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2016年07月21日(木)

会計の専門家が体験した儲けるために役立つ会計の勉強方法~マネジメントゲームのススメ・中編~

経営ハッカー編集部
会計の専門家が体験した儲けるために役立つ会計の勉強方法~マネジメントゲームのススメ・中編~

マネジメントゲーム

起業家に必要な会計の知識とは? 前編ではマネジメントゲームを通じて、会計が経営に果たす役割の半分を説明しました。しかし、起業家に必要な知識はこの中編です。これを知らずして経営を行っても、会社を存続させるのは難しいでしょう。

起業家の仕事は自己資金を残す仕組み作りである

前編の内容では起業家に必要な会計の知識としては不十分です。なぜなら、利益を出して自己資金を残す方法しか伝えていないからです。ということで、同じ目的でもサラリーマンであるビジネスパーソンと考え方の違いを認識することがスタートになります。

まず、サラリーマンであるビジネスパーソンは、企業経営では前線のプレーヤーです。それぞれのセクションに分かれて、分業制になっているからです。たとえば次のとおりです。

  1. 売上単価アップなら商品企画部
  2. 販売数量アップなら営業部
  3. 仕入単価ダウンなら購買部
  4. 固定費ダウンなら全部署
  5. 自己資金を残す方法なら経理部

つまりビジネスパーソンはあらかじめ作り上げられている仕組みのもと、それぞれの役割を果たせば自己資金が残る仕組みが出来上がっているのです。

実際にマネジメントゲームの半分以上はサラリーマンでした。普段はそれぞれのセクションに属していますが、自分の仕事が自己資金に影響するのかがわかる点でよい勉強になると言っていました。とくに利益感度分析を学んだ営業マンの意識は変わります。今までは販売数量だけしか眼中になかったのに、売上単価とのバランスを考えるようになり、安易な値引きをしなくなります。

このようにサラリーマンは前線のプレーヤーですが、起業家は利益を出す仕組み作りが仕事です。それによってプレーヤーが力を発揮する度合いが違ってきます。その仕組みとは何かを楽しく学ぶことができるのがマネジメントゲームの特徴です。

サラリーマンと違い経営者は予算配分の決定権があります。つまり、利益を稼ぐためにはどこに手を打てばよいのかを方向づけることができるのです。

マネジメントゲームで初期投資するときは、いかに商品・製品の供給能力を上げるのかにウェイトを置くのがポイントです。具体的には人材採用、商品・材料、設備投資を行います。いくら買い手がいても、売り物がなければ経営は成り立ちません。実際に人材不足で売れる数量が限られて、設備投資を抑えたために生産力が伸びませんでした。その結果、マネジメントゲームでは機会損失により悔しい思いばかりです。

また、マネジメントゲームの面白いところは人材の質と品質が数値化できる点です。人材の質とは顧客満足度、品質とは試験研究費で、投資すると数値が上がります。入札制度で一番の安値を提示した人から買い取りますが、売価を高く設定しても売れるのがメリットです。たとえば、顧客満足度と試験研究費に投資したひとが20円、何もしない人が17円を入札で提示しても、高い人から買い取るケースがあります。マネジメントゲームのルールでは、顧客満足度や試験研究費が売価からマイナスできるルールになっているのです。したがって、20円と提示した人がマイナス4円すると入札額が16円で、17円の人より安値になります。

このように供給能力、顧客満足度や試験研究費は需要増につながるので、利益を稼ぐのは先行投資して、仕組み作りが大切です。

ローリスク・ハイリターンを狙うのが起業家マインド

先行投資は経営マンイドそのものです。といっても必ず回収される保証はどこにもありません。サラリーマンと違って、起業家はリスクを背負う運命にあります。

そのリスクをマネジメントゲームで体験できます。その前に経営のサイクルをおさらいしましょう。

  1. 手元資金を先行投資します。
  2. リターンを得ます。
  3. 再投資します。
  4. 再リターンを得ます。

上記の繰り返しで、利益を増やして事業を拡大します。その途中で自己資金が不足する事態に陥るときは、サイクルのどこかに問題がある証拠です。たとえば、無駄な投資の場合はリターンが得られません。すると自己資金が減るだけで損することになります。このケースは借金をする、人材の配置を製造(供給能力)から営業(顧客満足度)にシフトして力点を変えるなど、方向性を見直さなければなりません。

確かに先行投資は必要ですが、効率性に無頓着なら起業家としては問題です。同じ100万円の利益を稼ぐのにも、投資する金額が少ない方がよいのは分かりきっています。特に資金を提供する出資者や銀行は投資効率に注目します。マネジメントゲームでは手元資金が限られているので、利益を稼ぐのに必要なものにまんべんなく投資することができません。方向性に基づき、人材、商品・材料、設備投資のいずれかに選択集中の決断が求められます。私は設備投資を疎かにして失敗しましたが、疑似体験なのでよい経験になりました。

以上のように投資してリターンを得るのが経営です。預金にたとえれば、利回りとまったく同じです。

マネジメントゲームとは経営がどのようなものか体験できます。それが会計によって数値化できるので理解しやすいです。実際のゲームで勝つためには自己資金を増やす仕組み作りがポイントになります。そのためにリスクを侵して先行投資が必要なのです。そして、効率よくリターンを得るように投資には選択集中が必要になります。判断を誤れば損するので、穴埋めをしなければなりません。

以上から経営マインドが会計を通じて培われるのが特徴です。しかし、中編でカバーしたのは起業家に必要な最低限の内容に過ぎません。

実はマネジメントゲーム終了後の懇親会に参加して、マネジメントゲームに勝つコツを講師から教わりました。そこには「優秀な経営者になるための要素」が満載だったからです。

まとめ

マネジメントゲームでは起業家に必要な会計の知識を盛り込みました。サラリーマンは利益を稼ぐために実行するのに対して、投資して儲かる仕組み作りが必須です。その仕組みとは投資していかに多くリターンを得るのかに尽きます。それが「経営=利回り」と言われる所以です。

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TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。

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