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2019年06月14日(金)

不安定な収益からの脱却!急拡大する“サブスク”で成功するためのヒケツとは?

経営ハッカー編集部
不安定な収益からの脱却!急拡大する“サブスク”で成功するためのヒケツとは?

街の飲食店から日本を代表する自動車メーカーまで、旧来のフロー型ビジネスモデルを凌駕する勢いで、あらゆるカテゴリーで急拡大を続けるサブスクリプション型サービス。安定的な収入を実現するビジネスモデルとして、新たにサブスクリプションへと舵を切る企業は増え続けています。そのような状況において、サブスクリプションという言葉が認知される以前からストック型ビジネスを導入・提供し、業界を牽引する企業に成長したのがテモナ株式会社。

サブスクリプションに特化したテクノロジーとサービスを提供するテモナ株式会社は、2017年4月に東京証券取引所マザーズ市場に、2019年4月には東京証券取引所市場第一部に昇格。サブスク販売に特化したシステム「サブスクストア」、企業向けサブスクビジネス専用システム「サブスクストアB2B」をリリースするなど、日本におけるサブスクリプション業界で、最も注目を集めているリーディングカンパニーのひとつです。

これまでの売り切り型のビジネスモデルから、新たに課金型のサブスクリプションビジネスへと転換するには、どうしたらいいのか?成功するために押さえるべきポイントは?代表取締役社長の佐川隼人氏に伺いました。

「モノからコト」の時代だからこそ、サブスクが主流になる

—まず最初に、サブスクリプションの定義を教えてください。

サービスの種類はたくさんありますが、簡単に言えば「定期的に課金するビジネス」。つまり価値に対して料金を支払う継続型ビジネスモデルがサブスクリプション(以下サブスク)の定義だと思います。当然事業者側は、定期的に課金していただけるようにサービスを改善しながら提供し続けなければなりませんので、そういったサービスを展開することがサブスクの基本的な部分です。

—ここまで注目されるようになった背景には何があるとお考えですか?

「モノからコト」へトレンドがシフトしている昨今、従来のような買い切り型のサービスよりも、比較的長い期間に渡ってサービスを受け続けられる「体験」に対しお金を払う消費スタイルに移行しつつある、ということは言えるでしょう。事業者から見ると、不安定で変化が早い時代において、「いかに堅実なビジネスを展開できるか」という心理になっていますので、継続的で安定的な収益が得られるサブスクは魅力的です。これらの要因がまさしく一致しているのが、今の状況ではないでしょうか。

—もともとアメリカで活性化したサブスクが日本に上陸し、そういった背景もあってマーケットが広がっていると?

確かにサブスクのマーケットでいうと確実にアメリカのほうが大きいのですが、日本も負けず劣らず、昔からマーケットは存在しています。電車やバスの定期券、家賃や光熱費、新聞や雑誌の定期購読など、馴染み深いものはたくさんありますよね。もともとストックビジネスや定期購入、頒布会、定額制、会員制といったビジネスモデルは古くからありました。そこに後から「サブスク」という言葉のラベルを貼り付けたイメージですね。

つまり「これは新しいビジネスだからサブスクで、こっちは古いモデルだからサブスクじゃない」といった議論自体が、そもそもナンセンスなんです。日本にはもともと大きなマーケットがあり、それがさらに注目されたことでより大きく拡大していくポテンシャルがある、ということは認識しておくべきでしょう。

ピンチをチャンスに変えたビジネスモデルの転換

—御社がサブスクに早くから目を付けて取り組んできた理由は何ですか?

当社は2008年10月に創業し、当時はシステムの受託開発事業を行っていました。ちょうどリーマン・ショックのタイミングと重なって受注していたプロジェクトが消え、いきなり翌月から売上が半分になるという事態が発生しました。僕も技術者なのでモノづくりは好きですが、受託開発は完全に労働集約型ビジネスなんです。売上が半分になってもコストは半分にはなりませんから、もう半年この状態が続けば、相当危機的な状況に陥るというところまできてしまいました。その後どうにか乗り越えましたが、次にまたこういう事態が起きたらさすがに厳しい。

結局、労働集約型だと人を増やし続けない限り、ビジネスがスケールしないんですね。人を増やし続けるということは、コミュニケーションコストが増えたり、属人化しないように仕組み化する間接コストが増えたり、生産性が下がりやすい。その経験から、労働集約型はスケールすればするほど収益率が下がり、リスクが大きくなるビジネスだと、僕なりの結論に至ったんです。

となると、やはり早急にレバレッジが効くビジネスモデルに転換しなければなりません。当時はまだサブスクという言葉はなくストックビジネスと言われていましたが、当社のようなシステム屋がどうすればストック化できるのかを考えたときに、当社が取った手法がいわゆるSaaSモデルです。

—そこから現在のビジネスモデルに至るきっかけは何だったのでしょう?

当時たまたま、システムの受託開発の顧客の中に、サプリメントをサブスク形式で毎月定期的に届けるというモデルを行っているEC事業者様がいらっしゃいました。しかし、定期購入の仕組みがなく現場の方々が非常にご苦労されていたため、僕がそのシステムを作ったことがあったんです。そのときに、「今はこういうビジネスが求められているんだ」と直感しました。ビジネスをサブスク型に転換させたい事業者様に対して、情報やノウハウ、また運営していくためのツールを含めた「サブスクリプションビジネス支援サービス」を定額制で提供すればいいのではないかと思ったんです。それが早くからサブスク事業に参入したきっかけですね。

—現在、顧客にはどういった業種があり、その内訳はどのような傾向がありますか?

当初はヘルスケア系のEC事業者様が多かったのですが、今は食品系のほか、雑貨系、アパレル系の事業者様も増えてきていますし、店舗系の事業者様も増えてきているので、ECにかぎらずどんどん裾野が広がってきていると感じます。特定の分野が増えているというより、ますます多様化している傾向にありますね。また、メーカーや卸売会社などの企業様も増えています。マーケットとしてはBtoCよりもBtoBの方がはるかに大きいため、BtoBの領域でもこれからさらに広がりを見せていくと考えています。

「ONB(オンブ)」の法則こそ、サブスクを成功へと導くカギ!

ー業界はまだこれから伸びてくるということでしょうか?

そうですね。これからはマーケットが大きくなりますので、システムに限らず、情報やノウハウがより重要になってきます。当然、ただ流行りに乗っただけではうまくいきません。実際、サブスクで新規事業を立ち上げた事業の6割〜7割が軌道に乗ることができず、撤退を迫られているケースもあります。実は、成功させるためには、押さえるべき“勘所”というのがいくつかあるんですよ。

ーその“勘所”をぜひ教えてください。

まず大前提としてあるのは、サブスクを利用するお客様、いわゆるサブスクライバーは、VIP顧客であるということなんです。当然ながら、サービスを定期的に購入しようとしてくれているお客様は、VIPに決まっていますよね。しかしそれに気付かず、サブスクライバーをVIP扱いしない事業者さんが多すぎる。これはもう失敗しておかしくありません。

それを押さえた上で、どういうサブスクのサービスが成功しやすいのかと言うと、ある法則が成り立つんです。僕はその法則を、それぞれの頭文字をとって「ONB(オンブ)」と呼んでいるのですが、まず「O」は「お得」であること。経済的合理性ですよね。そして「N」は悩みが解決される、「B」は便利であること。この3つの要素を満たさないサブスクは、絶対にうまくいかないといっても過言ではありません。

ーなるほど。「お得」「悩み解決」「便利」の3条件を同時に満たしていなければならないと。

「定額制でお得」ということだけを謳っているサービスがありますが、それは条件を満たしていない。ただお得なだけなんです。よく飲食店が共同で定期券を発行して、トッピング無料や割引といったサービスを提供する企画がありますよね。これ、悩みは解決されていますか?便利ですか?確かにお得ですけれども、悩みは解決されないし、便利でもない。

例えば、行列のできるラーメン店がサブスクを導入する場合、何杯以上食べたら元がとれるというお得さだけでは「ONB」の条件を満たしません。顧客の悩みは何かと言うと、行列に並ばなければいけないことです。ならば会員専用の入り口と席を用意して、いつでも並ばず食べられるようにすればいい。複雑なオーダーの仕方をせずとも、顧客の好みを店員が覚えてくれていて、席に座れば自分好みのオーダーのラーメンが出てくる。これは便利ですよね。

この例はあくまでも仮定の話ですが、こういった「ONB」をすべて満たしたサブスクのサービスを設計することができれば、基本的にはうまくいくんです。それを商材ごとにしっかりと設計していくことが、ビジネスをサブスクに転換する上で非常に重要になってきます。

—実際に「ONB」を満たして成功している事例はありますか?

好例として、美容室のシャンプー・ブロー、ヘアケアが通い放題の美容定額サービスアプリがあります。ターゲットは30代40代の女性なのですが、この世代の女性ってめちゃくちゃ忙しいんですよ。うちの奥さんもそうですけど、とにかく時間がない。何に時間を取られるかというと、ヘアセットなんですよね。朝の忙しいときに、一番時間がかかるんです。でも身だしなみには気を遣うし、出かける際にはきちんと整えておかなければいけない。そういった女性に対して、家や会社、会食するお店の近くなど、いつでもどこでも美容院に通えるというサービスが、すごくウケているんです。

通い放題だから数回通えば元が取れてお得なのはもちろん、自分でヘアセットやケアをすると時間や手間がかかるという悩みを解決してくれ、いろいろな場所で利用できて便利という面もクリアしている。サブスクのモデルとしては非常にスマートで、うまくいく典型的な事例です。

—他にはどういった例が?

あるレストラングループの会員制サービスでは、会員専用の電話番号が用意され、コンシェルジュが付きます。会員専用席があるので来店直前でもほぼ予約ができる上に、割引クーポンもある。ほかにもバースデーディナー招待や、送迎にリムジンを利用できるなど、至れり尽くせりです。お得なのは当然のことながら、眺めが良い席や隠れ家のような個室をいつでも予約でき、特別感を味わえるサービスも充実しているという、VIP顧客の要望を全部満たしているスマートな例ですね。

サブスク化できないビジネスはない。今後の潮流は?

—既存ビジネスがサブスクに転換するとしたら、どのような業種だと転換しやすいのでしょう?

難易度の差はあれど、基本的にサブスク化できないビジネスはありません。その中でも特に転換が容易だと思われるのは、衣食住に関するビジネスです。飲食店、美容室、旅館ホテル、トランスポーテーション系、乗り物系といったジャンルは、比較的容易にサブスク化できると思います。

なぜなら、頻繁に利用するなら定額制にしようと思うのが消費者心理ですし、それに即したVIP顧客のための「ONB」を満たしたサービス設計もしやすいからです。そういう意味では、カーシェアリングなどのシェアリングエコノミーも活発化していくと思われます。

—まだまだ売り切り型のビジネスが多い中で、サブスクの意義はますます重要になりそうですね。

取引が一度きりの売り切り型、いわゆるフローモデルは、売ることがゴール。売り手は売って終わりですが、買い手は買ったときからが始まりです。これはそもそも本質的に商売の形として成立しないと思っていて。売上が流動的なビジネスモデルから、取引が定期的で安定したビジネスモデルへと転換していく。サブスクで買い続ける、使い続ける流れの中で、サービス自体も磨かれていく。この流れは、事業者にも消費者にも、お互いにメリットのあることだと思います。

—佐川さんの今後の展望についてお聞かせください。

僕自身が受託の労働集約でしんどい思いをしてきたこともあり、サブスクに転換してから、かなりストレスが軽減されたんです。外部要因に左右されにくい継続的な収益があることで投資計画が立てやすくなりますし、金融機関に対してアピールしやすく、金融機関側も投資をしやすい。僕はサブスクからそういった恩恵を受けてきました。

その経験から、当社はサブスクを世の中に広めるということをミッションに掲げて各事業を展開しています。また、2018年12月には一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会を設立し、サブスクのノウハウや事例などの情報交換を活発にする場を作りました。「サブスクを知っている=きちんと運営できる」とは限りません。しっかりと情報を発信して、今後も多くの企業のビジネスモデルをサブスク化できるように尽力していきたいと考えています。

—ありがとうございました。

【プロフィール】
佐川 隼人(さがわ はやと)

テモナ株式会社 代表取締役 社長
1980年、大阪府生まれ。高校卒業後、18歳で起業するも事業解散。ソフトウェア開発会社に就職し、約3年間プログラミングを行う。その後オーストラリアに約2年留学し、帰国後フリーランスのシステムエンジニアとして起業。大規模システム構築に関わり、金融系や生産管理など多岐にわたる業務システムの設計と開発を行う。2008年10月にテモナ株式会社を設立。これまで延べ1,000社以上の起業に自社製品の提案、ネット通販のコンサルティングを行う。2019年4月にはサブスク販売に特化したシステム「サブスクストア」、企業向けサブスクビジネス専用システム「サブスクストアB2B」をリリース。

【会社概要】
テモナ株式会社

設立:2008年10月1日
資本金:3億6981万円(資本準備金3億5981万円)
代表:代表取締役社長 佐川隼人
本社所在地:東京都渋谷区渋谷2-12-19 東建インターナショナルビル本館9F
事業内容:
コンピュータによるソフトウェアの企画、設計、開発、運営、販売、賃貸業
インターネットを利用した広告、宣伝の情報媒体の企画、販売及びその仲介
インターネットによる情報提供サービス及びインターネットコンテンツ、ショッピングモールの企画運営、制作及び保守管理業務
電子商取引による付帯サービス、販売及びその仲介
前各号に関連するコンサルティング業
前各号に附帯し、又は関連する一切の事業及び業務

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