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2016年11月08日(火)

年末調整では戻ってこない! サラリーマンの医療費控除は確定申告で

経営ハッカー編集部
年末調整では戻ってこない! サラリーマンの医療費控除は確定申告で

pixta_1276547_s 年末調整はおなじみでも、確定申告での医療費控除については良く知らないという方はいらっしゃいませんか。「制度は知っているけれど面倒だし」、「それほどお得でもなさそうだし」と思われるでしょうか。しかし、医療費控除の確定申告をしない方も、少しだけ制度を知っておくと役に立つことがあるかもしれません。

確定申告で行う医療費控除の基本

医療費控除を単純に言えば、医療費の支払いが家族(本人と扶養家族だけでなく、生計を一にする家族全員を指します)全体で10万円以上かかったら、超過額分を所得から除いて、年末調整で一度確定した所得税を再計算するという制度です。

結果的に、(医療費-10万円)の分だけ一年間の所得が少なかったことになり、算定基礎額が下がり、所得税と翌期の住民税が安くなります。実際には、所得税還付金が指定の銀行口座に振り込まれ、翌期の住民税計算に減額された所得額が反映されます。また、医療費控除の申告を行ったことで、自治体に支払う保育園の保育料が安くなる場合もあります。なお、医療費そのものが戻ってくるわけではありません。

確定申告の医療費控除は面倒なもの?

結論から言えば、医療費控除の確定申告はそれほど面倒ではありません。分からない点は国税庁のサイトにある説明や税務署の相談窓口などを利用すれば大丈夫です。

申告の手順としては、1月1日~12月31日までの医療費の領収書や通院に使ったバスや電車の運賃の記録など必要な書類・記録を集めて、一年分まとめて計算し、給与の源泉徴収票なども参考にして、確定申告書を作成して3月中旬までに税務署に提出します。

注意が必要なのが「保険金などの補てん」で、それぞれの治療などに対して生命保険からおりた保険金や、自治体や健保組合からの各種給付金、加害者からの損害賠償金などは、かかった医療費の額から差し引きます。ただし、Aの病気に対して支払われた保険金額が多かったからBの病気の医療費からも引き去る、ということはしません。

医療費控除の対象は、病院に支払った治療費、通院のためのバスや電車の交通費、薬代、介護サービス費用など、「治療に直接かかった費用」です。予防接種、健康食品購入費、家族の見舞いのための交通費、健康診断、入院時の差額ベッド代などは「治療に直接かかった費用」ではないので原則として対象外になります。

しかし、すべては「場合による」ので、この点は少し厄介です。健康診断で病気が見つかって治療することになった場合の健康診断料や、治療上どうしても必要だと病院から指示の出た差額ベッド代などは、医療費控除の対象になる場合があります。微妙なことがいろいろあるので、不明な点はその都度問い合わせるしかないようです。

やっぱり面倒くさそう、と思われたでしょうか。もちろん、医療費控除の確定申告は義務ではありませんから、申告するかどうかは自由です。しかし、今後子供を持つ予定がある方や、親の介護サービス利用などを考えている方などは、将来のためにもぜひ知っておいてほしいのが、この医療費控除の確定申告です。

年間10万円以上の医療費を考えてみる

「そもそも、年間10万円以上の医療費がかかるのはどんな時だろう」と考えてみると、この制度を知っていた方が良い理由が見つかるように思います。自分や家族が病気がちでよく病院に行く方、家族が多く一人一人は少額でもまとめると大きな金額になる場合、家族の誰かが大病や大けがをして治療に大きな費用がかかったとき、といったケースもが考えられます。

また、それ以外にも人生の節目に、医療費がかさむことがあります。代表的なのが妊娠・出産時と、介護サービス利用時です。

妊娠・出産の費用は予想以上に多い?

ご存じのように、妊娠・出産には多くのお金がかかり、大体50~100万円とも言われます。昔から言われているように、「出産は病気ではない」という考え方がベースにあり、出産の多くは健康保険が使えません。健康保険組合から受け取る出産育児一時金や出産手当金、傷病手当金を除いても、支払った医療費が大きければ、確定申告を検討してみてください。

なお、通常は治療費に含まれない病院までのタクシー代も、陣痛が始まってからの分は認められやすいなど、妊娠・出産関連の特別ルールがありますので、事前確認をしておくと安心です。

医療費控除の対象になる妊娠・出産費用とならない費用

妊婦健診費用や入院費、分娩費などはもちろん対象になりますが、意外と思われるようなものもありますので、対象となるもの・ならないものをいくつかあげておきます。実際には、ケースバイケースとなり、確定した基準はないので、その点はご了承ください。

控除対象となるちょっと気になる費用には、骨盤ベルト、母乳マッサージ、不妊治療費、人口授精費用などが含まれます。一方、対象とならないものには、妊娠検査薬、ビタミン剤やサプリメント代、無痛分娩講習会の参加費用、里帰り出産の交通費等、があります。

介護サービス費用も医療費控除の対象

介護サービス費用は、今はまだ考えていない人にとっても、次第に身近に迫ってくる問題です。親も配偶者も自分も、介護に全く関係ないまま人生の終焉を迎えられれば、それは理想かもしれませんが、現実的ではありません。そして、あまり浸透していないようですが、介護サービス費用は医療費控除の対象となります。今は関係ないという方も、将来に備えてちょっと知っておくと良いかも知れません。

医療費控除の対象となるのは、介護保険に基づく介護サービスの自己負担分、寝たきりになった方などの紙おむつ代、入居している施設の居住費・食事代などです。介護保険の支給限度額との関連で同じ費用でも対象になったりならなかったりと、分かりづらい点もあります。申告を考える場合は、まずは福祉や医療、税務署などの相談窓口などを訪ねてみるのが良いでしょう。

医療費控除の確定申告を始めるきっかけ

高齢化社会が進み、年齢が上がるにつれて医療費がかさむことは避けられないのではないでしょうか。支払う医療費が高くなれば、家族単位で考える医療費控除の効果も大きくなります。まずは年間の医療費がどのくらいかかるのか、ざっと計算してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

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