slackやTeamsよりも使いやすい? 話題のコミュニケーションツール「U」でビジネスはどう変わる?
チャットなら嚆矢的存在のSlack、マイクロソフトのTeamsなどがよく知られているように、ビジネスコミュニケーションツールが花盛り。情報の共有や意思決定の迅速化など、ビジネスにおいて欠かせない存在になっています。
一方、日本でのツールの普及は欧米に比べて遅れており、チャットを導入している企業はアメリカが67.4%、イギリスが55.9%に対し、日本は23.7%。テレビ会議・ビデオ会議の導入はアメリカが65.1%、イギリスが58.8%、日本が32.6%*1となっています。さらに日本で積極的に利用している人は、チャットは6.9%、テレビ会議・ビデオ会議は11.1%*2に留まっています。働き方改革で労働時間の見直しや在宅勤務が推進される中、コミュニケーションツールの普及と適切な活用は課題と言えるでしょう。
そうした中、注目を集めているのがサイバーリンク社の「U」。ビジネスチャット、Web会議、オンラインセミナーからなるコミュニケーションサービスです。サイバーリンク株式会社は、1996 年設立の台湾外資企業で、マルチメディアソフトウェアと AI 顔識別技術の世界的リーダー的存在。映像再現性など高い技術を生かしながら開発した「U」は、これまでにない使い勝手の良さが評価され、サービスを導入する企業がじわじわ拡大しています。
話題の「U」と特長と優位性について、サイバーリンク株式会社代表取締役社長のヒルダ・ペン氏に聞きました。
*1総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究・ビジネスICTツールの導入状況(国際比較)」(2018年)
*2総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究・ビジネスICTツールの利用状況(国際比較)」(2018年)
映像ソフトウェアを主とする会社がコミュニケーションツールを手がけた理由とは?
―まず、映像ソフトウェアを主力とする御社がビジネスコミュニケーションツールを開発した経緯についてお聞かせください。
当社は、台湾の本社、日本、アメリカ、ヨーロッパなど世界中に拠点があるグローバル企業です。そのため、拠点同士でスムーズに仕事を進められるツールの必要性はかなり以前から痛感していました。特に、10年ほど前のリーマンショック以降は経費削減などの影響で、台湾本社との行き来が減少。それを機に、TV会議やWeb会議などさまざまなサービスを頻繁に使い始めたのですが、どの製品もひとことで言うと「使いにくい」。音声や映像がなかなか出なかったり、途中で切れてしまったり。そこで、「自分たちで作ってしまおう」と開発に乗り出しました。
―自社の必要性から生まれた製品とのこと。これは、他社とは異なる点ですね。
そうですね。Web会議で言うとうちは映像の会社なので、映っている絵がきれいじゃないと皆機嫌が悪くなってしまう(笑)。DVD再生ソフトや映像編集ソフトで培った技術を生かし、画質や音声のグレードを追求しました。ビジネスチャットもさまざまなツールを使用する中で、「この方が使いやすい」「これは不要」など社員の意見をフィートバックし、改良していくうちに、本社の方針で商品化が決まりました。
なので、開発の当初からコンセプトは、一貫してユーザー目線のシンブルな製品。そこが多機能・高機能を追求する他社の製品との大きな違いです。2017年に製品が完成し、その年の8月にビジネスチャットの「Uメッセンジャー」、Web会議の「Uミーティング」、オンラインセミナーの「Uセミナー」をリリースしました。
ITリテラシーが高くない人も試しやすく、使いやすいという思想
―「U」には、映像ソフトウェアメーカーならではの着眼点や技術力がさまざまに生かされていると思います。具体的に教えてもらえますか。
映像編集ソフトのユーザーは、60代以上のご年配の方が多いんです。シニア世代が簡単に使うためには、複雑な設定や操作の必要がなく、画面がシンプルであることが大切です。そのノウハウや設計思想を「Uシリーズ」でも生かしました。
たとえば、チャット中に音声会話やビデオミーティングに移りたい場合、「Uメッセンジャー」ではアイコンを押すだけでメンバー全員を呼び出すので、設定や面倒な操作は不要です。「Uミーティング」では、プランによって参加者50人までと100人までとがありますが、画面に表示されるのは6人まで。7人目からはアイコンで下に横一列で表示されますが、発言するとその人のアイコンが自動で上にあがる仕組みです。
「Uセミナー」も、一般的なウェビナー(オンラインセミナー)は、設定が複雑で私たちでも難易度が高いことが不満だったため、パワーポイントのような操作性で簡単にライブ配信・オンデマンド配信ができるようにしました。このように、「U」シリーズ全体を貫いているのは、ITリテラシーが高くない人も入りやすく、使いやすいという思想です。
―ユーザーインターフェイスの良さを訴求し、機能は絞り込んだということですね。
「U」独自の機能もあります。たとえば、チャットルームで共有した写真やファイルを探したい時、他社製品ではコンテンツ全体を検索しなくてはなりません。「Uメッセンジャー」ではアイコンを押すと写真やファイルだけが一覧で表示され、最短距離で目的の写真などを見つけることができます。また、Web会議中のパワーポイントのスライドはよく使う機能ですが、「Uミーティング」には、細かな数字などをピンポイントで示すことができるよう、レーザーポインター機能を追加しました。いずれも社員やお客さんの要望で加えた機能で、業務や会議の進捗がスムーズになると好評です。
―「Uミーティング」と「Uセミナー」には、バーチャルメイクの「PerfectCam(パーフェクトカム)」に「背景ぼかし」というユニークな機能もあるのですよね。
これらは、在宅勤務の女性社員のニーズから生まれました。1時間の会議のためにメイクをするのは億劫なので、ビデオをオフにして参加してしまうのですが、それではただの電話会議になってしまいます。そこで、当社の先端技術を生かし、ファンデーションなど好みのメイクを選択できる機能を搭載しました。選んだメイクのパターンは保存が可能ですから、一度設定してしまえばいつでもすぐに“メイクアップ”できます。
「背景ぼかし」は、Web会議中に「散らかった室内が背景に映り込むのを避けたい」という声を受けて開発したものです。AIに人間の形を学習させて背景をぼかすほか、カフェや夜景など好きな写真を背景に用いることもできます。
ターゲットユーザーは、非IT企業や中小企業
―基本の機能から“かゆいところに手が届く”機能までをコンパクトに搭載したのが「U」なんですね。導入した企業の評価ポイントでは、何が大きかったのでしょうか。
この6月に「Uミーティング」を導入したビットキー社さんは、2018年5月設立のスタートアップ企業です。独自のスマートロックの一般発売に向けた円滑な組織運営が導入の目的で、「U」は、宮崎県のカスタマーサクセス拠点と東京本社を24時間常時接続できること、ユーザーインターフェイスが分かりやすく、複数の社員が使っても混乱がないこと、音声や動画の質の高さが評価されました。
拠点間会議のニーズはやはり高く、国内外の拠点同士でのコミュニケーションに活用している企業も多いですね。また、別の顧客では、出張経費を削減するために拠点の巡回をやめ、Web会議を導入したというケースが目立ちます。
―「Uセミナー」は、どのように活用されているのでしょうか。
実は、今需要が伸びているのが「Uセミナー」なんです。パワーポイントと同じ感覚で配信の操作できること、カスタマイズで1万人規模の視聴者に配信できることが特長ですが、利用のされ方はさまざま。ビデオ録画のカット編集もパワーポイントと同様の方法で簡単なので、オンデマンド配信に重宝している企業も多いんです。また、配信用のプラットフォームを持ちながら、「ビデオ編集ソフトよりもスピーディ」と動画ファイルを作るためだけにこの製品を使っている企業も。商品説明用の動画など、営業ツールとして活用するケースも耳にしています。
―操作性の良さから、本来の目的とは異なる使い方がされているのは興味深いです。
もちろん、本来のセミナー配信の活用度は高いですよ。お客様がセミナーを重ねていく中で、
「ぜひともつけてほしい」と要望されたのがQ&Aセッションの機能です。通常のウェビナーは配信者から視聴者に向けて一方通行の講義で、質疑応答はできません。最新のアップデートで加えたQ&Aセッションは、ボタンを押すだけで質問者が表示され、「あなた、どうぞ」と指名し、音声でやりとりができます。他の視聴者も質疑応答を聞くことができますから、参加者にとって深い理解が可能になり、「リアルなセミナーと同じ感覚」と好評です。
―「U」シリーズの機能を知るにつけ、簡単でシンプルであることは、汎用性の高さにつながると実感しました。これは、他のビジネスコミュニケーションツールに対して大きなアドバンテージですよね。
ビジネスコミュニケ―ションツールとひとくくりにされていますが、製品によって向き・不向きがあることを理解してほしいですね。ビジネスチャットで言えば、Slackは機能数が多く、IT企業のプロジェクトチームがディープに使用するのに向いています。一方、「U」はコミュニケーションのベースを個人におき、ITリテラシーが高くない人も使いこなせる、というように持ち場が異なります。ITの管理者がいない企業でも導入しやすいので、中小の製造業や飲食関係、アルバイトのスタッフが多いスーパーなどでも活用してもらうことを想定しています。
また、当社は、日本にオフィスを置き、長くビジネスを行ってきているので、ローカルのニーズを製品にフィードバックできるのが強みです。その優位性をフルに活用しながら、より顧客満足の高いサービスを展開していきます。
―ありがとうございました。
【プロフィール】
ヒルダ・ペン(Hilda Peng)
サイバーリンク株式会社代表取締役社長
Bath Spa University にて経営学修士号を取得。2001 年にサイバーリンク入社後はセールスおよびマーケティングの管理職を歴任する。B2B および B2C(eコマース)ビジネス管理に関する幅広い知識と経験を持ち、日本のソフトウェア市場に精通。現在、サイバーリンク株式会社代表取締役社長してセールス・マーケティング戦略、パートナー企業の開拓、日本におけるマーケットの拡大を担う。
【会社概要】
サイバーリンク株式会社
設立:2005年3月
資本金:9,500万円
代表:ヒルダ・ぺン
本社所在地:〒108-0023 東京都港区芝浦3丁目5-39田町イーストウイング4F
事業内容:
デジタルメディアの作成、再生、共有などのアプリケーションの開発、マルチメディア関連ソフトウェアの販売、Web 会議・オンラインセミナー・ビジネスチャット「U ビジネスコミュニケーション サービス」の販売