経営ハッカー | 「経営 × テクノロジー」の最先端を切り拓くメディア
2019年08月28日(水)

マジレス炸裂!田端大学塾長・田端信太郎×freee株式会社・鈴木眞理のガチンコ対談【前編】

経営ハッカー編集部
マジレス炸裂!田端大学塾長・田端信太郎×freee株式会社・鈴木眞理のガチンコ対談【前編】

今、ビジネスマンの“脳味噌のスポーツクラブ”的存在として、大いに注目を集めている『田端大学』。元LINE執行役員で現ZOZOTOWN執行役員の田端信太郎さんが2018年に立ち上げたオンラインサロンで、歯に衣着せぬ叱咤激励、いわゆる“マジレス”の数々が話題となっています。

田端大学では毎月定例会議が開催され、メンバーがその月の課題図書に関して課題を提出し、田端さんに選ばれた3人がプレゼンを行いMVPを決めます。今回、田端さんと対談するのは、2019年5月の定例会議において、入会初月で月間MVPを獲得しそこから3ヶ月連続プレゼンターに選出中のfreee株式会社鈴木眞理@shinri_55さん。

本記事ではその模様を前後編に分けてお届けします。【前編】では、チャレンジとリスクの関係、これからの時代のバックオフィスのあり方などについて語られました。

負けたと思った時点ですでに負け

鈴木:田端大学入学初月にMVPを獲得した鈴木です(笑)。とはいえ次月のプレゼンは失敗したと思っていて。田端さんから見てもダメだったと思うんですけど…。

田端:ダメっていうか、そもそも鈴木さんはどういうプレゼンをしたかったの?

鈴木:今回は自分のCMを作って売り込むというテーマでしたが、自分の強みであるSaaSセールスとして新規のお客さんを開拓するという事についてプレゼンしたいと思っていました。ただ、前の人のプレゼンを聞いたときに、もう負けたと思っちゃって。

田端:それで負けてるよ(笑)。負けたと思ったら負けだよ。

鈴木:そこは自分の中で葛藤があるんです。良いものは良いと認めたい気持ちもあって。他の人の発表を聞いたときに、自分のプレゼン内容では勝てないと客観的に見てしまいました。田端さんだったら、そういう場合でも「自分がMVPだ」と挙手しますか?

田端:その時々によるでしょうね。どう見ても負けたと思ったなら、負け惜しみで挙手しても仕方がないし。

鈴木:相手のプレゼンには、自分の失敗談が的確に盛り込まれていて、そこがすごいなと思いました。でも僕にはあまり面白い失敗談がないんです。それはチャレンジが少ないってことでしょうか?

田端:それはそうなんだろうね。別に面白い失敗をするためにチャレンジするわけじゃないけど、結果的に、真剣にやっているからこそ面白いという部分は絶対にあるよね。

鈴木:じゃあ真剣さが足りないのかも。

田端:真剣さっていうか、もっと限界ギリギリまでやっていたら自ずと真剣になるような気がするんだけど。

鈴木:そこまで自分を追い込みきれてなかったのかな。

風呂敷を広げたら自然と追い込まれる

田端:ハッタリというか、大風呂敷を広げていたら、それをたたむ段階で勝手に追い込まれるよ。「自分を追い込もう」というより、まず風呂敷を広げたら自然と追い込まれる。

鈴木:僕はそんなに風呂敷を広げない方で、どちらかと言うとたたむことを考えて話すケースが多いなと思います。

田端:それは当たり前のことで全然悪くない。たためないところまで風呂敷を広げたって、それはそれで誰もハッピーにならないから。大切なのはその加減ですよね。

鈴木:田端さんって、すごく風呂敷を広げますよね。ちゃんとたたむことって考えているんですか?

田端:もちろん。たためない範囲で広げたって仕方ないけど、でも明らかに最初からたためる範囲でしか広げていない、と思われるのも意味がないし。

鈴木:そのバランス配分をどうするかということですね。

田端:これは一般論で語っても全然意味がなくて。結局どっちも大事というか、バランスが大事だよねっていう当たり前の話にしかならないから。

鈴木:もっと具体例でってことですよね。先日のプレゼンは、自分の中でセーブしているところがあるかなとは思いました。

田端:何をセーブしたの?

鈴木:全力を出したときに失敗することを恐れてしまったのかな、と思います。

田端:実際、MVPを獲れなかったということは、すでに失敗しているってことじゃないですか。何をもって失敗と言っているの?

鈴木:例えば、営業でお客様に提案をしているときに「何でもできます」という人がいるとします。本当に責任を持って実現できるなら、お客様や自分にとってメリットになる営業になるのかと思いますが、自分の場合は実現可能かどうかを慎重に考えてから提案するので、そこで一歩踏み込めていないのかなと思うことがあるんです。

田端:安全確実に行動するということは、逆に言うと、見えないチャンスを逃しているリスクがある。そのことを認識しなければいけないと思うんです。もう一歩踏み込まないということは、逆に言うと、もうちょっと頑張っていたら成約していたかもしれない案件もあるはずで。

鈴木:チャンスを見逃している可能性があると?

田端:絶対にあると思いますよ。

鈴木:そうですね。「辛いことと楽なことがあったとき、人は楽な方を選ぶようにバイアスがかかっているから、辛い方を選ぶのが正解だ」と言う話があります。それをやらないと自分が成長しないと。

田端:人間はこたつから出ようとしないっていう(笑)。こたつの中でぬくぬくしていて、運動不足になるリスクは考えないようにバイアスがかかっている。それを考慮に入れた上で、もう一歩、客観的な認知で意思決定するしかないですよ。

鈴木:それを認知した上で、どこまでバランスを取るかですよね。

田端:SaaSセールスで言えば、カスタマイズの設定などで納期が遅れるかもしれないと。でも納期が1か月遅れたからって刑法上の犯罪になるわけではなく、そこは応相談の範囲でいけるわけじゃないですか。100%納期に間に合うと確信できる状態でしかGOできないとしたら、それは間違いじゃないけど、逆にチャンスロスが大きいんだろうなと思いますよね。

鈴木:そのバランスをどこに置くかは結局、リスクがある方にバランスを取っていったほうが…。

世の中にはリスクゼロの状態なんかない

田端:いや、だからリスクの有無じゃなくて。リスクがないように見える方向にも、別のリスクが必ずあるということなんですよ。片方にリスクがあって片方にリスクがないのなら、それはリスクがないほうがいいに決まってる。そうじゃなくて、リスクがないと見えている方向にも、実は本当だったら取れるべき案件を落としているリスクがあるということ。

鈴木:両側にリスクがあり、そこのどこが最適かを見極めると。

田端:例えば、日本円の現金で100万円があるとします。株式投資したら、減るかもしれないというリスクがある。でも現金で持っていても、もしめちゃくちゃインフレになって、パンが一個1000円になったとしたら、実質的な価値は1/10に下がるわけじゃないですか。だから日本円を現金で持っていても、それはそれでリスクがある、というような話ですよ。

鈴木:なるほど、確かに。

田端:世の中には、基本的にリスクゼロの状態なんかないんですよ。リスクの有無よりは、どちらのリスクが相対的にマシなのかという方向で考えたほうがいい。

鈴木:確率論も含めて、どちらが自分にとっていいかという判断ですね。

田端:あるいは自分がコントロールできるリスクかどうか。

鈴木:そうですね。成功して評価されることと、失敗して評価を下げるというバランスを考えないと…。

田端:評価っていっても、社内評価でしょ?別に失敗したって、社内で有名になるぐらいの失敗をしたら、総合的には自分の評価が上がってるかもしれないじゃん。だから失敗とか成功とかリスクっていうのを、誰にとってどういう意味なのか、もっと視野を広げて考えたほうがいいと思うんですよ。

鈴木:人生において今の会社で失敗したところで、それは世の中に出たときにそんな大きなものでもないと。

田端:逆に、今の会社で昇進が多少早くなるぐらいの成功って、自分の人生全体で見たときに何の意味があるんだっけ、みたいな。そのために払うべき犠牲を考えたときに、そこまで意味があるのかということなんじゃないかと思いますけど。

鈴木:常にチャレンジしようと思っているんですけど、やっぱりできていないんだなと落ち込んでいたので、今の話しは心に刺さりました(笑)。

田端:常に安全確実と思っている場所だってリスクゼロではないし、どこにもリスクゼロなんてことはないわけです。そう考えたほうがいいんじゃないですか。

今からGAFAに入る人はダサい?

鈴木:そういえば田端さんは以前、「今からGAFAに入るのってダサい」という話をしていましたね。

田端:GAFAがダサいんじゃないですよ、今からGAFAに入る人がダサいっていう。

鈴木:今の話を聞いているとビジネスも同じかなと思うんです。

田端:もう明らかに、8合目か9合目まで来ているじゃないですか。なぜそこのエスカレーターに乗るの?みたいな。相対的にもうすでにめちゃくちゃ優秀な人がいっぱいいるわけだし。

鈴木:GAFAが20年前にものすごい資金を投資して、ハイスピードでハイスペックなものを作るモデルが成功して会社が大きくなった。今のSaaSベンダーがやっていることって、製品は違うけどやっているモデルは同じなのかなという気もします。

田端:若干違う気がしますけどね。もともと会計ソフトはいろいろあったわけじゃないですか。新しく生み出された検索エンジンやスマートフォンと違って、会計ソフトがクラウド化すること自体は、ただ置き換わっているっていう面もある。

鈴木:今までもあったものを置き換えているという意味では、そうですね。

田端:電力の自由化で何が起こったかっていうと、ただの値下げ合戦でしかなく、大して何も起きなかった。電気代が半額になったからといって、電気を3倍使うかといえば、絶対に使わないですよ。むしろ省エネの時代だから。ところが、通信やメディアコミュニケーションのビジネスがすごいなと思うのは、人間のコミュニケーション欲求って飽和しないところなんですよ。例えば面白ダンスの動画を4Kで観たいとか、自分の目の前でいま起こったことに共感してほしい!とか、その欲求の部分はほとんど飽和せずに無限に需要が膨らむから。基本的にGAFAがやっていることというのは、需要の弾力性があるものをうまくとらえたなという感じ。無形のビジネスが強いのは、実はそういう部分です。

鈴木:なるほど、そうですね。

経理や会計コストは少なければ少ないほどいい

田端:一方で、会計サービスがクラウドになって会計処理コストが1/10になったからといって、世の中の会社の数が10倍になったり、世の中に伝票が10倍行き交うようになったりするかと言うと、そうではないと思うんです。失礼な言い方をすると、会計処理って実は、そういう意味でセクシーじゃないビジネスなんですよ。

鈴木:そ、それは言い過ぎじゃないですか…(汗)。

田端:実は会社の中における経理や会計コストっていうのは、経営者としては少なければ少ないほどいい。もちろんそれは会社の規模なりに、最低限の帳簿を作ったり税金を納めたりという最低限のラインはあるから、その最低限のラインに対してどうやってより少ないコスト、リソースでできるかってことで。それができていたらそれ以上はいらないっていうゾーンじゃないですか。そこがけっこう違うと思うんですよね。

鈴木:うーん、どちらかというとそうですね。

田端:結局、会社のバックオフィス業務を効率化しているだけだから、コストが半分になったからといって需要は3倍にはならないと思うんです。乱暴な言い方をすれば、記帳自体には何の付加価値もないですもんね。何の価値創造もないから。

鈴木:今はそういった単純作業を無くすことに取り組んでいるということです。

田端:最終的にすごく効率化したら、freeeっていう会社自体が要らなくなる。
または与信から融資まで行うなど、情報やコンピタンスを利用して別の事業に転向していくとか。

鈴木:そうですね。そういうことも想定に入れています。

田端:必然的にそうなると思いますよ。むしろそうならないと、ある段階からは苦しいですよね。クラウド会計ソフトっていうのは、会社にとっての電気代みたいなものですよ。払わないといけないけど、正直そんなに劇的に品質に差があるとも思えないし、同じだったらなるべく安いほうがいいよね。

鈴木:通信の話で思ったのが、通信単価が下がっていくことで、コンテンツが高解像度や3Dになるなど、できることに限界がないなと。逆に通信のプラットフォーム、インフラというところはどんどん付加価値が下がっていくのかなと。

田端:それはそうだと思いますよ。

鈴木:逆に、会計から融資に行ったとして、融資も特に夢があるものではないですよね。最終的にどこに行くべきなのかなと考えると、なかなか難しいですね。

田端:働き方改革の視点から、全サラリーマンがマイクロ法人の合同会社を持つ方向に誘導して、需要自体を膨らますとか。

鈴木:freeeも副業のスタート部分の支援に力を入れていて、開業届を作成するサービスや税額診断ツールを無料で公開しています。

法人化してfreeeを使うようになって見えてきたこと

田端:僕も合同会社を資本金100万円で作ってみて、そろそろやっと丸一年なんですけど、もっと早く作ればよかったと思っていて。

鈴木:それはなぜですか?

田端:やっぱり帳簿としてハッキリしますよ。確定申告も単純に楽だなと。

鈴木:どれくらいお金が動いているかが分かりやすく、確定申告もほとんどやる必要がなくなったということですよね。

田端:個人事業主の確定申告って、なんだかんだよくわからないんですよね。しかも自分でやっていると。こんなもんでいいだろう、みたいな(笑)。

鈴木:個人のときは、税理士さんにお願いせずにご自分で確定申告をしていたんですか?年度末に全部計算して。

田端:自分でやっていましたよ。めんどくさいですよね。気が重いんですよ。いつもギリギリになっちゃう。典型的な夏休みの宿題みたいなもんですよ、春休みかもしれないけど(笑)。2月末くらいから「あと何回、土日が使えるかな」って。

鈴木:でも気が重くて先延ばしにしちゃう(笑)。

田端:いよいよここでやらないと、みたいな感じ。電子申告にしたらそれはそれで面倒だったり。いろいろなところにトラップがあるから、勘弁してくれよって(笑)。

鈴木:田端さんは今、法人でfreeeを使っていただいています。税理士さんに記帳代行をやってもらっているんですか?

田端:記帳代行というか、僕は法人カードを作っているので、そこからfreeeに流し込まれるから、あとは領収書を税理士さんに渡して仕訳を。そこは自分でやっていないから、どれくらい大変なのかはわかってないですけど、このほうが、年末に領収書が束になっているやつを打ち込んだりするより、はるかに楽だなという感覚はすごくあります。

鈴木:途中途中で連携してデータを取って入れてもらっていると、今の状況がどうなっているのかもわかりますよね。

田端:そうそう。いわゆる利益コントロールするときに、このままだったらいくらぐらいの着地になりそうかということが分かっていないとできない。締めてみないとできないとなると、やれることに限りがあるから。田端大学は粗利率が高すぎるから、もうちょっと還元したほうがいいなと去年の年末ぐらいから思いました。

鈴木:田端さんは、田端大学にちゃんと還元しているのがすごいなと思っていて。それがあるから入ろうと思ってくれる人が多いじゃないですか。だからすごくいいビジネスだなと思ったんですけど、それは原価率や利益率が分かっているから、これぐらい出せるというのがわかるということですよね。

田端:うん。でも原価率なんてほとんどゼロですけどね(笑)。

対談はさらに続き、この後もビジネスや起業のあり方、マーケティングやブランディング、副業の重要性などについて白熱した意見が交わされました。後日その様子も経営ハッカーにてお届けします!【後編】もお楽しみに!

【プロフィール】
田端信太郎(たばた しんたろう)

NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン「R25」の立ち上げや、広告営業の責任者を務める。2005年、ライブドアに入社し、livedoorニュースを統括。ライブドア事件後は執行役員メディア事業部長に就任し経営再生をリード。さらに新規メディアとして、BLOGOSなどを立ち上げる。2010年春からコンデナスト・デジタルへ。VOGUE、GQ JAPAN、WIREDなどのWebサイトとデジタルマガジンの収益化を推進。2012年、NHN Japan(現LINE)執行役員に就任、広告事業部門を統括。現在、株式会社ZOZOコミュニケーションデザイン室執行役員。


鈴木眞理(すずきしんり)

新卒でキーエンスに入社。製造工程の効率化に取り組んだあと、企業全体の効率化に取り組みたいと思いSAPに転職。SAP、OPENTEXTといった外資IT企業で大企業向けの業務効率化に携わっていく中で、日本の中小企業の生産性にこそ改善余地が多いと感じfreee株式会社に入社。大規模会計事務所向けチームのマネージャーとして営業、導入コンサルティングに携わる。現在、同社IPO事業部マネージャーとしてIPOを目指すお客様向けにfreeeを使った内部統制の整備を支援。

この記事の関連キーワード

関連する事例記事

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2023年02月28日経営ハッカー編集部

    衆議院議員・小林史明氏×freee佐々木大輔CEO 企業のデジタル化実現のために国が描く未来とは?

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年10月24日経営ハッカー編集部

    仕事が・ビジネスが、はかどる。最新鋭スキャナー「ScanSnap iX1600」の持てる強みとインパクト

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年08月30日経営ハッカー編集部

    ギークス佐久間大輔取締役、佐々木一成SDGsアンバサダーに聞く~フリーランスと共に築くESG経営とは?

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年08月28日経営ハッカー編集部

    サイバー・バズ髙村彰典社長に聞く~コミュニケーションが変える世界、SNSの可能性とは?

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年08月05日経営ハッカー編集部

    バックオフィスをどう評価する? 経理をやる気にする「目標設定」と「評価基準」の作り方

関連記事一覧