリーマンとして勤める会社の仕事だけでも平日の夜は、そこそこ遅くまでやっていました。ビジネススクールにも通いながらも、平日は帰宅してから2時間ほど勉強、土日もトータル15時間程度は勉強とクラスで時間が取られるため、かなり忙しくなることは予想していました。会社経営のほうは、睡眠時間を削って捻出するしかない状態でした。

とにかくやりきるしかありませんでしたので、「気合・根性・覚悟」を持つことがとっても重要でした。もちろん、体力や時間の問題だけでなく、「金銭的なリスク」も覚悟を決めなければ、前に進めません。

覚悟を決められなかった期間は、「なぜこのビジネスをやるのか」「自分にとってどんな意味があるのか」「なぜ今やらなければいけないのか」という問いに確信が持てる答えが出るまで、毎日自分に問いかけました。信頼しているコーチングの先生にも、思考の整理を手伝ってもらいました。結果、何よりもこのマインドが役に立ったと思っています。

実際に、僕以上に忙しい人はいるでしょうし、人間はそんな簡単にダメにならないようです。それよりも、チャレンジしないことの方が自分の気持ちに嘘をつくことになりますし、僕は後悔するのが嫌でした。アクションしてみたら、どのくらいキツイのかもわかりますし、実際に動いてみないとわからないことがたくさんありすぎます。一歩踏み出してみたら、見える世界は全然違うのです。

”気合・根性・覚悟”はいつの時代も大事

二足の草鞋を履着こなすためには、今回ご紹介したように、「成功するために確からしい仮説を立てるスキル」、「会社や周囲の方からの理解を得る」、「毎日諦めずに取り組める気合・根性・覚悟を持つ」この3つが重要であると、僕は思います。ただ、強いて言うのであれば、実行に移すための「気合・根性・覚悟」といったマインドの部分が最も大事であると思います。

なぜなら、まずはやってみないと、必要なことも見えてこないからです。いくら準備を進めても、やってみないと宝の持ち腐れです。やってみたら、これまで見えていなかった世界が待っているはずです。

覚悟を決めてやってみましょうよ!一度きりの人生なんですから。

大手人材会社の新規事業開発部門で働きながら、パラレルで月額ネクタイ借り放題サービス「KASHI KARI」を運営する株式会社カシカリを経営。福岡生まれ大阪・神奈川の川崎育ち。MBA(経営学修士)。今後到来する「パラレルワークが当たり前になる時代」に先んじて、新しい働き方を実践中。また、「デュアルライフ(二拠点居住)」へのチャレンジなども検討しており、新たな時代の働き方のロールモデルを目指す。 ※当連載の内容は個人によるもので、所属する会社を代表するものではありません。

人事労務freee

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