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企業経営者に求められるフリーランスとの付き合い方【セミナーレポート】

経営ハッカー編集部
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セミナーレポート
2021年3月26日「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定されました。このガイドラインは事業者とフリーランスとの取引について、法令に基づく問題行為の明確化を目的として、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で策定されました。これを踏まえ、企業としてどう向き合っていくべきなのか。労働法務に詳しい弁護士である白石紘一氏と、自身もフリーランスとして活動しながら企業の支援やコミュニティ運営に携わる黒田悠介氏を招き、2020年3月31日にセミナーを開催しました。フリーランスと契約する事業者が注意すべき点、また、フリーランスとして知っておきたい点など、セミナー内容をレポート形式でお届します。

目次

    事業者がフリーランスに発注する上でのNGが明確に

    セミナーレポート
    東京八丁堀法律事務所 弁護士 白石 紘一 氏のプレゼンテーションをかいつまんでご紹介します。
     

    Q:「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」とは?

    A:事業者とフリーランスとの取引に関連する法令の適用関係と、それらの法令に基づく問題行為を明確化するためのガイドライン。

    2020年12月24日から2021年1月25日までパブリックコメントが実施され、2021年3月26日、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省連名で策定、公表された。ポイントとして押さえておきたいのが、次の3点。

    • 独占禁止法・下請法・労働法の3つの法律が適用され得る
    • 新しいルールが設けられたのではなく、既存ルールが事業者とフリーランスの取引においてどう適用されるか整理されたもの
    • 発注事業者とフリーランスの取引において問題となりやすい事例がまとめられており、発注事業者・フリーランス双方の「参考資料」となるもの
       

    Q:事業者とフリーランスの取引における、独占禁止法の適用とは?

    A:独占禁止法で禁止されていることのひとつとして「不公平な取引方法の禁止」があるところ、その中のさらに一類型として「優越的地位の濫用」があり、これが適用され得る。フリーランスに対して相対的に優越している発注事業者が、一定の行為を不当に行うことが禁止されている。

    事業者が優先的地位にあたるかは、取引依存度や事業者の市場における地位、取引先変更の可能性など、双方の具体的な立場や事情に基づき、総合的に判断される。発注事業者とフリーランス以外にも、仲介事業者(プラットフォーマー)との関係で「優越的地位の濫用」が該当する場合もある。
     

    Q:事業者とフリーランスの取引における、下請法の適用とは?

    A:下請法は、親事業者が下請け事業者に対して一定の行為を行うことを禁止しており、発注事業者を親事業者、フリーランスを下請事業者と捉えることで、事業者とフリーランスの取引においても下請法の適用が可能になる。下請法は、ガイドラインで禁止される不当な行為の多くに関連しており、ガイドラインを知るにあたり、最初に確認しておきたい法律といえる。

    「下請」とあるが、下請法は、委託元事業者・元請事業者・下請事業者(フリーランス)という三者関係以外にも適用される。たとえば、to C商材を扱う事業者が商材制作の一部をフリーランスに業務委託した場合、上記のような三者関係ではないものの、当該発注事業者とフリーランス(下請事業者)の間の取引にも下請法が適用され得る。下請法の適用範囲は、公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法ガイドブック 知るほどなるほど下請法」が分かりやすい。

    また、下請法は独占禁止法と異なり、発注事業者の資本金額に基づいて適用対象かどうかが判断される。具体的には、受注側がフリーランス(個人)の場合、発注側の事業者が資本金1,000万円以上の場合に適用される(あとは、取引内容に応じて下請法の適用可否が決せられる。)。

    さらに下請法が適用されると、発注事業者は発注内容等を記載した、いわゆる「3条書面」の交付と、いわゆる「5条書類」の保存が求められる。これらの書面では、発注や契約に関する一定の内容を記載することが求められ、違反した場合は罰金や指導の対象となる。

    今回のガイドラインでは、独占禁止法および下請法に基づき、具体的にどういう行為が問題なのか、以下のように12の行為類型があげられている。これらの行為そのものではなく、これらの行為を「不当に」行うことが問題となる。

    1. 報酬の支払遅延
    2. 報酬の減額
    3. 著しく低い報酬の一方的な決定
    4. やり直しの要請
    5. 一方的な発注取消し
    6. 役務の成果物に係る権利の一方的な取扱い
    7. 役務の成果物の受領拒否
    8. 役務の成果物の返品
    9. 不要な商品又は役務の購入・利用強制
    10. 不当な経済上の利益の提供要請
    11. 合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定
    12. その他取引条件の一方的な設定・変更・実施
       

    Q:事業者とフリーランスの取引における、労働関連法令の適用とは?

    A:まず、フリーランスが「労働者」であるか判断する必要がある。ガイドラインに記載された基準に則り、フリーランスでも「労働者」として労働関連法令が適用される場合がある。

    「労働者」と判断されると、労働基準法や労働組合法が適用される。その「労働者」の判断基準は、労働基準法と労働組合法の2つでそれぞれ異なっており、労働組合法のほうがどちらかというと緩やかな判断基準となっている。労働基準法では、労働時間や賃金等に関するルールが適用され、労働組合法では、事業者が団体交渉を正当な理由なく拒んだりすること等が禁止されている。

     

    フリーランスの環境の変化と求められる企業の対応

    セミナーレポート
    議論メシ 主宰 ディスカッションパートナー 黒田 悠介氏と、弁護士 白石 紘一氏のトークセッションの様子をかいつまんでお届けします。
     

    Q:ガイドライン策定のように、フリーランスにとっては働きやすい環境ができている?

    白石氏:率直にいえば発展途上。従来、行政の制度は労働者を前提として作られており、フリーランスで働き続けることを支援する発想がなかった。そこから、フリーランスを含め、「労働者以外の多様な働き方があり得て良いのでは」という発想に少しずつ変わっている途中。

    今回のガイドラインは、あくまでも既存のルールを整理しなおしたというスタンス。ただ、GLがあることで、問題を指摘しやすくなった面はある。また、行政や弁護士会でフリーランス向けの相談窓口も作られている。
     

    Q:フリーランス側から見た環境の変化は?

    黒田:変化は確実にある。副業も含めてフリーランスの数も増えており、フリーランスとしての働き方も多様化している。事業者側も、雇用関係以外の人的ネットワークを作り、必要なプロジェクトごとにアサインするというケースが増えており、フリーランスが働きやすい状況に変化している。

    そのなかで、フリーランス側も、今回のガイドラインで定められたようなリテラシーが必要になっている。フリーランス同士でコミュニティを作り、発注を受けたり、取引で問題があった会社の情報を共有したりなど、自分たちで働きやすい環境を作る動きもある。
     

    Q:今後、企業とフリーランスはどういう関係を築いていくべきか?

    白石:最近は企業と労働者の対等な関係が意識される世の中の流れがあり、事業者とフリーランスも同様。事業者として、フリーランスの力が必要な場面が増えている上に、フリーランスのコミュニティも発達しており、相手が個人だからといって不当なことをすると、長い目で見て企業側が損をする流れになりつつある。ガイドラインは、双方にとって良い取引関係を作るためのルール。今後ますます意識していく必要がある。

    黒田:以前はフリーランスが弱い立場にあったが、今回のGLのように、フリーランスが働きやすい環境を作れる世の中になってきている。事業者とフリーランスはフラットな関係で、Win-Winになるよう、双方が人として敬意を払った関係があれば問題は起きないのではないか。

     

    まとめ


    セミナー後のアンケートでは「改めて取引をする際に気をつけることがわかった」「フリーランスに限らず、取引先との関係を作るうえでも意識したい」など多くの声が寄せられました。改めてガイドラインが発表されたことにより、取引先やフリーランスとの付き合い方を意識する良いきっかけになったのではないでしょうか。

    freeeでは定期的に無料のオンラインセミナーを実施しています。是非ご興味あればご参加くださいませ。
    その他freee無料セミナーはこちら

     

    登壇者一覧


    フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン
    登壇者:

    セミナーレポート
    白石 紘一 氏
    弁護士(東京八丁堀法律事務所)

    弁護士として企業法務、労働法務等に従事した後、2016年に経済産業省に任期付公務員として着任。「働き方改革」等に関する政策立案に従事し、労働法関連政策に加え、企業人事制度の変革、HRテクノロジーや兼業副業の普及促進等を担う。2018年10月より現事務所に復帰し、労働法務、HRビジネス・スタートアップ支援等を手掛ける。著書に「HRテクノロジーで人事が変わる」(共著、労務行政)、「働き方改革関連法完全対応 就業規則等整備のポイント」(共著、新日本法規)等。

     

    セミナーレポート
    黒田 悠介 氏
    議論メシ 主宰│ディスカッションパートナー 『ライブピボット』著者

    2社のベンチャー企業を経て2011年に起業、2年弱で代表を交代し2012年にスローガン株式会社にジョイン。キャリアカウンセラーとして2年間で数百人の就活生とキャリアについて対話するなかで、思考を言語化する面白さや課題解決への効果を実感。2015年8月にフリーランスとして独立し、ディスカッションパートナーという職業を名乗り支援した企業は約100社。2017年2月にフリーランスコミュニティのFreelanceNowを、11月には議論でつながるコミュニティの議論メシを立ち上げる。議論メシのメンバー数は200人。様々なテーマと参加者で、毎月20回ほどの議論イベントを開催している。これまで開催されたイベントは300回以上で延べ参加者数は6000人以上。コラボレーションの相手はスタートアップ、大手企業、行政、コミュニティなど多岐にわたり、約120団体に及ぶ。また、2000人以上のキャリア相談に乗った経験を詰め込んだ、自分らしいキャリアパスを描くための指南書『ライブピボット』著者。

     

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