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2019年06月19日(水)

学生全員が起業家に!? 来年開学を目指す謎の4年制大学「i専門職大学」とは?

経営ハッカー編集部
学生全員が起業家に!? 来年開学を目指す謎の4年制大学「i専門職大学」とは?

今まで、学校教育といえば既存の知識を教えることが主流だった。しかし、AIやIoTが台頭する現代の社会では、既存の知識を駆使するだけでは足りず、新しいものを生み出すチカラが求められている。既存の高等教育に風穴を開け、企業社会に即戦力となる人材を輩出しようとしているのが、i専門職大学(仮称・設置認可申請中)だ。i専門職大学にはどういう学生が集まるのか、またどのような学びが得られるのか、設立準備室長 宮島徹雄さんにお話を伺った。

工業系専門学校のノウハウを活かして設立するi専門職大学

―まず、i専門職大学は来年の開学を目指しているとのことですが、その設立経緯について教えてください。

i専門職大学の運営母体である学校法人 電子学園では、工業系専門学校として、日本電子専門学校でエンジニアやクリエイターを70年近く輩出しています。一方で今後の成長分野を見据え、産業界のニーズに合致するこれまでにない人材育成を実践する専門職大学という制度が出来るにあたり、日本を代表する工業系の専門学校を運営してきた学校法人としては、新しい職業教育を行う教育機関ができるというこの流れには乗らなければならないだろうということで、大学設立に踏み切ることになりました。

―何が既存の大学と違うのですか? 卒業生は全員起業にチャレンジする触れ込みを耳に挟んでいるのですが。

大学で専門学校と同じように技術者を育てるのではなく、今後の産業界のニーズに合ったエンジニア・クリエイターをリードできるビジネスリーダーや、プロジェクトマネージャーの育成を目的にしてはどうかと考えました。
そこで、「変化を楽しみ、自ら学び、革新を創造する」という理念を掲げ、ITやビジネスを熟知し、英語を駆使してグローバルで、マネージャー職が務まるような人材を育てようとの試みが生まれました。まさに今、日本の産業界で圧倒的に足りないとされている人材を育成するというイメージですね。

―教授陣が非常に豪華な顔ぶれです。

おかげさまで有名大手企業の役員クラス・主任研究所や中小企業・ベンチャー企業のCEOまで、たくさんの方にご参画いただいています。中には、「今の高等教育に一石を投じたい」と会社を辞めてこちらに来られる方もいらっしゃるんですよ。非常にありがたいことです。現在専任教員・客員教員を含めて150~160名程内定していますが、今後200名まで増やし、様々な分野の方と学生の接点を生み出していきたいと考えています。

―宮島さんご自身も会社を辞めて参画されている1人ですよね。どのような経緯でi専門職大学に来られたのでしょう?

私は株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)に15年間勤務した後、辻調理師専門学校に入社して職業教育に10数年携わり、辻調グループの副校長も務めました。職業教育には合計25年ほど携わりましたが、なかなか日本の高等教育や職業教育の評価が高くなっていかないことに懸念を抱いていました。日本の職業教育の質を上げることが日本がグローバルで活躍し続けるためにも必要だと感じていました。その後ご縁があって一部上場のベンチャー企業の執行役員を経て、こちらで大学づくりに携わることになったのです。

企業で5か月間、600時間以上のインターンシップで実務を学ぶ

―もう少し詳しくカリキュラムの部分をお聞きしていきたいです。i専門職大学ではどのような変わった授業が組まれるのでしょうか。

1~2年生では、ICTやビジネス、英語のスキルをしっかり磨いてもらいます。40人以下の少人数クラスでプログラミングやシステム設計はもちろん、ICTの基礎となるデータ構造に数学基礎。ビジネスで大切なマーケティングやアカウンティング、法務など幅広く学びます。また、英語でビジネスプレゼンをしたり、ビジネスの現場で説明や討論、意見交換ができる力を身につけるような授業も取り入れる予定です。そして特色としては3年次にそのスキルをもって約5か月間企業にインターンシップの形で行ってもらう予定になっています。本学では640時間のインターンシップをマストにしているんです。これは通常の4年制大学では展開できない時間で、即戦力になる若者を輩出する為にインターンシップの受け入れ先企業とお話をさせ頂いております。

実際にインターンシップ期間中は担当教官が企業に出向いて、学生の履修管理やモチベーション管理をすることも検討しています。

―やはり在学時から社会との接点を如何にもたせるかが重要ですよね。

1年次から新しい事業・サービスを・解決策の構想・実現を目的としたプロジェクト型授業(イノベーションプロジェクト)を行います。身近な課題を見つけることからスタートし、その後は社会、地域の皆様とともに課題を見つけ解決へと導く力4年次まで継続して何度も行うため、考える視点が多く広くなると思っています。また見つけた課題と解決策を実際の事業計画書に落とし込みながら、経営戦略、長期ビジョン開発も学びます。


もちろん、希望する学生については、大学としてサポートしたうえで、事業計画書を元に起業してもらうことも考えています。起業の道はやはり最初からうまくいくことはほぼないと思いますが、失敗を重ねながら何度でも立ち上がることができる環境を整備していきたい。学生のうちにどんどん失敗して、社会に出た時にその経験を生かしてくれたらそれでいいんです。卒業して5~10年程経った時に起業にチャレンジした卒業生が全員成功していることが究極的な目標ですね。

―この記事はフリーランスの方や起業を目指す方にもご覧いただいていると思いますが、そのような方にとってi専門職大学の門をたたくメリットはありますか?

本学のリソース(連携企業、専任教員、職員)を使っていただくことができるので、社会人の方でも本学に来てもらうメリットは十分にあると思います。すでに数多くの企業から「連携したい」とお申し出をいただいているので、様々な面で連携企業とタイアップすることも可能だと思います。また、何かプロダクトを作る必要があれば、連携企業と一緒にプロジェクトを組んで作っていただくことも可能だと思います。

―社外からは非常に好意的に受け止められているのですね。

おかげさまで、本学の学生は「卒業したらすぐわが社に来て欲しい」とさまざまな企業から言われています。私たちの目指す実践的な教育は、既存の大学ではなかなか実現が難しいので、企業の求めるレベルの人材が輩出できないことが背景にあるのだと思います。それだけ産業界から非常に期待されているのだと実感します。

東大・早慶レベルの高校生からの期待も大きい

―既存の大学に比べてかなり後発でスタートされますが、少子化が進む中で入学を希望される学生を集めるのにやはり苦労はありますか?

まだ認可申請中のためPRはできますが、学生募集ができないので、そこが一番苦労しているところです。昨年の3月から大学説明会を行っており、すでに数百名お越しいただいているうち、70~80人が「受験したい」と言ってくれています。その中には東大や慶応大から志望先を変更してくれた子もいます。積極的にメディアの取材を受けたり、Zoomを使って毎日のように全国各地の高校生とお話をしたりして、興味を持ってもらえる機会を増やしています。初年度では定員200名の学生に入学してもらうのが目標です。

―どういう学生に来てもらいたいですか?

起業したいと考えている子や、起業まではいかなくとも何か新しいことにチャレンジしたい、社会にイノベーションを起こしたいという学生にぜひ来てほしいですね。実際、新設校である本学に入ることがチャンスだと考えて志望してくれている超進学校の学生がとても多いんですよ。1期生になって自分の手で新しい大学を作っていける、しかも既存の大学にない学びが得られるというところにメリットを感じてくれているのでしょうね。

しかし高校生に限らず、将来のために実践的なスキルを身に着けたいと考える留学生や社会人にも入ってもらいたいです。起業家志望の社会人の方でも、ぜひ本学に来てもらいたいですね。

―でも、まだ認可が下りていないことを危惧されている保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、2019年8月末までは絶対に認可が下りるとは言えません。保護者の皆様から「本当に大学が開設されるのか」という心配のお声もいただきます。しかし、すでに校舎は着工していますし、教職員はすべて決定しています。

また、本学を志望してくれている学生の中にも、進路変更してくれている学生や、浪人している学生もいるので、彼らの1年を無駄するわけにはいきません。ですから、我々は認可に向け、準備を重ね、必ず認可が下りるつもりで手続きを進めていています。私も、覚悟を決めて業務を進めているので、保護者の皆様にはその旨をお話してご理解をいただいています。

既存の大学教育にイノベーションを起こすために多くの企業とコラボしたい

―心配の声がある一方で、お子さんに熱心に進められている親御さんもいらっしゃるとか。

そうですね。本学を志望される学生の保護者の皆様はベンチャーなどの先進的な企業にお勤めの方が多いのですが、そういった方々はお子さんに熱心に入学を進められています。中には「仕事を辞めて子どもと一緒に入りたい」という保護者の方もいらっしゃいます(笑)。

―今後の展望についてお聞かせください。

既存の大学教育では、先生方が研究してきたことだけを教えるところが見受けられます。もちろん知識を教えることもとても大事なのですが、AIやIoTと共存しなければならないこれからの時代は、先生方が想像もつかないことを学生に考えさせたり、今までにないものを創造させることが重要になっていくため、私たちは、自ら課題を設定してそれに対して対応していける人材を育てたいと思っています。私たちは学生にもイノベーションを起こせと言っていますが、本学自身も自らイノベーションを起こしたいと思っています。

―面白いですね。これからはそういったイノベーション志向を持った人材が求められると思いますが、中小企業やベンチャー企業の方々にお伝えしたいことは?

本学ではICTやビジネススキル、英語能力に長けた、今の産業界がほしいという人材をどんどん排出してまいりますので、3年次のインターンシップの時に有償で学生を受け入れてくださる企業様を大募集しています。お給料をいただく代わりに、学生には戦力の一員として、社員と同じように仕事をさせていただきたいと思います。

インターンシップは職業と学生のマッチングも兼ねているので、もし学生が受入企業様と相思相愛になれば、卒業後はそのまま即戦力として入社出来れば良いと考えています。最終的には無駄な就職活動をなくすことが目標です。

―将来的に企業と大学がコラボレーションすることもありうる? 

もちろんあり得ます。本学と事業連携したい企業様、起業家志望の学生と一緒にプロジェクトを動かしたいとお考えの企業様はぜひコラボレーションさせていただきたいですね。学生には大手企業から駆け出しのベンチャー企業まで、さまざまな企業のスタイルを見せたいということもあります。私たちの理念に共感してくださる企業様は、ぜひ本学までお問い合わせください。

 

<プロフィール>

宮島 徹雄(みやじま てつお)

1967年生まれ
1991年 株式会社リクルートに入社
2006年 辻調理師専門学校に入社
2016年 株式会社エボラブルアジアの執行役員に就任
2017年よりi専門職大学 準備室長に就任

i専門職大学(仮称、設置許可申請中)

学校法人 電子学園を運営元とする、職業教育を専門に行う大学として現在設置認可申請中。
ICT×ビジネス×英語を武器にグローバルで活躍する人材輩出を目的とする。2020年開学予定。

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