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2019年03月23日(土)

次世代を担うベンチャーCFO36人に聞いた 「あなたの“座右の書”は何ですか?」

経営ハッカー編集部
次世代を担うベンチャーCFO36人に聞いた 「あなたの“座右の書”は何ですか?」

日本初のCFOが誕生したのは、1995年。
ソニー株式会社の伊庭保氏がそのはじまりと言われています。

「CFOは、財務的要素および非財務的要素の両方を視野に入れ、適切な財務戦略の策定と実行によって企業価値向上を実現する“企業価値向上の番人”である」という伊庭氏の言葉にもあるように、CFOは資金調達からM&A、組織体制の構築に至るまで広範囲かつ複雑な業務を担い、日々シビアな数字と格闘しながら企業経営を支えています。

そんな企業経営の大黒柱として活躍する現代のCFOたちは、どのような書を読み、何を血肉としてきたのか。今回は、次世代を担うベンチャー企業のCFO36人に、CFOとしての人生に最も影響を受けた“座右の書”を伺いました。

※敬称略。企業名のアルファベット・五十音順で記載

Chapter1:CFOの実務に生かす

BASE株式会社 原田健『コーポレートファイナンスの原理』Stephen A.Ross , Randolph W.Westerfie著

選んだ理由  

私自身、会計・税務を中心にキャリアを歩んできましたが、ファイナンスもきちんと学びたいと考え、社会人になってから大学院に通い、そこで出会った一冊です。(コーポレート・ファイナンスの授業の担当教授が、本書を翻訳された大野薫教授であり、本書がテキストでした。)私は、それまでにもファイナンスを勉強しようと思い、入門書を数冊読んでみたものの、表面的な内容は理解できたのですが、きちんと理解できていませんでした。

本書に出会い、コーポレート・ファイナンスの理論的な基礎をしっかりと理解することができました。なお、本書は1,400ページを超し、かなり読み応えのある本ですが、ファイナンスの理論を確実に習得したい方に、一読をおすすめします。

今の仕事に生きていること

企業財務においては、大きく3つが重要であるといわれています。

1つ目は会社はどのような投資を行うべきか、2つ目は投資のためにどのようにして資金を調達するか、3つ目はどのように日々の資金・財務を管理すればよいか、について意思決定を行うことが必要です。本書はこれらの考え方の基礎を提供してくれるものであり、私自身の仕事の基礎となっております。私は、今まで及び現在の業務において、ベンチャー投資、事業計画策定・評価、資金調達、IPOなどのファイナンス業務を行ってきましたが、これらの実務を行う上で、本書で学んだファイナンスの考え方は非常に参考になっております。

プロフィール

原田 健 BASE株式会社 取締役CFO

早稲田大学商学部卒業後、2000年より大手ゼネコンにて経理財務業務を担当。その後、2007年より株式会社ミクシィにジョインし、経理マネージャー、経営企画等の業務を担当する。2013年に株式会社フリークアウトに経営管理マネージャーとして入社し、IPO準備を推進、2014年6月に東証マザーズへIPOを行う。IPO後も経理財務、経営企画、IR業務全般を統括・担当する。2015年6月にBASE株式会社にCFOとして入社、2016年2月に同社取締役に就任。コーポレート業務全般を担当している。

https://binc.jp/

株式会社アクセルスペース 永山雅之『投資される経営 売買される経営』中神康議著

選んだ理由

エンゲージメント投資を行う著名な投資会社の創業者の著書。長期投資家として独自に考える企業の価値評価アプローチ、持続的に企業価値が向上するかどうかを評価するポイントや基準が明確でわかりやすく、未上場のフェーズであればあまり馴染みのない機関投資家、特に長期で保有したいと考える投資家のものの考え方が理解できるため。

今の仕事に生きていること

スタートアップのCFOという立場上、常に資金調達のことを考えているが、投資してくれた株主に適切なリターンを返していくのはCFOの責務であり、それを果たすためには当社が資本市場から認められる「良い会社」となっていく必要がある。将来的に当社が対峙していくであろう彼らのような機関投資家の目から見て当社がどう映るのかを常に意識し、上場後も資本市場から中長期で評価される会社となるために今から何をすべきなのか、それを考えるのに大変参考になる。

プロフィール

永山雅之 株式会社アクセルスペース

1980年、千葉県生まれ。東京大学工学部システム創成学科卒業。商社、M&Aアドバイザリーファーム、投資会社を経て2018年よりアクセルスペースに参画。

https://www.axelspace.com/

アルクテラス株式会社 白石由己『ベンチャー経営を支える法務ハンドブック(改訂版)―スタートアップを成長させる法と契約―』橘 大地 , 中野 友貴著

選んだ理由

ベンチャー企業のCFOになぜ「法務」が必要なのか、と疑問に持たれるかもしれない。しかし、CFOの実務として第一に期待される資金調達は種類株式(優先株式)で行われることが一般的であり、種類株式の設計、それに伴う投資契約書や株主間契約書は法務の塊である。よって、最終的な契約書作成は弁護士の領域であっても、CFOは法務センスを常に磨いておかなければならない。さらには、CFOは資金調達の後には管理部長としても手腕を期待される。となれば、そのカバー範囲は自ずと労務や知的財産、契約実務にも広がっていく。本書は「法務ガイドブック」と謳われており、ベンチャー企業のCFOがカバーすべき法務の入口を案内してくれる最新の良書である。

今の仕事に生きていること

CFOとして法務に向き合うときに意識していることは、法務を上に見ない、ということだ。それは決して、法務を軽視するという意味ではない。軽視はしないが、絶対視はしないということだ。絶対視するのであれば、CFO職は弁護士が最も相応しいということになる。リスクの見極め、そのヘッジは顧問弁護士が助言をしてくれる。しかし、その助言どおりに投資家や事業会社と交渉できるかは、会社の置かれている状況やステージによっても変わってくる。どこまでを受け入れて、どこまでを粘るか。それはCFOとCEOでしか決められない意思決定である。だからこそ、逆説的に言えば、法務をアップデートすることはCFOの仕事に活きると私は思う。

プロフィール

白石由己 アルクテラス株式会社 取締役副社長(COO兼CFO)

2001年に慶應ビジネススクールに入学。在学中からバイオテック、ハイテク向けのベンチャーキャピタル設立に関与し、卒業後に入社。執行役員としてAcucela社などに計8社に投資を実行。2007年、投資先の取締役副社長(CFO)に就任。豪州上場企業CellMidに事業売却後、独立し、複数のベンチャーの社外役員を歴任。2010年、アルクテラス株式会社を共同創業。

http://www.arcterus.com/

株式会社ギフティ 藤田良和『企業価値評価――バリュエーションの理論と実践』マッキンゼー・アンド・カンパニー , ティム・コラー , マーク・フーカート 著

選んだ理由

マッキンゼー・アンド・カンパニー社により纏められた、「企業価値評価」に関する理論や実践的な活用方法を体系的に学ぶことができる書物です。近年、様々な「企業価値評価」に関連する書籍が出ていますが、企業価値創造の基本原則や「企業価値評価」の具体的なプロセスとして取られる手段の理論的な背景まで詳細に説明されており、企業価値の本質を学ぶことができる本書をおすすめ致します。若干詳細過ぎる説明のせいで読みにくさもあり、私は新卒で野村證券に入社した際に本書を読んだところ、当初は理解できない部分もありましたが、実務で「企業価値評価」を行う度に本書を読み返すことにより、より理解を深めることができました。

今の仕事に生きていること

本書を読むと、企業価値を高める為には、目先のPLよりも将来生み出されるキャッシュフローを意識することの重要性を理解することができます。この考え方は、「企業価値評価」の場面に限らず、事業計画の策定や急拡大する会社の組織や仕組み作りを行う際にも適用することができる考え方であり、現在の仕事においても意思決定の軸となる思考様式になっております。また、CFOとしてプロの投資家の方々と会話する際にも、同じプロトコルで会話を行うことができる為、円滑にコミュニケーションを図ることが可能になっています。

プロフィール

藤田良和 株式会社ギフティ

一橋大学経済学部卒業後、2009年4月より野村證券株式会社にて、M&Aのアドバイザリー業務に従事。主にテレコム・メディア・テクノロジー業界の企業買収や合併のエグゼキューションを担当。2013年8月より、オリックス株式会社にて、自己勘定投資業務に従事。投資先企業のソーシング、レバレッジド・バイアウトスキームによる投資実行、バイアウト先企業のPMIを担当。2017年2月より、株式会社ギフティの取締役CFOに就任。

https://giftee.co.jp/

株式会社バルクオム 谷口尚人『ドキュメントコミュニケーションの全体観(上・下巻) 』中川邦夫著

選んだ理由

当時パワーポイントをほぼいじったことが無かった私が、ドキュメント作成能力を厳しく問われるコンサルティング会社で勤務する直前に読んだ図書の一つになります。

コンサル系の本というと堅苦しい言葉が多く読みづらいイメージですが、本書自体が活字ばかりだとわかりづらいような内容が行間・スペースの使い方や用語の定義、チャートをうまく用いてわかりやすく記載されています。読み込んでいくと、ドキュメントの作成能力は勿論、プレゼンなど含めたアウトプットに必要なロジカルシンキングなどが、ドキュメントの作成プロセスを通じ、ある程度自然に身につく点がおすすめです。内容は基本的ではあるのですが、意外と漠然としか理解できていない人が多いことを体系的に理解できます。

今の仕事に生きていること

CFOは直訳すると最高財務責任者ですが、高い財務スキルを有しているのみではなく、経営戦略の立案や全社改革、IRなど社内外のステイクホルダー向けの発信まで所掌できなければならないと考えています。自身がいくら専門知識をため込んでいても、アウトプットが満足にできないようでは意味がありません。 多種多様なステイクホルダーに発信する機会が多いCFOだからこそ、相手方と過不足なくコミュニケーションをとるtoolであるアウトプットの精度を上げることは不可避であり、本書はその方法論のみならず、今の仕事にも当然に必要な論理的思考能力の醸成にも貢献してくれたと思います。

プロフィール

谷口尚人 株式会社バルクオム

大学院在学中に大手監査法人に入所。日米上場企業や外資系企業の法定監査、アドバイザリー業務に従事。監査法人を退所し、コンサルティング会社にて、上流の戦略案件から下流のシステム案件まで幅広い経営コンサルティング業務を経験。その後リクルートの事業戦略部門にて、事業戦略や競合対策、新サービスデザイン、組織ミッションの立案を担当した後、株式会社バルクオムの取締役CFOに就任。公認会計士。

https://company.bulk.co.jp/

株式会社メドレー 河原亮『MBAバリュエーション』森生明著

選んだ理由

学生時代、新卒で投資銀行を志望するにあたって購入した書籍です。タイトルにMBAと入っていますが、どちらかと言うとファイナンスについて実務経験者が未経験者向けに、事例を交えてわかりやすく説明しているのが特徴です。日本では通常の生活や学校教育を通じてファイナンスに触れる機会が少ない中で、(例えば株式価値と企業価値の違い、資本コストの概念など)基礎となる考え方や現場での使用例について把握する入門書として、とても優れていると思います。ファイナンスについて勉強したいが、何から手をつけていいのか分からない。そんな方におすすめしたい1冊です。

今の仕事に生きていること

社会人になってからは、実際に本書の中で描かれていた、資金調達やM&Aなどの業務に携わる事になりました。その際、実務についての考え方や、現場の雰囲気を知るイントロとして本書が役立ちました。また、著者のMBA・ファイナンスに対しての理解が非常に深いことから、シンプルながらも本質がきちんと解説されており、本書全体を通じて、物事をシンプルに説明することの重要性にも気付かされました。そのベースの考え方は今の自分の考えや仕事にも影響しています。そういった観点から、学生や若い社員に「ファイナンス関連の本を紹介して欲しい」と言われた際は今でもおすすめしています。

プロフィール

河原亮 株式会社メドレー

2007年東京大学工学部卒業。JPモルガン証券株式会社に入社し、投資銀行本部にて約10年間、国内外の事業法人及び金融機関を顧客とした資金調達業務(IPOを含む)及びM&Aアドバイザリー業務に携わる。2016年より株式会社メドレーに参加。

https://www.medley.jp/

モビルス株式会社 加藤建嗣『会社四季報』

選んだ理由

若干変化球っぽいですが、おすすめの本は、四季報です。投資が事業でもないのに、まさに座右の書としてオフィスのデスクにも置いてあります。間違いなく、人生で一番読んでいる本です。CFOの役割は、会社によって、またその人によってかなり違うと思いますが、共通の点は企業価値向上の旗振り役ということだと思います。その役割を担うためには、株主の視点で会社を見ることを忘れてはいけないと思っています。四季報は、株主(投資家)が重要だと思うポイントをコンパクトに表現していますので、会社を客観的にみるためのチェックリストになると思っています。純粋に、他社の状況を見るのも楽しいですし。

今の仕事に生きていること

会社の数年後をイメージするのに大変役立っています。現在の業績が過去の実績として記載されますので、「どのような業績推移をたどるべきか」「株主をどういう構成にするか」「会社の成長ストーリーをどう投資家に伝えるか」など、モビルスを四季報の中でどう表現させるべきかを考えさせられます。四季報に記載される項目を日々、少しずつ埋めていく感じです。株式投資をしていない方には馴染みが薄いかもしれませんが、知り合いが働いている会社や取引先を調べるだけでも、新たな発見などがあり面白いです。営業のメンバーが訪問している先などを、ついつい調べてしまいます。すぐに慣れると思いますので、ぜひ手に取ってみてください。

プロフィール

加藤建嗣 モビルス株式会社

2002年国際基督教大学卒、2009年ペンシルバニア大学ウォートンMBA取得。大和証券及びDaiwa Capital Markets Hong Kongにて、14年間、投資銀行業務に従事。上場企業及び非日系企業への資金調達/M&A等の提案業務、PEファンドのカバレッジ業務を担当。その後、食品商社である帝エンタープライズジャパンに取締役副社長として入社し、経営全般を管掌。2018年、CFOとしてモビルスに参画。

https://mobilus.co.jp/

ユニファ株式会社 森田修平『起業のファイナンス』磯崎哲也著

選んだ理由

最近になって、スタートアップ業界におけるファイナンスに役立つ本は続々と出版されるようになってきましたが、それまでは初心者または専門家向けの本ばかりで、あまり起業家の立場を踏まえた実務に役立つ本というのはなかったように思います。そうした中、この『起業のファイナンス』は、スタートアップにおける起業家の状況を踏まえ、資金調達の初心者にも分かりやすく、かつ痒い所に手が届くような形で記載されており、この本に書かれている内容を知っているか否かで、実際の資金調達の成否が決まるといっても過言ではありません。個人的には、この本を執筆された磯崎哲也さんは、スタートアップの発展に多大な貢献をされていると考えます。

今の仕事に生きていること

私は現職に至るまで、ファイナンスに関して資格試験を通じた勉学や数字畑での業務経験は相当程度あったものの、事業会社での資金調達経験はありませんでした。そうした状況下で、入社2週間後に会社の行く末を大きく左右する、ベンチャーキャピタルからのエクイティファイナンスによる資金調達業務を社長から任されました。入社前にこの本を精読していたことで、説明資料の作成方法・見せ方、ベンチャーキャピタルとの契約上の交渉ポイント等を事前に整理することができ、無事に調達に繋げることができました。その後も、エクイティやデッド、補助金等の各種資金調達業務に携わっておりますが、この時の経験は非常に役立っています。

プロフィール

森田修平 ユニファ株式会社 経営企画室室長

これまで監査法人にて監査業務、IPO支援業務、M&Aに伴う財務DD、会計アドバイザリー等の業務に従事し、その後コンサルティング会社に移り、原価・管理会計制度の構築・運用支援や会計・経費システムの選定支援、上場支援等の業務を経験。
そして現職のユニファ株式会社に移り、これまでエクイティ・デッド・補助金による各種資金調達や予算・中計策定、経理業務・法務業務、M&Aや各種PJ対応等の幅広い業務に携わっている。

https://unifa-e.com/

株式会社よりそう 山田一慶『Fundamentals of Corporate Finance』STEPHEN A. ROSS著

選んだ理由

ファイナンスをイチから勉強するのにぴったりの本です。大学時代にファイナンスを専攻したときの教科書で、よく整理されていて体系的にファイナンスを学ぶことができます。僕はこの本で、ファイナンスが世界の共通言語であることや、それがどんなものであるかを学ぶことができました。書店には、新しいテクニック、新しい理論、トレンドの本がどんどん並びますが、それらを理解する上でも、基礎知識があるのとないのとでは解像度が違います。この本に限らず、ファイナンスのプロを志す方は、多少難しくても体系的な本を1つは読むことをお勧めします。世界的なファイナンスの常識を理解していれば、どんな相手であっても自信を持って説明できるようになるはずです。

今の仕事に生きていること

未知の状況への柔軟な対応や、CFOとしてのキャリアを自分の意志で考えられるようになったのは、まさにこの本のおかげです。前職のソフトバンクロボティクス時代に初期メンバーから財務責任者まで経験させてもらったPepperプロジェクトは、とても巨大な資本を必要とするにも関わらず全く前例がないという規格外のプロジェクトでした。また、現職のよりそうでも、入社と同時にシリーズCの調達が始まり、自分自身ライフエンディングを学び始めたばかりなのに猛スピードで走り出さなければいけない状況でしたが、無事に10億の調達に漕ぎ着けられました。Pepperのときも、シリーズCのときも、未知の物事に対応して結果を出せたのは、基盤となる知識を持っていたからこそだと思います。ベーシックを体系的に知っている事は自信になりますし、基礎を学ぶのは本当に大切だと実感しています。

プロフィール

山田一慶 株式会社よりそう

日本GE株式会社(Financial Management Program)を経て、ソフトバンクモバイル株式会社にて孫社長特命チームの財務担当としてロボット事業(Pepper)の立ち上げに参画。その後、ロボットのローンチ、本格事業化に伴い、ソフトバンクロボティクスホールディングス株式会社およびソフトバンクロボティクス株式会社の分社化を実施し、財務全般に従事。2015年株式会社みんれび(現:株式会社よりそう)に参画し、2016年同社取締役CFOに就任。The City University of New York/Baruch College卒。

Twitter:@kazuyamd
https://corp.yoriso.com/

Chapter2:CFOのあり方を考える

Inagora株式会社 齋藤信平『フェルマーの最終定理』サイモン シン著  

選んだ理由

数字や数学に苦手意識を持つ方におすすめの一冊。数学界最高の謎とされ、名だたる数学者が解けなかった「フェルマーの最終定理」が360年間かけてようやく証明されるに至ったノンフィクションです。数学書というよりはドキュメンタリー色が強く、数学知識が中学生レベルの方でも引き込まれて読めるはず。定理が導き出される過程がドラマティックかつ丁寧に描かれており、数学の学問的な面白さや深さに気づいていただけるきっかけになり得る良書だと思います。    

今の仕事に生きていること

私のキャリアにおいて、前職と現在で大きく異なるのは、一つのチームでも様々な分野の専門家が集まっていること。私は数字をもとにしたファクトをロジカルに説明することが求められる職種に携わっていますが、社員全員が経理財務の知見があるわけではないため、相手に合わせて理解を得られるよう工夫をしなくてはいけません。本書の、数学界の言葉を誰もが「分かりやすく」伝えている点は参考になります。また、360年後に定理を完全に証明したアンドリュー・ワイルズの「人は誰しも、自分にとって大きい何かに本気で取り組むことができれば、想像を絶する収穫を手にすることができるのではないでしょうか。」という謙虚かつ熱い言葉は非常に印象的。この言葉に励まされることもあります。       

プロフィール

齋藤信平 Inagora株式会社執行役員/Vice President CFO/経営管理担当

2008年東京大学大学院 工学系研究科 修士課程修了後、JPモルガン証券株式会社およびゴールドマン・サックス証券株式会社の投資銀行部門資本市場本部にて計10年間勤務。グローバル・オファリングでのIPOや公募増資・売出しを中心に、普通株・種類株・転換社債等を用いた資金調達業務に携わる。2018年8月よりインアゴーラに入社し、財務戦略や経営戦略の策定、資本および業務提携などを担当。

https://www.inagora.com/

株式会社JX通信社 金子正一『武田勝頼』新田次郎著

選んだ理由

タイトルは「武田勝頼」ですが、その側近である真田昌幸(真田幸村の父)が主人公と言っていいほどに躍動します。信玄の死後、息子の勝頼が後を継いだ武田家は織田・徳川連合によって領土も家臣も切り崩されていくのですが、難局にぶつかる度にポジティブで合理的な打開策を具申する昌幸の頭脳、史実で結末が分かってるのに最後まで再起の希望を持たせ続ける筆力が自分的にツボです。本は結構読む方だと思いますが、特定の本に影響を受けたり人生が変わったりってことが基本的にないので、3回以上読んだ作品で、今回のテーマで語れる部分が幾分かあり、ベタでないものという観点で選びました。

今の仕事に生きていること

自分を真田昌幸に擬えてそれらしく書こうと思ったのですが、昌幸は武田勝頼の1つ下、自分は米重(弊社代表)より20近く歳上で、勝頼にとって昌幸よりもやりにくかったであろう「信玄の代からの老臣」に近いことに気づいてしまいました。米重に限らず弊社のメンバーは総じて若く、彼らの言動で気になることがあった時に「気にすべき」なのか自分の価値観が古いだけなのかと逡巡することが増えました。一方で、そういう逡巡自体がよくないのではという迷いも生まれ、「四十にして惑わず」というのは難しいと感じるこの頃です。あと、難局に対して悲観的にならず(リスク分析は当然必要ですが)、ポジティブなマインドでいることはベンチャーでも大事な気がしています。

プロフィール

金子正一 株式会社JX通信社

1971年5月、大阪府生まれ。1994年、慶応義塾大学経済学部卒業後、山一、日興、三菱UFJモルガン・スタンレー証券等を経て、2015年に当社取締役に就任。証券会社では一貫してIPO支援業務に従事し、特に三菱UFJモルガン・スタンレー証券ではネットベンチャーを中心に支援。JXはその時の自分のお気に入りのうちの1社で、2015年4月より参画。

Twitter:@tenorsox
https://jxpress.net/

Repro株式会社 山本浩史『デジタルCFO』EYアドバイザリーアンドコンサルティング著

選んだ理由

本書では人工知能やクラウドサービス等の複数のテクノロジーが紹介されており、次世代のコーポレート業務のあるべき姿を論じています。コーポレート部門の業務は、テクノロジーの進展により、大きな変革期を迎えています。ルーティン作業はなるべく自動化することでかける工数をできるだけ減らし、より戦略的な意思決定に時間をかけるようにすることが求められています。コーポレート部門で働く人々にとって、最新テクノロジーに対する知見とその活用は不可避であると言えます。

今の仕事に生きていること

弊社では会計システムを中心に各種システムの導入を進めていますが、業務の効率化・自動化を図れるという観点を重視して選定しました。また、単にシステムを導入しただけでは想定している効率化を実現することは難しいと認識しており、業務フローの見直しを並行して進めています。新しいサービスやテクノロジーにはアンテナをはり、コーポレート部門の業務効率化に寄与するか常に意識するようにしています。

プロフィール

山本浩史(やまもと ひろし)Repro株式会社 CFO

大学卒業後、鉄道会社に入社。現業業務を経て、主に予算管理、連結決算、資金調達に従事。在職中金融機関へ派遣され、米国ニューヨークにてマクロ経済分析および企業のクレジット分析を経験。その後、製薬会社に転職。日本・APACの資金・為替管理を担当。また、BPR、M&A等複数のクロスボーダープロジェクトにファイナンス担当として参画。Fintech系のStartupを経て、Reproに参画。

Twitter:@reproio
https://repro.io/jp/

株式会社Showcase Gig 中山亮『事業再生要諦―志と経営力‐日本再生の十年に向けて』越純一郎著

選んだ理由

本書は、事業再生の最前線にいた筆者が、企業経営においては「志」と「経営力」が肝要であるということと、それをベースにした日本の再生に向けた提言を、筆者自身の経験を基に精神論だけでなくプラクティカルに説いているものです。「意志あるところに道あり」というように、起業家にはまず世の中をより良くしたいという志があり、その実現のために起業をするというケースが大半で、経営理念やミッション・ビジョンといったものの根底には原初の志があります。私に起業経験はありませんが、起業家に伴走する職に就いて長く、常に起業家と志を共有しながら走りたいと思っており、それができているか自省するために何度も読み返している書です。

今の仕事に生きていること

20代で投資ファンドに在籍していたとき、まずは財務・税務や法務といったspecificなスキルを身に着けることを意識し、その後に交渉やメンバーマネジメントといったgenericなスキルを身に着けることを意識して投資家という立場で会社経営に参画していましたが、経営の根本には「志」が必要であることに気付き、自分なりに会社経営への理解や覚悟が深くなったと判断した時に、投資ファンドを出て事業会社のマネジメントポジションに就くことを決意しました。現在はベンチャー企業でCFO職に就いておりますが、高い志を持てば、それが自らの行動規範の基礎となり、スピード感を保持しながら場当たり的でない経営の実現が可能になると思っています。

プロフィール

中山亮 株式会社Showcase Gig 

独立系アセットマネジメント企業にて投資ファンドの管理業務に従事した後、ゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパン、株式会社リサ・パートナーズにて企業投資・企業再生業務に従事。その後、日系上場企業にて経営企画業務及び国内外におけるM&A実行及び子会社経営に従事。2017年に財務・管理部門責任者としてShowcase Gigに参画、2018年に取締役CFO就任。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。

https://www.showcase-gig.com/

株式会社Xenoma 富取祐香『覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰』池田貴将著

選んだ理由

29歳でその生涯を閉じながら、松下村塾から明治の中心人物を数多く輩出した吉田松陰の言葉を現代向けに読みやすくまとめた本書。松陰の言葉には、激動の時代の中で侍たちが大事にしていた考え方、人としてのあり方が滲み出ています。スタートアップで世界を変えようとするとき、正しい方向を向いて、強い信念を持ち続けるために、そうした「心」みたいなものを大切にしたいと感じています。いまの自分は吉田松陰が亡くなったのと同じ歳で、比べてしまうと全然敵わないのですが、まだまだ頑張ろうという気持ちを奮い起こさせてくれます。

今の仕事に生きていること

CFO業務は「知識さえあればできる」ように思われがちですが、実際にはやってみないと分からないことも多くあります。また、管理系トップという職責上、言いにくいことを言わないといけない場面などもあります。知るだけでなく行動することや自分の心に従うことを説く言葉の数々に勇気づけられると同時に、正しい判断基準を自分の中に持つことの重要性を再確認することができます。何かを達成するという具体的なゴールよりも、どう在りたいかの方が自分の軸がぶれにくいので、正解のない仕事に取り組むうえで拠り所になっているように思います。

プロフィール

富取祐香 株式会社Xenoma 

慶應義塾大学経済学部卒。在学中3年次に公認会計士試験論文式試験に合格し新卒でPwCあらた監査法人に入社、製造、小売、卸売、サービス業のクライアントの監査を担当。その後株式会社ネクストイノベーションでは中小企業支援を通じて経理のほか人事、法務、助成金対応などの現場業務を幅広く経験。2015年11月創業と同時に株式会社Xenomaの取締役に就任、2016年5月よりフルタイムで参画。3度の資金調達をはじめ、経営企画部長として組織の成長を支えている。

Twitter:@startup_dancer
https://www.mirai-ota.net/company/detail/215

株式会社キュア・アップ 久納裕治『「日本の経営」を創る 』三枝 匡  , 伊丹 敬之 著

選んだ理由

本書は日本を代表する経営者と経営学者が広範に経営について議論を展開するもので全ての章で示唆に富む名著である。特に経営の現場において理論を実務に落とし込む際のヒントを与えてくれる。経営理論は現場では役に立たないと批判されることも多い。では理論に意味はないのか。筆者達は経営者として成果を上げようとするならば理論自体を振りかざす事に意味はなく、現場の現実にそれを落とし込まなければならない、他方で先人の積み上げた経験、洞察を元に結晶化された理論を無視し、現場に立つのもまた無責任であるとし、理論の活かし方を伝える。本書を通じて経営の論理を追求することの意味、そして経営者としての生き方を考えることが出来る。

今の仕事に生きていること

1点目は数値を発信すること、プロフェッショナルとして理解されることの意味についてより深く考えるきっかけとなったこと。財務数値は理解されづらいが、適切に使われないと会社の経営は成り立たない。会計士、CFOとして、現場の現実に適合する形で数値を理解し、どう伝え使ってもらうかを常に意識している。2点目は経営者としての学びのあり方を考えるきっかけとなったこと。経験でのみ語る職人にも、頭でっかちのコンサルにも経営者として会社をまとめることはできない。学んだことは自ら消化し使いやすい形に組み直す、使える形にして提供することが重要だ。日々、様々なインプットと同時にどうアウトプットするかを意識して学ぶようになった。

プロフィール

久納裕治 株式会社キュア・アップ

佐賀県出身、早稲田大学商学部卒。新日本監査法人(現:EY新日本有限責任監査法人)金融部で、金融機関向け監査に従事した後、経営コンサルティング、M&A支援を行うフロンティア・マネジメントに参画。事業計画策定や施策の実行支援等、多数のプロジェクトに従事。治療用アプリの新規性、可能性に魅了され、CureAppに参画。

https://cureapp.co.jp/

株式会社サイカ 中西勇介『捕手的人間の時代―「勝利の方程式」などないと心得よ! 』森祇晶著

選んだ理由

野球選手として巨人で正捕手としてV9に貢献、引退後には西武の監督として8度のリーグ制覇と6度の日本一に導いた名将森祇晶氏の著書。大学時代、部活の部長に指名されたときにカリスマ性で人を引っ張っていくタイプでない自分がどうリーダーシップを取っていけば良いかを悩んだときに、捕手的リーダーというあり方を教えたくれた。著者は、これからの時代は、存在は地味であろうとも、結果以前にまず過程を重んじ、フィールドの中にあってただ一人、どっしりと腰を下ろし、地に足をつけ、そこから見える世界を冷静に眺め、先を読み、分析し、行動する「捕手的人間」が重要になる時代が来るとした。No.2としての生き方、考え方を学ばせてくれた良書。

今の仕事に生きていること

CFOという仕事はまさに「捕手的人間」の仕事だ。私は、野心的でカリスマ性のあるCEOにいかに気持ちよく仕事をしてもらい、その思いを実現してもらうかがCFOの仕事と考える。これはCEOが投手でCFOが捕手とも置き換えられる。スタートアップを取り巻く環境は日進月歩で毎日ホントかよと思うことがいろいろと起こる。その中にあって「捕手的人間」としてのCFOがどっしりと腰を下ろし、冷静に状況を把握し、先を読み、分析し、指揮を採っていく。脇役としての自身の役割を認識し、組織の土台を下から支えるCEOにとってなくて無くてはならないCFOという存在のあり方や考え方を、今でも壁にぶち当たったときに読み返すと、女房役としての示唆を与えてくれている。

プロフィール

中西勇介 株式会社サイカ

銀行、日用雑貨メーカーでCFO、専門商社で事業マネジメントを経験し、2016年6月より株式会社サイカに参画。2017年3月より取締役CFOに就任。日用雑貨メーカーで民事再生のターンアラウンドを現場のど真ん中で経験・克服する。会社を守るマネジメントを実践し、成長企業の女房役として支えることを使命と考える

Twitter:@YUSUKENAKANI4
ttps://xica.net/

スターフェスティバル株式会社 中西勝也『Guide to CFO Success』Samuel Dergel著

選んだ理由

資金調達方法、法務、経理実務関連は多くあるが、CFOそのものに関する参考図書はないと先輩に言われ、洋書で探しました。著者はヘッドハンターです。実務知識や資金調達ノウハウは書いてません。CFOが持つ多くの役割をStrategy、Communication、Financeの3つに整理し、さらに会社のステージ毎に分類し、CEOやボードが何を期待してCFOを探してる=どう結果を出すべきか、CFOになった後の心の持ちよう、社内での立ち居振る舞い方、ワークライフバランス(自身と財務部員への求め方)、SNSの使い方w、CFOに向けての自身のキャリアの積み方、配下の財務部員からのCFO育成プランまで書いています。

今の仕事に生きていること

私は、前職(楽天)で、壮大なビジョンの実現速度を速める大胆なM&Aを遂行し、経営メンバーを集めて一気に束ねていくCEO、裏側で走る経営管理、財務活動を担う、IPOから支えたCFOの苦労と功績を見てきました。この本に記載の通りです。自分で実際やってみると、社外とのファイナンスコミュニケーションは発展途上ですが、相手の理解力と期待度の高さに助けられ、なんとかやれています。一方、難しいのは、ビジョンと計画実現に向けた社内メンバーへの理解と浸透だと感じます。やるべきことは本や先輩の事例で理解できているつもりですが、毎日現実に直面し、試行錯誤・アップデートして対応しているという感じです。

プロフィール

中西勝也 スターフェスティバル株式会社

株式会社ジャフコ、楽天株式会社を経て2017年よりスターフェスティバル株式会社CFOとして参画。フードデリバリービジネスの成長率向上のための事業戦略アップデートと、実行原資25億円の追加調達を実施。

https://stafes.co.jp/

Chapter3:思考法を学ぶ

freee株式会社 東後澄人『企業参謀―戦略的思考とはなにか』大前研一著

選んだ理由

戦略的に考えることがどういうことなのか、常に物事の本質を捉える意識の重要性や経営者としての重要なマインドセット、それを実行する上でのHOWまでが広くまとめられている。既にかなり昔の書籍なので一部の内容はやや現代には当てはまらない部分もあるが、多くの部分は今でも、経営者(特にCFOやCOOのように戦略的思考を持ってCEOを支える立場)にとって普遍的に参考になるものだと思う。

今の仕事に生きていること

上記の本質思考は、freeeの価値基準の一つである「マジで価値ある(ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする)」に通ずるところがあり、freeeにおける事業の推進やプロダクトのあり方について考えることに活きている。また全般的な自分自身の思考の原点になっている。

プロフィール

東後澄人 freee株式会社

東京大学工学部卒。同大学院では、宇宙航空研究開発機構において次世代ロケット推進薬の研究を行う。2005年にMcKinsey&Company に入社し、IT・製造業界を中心に国内外の顧客の幅広い経営課題に取り組む。2010年から Google にて日本の中小企業向けマーケティング、及び Googleマップの事業開発に従事。2013年に freee 株式会社に参画し、COOとして急速な事業拡大を牽引。2018年より同社のCFOに。

https://corp.freee.co.jp/

ウォンテッドリー株式会社 吉田祐輔『世界はシステムで動く ― いま起きていることの本質をつかむ考え方』ドネラ・H・メドウズ著

選んだ理由

複雑なものを複雑なまま捉える、というのが、私の仕事におけるひとつのテーマです。複雑なままとは言っても、ごちゃごちゃのものをそのまま受け入れるという意味ではなく、より正確に表現すると、過度に単純化せず適切な解像度で捉える、という意味合いです。この本はそんな私のテーマにぴったりの一冊でした。特定の要素や事象だけにとらわれず、要素間の関係性、要素の裏側の構造も含めた全体像、それらの挙動を読み解き、根本的な解決策を導き出すための考え方、そして物の見方を教えてくれます。CFOには、社内外の人々や様々な要素の動き・流れを把握し、事業や組織についての解像度を上げていくことが欠かせません。また、事業は結局人が行うものなので、定量面だけでなく人の感情や人間関係のような定性面への洞察も必要です。しかし、ファイナンスや会計面の実務に集中しているとついついExcelのシート上で思考が完結してしまいがちです。すると、変数間のつながりや指標の感応度についての感度が上がらず、事業成長に資するような情報の提供や意思決定に関わっていくことができません。私は、証券アナリストとして勤めていた際に、マクロからミクロまで様々な変数や構造を考えて、調査対象の業界動向や企業業績を予想するといったことを行っていました。ただ、上司や先輩の見よう見まねでやっていたこともあり、体系立った理解には至っておらず、うまく可視化したり、より洞察を深めることが十分にはできていないと感じていました。事業会社も経験した後に出会ったこの本には、自身が感覚的にとらえていたことが整理されたり、自身も理解が浅かった点をかなり補強してもらいました。変わり種かもしれませんが、ファイナンスやコーポレート部門から経営に関わっていきたいという方にオススメの一冊です。

今の仕事に生きていること

何事にもシステム思考の考え方にもとづいて、全体の構造や背後の繋がりを意識するようになっていると思います。加えて、システム思考に紐づく概念として提示されている、層状の限界、時間的遅れ、限定合理性といったトラップに、自身や周囲も嵌ってしまっていないか内省・俯瞰するうえでも活用できています。

プロフィール

吉田祐輔 ウォンテッドリー株式会社

京都大学工学部を卒業後、モルガン・スタンレー証券に入社し株式アナリストとして勤務。PRエージェンシーのフライシュマン・ヒラード・ジャパンを経て、旅行系スタートアップのトリッピースにてバックオフィス全般、資金調達、カスタマーサポート、内部のオペレーション構築などに従事。2016年6月にウォンテッドリーにコーポレートチームの一員として入社。執行役員 経営企画担当を経て、17年11月に取締役CFOに就任。現在に至る。

https://wantedlyinc.com/ja

株式会社ホワイトプラス 原田隼『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人著

選んだ理由

「本質的な課題は何か」や「生産性の高い仕事とは何か」を当たり前に考え、習慣化させる上での名著を推薦しました。ビジネスをする上では日々の限られた僅かな時間の中で常に仕事に優先度を付ける必要があり、経営(事業や組織)に大きく影響を与え得るものから順に答えを出していく必要があります。発生する大小様々な問題すべてに対処しようとしても時間切れになってしまい、バリューのある仕事をすることはできません。対処しようとしている問題が自身の会社にとって果たして解くべき問題なのか、解くことができる問題なのか、もっと重要な解くべき問題はないか、木だけを見て森を見ていない視野狭窄な状況になっていないか、そういったことを深く考える習慣が身に付けられる一冊だと思います。

今の仕事に生きていること

「イシューからはじめる」ことは、一見当たり前のようで実際に習得するのはなかなか難しいのですが、一度習慣付いてからは、ほぼすべての業務に汎用的に活用できています。

例えば、「何故◯◯が起きているのか?」という問いがあった時、いきなり原因を探ることはせず、まずは、「◯◯が起きていること」そのものが検討に値する(=イシューな)事象かどうかを俯瞰して考えるようにしています。イシューではない話については優先度を落とし、時間を割きません。ビジネスは試験と違い「正解」がなく、どの選択肢を取ってもメリット・デメリットが生じます。限られた僅かな時間の中で「最善の解」を見つけなければいけません。『イシューからはじめよ』の内容が身に付けば、貴重で有限な時間を無駄打ちせず、より本質的な課題に時間を割くことができると思います。

プロフィール

原田隼 株式会社ホワイトプラス

一橋大学経済学部卒。2008年にオプト入社。2013年より同社COO室室長兼モバイルファクトリー社外取締役に就任し、グループ経営推進による企業価値向上やグループ会社支援に従事。その後、ペロリなどスタートアップ数社の経営企画及びCFOを経て、2016年にホワイトプラス入社。2017年より執行役員CFOに就任し、ファイナンスをはじめ人事制度の設計や組織構築等、経営企画・管理部門を統括。

Twitter:@shun_harada3
https://www.wh-plus.co.jp/

マネーツリー株式会社 鈴木塁『マッキンゼー式 世界最強の問題解決テクニック』イーサン・M・ラジエル著

選んだ理由

ベンチャー企業の経営においては日々複雑な問題が発生します。そのほとんどが、前例がなかったり、正解がなかったり、または、そもそもの問題が何かすらわからないことがあります。本書では、MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)と論理ツリーという手法が記載されていますが、これらの課題に対応する上での大きな武器となります。この手法は、ベンチャー企業に限らず、大企業、または、ビジネス以外の分野でも有効且つグローバルな場面でも通用する思考方法だと思います。

今の仕事に生きていること

マネーツリーでは、職種、人種、年齢・ジェンダー等、様々なバックグラウンドの社員がいます。こういった多種多様なチームの中で、自分の考えをキチンと伝えるには、日本的な以心伝心とか他の人がやっているからという考えは通用しません。常に、自分の思考をロジカルに整理、説明し、また相手の見解をロジカルに整理することで、円滑なコミュニケーションが生まれ、さらには、思いもよらなかったようなアイディアが生まれます。具体的には、投資家への説明、お客様への事業の提案、困難な課題への対応といった場面で活かしています。MECEと論理ツリーを使わない日はありません。

プロフィール

鈴木塁 マネーツリー株式会社 取締役最高財務責任者

中央大学法学部、ペンシルバニア大学ロースクール卒業

1996年 第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。法人融資、国際審査、レバレッジファイナンス、プロジェクトファイナンスを担当。2006年 ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。自己勘定投資、クレジットトレーディングを担当。2016年 マネーツリー株式会社入社。

https://moneytree.jp/

Chapter4:戦略・意思決定を学ぶ

株式会社Kyulux 水口啓『「起業」成功戦略30章―21世紀を拓く企業家精神』ゴートン・B. ベイティ著

選んだ理由

私がベンチャーキャピタル勤務時代に「私のアドバイスが本当に投資先に有益なのか」と悩んでいた時に出会った本である。現在のように豊富な起業論の書籍がない中で実務的なアドバイスが豊富に掲載されているだけでなく、多数の自分自身の思い込みに気づかせてくれた。ベンチャー企業のCFOだけでなく幅広く起業を目指す方々にも手元に置いて気になる部分だけでも読んでみて頂きたい。「起業家に最も不足しているのは時間ではなく、それを活用するためのエネルギーと組織力である。」(本書抜粋)

今の仕事に生きていること

世界市場を目指す開発先行型技術ベンチャー企業の共同創業者CFOとして高い緊張感を持って経営にあたっている。開発力を支える事業基盤を固めるために必要な資金調達・財務経理・人事等管理全般の組織体制構築に目を配っている。創業前後も今も本書も参考にしており、特に自身の経験に伴う勝手な思い込み等で自分の思考が「視野狭窄」に陥っていないか時々本書を手に取ることにしている。「失敗した会社の多くは過剰とは言わないまでも、十分な資金供与を受けている。失敗の原因は経営のまずさであり、“資金不足”と言うのはその一つの症状にすぎない。」(本書抜粋)

プロフィール

水口啓 株式会社Kyulux 

VC業界で通算30年間(シリコンバレーで8年間)に亘って多数のIT・半導体・バイオ投資を経験。2003年に九州ベンチャーパートナーズ(KVP)に創業参加。KVP社長時代には投資先のブライトパス・リファインバース・ジーエヌアイが東証マザーズに上場。2015年にKyulux(次世代有機EL発光材料開発)を共同創業してCFO就任。KyuluxはCEATECジャパン2018でグランプリ受賞(デバイス/テクノロジ部門)。明治大学法学部卒。

https://www.kyulux.com/?lang=ja

株式会社Loco Partners 鈴木智章『マッキンゼー 経営の本質 意思と仕組み』マービン・バウワー著

選んだ理由

本書は「経営とは何か」がわかりやすく、シンプルにまとめられた一冊です。書かれている内容は、読むと当たり前であったり、知っていることもありますが、それらが簡潔かつ体系立てられており、理解の整理や促進につながります。本書では「経営とは何か」という問いを、「経営とは組織の目標を定め,人材を始めとする資源をその目標達成へと導いていくこと」と定義しています。これはシンプルでありながら、本質をついた言葉であり、私にとって腹落ちするものでした。管理会計にしろ、人事にしろ、すべてこれに当てはまっており、長く経営や会計に関わってきた方ほど、納得のいく一冊かと思います。

今の仕事に生きていること

本書は、自分の判断や考え方の軸として機能しており、わかってはいるが忘れがちなこと、おろそかになりがちなことを振り返り、思い出させてくれます。戦略や方針の重要性については、売上の拡大、コスト削減だけを目標として伝えるのではなく、事業を経営しようという意思を幹部がもつことが重要であり、その意思をもって具体的な行動に移す仕組みをつくる必要があると述べられています。これに基づき、社内の仕組みを考えるうえで、戦略や方針に沿った行動を促せる仕組みなのかを常に考えながら判断しています。株主へのコミットメント等で、つい売上の拡大、コスト削減を目標として重視してしまうときでも、この本が戦略や方針等の重要性を思い返させてくれます。

プロフィール

鈴木智章 株式会社Loco Partners 

CFO (管理・経理担当) 1973年生まれ。1995年に新卒で第二電電株式会社(現 KDDI株式会社)に入社。経理部に配属され、決算業務、税務業務に従事。その後経営管理本部にてKDDIグループの年度計画策定、執行管理業務等の管理会計業務に従事。2017年2月より株式会社Loco Partnersに参画し、取締役CFO(財務担当)就任。趣味はスキー、読書。

https://loco-partners.com/

THECOO株式会社 森茂樹『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』楠木建著

選んだ理由

ビジネスに関しては数字をベースに客観的に判断せざるを得ない中で、楠木先生の経営に対するアプローチをアートのように感じる点です。米国大学院に留学中、経営戦略の教授が第1講で開口一番「strategy is a sort of art」と仰ったのを今でも鮮明に覚えています。著者の中で楠木先生は、「経営戦略は静止画的というより動画的な側面があり、複数の打ち手が噛み合って連動するストーリーのように流れていくもの」と表現されています。

人間が奏でる以上、ビジネスも点と点を繋げ、でも一方で、ただ繋げるだけでなく、アートを観て心が踊るような、ビジネスの本流は本来はそんなものではないのかな、と改めて考えさせられる内容です。

今の仕事に生きていること

CFOの仕事は幅広く、また会社の成長フェーズに応じて求められるスキル・経験が異なります。設立数年しか経っていない、でも急成長を遂げるスタートアップのCFOに求められるスキルとはでは何でしょうか?それは、限られたリソースと時間のピリピリする環境下で、まさに企業の”成長ストーリー”を構築し、夢と実績と現実のギャップをどう埋めていくかに日々頭を悩ませ、採用、資金調達などの外部からのリソース調達やIPOに向けて証券会社や監査法人、投資家にどう成長ストーリーを説明していくか、なのではないかな、と実務を通して感じています。私はエスタブリッシュな外資系企業で長く働いてきましたが、まさにスタートアップ企業経営に必要なエッセンスがこの本には凝縮されています。

プロフィール

森茂樹 THECOO株式会社 取締役CFO兼コーポレート本部長

大学卒業後、外資系金融機関を経て、外資系自動車会社にてマーケティングを担当。米国大学院にてMBA取得を挟み、キャリアをファイナンスにスイッチ。ダウ・ケミカル、フィデリティ、match.comなど外資系企業数社にて財務、トレジャリー、ビジネスプランニングなどの要職に携わり、2013年、ラグジュアリーブランドの自社Eコマース受託開発、コンサルティングを手がけるスタートアップ企業に加わる。経営管理本部執行役員として4年在籍。同社は2018年、1部上場企業に売却。その後、THECOO株式会社にCFOとして参画。2018年11月取締役CFO兼コーポレート本部長に就任

1994年慶應義塾大学商学部卒、2000年に南カリフォルニア大MBA

http://thecoo.co.jp/

株式会社お金のデザイン 藤田圭介『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年』塩野七生著

選んだ理由

「株式会社」が冠される国家は、「日本株式会社」と「ヴェネツィア株式会社」くらいだろうか。現在の華麗な姿からは想像すること困難だが、元は、ローマ帝国末期に蛮族から逃げて沼地の上に住まざるを得なかった集落である。沼地。無い無い尽くしから開始した集落が、どうやって一千年も「経営」できたのか。経済・軍事・外交のバランス感覚と、それを実現した政体の実例から学ぶべきものは多い。しかし、日本の大企業経営者は『ローマ人の物語』を高く評価する一方、本書を推奨しているのは稀。きっと、「ヴェネツィア株式会社」による同胞を裏切るようなずる賢さはウケが悪いのだろうと邪推している。

今の仕事に生きていること

ベンチャー企業の経営は、無い無い尽くしである。幸運に恵まれて資金調達に成功したとしても、その資金活用方法には悩みが尽きない。私は本書の初版本(昭和55年/1980年)を所有しているが、p.179にはこう書いてある。"「ヴェネツィア共和国は、現代の私企業の会社と同じように経営された」のである"。一説によれば、世界には創業一千年を超える企業が12社存在するとされるが(うち9社が日本)、国家的規模で一千年間経営された企業は存在しない。Amazonのランキング上位に並ぶようなトレンドも良いが、時間のある時には本書の埃を払い、超長期の視野を取り入れるようにしている。

プロフィール

藤田圭介 株式会社お金のデザイン 執行役員 CFO

早稲田大学卒業後、三井物産株式会社に入社。管理部門にて総合商社の広範なリスク管理業務を経験後、投資先ベンチャー企業のCFOを経て、カリフォルニア大学バークレー校にてMBA取得。営業部門に帰任後、北米・欧州にて再生可能エネルギー事業投資、EnergyTechベンチャー企業投資等を推進。2018年11月に株式会社お金のデザインに入社、2019年2月に執行役員CFOに就任。中小企業診断士、公認内部監査人、証券アナリスト協会検定会員。

https://www.money-design.com/

株式会社スマートエデュケーション 日下部祐介『リー・クアンユー、世界を語る』グラハム・アリソン , ロバート・D・ブラックウィル , アリ・ウィン著

選んだ理由

本書の内容はリー・クアンユーによる世界情勢の現状と未来への展望をまとめた ものとなっています。一般教養としてももちろん価値のある本だと思いますが、私がおすすめする一番 の理由はその考え方が経営においても参考になると考えるからです。シンガポールという国を建国し半世紀程度で立派な先進国家に育て上げたリー・ クアンユーのビジョンや手腕、考え方は王道として参考になるとともに、自分自身の経営における視座を数段上げるという効果もありますので一読する価値があると思います。

今の仕事に生きていること

世界情勢を読み解くための大きな視点で物事を捉える力、自国以外の国(大国はもちろん、競合となるような隣国など)との付き合い方、国内の文化醸成のために人はそもそもどういう行動を取るかといった思考方法、国を統治するシステムとしての民主主義の捉え方など、どの視点も企業経営において悩むポイントでありその解法と近いと感じます。具体的なノウハウ本とは違い、何かの問題を解く際のツールとして本書を捉えると物足りないと感じられると思います。ただ一方で長期視点で企業経営を行うにあたっての判断においては大変参考になると感じました。大局を読み解きそれを実行するという一連の行動の指針としていきたい、そう思える良書です。

プロフィール

日下部祐介 株式会社スマートエデュケーション

慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、2000年7月にアクセンチュア株式会社に入社。システムエンジニアとして半導体メーカーのサプライチェーンマネジメントのプロジェクトに従事。2001年7月に株式会社シーエー・モバイルに入社。広告メディア、ネットワークメディア、ソーシャルアプリ等の企画開発、公式課金事業の立ち上げ、また、経営企画、財務経理、人事総務などのコーポレート部門のマネジメント、子会社の代表取締役などを経験し、2005年10月に同社執行役員、2007年12月同社取締役に就任。2011年6月に株式会社スマートエデュケーションを創業し、取締役CFOに就任。

http://www.smarteducation.jp/

株式会社ポケットコンシェルジュ 小山達郎『メイク・マネー!―私は米国投資銀行のトレーダーだった』末永徹著

選んだ理由

本書は、1987年新卒でその当時「ウォール街の王」と称されたソロモン・ブラザーズに入社した末永氏が、一人のデリバティブ・トレーダーとしての貴重な体験を、1997年に退職するまで、シニカルかつ歯に衣着せぬ表現で克明に記したものです。一見デリバティブという特殊な商品に関する書籍に見えるこの一冊は、デリバティブを通してビジネスの基本的な考え方(あらゆる商取引が安く買って高く売る事=Arbitrageアビトラージ)を自分に教えてくれました。つまり、「一番大事なことは価値が高いので簡単には教われない=安くは買えないから自分の頭で考えろ」という一番大事なことをこの本から教わりました。

今の仕事に生きていること

先述の通り、あらゆるビジネスの基本が、英語で鞘取りを意味する「アビトラージ」という概念で説明出来ることから、例えば、何かしらの取引を実施する際に、①必ず事前に良く調べ自分の頭で考えること、②自分で理解しない段階では、相手や専門家の意見を鵜呑みにしないこと、③誰かの意見を信じる際には信頼出来る人に限ること、④信頼出来るか自信を持てない時は、複数の手段を比較衡量し、市場原理を働かせること、等を心掛けています。こういった原則は財務だけでなく、提携交渉や人事・採用を含むあらゆる経営判断に活きています。

プロフィール

小山達郎 株式会社ポケットコンシェルジュ

小山達郎と申します。モルガン・スタンレー、UBSと言った外資投資銀行出身で、M&Aとキャピタルマーケッツ、プライマリー市場からセカンダリー市場までを経験した後、ITベンチャーで一連の資金調達をリード、自らも自己資金で投資した上で、グローバル企業へのエグジットを実現しました。稀有な経験を日本のベンチャーシーンにお返ししたく、お気軽にご相談・ご連絡下さい。

Twitter:@tatsudono
https://pocket-concierge.jp

Chapter5:組織・マネジメントを学ぶ

AnyMind Group 大川敬三『HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』ベン ホロウィッツ著

選んだ理由

著者のベン・ホロウィッツが会社経営を通じて体験した経営上の課題や対処法を綴った本です。他にも会計や財務に関わる実務書は参考にしますが、繰り返し読んでいるのはこの本の様に思います。前提として、(特にベンチャーにおいて)CFOの役割は曖昧なものだと考えています。攻めも守りも必要で、他経営層の特性とのバランスで必要な役割が定義される。そこを柔軟にカバーするために、起業家が持つ視点や悩みを共有出来るか、共有した上で自らに必要な役割に基づいた判断を行っていけるかが重要だと思います。経営の中で頻出する失敗、そこに至る葛藤が語られる本書は起業家の思考を理解するためにもCFOを含む多くの方にお勧めできる一冊だと思います。

今の仕事に生きていること

タイミングによって異なる学びがありました。現職に移る前には、ベンチャーの経営や起業に関わる課題や苦労を理解するためのきっかけとなりました。現職で何らかの問題に直面した際には、類似する課題への対処法のヒントを与えてくれています。この本の中で著者が記した事例の様に、ベンチャーの経営は失敗の連続で、それをどうマネジメントしていくかが重要だと思います。例えば、他経営メンバーが新しいビジネスの可能性を信じて全力で旗を振るならば、CFOが失敗の可能性を見据えたバックアップをすることでチャレンジをサポート出来る。それぞれの組織に必要なCFO像は異なると思いますが、この本を通じて自分の目指す姿を考える切っ掛けになったと思います。

プロフィール

大川敬三 AnyMind Group(エニーマインドグループ)CFO

デロイトトーマツコンサルティングにて経営戦略、M&A戦略のアドバイザリーに従事。その後、モルガン・スタンレーではテクノロジー分野の企業を対象に、M&A、資金調達、IPOアドバイザリー等の投資銀行業務に従事。AnyMind Groupでは、資金調達やM&A含む財務戦略を中心にコーポレート部門を統括。

https://anymindgroup.com/ja/

株式会社Finatextホールディングス 伊藤祐一郎『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか――すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる』ロバート キーガン , リサ ラスコウ レイヒー著

選んだ理由

経営全体を見るスタートアップのCFOとして、「メンバーが成長でき、最大限に能力を発揮できる環境を作る」ことは非常に重要な役割の一つであると考えています。それは、我々のようなテクノロジー企業において、「人」こそが、企業にとって最も重要かつ、費用インパクトの大きい資産と考えているからです。急速に早まっている環境変化にいかに対応するか、金銭だけでは充足しきらない人々のモチベーション/幸福をいかに高められる組織であるかが大切であり、今の時代におけるその強い組織づくりのエッセンスを学ぶにはこの本は最高だと思います。

今の仕事に生きていること

Finatextグループは、世界5カ国に約100名のメンバーが存在しています。入社を決めた時はまだ10名程度の小さな組織で、それから2年半の間に多くの多様なメンバーがジョインしてくれました。組織の規模が急激に大きくなる中で「一人一人が安心感をもって真に成長できる環境を作るためにはどうしたらいいか」を考えていた時、たくさんの実践的なヒントを得ることができました。特に組織設計は、アイデアを出すよりもそれをやりきるのが100倍難しい分野だと思いますが、この本はフラットで自律的な組織を実現していくうえで、非常に助けになりました。

プロフィール

伊藤祐一郎 株式会社Finatextホールディングス 取締役CFO

東京大学経済学部卒業。2010年よりUBS投資銀行本部において、IPOやグローバルM&Aを担当し、2016年8月より現職。

Twitter:@110110110110
https://finatext.com/ja/

Fringe81株式会社 川崎隆史『善と悪の経済学』トーマス・セドラチェク著

選んだ理由

聖書や古代の神話から映画「マトリックス」に至るまで、様々な物語に埋め込まれた経済学のお話が次々に紹介され新鮮です。後半からはテーマごとに(例えば強欲や安息日など)様々な物語でどう評価されているかが示されており、前半後半合わせて、経済学には必ず何らかの倫理や価値観が結びついていることが示されます。これが新鮮なのです。ファイナンスの枠組みに人の倫理観は介在しておらずシンプルなのですが、リアルな社会は違います。金融の世界にいると気づきにくいこの違いを感じ取るためにもこの本は役に立つのではないでしょうか。

今の仕事に生きていること

ベンチャーでは「思い」がとても大切です。倫理観や価値観にドライブされているわけです。ファイナンスとは一見異なる世界ですが、本書で繰り返し強調されているように、数字と善悪は切り離せないというのがリアルな世の中なわけで、ベンチャーで働くにはこの両輪を持たなければいけないと改めて思わせてくれました。私がいる会社に、Uniposというサービスがあります。職場の同僚に感謝のメッセージと少額の成果給を送る仕組みですが、金額によらずもらうととても嬉しいのです。いわゆるファイナンスの枠組みでは理解しがたいものですが、本書を読むとそれが自然で人間性に沿ったものであることがわかります。物事の捉え方が広がる良書だと思います。

プロフィール

川崎 隆史 Fringe81株式会社

コーポレイトディレクション、野村證券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て現職。 2014年にFringe81に参画するまでは金融機関勤めで、野村證券企業情報部ではM&Aアドバイザリー業務に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資銀行本部ではM&Aや資金調達等のアドバイザリー業務に従事。2社の間に米国ペンシルベニア大学ウォートン・スクールに留学、経営学修士号取得(MBA with Honors)。数字の世界からベンチャーに転じ、世の中の広さと深さを味わっています。

http://www.fringe81.com/

株式会社Tryfunds 白髪亮太『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』ジム・コリンズ著

選んだ理由

原題は”Good to Great”で、「良い」企業から「偉大な」企業に至るためのHowが記されている本です。企業を成長させる上での基本原則が書かれており、特にベンチャーのように成長することが前提となる企業に在籍されている方には刺さることも多いのではないでしょうか。この本の中に書かれている「規律」(原文だとDiscipline)という言葉の使われ方が気に入っています。決してネガティブな意味合いではなく、「らしさ」的な意味合いで使われています。規律ある人材が、規律ある考え方で、規律ある行動をすることが偉大な企業に飛躍するために重要であり、この”Disciplined”な状態をいかに構築できるかが、成長企業の経営層の責務なのだと考えるようになりました。

今の仕事に生きていること

CFOは事業特性やフェーズによって求められることが異なる役職ですが、組織に「規律」を定着させることが、現在私が担っている重要な役割と認識しています。人を採用するにしても、何かの制度を作るにしても、何か施策を打つにしてもそこに「規律」があるか、平たく言うと「TRYFUNDSっぽいか」を最重要視しています。一例ですが、弊社では年間MVP表彰制度の副賞として、「会社の費用負担で世界中からビジネスチャンスを見つけにいける権利」が受賞者にプレゼントされます。見方によっては業務とも言えるような褒賞は、あまり一般的ではないかもしれませんが、「挑戦をカルチャーに。」をVISIONとして掲げる「TRYFUNDSっぽい」規律を感じる取り組みと考えています。

プロフィール

白髪亮太 株式会社Tryfunds 

早稲田大学法学部卒業後、株式会社三菱UFJ銀行、デロイトトーマツコンサルティング合同会社を経て、大学時代の友人である丹野がCEOを務める株式会社Tryfundsに参画。CFOとして財務経理、総務、人事、採用、広報、企画、M&A、ファンド組成などに関するコーポレート部門の責任者を務めつつ、クライアントワークも一部担当。2016年9月より取締役に就任し現在に至る。

Twitter:@shiro_ryo
https://tryfunds.co.jp/

株式会社アイデンティティー 歌代啓太『人を動かす』D・カーネギー著

選んだ理由

本書は、決して変わり得ない人間の本質をもとに、人と接する際の基本的な原則が書かれており、ビジネス場面においてもそうですが、あらゆる場面において活用することのできる名著だと思います。技術やノウハウは時代の変化によって変わり得るものだと思いますが、時代の流れによって変わることのない、本質を書かれたこの書籍は、初めて出会ってからも何度も読み返すことがあり、まさに自身のバイブルとなっています。1937年に初版が発行されてからも今もなお読まれている方が多くいらっしゃることからも、今の時代の人にも刺さる、必要とされている書籍なのだと思います。特に自身の専門的知識を高めることに目を向けがちな方にはお薦めしたい書籍です。

今の仕事に生きていること

あらゆる仕事がそうだとは思いますが、課題が大きくなればなるほど、自身一人だけの力で完結できる仕事は少ないと思っています。今の立場で仕事をしていると、大小様々な課題に直面し、その都度、社内、社外、立場問わずあらゆる関係者を巻き込み、協力し合いながらクリアにしていく必要性が生じます。その場面において、本書に書かれていること全てを実践できているわけではありませんが、リーダーシップを取り円滑に課題をクリアにしていく上で、自身がどのような行動を取るべきか、心掛けるべきか、その指針の一つになっています。

プロフィール

歌代啓太 株式会社アイデンティティー取締役CFO 公認会計士

大学卒業後、新日本有限責任監査法人(現  EY新日本有限責任監査法人)に入所。約4年間の監査経験を経て、株式会社AGSコンサルティングに入社、株式公開準備会社に対する上場支援業務に従事。2018年1月より株式会社アイデンティティーに参画。

https://id-entity.jp/

Chapter6:個の生き方を考える

株式会社FABRIC TOKYO 三嶋憲一郎『生き方―人間として一番大切なこと』稲盛和夫著

選んだ理由

仕事についての考え方、それに伴う人としての生き方について述べている本である。事業での色々な失敗を経験し、悩んでいた頃にこの本に出会った。この本には「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」と書かれている。つまり、考え方はマイナスにも左右するもので、最も大事なものということだ。“仕事”とは、“生きる”とは、突き詰めると「人としての考え方を追求する、磨く」ことに尽きる。そんな示唆をこの本からもらい、人としての成長が事業の成長にもの繋がると考え、日々経営をしている。

今の仕事に生きていること

スタートアップで事業を行う上で大事なのは、人として、人間力や考え方を磨くことに尽きる。能力が高い人、熱意がある人は世の中に多くいる。だが、突き詰めていくと、人としての考え方を磨き、人として正しく生きることを追求していくことが、世の中へ価値提供をする上で大事だと感じた。なぜなら、経営の道のりは成功ばかりでなく、さまざまな困難に遭遇することがあるからだ。大きな困難に直面し、自分の能力に自信をなくし、熱意を失いそうになった時こそ、ぐっとこらえて自らを磨き続ける。それが、偉大な会社を作っていく上で重要なのではないだろうか。

プロフィール

三嶋憲一郎 株式会社FABRIC TOKYO 

1985年生まれ神奈川県出身。

上智大学経済学部経営学科卒業。国内最大手会計事務所にて、金融機関の米国会計基準による監査に従事し、与信系・市場系・資金調達の監査を担当。2012年よりエネルギー関連企業にジョインし、経営企画、戦略立案、海外事業立ち上げ、M&A、ファイナンスに従事し株式市場上場を経験。2015年9月よりFABRIC TOKYOに参画。2016年からは執行役員CFO就任。2017年7月同社経営・財務担当 取締役就任。

https://corp.fabric-tokyo.com/

株式会社WACUL 竹本祐也『自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間"を捨てられるか』岡本太郎著

選んだ理由

太陽の塔などで知られる芸術家岡本太郎氏のこの本は、最初から最後まで、人間”岡本太郎”のエネルギーがこれでもかと込められており、文章を読むだけでもそのエネルギーを感じることができる。特に、自分の外部・内部問わず、何らかの影響を受け、戦う気持ちが失われそうなとき、そんな弱い自分の背中を蹴とばし、ドンと強く押してくれる。常識だったり空気だったりといった、目に見えない何かに挑戦を阻まれている人の、ひとりでも多くがこの本を読んで、背中を押され、壁に挑み、自分を”爆発”させてくれればいいと思う。

今の仕事に生きていること

僕は帰国子女でもないし、親が大金持ちだったわけでもないので、自分が特別だと思ったことはない。しかし、なにか人と違ったことをしてやろう、はみ出してやろうとだけ、思ってきた。この本はそんな自分の姿勢を肯定してくれる本であり、また普通へと逃げたくなる時に対峙してくれる本でもある。競争の激しい外資系プロフェッショナルファームに飛び込むこと、これまでの給与やステータスなどを捨ててスタートアップの経営者になること、どれも特別ではない僕にとって大きな勇気のいることだった。そういった時、この本に書かれている通り、失敗に賭け、計算づくでない人生を歩むことで、無条件に情熱が湧いてくるのを感じている。

プロフィール

竹本祐也 株式会社WACUL

デジタルマーケティングのコンサルをAIを活用してサブスクリプション化したSaaSスタートアップWACULの取締役CFO。2008年に京都大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券の株式アナリスト、A.T. カーニーの通信・メディア・テクノロジー担当マネージャーを経て、2018年7月より現職。WACULでは、コーポレート部門全般を統括し、財務・経営企画・アライアンスなどを担当。2018年11月には総額5.6億円の資金調達とリコーとの資本業務提携を行った。

Twitter:@tkmtyy
https://wacul.co.jp/

コネクテックジャパン株式会社 堀田和彦『商いの道―経営の原点を考える』伊藤雅俊著

選んだ理由

一大流通グループを築き上げた著者の原点に触れられる書。「お客様は来ていただけないもの」「問屋さんは卸していただけないもの」 「銀行は貸していただけないもの」 だからこそ、買って頂く、売って頂く、貸して頂くという ことが如何に有難いことか、心に染み入るように伝わってきます。時代を超えて通じるまさに「経営の原点」であります。

今の仕事に生きていること

どう活きているか、という直接的なことは特にありません。 「商いの道」は手元に常に置き読み返すことで商い、経営に留まらず生き方の自戒、自省のきっかけとしてます。企業も人も、もちろん自分自身も調子が良いときは調子に乗ります。油断、慢心、自惚れが生まれがちです。だからこそ本書を読み返すことで今自分がここにあることへの感謝と、謙虚な気持ちを忘れす日々の仕事に取り組むことが出来ています。

プロフィール

堀田和彦 コネクテックジャパン株式会社

新潟県出身。1991年八十二銀行入行、営業店にて中小法人向け営業、FA業務を担当。 日本アジア投資に転じ事業再生ファイナンス、M&A業務に従事。その後食品会社にて上場担当役員として管理部門を管掌。企画部門管掌として子会社経営再建、M&A業務従事。新潟地場企業勤務を経て2015年コネクテックジャパン入社 2017年6月より現職。

http://www.connectec-japan.com/

株式会社プレースホルダ 植西祐介『イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン著

選んだ理由

業界のリーダー企業は業界構造を覆す破壊的イノベーションを求められるが、その開発の投資成功率/利益構造/市場透明性等のリスクが改革行動を引き留め、結果的に新興企業に代替されるというジレンマが構造的に存在する、という内容です。ジレンマの存在自体が問題ではなく、発生メカニズムを理解しマネジする重要性を教えてくれます。技術経営の世界では著名な学術書で、自己啓発本や自伝書は様々な視点/人によって語られる一方、学術書は全ての普遍法則で語られる点が好きです。変革に対するジレンマをどう解決するかというテーマは経営だけでなく一個人としても大切で、本書は自身の公私生活において原点回帰の着想を与えてくれる一冊です。

今の仕事に生きていること

自身や社会に対するイノベーションの重要性を常に意識しています。これまでのキャリアの中で、自身の未経験領域にチャレンジし自己改革を起こすための環境変化を3~5年のサイクルで意図的に発生させています。転職という行動においても、向かう方向性を意識して、同職種/同業界内の移動ではなく、必ず未知の世界に踏み込む選択をしています。新卒社員の頃はローリスクローリターンだった性格が、今では知らないことに出会うこと自体への耐性が高まりワクワクを感じる性格に変わりました。公認会計士、戦略コンサルタント、社会保険労務士、CFO、という未知の領域へ踏み込んでいった経験/ノウハウは今も財産としてあらゆる局面で活かされています。

プロフィール

植西祐介 株式会社プレースホルダ

一橋大学卒業後、住友化学にて事業企画/投資計画立案/業績管理/工場管理業務を担当。その後、公認会計士試験合格後に新日本有限責任監査法人にて製造業/商社/飲食業界を中心とする監査を経験。ボストン・コンサルティング・グループでは複数グローバル企業のM&A/中長期経営計画立案/オペレーション改善等のプロジェクトを多数経験。現在はプレースホルダの取締役CFO。公認会計士&社会保険労務士(試験合格)のダブルライセンス。

http://placeholder.co.jp/

CFO応援書籍プレゼントキャンペーン

CFOの実務からCFOとしての生き方に至るまで、実に多種多様な書を紹介していただきました。快く本企画にご協力いただきましたCFOの方々、誠にありがとうございました。

本記事は、現在CFOとして実務をされている方やこれからCFOを目指す方に向けて、普段はなかなか伺い知ることのできないCFOの方々の頭の中をお伝えするために企画いたしました。読者の皆さまの今後の業務や生き方のご参考となる、未来の“座右の書”がこの中から見つかることを願っております。

今回ご紹介いただいた本を、CFOの方やCFOを目指す方に抽選でプレゼントいたします。(たくさんのご応募ありがとうございました。本キャンペーンへの受付は2019年3月31日にて終了いたしました)

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