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2019年08月15日(木)

テレワーク導入のプロに聞く!中小企業にテレワークを導入するメリットとは

経営ハッカー編集部
テレワーク導入のプロに聞く!中小企業にテレワークを導入するメリットとは

あなたは2025年問題をご存じでしょうか。2025年問題とは、団塊の世代が75歳に達することによって社会保障費や医療費の急増が予想されるという問題です。その頃には大量介護離職時代が始まるとも言われていますが、そのような時代に突入すれば、ますます人材不足が加速するのは必至のこと。労働人口を労働の担い手としてつなぎとめるためには、会社に来て仕事をするという従来のスタイル自体を見直さなければなりません。そんな時代を先回りし、テレワーク導入支援や業務のアウトソーシングを推進しているのがイマクリエです。今回は、イマクリエの代表取締役 鈴木信吾氏に話をお聞きしました。

テレワークは優秀な人材の離職防止だけでなく、新規採用にも効果を発揮

―御社はテレワーク導入支援や業務のアウトソーシングに力を入れていらっしゃいますが、テレワークを導入するメリットって何ですか?

テレワークを導入する一番のメリットは、社員がどこにいても仕事ができることです。たとえば、「会社でずっと第一線で働いてきたけれど、実家に帰って親の介護をすることになった。実家の近くには支店がないので離職せざるを得ない」という方がいらっしゃいます。この方は月に1度であれば本社に来られるということだったので、引き続きテレワークで勤務することになり、介護離職を防ぐことができました。
 
当社では大手企業とのお付き合いが多いのですが、子育て中の方や親の介護をされている方に対する福利厚生の一環としてテレワークを導入する事例が中心です。しかし、我々は中小企業にこそテレワークを導入するメリットがあると思っています。

―中小企業にこそテレワークを導入するメリットがあると言えるのはなぜですか?

日本には、地方で活躍している優良企業がたくさんあります。そういった会社が「海外進出を考えているので、MBAを持っている人を採用したい」となると、地方でその条件に合う人材を探すのは大変ですよね。しかし、テレワークの仕組みがあることによって、地方の中小企業でも東京在住の方の採用を視野に入れることができます。時々打ち合わせをする必要があれば、普段は自宅で仕事をして月に1度だけ本社に来てもらう形でも、社長が上京したタイミングで行う形でもいい。テレワークを導入すれば、地方の企業でも、全国の優秀な人材に働いてもらえるチャンスができるんです。

震災を機にテレワーク導入に舵を切る

―そもそも、イマクリエを立ち上げられた経緯とはどのようなものだったのでしょうか。

2007年に僕が友人と4人でこの会社を立ち上げたのが始まりです。最初は営業代行の仕事を請け負っていたのですが、もともと起業するときにあった想いは、「新しい価値を世の中に生み出すこと」というものでした。テレワークやアウトソーシングを推進すれば、東京だけでなく世界中の人たちとつながってさまざまな力を活用できるのではないかと考え、このモデルに特化していったのです。現在、社員は7名で、出社義務のある社員と出社義務のない社員の2パターンがあります。在宅勤務登録者数は約5万人で、1日当たり100~150名ほどのワーカーが稼働しています。

―現在の業務内容というと?

我々が展開しているサービスは、テレワークの導入支援とアウトソーシングの2つです。アウトソーシングでは、コンタクトセンター(コールセンター)業務とコンシェルジュ業務(オフィス業務代行)を行っています。当社のコンタクトセンターは、在宅勤務を組み合わせて行うリモート型を導入していて、それが珍しかったのか、アメリカの雑誌CIO Advisorでトップテンに選ばれたこともあります(Top-10-contact-center-services-companies)。

コンシェルジュ業務とは、オフィス業務を代行で行うサービスです。
案件に応じた得意分野をもつテレワーカーをアサインするため、ニーズに沿った専門性の高いサービスが受けられると高い評価をいただいております。
先日はプレゼンテーション資料作成チームがブラッシュアップをお手伝いさせていただいたプレゼンが大手広告代理店様の社内コンペでグランプリを受賞したそうです。ブラッシュアップの後は周囲の反応が段違いに良くなったと嬉しいご報告をいただきました。

―テレワーク導入支援というのは具体的にはどのようなサービスですか?

働き方改革や女性活躍が推進される時流に乗ってできたサービスで、クライアント様がテレワークの導入を検討されるときに、我々が業務の分析をして、実際マニュアルに落とし込んでシステムを作り、研修まで行うワンストップで提供していくサービスです。取引先でいうと大手が多いのですが、これからの時代は特に中小企業への導入支援が一番大事だと思っています。実際、地方の中小企業からテレワークについて教えてほしいという依頼をたくさんいただいているんですよ。

―御社ではなぜテレワーク導入支援やアウトソーシングに力を入れているのですか?

当社がテレワーク導入支援事業を始めたのは、2011年の東日本大震災がきっかけです。当時はコールセンター事業を行っていて、社員は皆普通に会社に来て勤務していました。ところが、震災が起きて物理的に出社できない社員が続出。もともと当社ではインターネットで受発信できるシステムを取っていたので、これだと社員が自宅でも仕事ができるのではないかと思い、試しにやってみたんです。

―その結果はどうだったんですか?

試してみたらできたので、在宅勤務を認めて時々利用する社員が現れました。ただ、当時在宅勤務でできることは、補完的な業務にすぎなかったんです。そこで、2014年に厚生労働省の委託事業「平成26年度テレワークモデル実証事業」に参加して、セキュリティー面や労務面など問題ないことを確認できたので、全国に広めていけると確信を持ちました。
 
よく「テレワークって働いている人が何をしているかこちらからは見えないんですが、大丈夫なんですか」とのお声もいただきます。当社では、業務内容にもよりますが、一部端末に個人情報や機密情報のデータが残らないようにしたり、常時モニタリングをかけるシステムを導入しています。なので、そこは自信をもって提供しています。

子育て世代・介護世代+副業組を在宅ワークで活用する

―ところで、御社はどうやって人材を集めているんですか?

実は、もともとインターネットの届かないところで事業展開をしようと考えていたこともあって、インターネット広告ではなくて、新聞の広告を活用しています。地方で新聞に「こういう働き方をしましょう」と打ち出したチラシを入れると、インターネット広告の5倍くらいの応募が来ます。あらかじめミッションが固まっているものについては、求人広告で応募を募ることもあります。あとは地方自治体にお声がけいただいて広く宣伝させていただくこともありますね。
 
最近はスカウトにも力を入れています。スキルをお持ちの方を発掘して、「一緒にお仕事をしませんか」とお誘いする。また、優秀な方のお知り合いは優秀な方が多いので、そこからご紹介いただくというのも多いです。これだけ優秀なのに、会社に毎日通勤できないことがネックになって働く選択肢をお持ちではない方が多いのだなと日々実感しています。

―御社に登録されている方はどんな方が多いですか?

8割が女性ですね。男性は2割くらいです。年代でいうと、30代の子育て世代と50代の介護世代が多いです。当社のリーダーも、親の介護をしながら仕事をしているのですが、親の介護って、いつ何時訪れるかわからないですよね。せっかく会社で20年30年キャリアを積み上げてきて、親の介護のために実家に戻らないといけなくなるという既存のやり方ではいったん退職してキャリアを中断しなければなりません。そういう介護離職を防ぐ手段として、テレワークというセーフティーネットを活用していただきたいなと思っています。もうひとつ多いのは、兼業組ですね。

―兼業組と言いますと?

今年の4月以降、企業がだんだん兼業を解禁するようになっていますよね。その流れで兼業を始めたい方々が当社にご登録いただいて、ディレクションや事務業務などを行っています。兼業される方々は、お小遣い稼ぎをしたいのではなく、この先新たなスキルをどう身に着けていくか、社会貢献的な意味合いで何ができるのかを考えている方が多いのが特徴です。中小企業がそういう人たちをうまく飲み込むことによって、自分の事業をブラッシュアップとか、オペレーション強化ができるようになってくるのではないでしょうか。当社では、テレワークと兼業をどう結び付けられるかがこれからのチャレンジだと思っています。
 
「在宅ワークは女性の専売特許のようになっていますが、今後は優秀なのに介護離職を迫られる男性が増えるにつれて、男性の比率が上がってくると思います。」と経営企画室リーダー 二上香純(ふたかみ かすみ)氏。世の中の流れとともに、テレワークのありようが変わってくるのが興味深いという。 

在宅勤務でキャリアに見合った同一労働同一賃金を実現

―そうやって集められた方々にお仕事を依頼したい場合は、どうすればよいですか?

まず、我々のほうで委託されたい業務内容についてヒアリングします。業務内容に対応できるかどうかをディレクターに確認し、問題なくできるようであれば実際にオペレーションチームを組んで、費用などを提示します。業務開始後は、基本的に運用ディレクターがクライアント様に対する窓口となり、レベルの高い納品物をお届けできるよう責任もって品質管理を行っていますので、安心してご依頼いただけます。

―費用はどれくらいに設定されているのですか?

業務内容やどこまで当社が委託するかと、そこからワーカーのキャリアや専門性の高さによって時給に幅を持たせています。地方で同じ内容の仕事に就こうとすると時給800円だったりすることもあるのですが、する仕事は同じなのに場所が異なるだけで時給が下がるのはおかしいだろうと僕は思っているので、全国どこで仕事をしても同じ仕事・同じ能力であれば同じ時給になるようにしています。

―全国どこにいても同一労働同一賃金なのは魅力的ですよね。

ぼくらが目指すところは、「未来の働き方を創造する会社」です。よくリモートワークやテレワーク、在宅勤務というと補完的な仕事や内職的な仕事しかないイメージがあるじゃないですか。僕は、在宅勤務でも当然キャリアとして認められるべきだし、将来ステップアップしていくための手段であってほしいと考えているんです。だから、東京にいる方にも地方にいる方にも、年齢や性別に関係なく当社で活躍していただいています。

―最後に、全国の企業へ向けてPRしたいことは?

今後、労働人口は減少の一途をたどり、2030年には2018年に比べて700万人も労働人口が減ると予想されています。テクノロジーに投資できる余力があれば、テクノロジーである程度人手不足はカバーできるかもしれませんが、カバーしきれないところも出てくるでしょう。
 
そういうときに、何らかの事情で働いていない方や、他のところで働いている方の力を借りることによって、人手不足を補うことができるのではないかと考えています。インターネットは離れたところ同士をつなぐものですが、仕事もつなぐようになっています。人材不足に陥りやすい中小企業こそテレワークを導入する価値があると思うので、ぜひご検討ください。

【プロフィール】
 
鈴木信吾(すずき しんご)
2002年 青山学院大学卒。大手住宅メーカー・大手自動車部品メーカーを経て、コンサルティング会社でクライアントの経営戦略立案などを主に行う。2007年に株式会社イマクリエを設立、2016年に代表取締役社長に就任、以後現職。
 
株式会社イマクリエ
所在地:
本社
〒106-0044 東京都港区東麻布2-3-5 第一ビル2F
TEL:03-6277-6907 FAX:03-6277-6908
 
博多サテライトオフィス
〒812-0038 福岡市博多区祇園町8-13 第一プリンスビル1F
 
佐賀サテライトオフィス
〒841-0204 佐賀県三養基郡基山町字宮浦185-2(エスビージャパン内)
 
事業内容:
コンサルティング事業(テレワーク導入支援)
アウトソーシング事業
コールセンター
・営業支援(アウトバウンド)
・カスタマーサポート
コンシェルジュ(オフィス業務代行)
・マーケティング・リサーチ
・資料・デザイン作成
・イベント支援

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