経営ハッカー | 「経営 × テクノロジー」の最先端を切り拓くメディア
2019年06月28日(金)

「フリーランス花盛り」の現代において、 そのポジション向上と働き方をサポートする意味とは

経営ハッカー編集部
「フリーランス花盛り」の現代において、 そのポジション向上と働き方をサポートする意味とは

フリーランスとは……特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得るビジネスパーソンのことを指します。
 
いま現在国内でフリーランスとして活躍している人口は1119万人(2018年時点※1)で、約6600万人いるとされる総就労人口に対して、およそ17%を占めています。この数字は約6人に1人が業務委託や個人事業主として生計を立てているという実態を表しており、日本人の近年の働き方に対する意識の変化が読み取れるものです。
 
1990年代後半にはおよそ200万~230万人と言われていたこのワーキングスタイルですが、その後「終身雇用制や年功序列の崩壊」「プロジェクト単位の仕事の台頭」「リモートワークなどの働き方の多様化」「個人スキルに対する評価の変化」などにより大幅に増加。ITエンジニアや士業、デザイナー・ライター・編集者などの専門職を中心に、自由な働き方を選ぶ人々は毎年増え続けています。
 
さらに“働き方改革”に伴う政府主導による“副業・兼業の解禁”の影響も大きく、今後すきまワーカー・パラレルワーカー(※2)などの副業を含めたフリーランス人口は更に拡大していくと予想されています。
 
このようにフリーランス花盛りの昨今ですが、一方で「不安定な収益構造」「長時間労働に陥りやすい」「社会保障が受けられない」などの問題が噴出。弱者としての側面が大きくクローズアップされ始めています。
 
今回の経営ハッカーでは、このような時代背景を受け、フリーランスとして働く人々および小規模法人の社会的なポジションの向上を目的にその活動を支え、“税金対策”“スキルアップ”“受注率アップ”“事務サポート”などの啓蒙をテーマとしたコミュニティ「フリーランス/小規模法人LABO」を立ち上げた中島庸彰さん(株式会社socia'L CORE 代表取締役・株式会社PLAY&co 代表取締役)のお話をご紹介していこうと思います。
 
 
※1 フリーランス人口1119万人の内訳は、自由業系フリーワーカー53万人(5%)、自営業系独立オーナー322万人(29%)、副業系すきまワーカー454万人(41%)、複業系パラレルワーカー290万人(26%)。
※2 複数の収入源を持ち、ひとつのビジネスに依存しない新しい働き方。

「フリーランス/小規模法人LABO」の設立意図とは

―中島さんがフリーランス/小規模法人LABOを立ち上げようと考えたきっかけは何ですか?

中島:実は私、起業する随分前ですが、表参道にある有名美容サロンで働いていたことがありまして。ここは有名芸能人が訪れるようなお店ですが、当時先輩に売れっ子のスタイリストさんがいらっしゃって。である時この方が自分の店を持ち独立されたのですが……。
 
去年の年末、8年ぶり位にこの方とお会いしたのですが、何だかまったく畑違いのネットビジネスを始められていまして。で、そのビジネスがスタイリストとしての経験が活かせていないもので、どうしてそれを始めたのかと聞いてみました。

もちろん従業員は雇われていましたが、自分のお店の経営に手いっぱいで、常に店頭に立ち、頑張っていたようです。でも40代半ばになり、ずっと現場に立ち続けることに迷いが生じたようで。それで件の継続的収入が入るような、ネットビジネスに手を出されたようです。それが悪いというつもりはないのですが、あの一流の先輩が、好きでも独自性があるわけでもないビジネスを始めてしまうのか、という悲しさもあり、目の前のできる仕事に忙しく過ごし、情報が遮断されていると、いくら優秀な方でも視野が狭まってしまうのだなと感じるきっかけとなりました。
 
少なくとも持ち前の美容スキルを活かして、美容メディアをやっている人とジョイントしたり、自分以外の業界の視点やスキルを持った人が近くにいれば、もう少し違うビジネスの展開が作れたんじゃないのかなと。

―このエピソードがフリーランス/小規模法人LABOを立ち上げる気付きになったとか?

中島:その通りです。同じような小規模法人やフリーランスで働く人も、リソースが少なく、代表自身が不得意な作業をおこなったり、情報不足から専門外の領域に手をだして、間違いをおこすリスクがあるなあと。であるならば、フリーランス同士で相談でき、リソースや情報を共有できるコミュニティがあったらよいのかと。
 
専門領域に特化するとその領域での深掘りが可能で、その価値は人からみたらすごい価値があることでも、自分では当たり前すぎて気づかないほどのものなんだと思います。その専門領域に特化したフリーランス同士が集まれば、これは強いことだろうなと。ひとつひとつのリソースは限られてても、尖っている部分だけをみて、何100社と集まれば力強いものになりますよね。
そんなパワーを持ってる者同士が集まれば、フリーランスとしてのアドバンテージであるスピード感や専門性など、卓越した知識がもっと活かせると考えました。

コミュニティをFacebookで立ち上げた理由

―フリーランス/小規模法人LABOを立ち上げたのは、いつ頃でしょうか。

中島:今年の3月のことです。この施策でマネタイズするつもりはありませんでしたので、まずはFacebookで非公式のコミュニティとして立ち上げようと考え、「こんなグループに興味ありませんか?一緒にやりませんか?」と、メンバーを募りました。この呼びかけに運営メンバーとして関わりたいと言う方が30名ほど集まってくださいました。

―参加するためのルールなどはありますか?

中島:コミュニティの利用ルールに書いてある通りですが、まず、フリーランス/小規模法人として、最低限の売り上げをたてることができていることと、“内部営業禁止”というものでした。この規則を作った理由は「同じ価値観を持った仲間同士で交流できる環境」が作りたかったからで、営業する場ではないからです。
 
もちろん小さなビジネス同士で仕事を依頼したり受注したりすることは可能ですが、それよりもそれぞれの共有可能なリソースや、得意な領域を持ち寄って、コラボのようなものが生まれるのであれば、狭い世界で孤立することも防げるのではないかと考えました。
 
例えば誰かが困っていたら、その専門の領域の人が応えてあげるとか、その業界のプロが勉強会を開催するとか。ひとりでは考えられない程可能性は広がるはずです。またプロジェクトメンバーを募ることも可能としました。さらに資金が必要な場合には、今後出資なども行われるようにしていきたいです。

なぜ1000社の参入を必要としているのか

―1000社が集まったら実現したいことは何ですか?

中島:現在は330~340社くらいのフリーランス・小規模法人の方が参加くださっているこのコミュニティですが、今後ひとまず1000社の集まりを目標としています。なぜ1000社かというと、これが社会へ影響力が与えられる最小限の規模だと考えたからです。
 
例えばコストの最適化を図ろうとした時に1000社というまとまりがあれば、お互いのリソースを シェアすることで経費のコストダウンを図ることができますし、ボリュームディスカウントも可能となる。これは大きなインパクトを生み出すきっかけにもなりますし、収入の不安定化を防いだり、ギャランティの平準化の指標にもなります。また1000社もあれば、複数の事業者で雑務をこなしてくれるオフィスワーカーをシェアすることもできます。
 
さらに1000社のスケールメリットとしては、ノウハウやリソースの共有も活発にできます。例えばアメリカでビジネスを立ち上げる場合、現地でビジネスを立ち上げている事業者がメンバーにいれば、生の情報が入手しやすくなります。これはアメリカに限った話ではなく、国内においても大阪や京都、福岡といった地方都市にコミュニティが点在していれば、何かその地域でやりたいという時に頼れる人たちがすぐに見つかるというメリットが生まれます。
 
他にもたくさん可能性はあると思いますが、まず、このグループに1000社のフリーランス/小規模法人が集まるところが、基本的なスタートです。そのためにも参加者全員の協力が不可欠なので、フリーランス・小規模法人の方がいましたら参加を募りたいと思います。

―学びの場としての活用もお考えとお聞きしましたが?

中島:目の前の業務で忙しいフリーランス/小規模法人は、意外にも専門領域外の業務に疎いものです。
例えばホームページの制作費として提示された金額が適正なのかなど、トラブルを未然に防ぐ学びが必要だと考えています。
 
例えば「税金」「税務会計知識」「節税対策」というテーマもありで、税理士さんに丸投げしていた業務を、実務はできなくても何が行われているのかきちんと理解できるように、ある程度基礎知識を学ぶ場が作りたいと考えています。そこでまずは設立1年目程度の方々を対象に、「税金対策室」「簿記基礎セミナー」という勉強会を予定しています。

◇運営コミュニティ

フリーランス/小規模法人LABO
※参加するためには審査がございます。


税金対策室

これからの働き方についての考察

―フリーランスの未来と働き方はどうなっていくとお考えですか?

中島:フリーランスも含めてですが、会社などのオフィスに帰属するワーキングスタイルは廃れていくことでしょう。またその関わり方も義務感で集うのではなく「面白そうだから集まった」という感じになっていくと思います。
 
またパラレルワーカーも増えてくると思います。例えば監査法人にいる会計士が、週末は他社の会計を見ていたり、デザイナーが勤務時間外に他社の Web を作っていたり、今後それが当たり前になっていくのではないでしょうか。

―これからの夢についてお話しください。

中島:これはまだ企画段階ではありますが、「フリーランスの人たちだけでビルを共同経営する」というビジネスを仕掛けてみたいなと思っています。例えば自分達で小さなビルを渋谷区などで購入して、そこに出資したメンバーのコミュニティが 10年後・20年後・30年後も所有法人として存続して、ひとつの村のようにしてみたいと考えています。
 
それで今、顧問弁護士さんや会計士さんにも相談していて、出資金を募る名目ややり方などどうすればいいのか、知恵をお借りしています。夢のある話だと思いませんか。

―本日はありがとうございました。

中島さんのストーリー

ここでは「フリーランス/小規模法人LABO」を立ち上げた中島 庸彰(なかじま のぶあき)
さんが、なぜこのようなコミュニティ開設に至ったのか、彼の人生にフォーカスしながら探っていきます。
 
◇◇◇
スタイリストを目指して上京し、原宿の有名美容サロンにて社会人スタートを果たした中島。当時の夢はスタイリストとして25歳までに自分の店を持ち独立することだった。しかし現実は厳しく、ある日腰を痛めたことでリタイヤを余儀なくされてしまう。美容サロンオーナーという夢を失った中島は、人生の先行きを模索するなかで、出逢った経営者など第一線で活躍する人々から刺激を受ける。そしてこれが後々の起爆剤となっていくことになる。
◇◇◇
2010年当時、中島はアルバイトを続けながら、出会いの場を提供するイベントを企画し始める。当初少人数だったものが評判を呼び、気付けば月に600人を超える人気イベントに成長。この成功体験をもとに24歳の時に個人事業主・イベントオーガナイザーとして独立を果たす。いろんな人たちとの出逢い、さまざまな話に刺激を受ける……そういう集まりは人生をも左右する。こうした経験が、より学習性が高く有益な若手起業家たちとのコミュニティへ昇華する原動力となった。
◇◇◇
日々、士業の経営者や起業家の集まりを主催していくうちに、さらに自分たちの想いを共有する場が持ちたくなり、2012年2月東京・原宿にキャッシュオンデリバリー形式のBARを開店させる。このお店は「あそこに行けばワンコインで面白い人々と出逢える」評判になり、ビルの5階という不利なロケーションにも関わらず大盛況に。この成功で中目黒や水天宮・表参道での飲食店出店のオファーを頂くようになり、現在のビジネススタイルの主流であるプロジェクト形式で店舗経営にあたるようになった。これは経営サイドと業務委託スタッフが同じ目線で運営にあたるというもので、お客さんが運営に廻ったり、ひとり30万円の出資金を募り、お店を共同経営する合同会社を立ち上げたりした。
◇◇◇
この経験から2012年5月には飲食店経営やシェアハウス運営・転職支援を行う会社「socia'L CORE」を設立する。当時はシェアハウスの黎明期で、試験的に恵比寿に立ち上げ、住居コミュニティの可能性を探った。さらにスマートハウスやゲストハウスを模索するなか、増加しつつあった外国人のためにホステルの運営を思い付く。このプロセスのなかで不動産会社である「一期一会」や、ホステル運営会社「PLAY&co」の設立にも関与。東京・大阪で始めたホステル事業は、人気を博すようになった。
◇◇◇
こうした経験の中で、フリーランサーやパラレルワーカーをパートナーに、大きなビジネスを廻していく大きな可能性に気付いた中島は、お金儲けよりもアライアンスやコミュニティといった「人と人」「人と仕事」のつながり方に、面白味を感じるようになったという。
◇◇◇
今回彼が立ち上げたコミュニティ「フリーランス/小規模法人LABO」は、まだまだ実験的な集まりだが、次世代の“人と仕事の関わり合い”を探るうえで大きなヒントとなるだろう。終身雇用が崩壊し、多様な働き方が求められるこの時代に、新しい答えを導き出してくれる救世主になるかもしれないと感じた。
 
【Profile】
中島 庸彰(なかじま のぶあき)

群馬県太田市出身 1986年生まれ。
〇株式会社socia'L CORE 代表取締役/飲食店・転職支援企業
〇株式会社PLAY&co 代表取締役/HOSTELの企画運営
〇株式会社 一期一会 取締役/不動産及び不動産管理企業

この記事の関連キーワード

関連する事例記事

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2023年02月28日経営ハッカー編集部

    衆議院議員・小林史明氏×freee佐々木大輔CEO 企業のデジタル化実現のために国が描く未来とは?

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年10月24日経営ハッカー編集部

    仕事が・ビジネスが、はかどる。最新鋭スキャナー「ScanSnap iX1600」の持てる強みとインパクト

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年08月30日経営ハッカー編集部

    ギークス佐久間大輔取締役、佐々木一成SDGsアンバサダーに聞く~フリーランスと共に築くESG経営とは?

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年08月28日経営ハッカー編集部

    サイバー・バズ髙村彰典社長に聞く~コミュニケーションが変える世界、SNSの可能性とは?

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年08月05日経営ハッカー編集部

    バックオフィスをどう評価する? 経理をやる気にする「目標設定」と「評価基準」の作り方

関連記事一覧