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2019年06月01日(土)

アメリカから「IFA」という新しい金融ビジネスを国内に持ち込み、市場を開拓してきた立役者

経営ハッカー編集部
アメリカから「IFA」という新しい金融ビジネスを国内に持ち込み、市場を開拓してきた立役者

「IFA」とは、インディペンデント(Independent)・フィナンシャル(Financial)・アドバイザー(Advisor)の略称であり、日本語では、「独立系フィナンシャル・アドバイザー」と呼ばれている。この「独立系」とは、特定の銀行や証券会社などの金融機関から独立しているという意味であり、特定の金融機関の販売戦略や営業方針に惑わされず、顧客に寄り添い、ニーズに合った資産運用の提案を行うことができるというサービスモデルだ。
この「IFA」という制度を活用したビジネスモデルをアメリカから日本に持ち込み、日本の市場を開拓し続けてきた立役者が、GAIA株式会社代表取締役社長 兼 CEOの中桐啓貴氏である。今回は、IFAのビジネスモデルやその魅力、今後さらに日本に普及する可能性について伺った。

IFAをアメリカから持ち込もうと考えた理由

―IFAの何に対してビジネスチャンスを感じたのかを教えてください。

私は山一證券を経て、メリルリンチ日本証券に入り、個人投資家向けに金融商品を販売してきました。その後、アメリカのボストンに留学したのですが、たまたま留学先の大学の側にIFAの事務所があり、そこを訪ねてみると大手の証券会社などとは異なる、顧客の「人生丸ごと」を見据えて相談に乗るフィナンシャル・プランナーの仕事を目の当たりにしました。
当時は、アメリカと日本のいずれの証券会社も、とにかく会社の利益を優先した金融商品を個人投資家に販売していた時期でした。日本の金融機関の中には、決まった金融商品を毎月販売しなければならないといったことも見受けられました。そのような結果として、日本の金融機関に不満を持つ顧客は相当数いたわけですが、一方で、アメリカのIFAは顧客のお子さんの教育、退職後の人生設計、相続に至るまで、親身になってプランニングすることで、双方の信頼関係は強固に、長期的なものとなり、ビジネス関係が何十年も続いている。この仕事ぶりを見たときに、「これはビジネスチャンスだ」と思いました。
顧客に寄り添い、支え続けるフィナンシャル・プランナーは日本でも求められるようになるはずだ、という確信を持ったのです。
その後、帰国しますが2004年の法改正によって、日本国内でもIFAモデルができるようになったため、「まさに今だ」という感じでした。
IFAは、内閣総理大臣の登録が必要な「金融商品仲介業者」です。実際には証券会社などの金融機関と契約して商品の売買等を媒介しますが、ノルマなどがあるわけではなく、複数の金融機関と契約していることも多いので、あくまでも顧客の利益を最優先したサポートが可能なのです。

顧客のニーズをどのようにつかんだのか

―IFAの社会的な意義やビジネスモデルは分かりやすいですが、一方で、「資産運用の相談」という個人にとって非常に重要なものをベンチャー企業が引き受けるというのは難易度が高かったかと思いますが、どうでしょうか?

まさにその通りで、1年目の売上はたったの100万円でした。できたばかりのベンチャー企業に、ご自身の大切な資産を預けようという人は、まずいませんので当然です。
しかし、言われるがままに金融機関が勧める投資信託などの金融商品を購入したけれど、本当にこのままでいいのか、という悩みを持っている方は多いという確信がありました。
そのため、起業当初から小規模なセミナーを開催し続け、IFAそのものについて直接、伝える場を設けてきました。しかし、セミナーの集客は、広告などを使っても思うようにできず、本当に苦戦し何度も挫折しそうになりました。しかし、起業から1年ほどを経てとても幸運なことがありました。
私が日々の雑感などを書いていたブログを、出版社の方が見てくれ、気に入っていただき、出版までこぎつけられたのです。その出版によって本を読んでくれた方がたくさんセミナーに参加してくれるようになったのです。その後もセミナーを続け、起業3、4年目のころに行った「投資信託の見直しセミナー」が大ヒットしました。その時は、新聞折り込み紙に小さな広告を出していただけなのですが、それに火がつき、まさに申し込みの電話が鳴り止まないほどでした。それはつまり、一度購入した投資信託を見直したいという人がそれほど多かったのだということです。

「顧客目線」を貫けるビジネスモデルを構築するには

―証券会社は、顧客が商品を売買する際に発生する手数料等で利益を得ているため、担当者によっては顧客に対して短期での売買をすすめたり、手数料が高い商品を買わせようとしたりというセールスに偏ることもあると聞きます。しかし、IFAであっても、金融商品を売って手数料をもらうことで利益を上げることに変わりはないのではないでしょうか?

確かにおっしゃる通りですが、それだとIFAとしての付加価値や違いを感じにくいため、我々は2016年10月から、お客様の残高によって報酬をいただく「フィーベース」の収益モデルをスタートしました。このフィーベースとは、我々を通じ「お客様から預けていただいた資産残高に応じて報酬(フィー)が支払われる制度」のことです。つまり、お客様の残高が増えれば、我々の報酬も増加し、お客様の残高が減ってしまえば、我々の報酬も減少する仕組みです。さらに当社では、お客様から年間のFP報酬を頂戴していますが、それは毎年更新されるものです。お客様に満足いただけなければ、サービスの継続契約はしていただけないわけです
結果として、「お客様の利益=当社の利益」になりますので、構造的にお客様のために働くことになります。このような仕組みによって、IFAを実現していますので、経営が辛いときは少なくありません。しかし、私はアメリカでIFAが広まっていることをこの目で見て、このビジネスを始めました。金融機関のためではなく、お客様のためになるビジネスをしているわけですから、日本でも、必ず普及するという確信があります。
やっていることは間違いない。苦労すればするほどIFAは広まり、将来は明るいものとなる。投資と同様、リスクを取らなければリターンもないわけですから、そのような気持ちで、これからも進んでいきます。

これまで日本で「投資」といえば、お金が余っている人がギャンブル的にお金を増やす手段のようにいわれる側面もあった。証券会社も、相手にしているのは中小企業の社長などお金に余裕のある人たちで、とにかく回転売買をさせて手数料を稼ごうとする時代もあった。しかし、インターネットの普及による“営業マンを必要としない”ネット証券の登場や、政府主導のマネーリテラシー向上施策などにより投資家の総数は増加を続け、2017年時点の日本の個人投資家の数は5,130万人(日本取引所グループ調査)にもなっている。こういった状況の中で、資産運用業界に求められるニーズや、それに対応するサービスモデルが変化してきたのは当然のことだろう。GAIAは、その大きな流れを掴み、波に乗ったわけである。

 

<プロフィール>

中桐 啓貴(なかぎり ひろき)

1997年「最後の新入社員」として入社した山一證券の倒産を経て、メリルリンチ日本証券で富裕層向け資産運用コンサルティングに従事。その後米国大学院でのMBA取得中、人々を幸せにしている現地のファイナンシャルアドバイザーの姿に衝撃を受け、日本でも同様のサービスを根付かせようと決意。2006年に「銀行でも証券会社でもない資産運用のパートナー」として設立したGAIAでは、これまで10,000件を超える資産運用アドバイスを行う。

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