世界有数の仮想通貨取引所CoinBeneから見た、VUCA時代の信用のゆらぎとビジネスチャンスの到来
最近よく聞くVUCAとは、VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉だが、仮想通貨の動きはその最たるものだ。今年4月以降、Bitcoin(BTC)を始めとする仮想通貨(暗号資産)はまた値上がりを始め、先日はついに1BTCが100万円を突破した。今まで停滞を見せていた仮想通貨がまた上昇を見せている事実は何を意味しているのか?日本からは見えない視点から、CoinBene(コインベネ) Japan代表の Liam Park(リアム・パク)氏に話を伺った。
世界の仮想通貨取引所の中で常にトップ10圏内のCoinbeneとは?
-はじめに仮想通貨の動向やCoinBeneの世界におけるポジションを教えてください
近年の仮想通貨市場を見てみると、まずビットコインは2017年12月に1BTC200万円まで高騰した以降下がりつづけ、一時期20万円台まで下がりました。その後また上昇を始め2019年6月24日時点では、1BTC116万円になっています。さらに仮想通貨全体の時価総額でいうと35兆円に達しているのです。
その中でCoinBeneは世界取引所ランキング第4~7位の位置にあって、一日の取引量は2,000億円ほどです。会員(アクティブユーザー)が300万人ほどで、毎日盛んに売買が行われています。ユーザーは中国が半分を占めており、日本の割合は1割ほどになります。拠点はシンガポールにありますが、本社は中国に構えており、我々はCoinBeneの日本部門という立場になります。その他にも、中国を中心に、韓国、マレーシア、アメリカ、イギリス、ブラジル、アルゼンチンと世界各国に展開しており、世界でも有数のグローバルな取引所になります。CoinBeneは開設が2017年で取引所の中では開設して間もない部類に入るのですが、常に世界ランキング上位に名を連ねています。成長スピードは類を見ない速さで、この成長はCoinBeneの魅力の一つでもあります。
-世界4位という意味、また会員数の価値はどういったところにあるのでしょうか?
実際に、仮想通貨取引所は1万6,000か所以上あり、仮想通貨プロジェクトが発行する通貨自体は1万種類以上もあります。もちろん動いてない取引所やプロジェクトも多いですが、その割合からするとかなり上位の立ち位置にいることが分かると思います。ランキングの付け方というのは色々ありますが、取り上げられるのは会員数と取引高によるものが大きいでしょう。取引高もやはり会員が取引を行ってくれるからこそのものであり、我々も彼らに見合ったサービスを提供していく必要があります。結局のところ、会員数が多いことにより取引が継続的に行われていきます。ボットなどで見せかけの取引を膨らませても全く意味がありません。つまり、実体のある取引をやっていかないと意味がないということですでしょうね。
-日本市場をどう見ていますか?
日本のマーケットは大きく、我々から見てもまだまだ市場拡大の余地はあると思っています。BTCが116万円を超えたのもあって、おそらくある一定数の投資家が仮想通貨投資に参入してくるだろうと思っています。そして、機関投資家など大口投資家の参入もあり更に仮想通貨市場は加速していくと見られます。
日本は国内の投資家を守るために、更に規制を強化しています。先物のレバレッジの倍率を下げたり、税率を著しく強化したりと現段階では仮想通貨の投資家にとっては優しくないと言えるでしょう。故に、日本は遅れている、ビジネスの面で動きにくいなどと言われています。ですが、私は逆に法規制においては一番進んでいると思っています。投資家が無駄に資金を流出するのではなく、適切な投資環境を整えることにより、キャッシュフローを活性化させ国内の経済を循環させる目的であれば、喜ばしいことではないでしょうか。世界では、日本の現状はあまり受け入れられていませんが、これは日本ならではの対策をしっかり打っていると言えるでしょう。
ただ、ICOプロジェクトは実質的に凍結しており、新規のICOには金融庁とのハードなやりとりが必要となり、多くのプロジェクトが挫折しているのは事実です。
-CoinBeneは日本に拠点を持っていますが、それはどんな意味があるのでしょうか?
日本にも拠点を置くことは2つの点で大いに意味があります。1つ目は、日本にもCoinBeneのアクティブユーザーが30万人ほどいますので、やはり日本の投資家のケアというのは必要となります。不明な点の対応や、何らかのトラブル解決にも必要となります。何より、金銭と同等物を扱うのですから、日本語対応ができるというのはユーザーにとっても安心できるはずです。
そして、2つ目。最大の狙いは、新たにCoinBeneに上場したいというトークンプロジェクトを発掘することです。つまり、日本で認可されている取引所には上場できなくても、シンガポールであればまったく事情は異なり、上場は可能なのです。世界でも上位有数のランカーであるので、我々の取引所に上場することによってブランディングの役割も果たすことができます。そして、プロジェクトに出資したユーザーも名の通った取引所に上場すると喜びます。やはり知名度があった方が認知されやすいですし、目に付きやすいので新たな投資家を呼び込むことにも繋がります。そのような日本のプロジェクトを世界に認知させるためにも、日本に拠点を置くことは必要なのです。
今後の仮想通貨と周辺ビジネスの動向
-なぜ、仮想通貨が上がると言えるのでしょうか?
まず、そのものの価値が上がる理由としてはいくつか挙げられますが、主な答えとしては将来において実用性が高まっていくからです。BTCやリップルが今現在使われているのは主に送金手段だけですが、それでも十分流通量が確保できます。さらに、仮想通貨の中には国外の労働者が母国に送金をすることで使われている通貨があります。利用が必須になっているとその上に、さまざまなサービスや、機能を付加していき価値上げをしていくことは比較的簡単にできています。ここでさらに重要なのは、アフリカなどの国に行くと、モバイルが経済インフラになっており、そこで流通するのが仮想通貨であったりするのです。つまり、仮想通貨のほうが、法定通貨より信用が高いということも起こるのです。
もう一つ、仮想通貨が大きく上下する理由としては中国勢の影響が大いにあります。中国勢の富裕層の割合は1%ほどですが、全人口が13億人もいる中国で、1%の富裕層というのは約1,000万人にもなります。中国の内情的に、資産の逃げ口となっているのが仮想通貨です。特にBTCは送金手段にも使える上に、資産保存の役割もするため彼らにとっても重宝されています。つまり、資産としての価値の信用は十分なほどに取れており、今後更に機関投資家も参入して更なる価格上昇が起こるでしょう。金のような資産としての意味を成すために、いずれは価値の固定化が起こるかもしれませんが、今は十分な投資対象になっています。つまり、価格は上がってくると言えるのです。
実は中国は表向き仮想通貨を法律で禁止していますが、経済の活性化のためには、ブロックチェーンやそれに関連した人工知能のテクノロジーを育成する必要性は熟知しており、仮想通貨の重要性はよくわかっています。我々もそうですが、多くの中国以外にある仮想通貨市場も、エンジニア部隊は中国にいたりします。
中国人は政府の意図をよく理解していて、仮想通貨取引をやっていること自体が法律にしたがっていなくても、あえて中国政府も黙認していることを踏まえ活動しているのです。つまり、中国はダブルスタンダードの国なので、グローバル経済の中でもそういった国の動きを日本はよく理解する必要があります。
-今後のトークンエコノミーの世界の動きはどうなりますか?
現在、取引量的には中国がリードしていますが、一方仮想通貨のルールづくりは米国中心に動いていると言えるでしょう。最近注目のSTO(Security Token Offering)といったように、米国SECの所管の元での仮想通貨が発行される動きが出てきています。米国SECの存在というのは非常に大きく、仮想通貨の先物取引商品が承認された時点で、米国の巨大市場が一気に開くことになります。Facebookが独自通貨を発行するという発表も、ある面、当局の動きを試す観測気球の意味合いもあるでしょう。ルールメーカーとしての米国証券当局の影響力というのは大きいのです。日本も徐々に同じような動き方になってきています。
先日のG20の会議では仮想通貨の課税に対しても議論されたそうですが、世界が一貫して仮想通貨を推し進めようという動きがあります。このような中、メガバンクも黙ってみているわけでは決してありません。三菱UFJや三井住友が、米国や英国の中央銀行や大手金融機関などと組んでプロジェクトを進めるという話もありますし、今後は政府や大手企業が率先して主導していくと思われます。そして、仮想通貨という存在も金商法の枠の中で明確に位置付けられ取引されていくでしょう。それだけ政府が率先して乗り出していくほどに、仮想通貨というものは大きな産業の一つになり得るということです。
-大手が本格的に参入してくる中でベンチャー企業に今後のビジネスチャンスはあるのでしょうか?
今まで述べてきたように、今のところ世界は激しいVUCAの時代に突入しています。予測不能な状態にあるからこそ、かえってビジネスチャンスもあります。例えば、ブロックチェーンの技術はすでにコモディティ化しており、仮想通貨取引所を開設しようと思うと、ちょっとしたエンジニアであれば、オープンソースを活用し1時間で開設できてしまうというところまできています。だとすれば、こういった技術を何もICOに活用しようというのではなく、地域経済を活性化するための地域通貨を発行するのに活用することもできるのです。また、それと交換性のある地域企業の独自ポイント発行といったこともでき、ブロックチェーンと既存ビジネスの連結、統合は相性がいいのです。
そして視野を広めると、大きく経済発展を遂げてきた中国でさえ、まだインフラ整備が遅れています。中国や紛争の多い国の銀行は信用に値しないので、アンバンクの国民が多い印象です。ですが、スマートフォンの普及により、モバイルファーストのインフラは整いつつあります。実はそのような国では、自国の通貨よりは仮想通貨の方に信用がついているのです。こういった、世界の実体価値を成すものを見極めつつビジネスを展開すれば、必ずしも既得権益者が強いということでもなくなっているので、ベンチャーにも大いに参入の余地があります。
グローバルな観点からお話ししたわけですが、今回の議論は十分に理解を深めていく必要があるでしょう。最近になりBTCも高騰してきて投資意欲が再加熱して来たのはとても良いことです。しかし、日本人は特に顕著であるが、価格の上下や規制の話ばかりで、技術やビジネスチャンスという観点からの生産性のある話は少ないです。少し視点をズラして将来的な観点から見てみると、こういった時代であるからこそ動きの速いベンチャー企業ほど大いにやりようがあると考えてみてはいかがでしょうか?
<プロフィール>
Liam Park (リアム パク)
1994年 丸紅株式会社勤務
2001年 レッドハット韓国代表
2008年 内田洋行株式会社韓国担当
2018年 CoinBene Japan株式会社 代表理事CEO就任
CoinBene Japan(コインベネ・ジャパン)株式会社
Coinbeneはシンガポールに開設している仮想通貨取引所。世界の取引ランキングは4~7位で推移。CoinBene取扱銘柄はCoinBeneで取扱のある通貨はBTC建てでおよそ250種類以上あり、基軸通貨はUSDT、BTC、ETHの3種類。LTC、EOS、XRP、NEOなど主要アルトコインはもちろん取り扱っているが、CoinBeneでしか取り扱っていないマイナーコインも豊富。日本法人のミッションは、日本の会員フォローとCoinbeneに上場するトークンプロジェクトの発掘。